そんな人生の終わりを迎えた筈だったが、神を自称するナニカに異世界転移させられてしまう。
そこは法が整った世界ではなく、ありきたりな剣と魔法のファンタジー世界。
ならばそこで目指すモノは……
※小説家になろうでも掲載しています。
異世界転移か転生かはっきりしない雑な感じで始まります。
迷いの大森林と呼ばれる人類未開の地、そこは人類の手には負えない魔物や魔獣が跋扈する恐ろしい土地である。
しかしながら、人類には危険であると認識されているであろうその未開の地の一部に切り拓かれた空間があった。
その空間にはこぢんまりとしたログハウスと畑、それは恐れられている場所には似つかわしくないモノである。
時刻は夜明け、山から太陽が顔を覗かせる時間となるとログハウスの扉が開いて中から平凡な風貌の男がのっそりと出てきて伸びをする。
「ふぁぁ~……」
間の抜けた顔で気の抜けた欠伸をする男は軽装であり、どこか農作業に適した服装だとも見えるが断じてこのような危険な場所でして良い装備ではない。
そのような装備でいたとすれば、この森に跋扈する恐ろしい魔物か魔獣かに襲われてあっという間に命を刈り取られてしまうであろう。
だが、男はそんなことをモノともしない様子でログハウス近くの畑をいじり始めた――腰に武器を下げるということもせずにである。
この光景をこの森を恐れる人類の誰かが見つけたとすれば、驚き戸惑い開いた口が塞がらなくなるどころか呆れて言葉が出なくなってしまうこと請け合いだろう。
その人類がここに辿り着けることはほぼ無いと言っても過言では無いのであるが。
鼻歌を歌いだした男はご機嫌な様子で畑いじりを続けるのだが、急に鼻歌を止めて空を睨み付けた。
「はぁ……また性懲りも無くやってきたのか。無駄な死を重ねるだけだというのに、そろそろ話し合いで解決したいところなんだが、無理なんだろうな」
諦念を含んだ独り言を吐く男の視線の先に居たのはドラゴン、その口の端から溢れる火の粉は男を攻撃する意思の表れだろうか。
開かれた口から吐き出された火球は男に直撃すれば簡単に男を燃やし尽くすだろうが、その火球は見えない何かに阻まれ打ち消されてしまう。
それと同時にドラゴンの首は綺麗に切断され、ドラゴンだったモノは落下し大きな音を立てて地を揺らす。
「いい加減学習して欲しいんだが……攻撃してこなければこっちだって何もしないのに。肉の在庫がどんどん増えるばっかりだ」
飽き飽きとした顔で愚痴を垂らす男はどこからとも無く取り出したナイフでドラゴンだったモノを解体した。
男が何か呟くと、解体したモノとナイフは突如として消え去り、何事も無かったかのように男はログハウスへと戻ると朝食を摂る。
摂り終えれば畑いじりを再開し、いじり終えれば開けた場所へ移動してどこからとも無く剣を取り出し素振りを始め、日が昇りきった頃まで続ける。
再びログハウスへ戻った男は昼食を作り始める。
ログハウスから漏れ出る煙には焼いた肉の美味そうな香りがついており、それが風に乗って森の方へと漂っていく。
程よく肉が焼けてそろそろ出来上がるタイミングで森から大きな音が聞こえて来る。
それはこちらへ大型の何かが向かってくる走行音か、突如としてその音が鳴り止む。
森から現れたのは大型の美しい狼、人類からはフェンリルと呼称される災厄級の魔獣である。
フェンリルは拓かれた場所の一角にある大きな切り株の前までやってくると、まるでそこが私の席であると言わんばかりに座り込んだ。
座り込んだフェンリルの尾はまるで何かを期待するようにゆらゆらと揺れている。
ログハウスから漏れ出ていた煙が一瞬で消え去り、香りも届かなくなると、その尾はさらに揺れが激しくなる。
ログハウスの扉が開き、手ぶらの男はフェンリルが居る切り株の方を見て微笑みながら当然の如くフェンリルの前へと歩を進める。
「待たせたな」
フェンリルの口の端から大量に零れ出る液体――唾液を目にしながら男は笑い、人類が恐れる魔獣に話かけた。
フェンリルの目は早くアレを出せと男に訴えるため、更に笑みを深めながら虚空から焼かