これはゾンビですか?~いいえ、ただの?病弱です~   作:ハヤテ

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自宅、学校、理科室の三本立てらしき話です

 

 

「で、ユーは何故地球に? まさか散歩って訳じゃないでしょう?」

 

 恐らく連続殺人犯であろう人物を殺し損ねて、一時間後。僕と歩、そして久しぶりに、本当に久しぶりに再会したユーとお茶の間でお茶を啜っています。落ち着きますね~。日本人はやっぱりこれですよ。コーラとかファンタとか飲んでちゃダメですよ。・・・ついさっきまで飲んでいた僕が何を言っているのでしょう。

 

『違う。さっき言ったように、朧を探してた』

 

「え? 何故です?」

 

 何か困った事でもあったのでしょか?

 

『朧は、地上に行ったきりまったく冥界に帰って来なかったから心配だった』

 

「あー・・・すみません。色々あったんです」

 

「嘘つけ、お前此処最近暇そうにゴロゴロ「余計なこと言わないでください(グキリ)」ギャアアアア!? 首が! 首が180度回転したぁぁぁあ!!」

 

 死人に口無しと言いますが、歩は死んでいるくせにお喋りですね。本当に殺し切ってあげましょうか?

 

『ゴロゴロ?』

 

「ええ、あっちにゴロゴロ、こっちにゴロゴロ、それはもうものすごく忙しかったのですよ」

 

『そう。それで、いい素材は手に入った?』

 

「いえ全く。流石物欲センサーです・・・ね・・・」

 

 し、しまった!?

 

『朧、ゲームしてたの?』

 

 ユーのつぶらな瞳がジーッとこちらを見つめる。い、いや、そんな目で見ないでください。汚れた僕にその目は眩し過ぎます!

 

「そ、そのですね? 僕も一度冥界に顔を出そうと思っていたのですよ? しかし、それが出来ない理由があったのです」

 

『ゲーム?』

 

「ええ、もうほんとにどうしようもないぐらい邪眼が出なって、違う! 確かに邪眼は出ませんが違います! 本当にどうしようもない事情があるのです」

 

『教えて』

 

「えっとですね・・・、あまりにも情けなくてあまり言いたくはないのですが、ちょっと精神支配・・・洗脳されているんですよね」

 

 僕の発言に、ユーはわずかですが目を見開き、歩は『ゴキリ』という不快な音と共に首を元に戻し、やはり驚いていました。

 

「洗脳? お前が?」

 

「ええまあ。寝ている間にちょちょいとヤられました。朝起きたら既に手遅れの状態でしたね。いやー、不甲斐ない」

 

『どんな洗脳?』

 

「ああ、この国から出れなくなるだけですよ。まあ、それによって僕はユーに会えなかったのですけど」

 

『ちょっと犯人を追いつめてくる』

 

「ユー、ネタに走らない」

 

『崖っぷちに』

 

「何故犯人って何時も崖に行くのでしょうね?」

 

「おいおいおい! 漫才してる場合じゃないだろ? それで、もし朧は外に出ようとしたらどうなるんだ?」

 

「鬱になります」

 

『どのくらい?』

 

「沙耶の○とさよなら○教えてを連続プレイした感じですね。因みに、エンドは全てバットエンドで」

 

さよならの方は殆ど変わりませんが、沙耶の場合のエンディングは液体窒素+ショットガンエンドです。・・・常人なら発狂しません? これ。少なくとも塞ぎこみますよね。

 

『それはひどい』

 

「でしょう?」

 

「いや、それエロゲの話だろ? 何で知ってるんだよ」

 

「有名ですからね」

 

「それでもユークリウッド・・・長いな、ユーでいいか?」

 

『構わない』

 

「そのユーが知っているのはおかしいだろ?」

 

『何故?』

 

「何故って・・・なぁ?」

 

「そういえば、僕も違和感を感じませんでしたが、何故知っているのです?」

 

『逆に聞く。何故知らないと錯覚した?』

 

 これは相当なものですね。・・・待て待て待て。

 

「そろそろネタバレを」

 

『歩と会ったのはコンビニの前だが、私の生活拠点はそこではない』

 

 もしそうだったらかなり驚くのですが。生活拠点がコンビニ前とかコンビニ側に迷惑すぎる。

 

『ネットカフェ。そこが私の生活拠点』

 

「「ナ、ナンダッテー!!」」

 

 衝撃的すぎるユーの発言に、お茶の間騒然です。

 

「いやいや、お金はどうしました?」

 

『どうとでもなった』

 

 僕はその『どう』を聞いているんですけどね?

 

「で、本当のところは?」

 

『朧が昔私にくれたお金で凌いでいた。延長料とか』

 

 あ、そうなのですか。いや、まあそれならそれでいいんですけどね? でも僕はネットカフェの部分含めて冗談だと思ってましたよ。

 

「ネカフェは本当なんですね」

 

『ホームレスになろうとは思わない』

 

 それもそうですね。ですが、ユーよ。僕、相川家に居候するまでは普通にホームレスでしたからね? 何気にその発言、僕の心を抉ってますからね? 顔には出ませんけど。

 

「ああ、そうだ。朧に伝えるの忘れてた」

 

「? なんですか?」

 

 まさか、この家から出てけとか言いませんよね?

 

「居候がもう一人増えるから」

 

「は? ・・・ああ、そういうことですか」

 

 つまり、ユーが相川家に居候するということですね。良いんじゃないでしょうか。困るのは相川家の財政だけですし。しかも、その辺りは僕の資産でなんともなりますし。

 

「でも、何故です? 僕を理由にするには少しいうタイミングが遅い気がするんですが」

 

「ああ、それはな」

 

『歩は私の力でゾンビになった。そして私はあらゆる勢力に狙われている。一緒にいた方がお互いに好都合』

 

「成程」

 

『そして、家に行ってみたら朧がいた。きっと幸運度が最大値を振り切っている』

 

 このユーは色々駄目かもしれません。幸運度とか言っちゃってる時点で駄目ですけど。くそ、誰がユーをこんな風に・・・ネカフェか? ネカフェが悪影響を及ぼしたのですか? いや、でも僕は知っています。ネカフェに罪はない事を。こういうのは・・・影響されてしまった人が悪いんです。悲しい事に。

 

「僕の知っているユーは、もういないんですね」

 

「え、なにこの急にシリアスな空気」

 

「何故、そんなオタ知識を・・・!」

 

「あ、なんだ。シリアルか」

 

 さっきから歩が五月蠅いですね。ゾンビになった事をいい事に投躑用ナイフの的にしてあげましょうか? 心臓ぶち抜いても死なない人は結構いるので、頭が100点ですね。心臓が80点です。

 

『気まぐれ』

 

「気まぐれでオタ化する事の危険度を僕は知っている! 駄目ですよユー! そんなことしたら!!」

 

『? 何故』

 

「自制が効かなくなりますよ!? 欲望垂れ流し『ナニカ』になってしまいますよ!?」

 

「随分失礼なこと言ってるが、不思議と間違ってないな」

 

『それは困る』

 

「でしょう? ならそんな気まぐれでオタ化しないでくださいよ」

 

『分かった』

 

 よし、悲劇は回避されました。

 

「何この茶番」

 

 

 

 

 

 皆さんどうも、ユーが僕と同じく相川家に居候する事になり、若干頭が春になっている朧です。

 しかし、ユーが来ても変わらない事というのは存在しましてですね。まあ、学校なんですけど。

 ユーが来てから約一カ月。ユーを一人家に残していくという罪悪感が未だに拭いきれません。過去の反動もあるのでしょうけど。・・・あの時は、有無を言わさずに強引に置いてきちゃいましたからね。仕方なかったとはいえ、今でも悔やまずにはいられません。僕と居たら、最悪でも最善でも殺されていたであろう状況なら。・・・いえ、正確に言うと、僕とその相手の『とばっちり』を喰らって死んでいたかもしれない状況、の方が正しいでしょうか。相手は周りを気にしない。僕は、あの時は未熟で、枷が外れたら、やはり周りを顧みず、対象を殺そうとしてしまう。

 結果、僕はユーの下を去った。勝って、すぐに帰ってくるつもりでしたが、その相手とは引き分け。お互いに気絶して、目を覚ました僕は、見覚えのある施設のベットで寝かされていて、これまた見覚えのある人に洗脳されていた。・・・ハァ、今思い出しても情けない。結局、自分の計画性のなさがユーに悲しい思いや心配をさせてしまったのです。

 

「・・・ハァ」

 

「なに辛気くさい顔してるんだ?」

 

「あぁ・・・友紀さんですか。いえ、ちょっと昔のトラウマを掘り返していただけです」

 

「掘り返すもんじゃねぇな」

 

「偶に掘り返さないと人間って言うのは同じ過ちを繰り返すのですよ」

 

 僕は時折トラウマ・・・というより、過去の過ちを思い出し、二度とその様な事が起こらない様に努めています。

 

「反省しなきゃだめってことか?」

 

「まあ、そういう事です」

 

 過去を振り返らないという意見もあるのですが、僕は偶には振り返ってみるのも良いのではないかと考えています。まあ、あの意見は恐らく、クヨクヨせずに前に進もうという意味合いも込められているのだと思いますけど。

 

「鑢ってさ」

 

「はい?」

 

「なんかよく難しそうな顔で考えてる事、多いよな」

 

「そう、ですか? まあ、友紀さんがそういうのならそうなのでしょう」

 

「まあ、だから喋りかけにくいってのもあるんだけどさ」

 

「・・・え?」

 

 喋りかけにくい? ちょ、それって要するにボッチじゃありません? そういえば、最近はクラスでも友紀さんとしか話していない気がします。下村? いや、特に共通の話題は無いので。三原さん? そもそも下村経由でしか話しません。

 ・・・やべぇ、ボッチだ。僕、ボッチですよ。

 

「いや、俺が思うに、鑢は雰囲気がちょっと特殊過ぎて話しかけづらいだけだと思う」

 

 ぶつぶつボッチ、ボッチだ、と嘆いていたらそれが聞こえたのか、久しぶりに下村が声ろ掛けてきました

 

「雰囲気?」

 

「こう、美人過ぎて声が掛けずらいとかあるだろ? アレだと思うんだ」

 

「そうですか・・・」

 

 それ、どうしようもなくね? 雰囲気変えるとか。

 

「まあ、いいです」

 

 

 

 

 

 授業も終わり、いつも通り理科室に行くと、そこには当たり前の如く白のゴスロリを着たクリスがお酒を煽っていました。

 

「あ、朧ー、やっほー」

 

「ねぇ、クリス」

 

「ん~? なに~?」

 

「いつ、仕事しているので?」

 

「ブーッ!! けほっ、けほっ。きゅ、急に何?」

 

「いや、だってクリスは授業終わってすぐに此処にいるではありませんか」

 

「・・・いや、ちゃんとやってるからね? 腐っても教師だからね? 公務員だからね?」

 

「ま、ですよね」

 

 聖職者ですし、さすがに・・・ねぇ?

 

「あ、これ、お土産です」

 

 といって、バックからお酒『神殺し』を出しました。

 

「くりすも気になってたんだけどさ」

 

「はい?」

 

 手で酒のカンを取り、ラッパでごきゅごきゅと飲みながら何かを聞いてくるクリス。・・・それ、アルコール度数80ある特注の酒なんですけど。よくラッパで、尚且つちびちびではなくごきゅごきゅと飲めますね。あ、咽た。

 

「けほっ、こ、これ、度数高くない?」

 

「80です。むしろこっちが吃驚してますよ。よくラッパでそんな勢いよく飲めますね。常人なら喉が焼けますよ?」

 

「ま、まあいいや。で、こういうのどこから持ってきてるの?」

 

「知り合いの酒蔵から適当に引っ張り出しています」

 

「泥棒じゃん!?」

 

「いや、貸しを返してもらってるだけですよ」

 

「ふーん。ま、くりすとしてはお酒飲めるから別に良いんだけどね」

 

 そういうと、今度はちびちびと飲み始めるクリス。

 

「あ、これ度数は馬鹿みたいに高いけど、普通に美味しいじゃん。朧、ありがとね」

 

「いえ、礼には及びません。本当に、何のリスクもおかしてませんし」

 

「でも、ありがとね。じゃあ、早速今日は何を話そうか?」

 

「クリスに任せます」

 

「そう? じゃあ、そうだね。例えば、化け物Aがいたとするよ」

 

 いきなりなんてものをいたとしているんですか。

 

「その化け物Aはね、人を食べてその人に完全に成り変わるの。思考も、性格も、何もかも完璧に。更に性質の悪い事に、その化け物Aは成り変わったなんて自覚は無くて、成り変わった後もその人物の様に生活する。勿論、社会にもなにも影響しないよ」

 

「ねえ、それってひょっとして、スワンプマンの事ですか?」

 

「あ、そうそう。考え的にはそれと同じだよ。まあ、泥沼が云々という話じゃないけど」

 

 この人は一体なんという話題を提供してくれるのでしょう。これで楽しく会話できると思っているのでしょうか?

 

「重くないですか? この話」

 

「まあ、朧がどう答えるかっていう興味本位だからね」

 

「ハァ。まあ、答えますよ。どう思う? という質問でいいですよね?」

 

「そうそう」

 

「別に何も思いませんね」

 

「へ?」

 

「いや、だって、要するにスワンプマンってその人物の完全コピーでしょう? 社会的に見ても、人間関係から見ても、誰も困らないじゃないですか。なら別になにも思いませんよ」

 

「じゃあ、もしくりすがそうなったら?」

 

「? 成るのですか?」

 

「そりゃあ、成るんじゃない?」

 

「・・・あ、前提の話をしていませんでしたね」

 

「ん?」

 

「僕の知り合いに、その化け物Aとやらに食われるほど弱い人はいないんですよ。まあ、実際、その知り合いが喰われたとしても僕はなにも気付かないんでしょうけど」

 

「まあ、それが自然だよね。すごい現実的な考え方だけど。感情的にはどうなの?」

 

「クリス、今は、『僕』に質問しているのですよね?」

 

「そうだよ?」

 

「なら、『感情的』にというのが如何にナンセンスかも分かりますよね?」

 

「あ、そういえばそうだね。ごめんごめん」

 

「まあ、一応答えてみると、納得は出来ないかもしれませんね。理解はしますけど」

 

「やっぱりそんな感じ?」

 

「はい。だって、そのスワンプマンも生きてるのでしょう? しかも偽物は偽物でも、完全な本物をコピーした偽物ときた。なら、どうしようもありません」

 

「つまり、朧の結論は、納得出来た物じゃないけど、理解もするし、どうにかしようとは思わない、ってところかな?」

 

「そんな感じです。・・・ところで、何故そんな話を?」

 

「あー、昔、そんな実験をアリエルがしててね。本人が満足して勝手に打ち切ったけど。その事を偶々思い出したからちょっと聞いてみたんだよ」

 

「なにその実験怖い」

 

「本人曰く『完全な偽物を作りだす実験』だったかな? 理論はこの世界のスワンプマンが元になってるって言ってたよ」

 

「泥との原子レベルが云々というやつですか?」

 

「そうそう」

 

「その人、バカ?」

 

「バカと天才は紙一重って言うよね」

 

 

 

 

 

 その後、クリスと今度こそ比較的ライトな話をして帰宅しました。

 

「ただいま戻り―――」

 

「アユム、おかわり! めっちゃおかわりだ!!」

 

『朧、お帰り』

 

「・・・」

 

「お、朧。これはだな」

 

「もしもし、警察ですか?」

 

「待ってくれぇぇぇえええ!!」

 

 何か知らない見た目14歳ぐらいな少女が歩にご飯のおかわりをねだっていました。普通に意味不明です。というか、一か月でまた居候らしき人物をもう一人増やすとか(しかも女の人)、歩はここに一種のハーレムでも気付く予定だったのでしょうか?

 

 

 

 

 




NGシーン

「ねえ、朧」

「なんですかクリス」

「ミ=ゴの事についてなんだけど―――」

「僕、オカルトな話に興味ないです」

「(しょんぼり)」
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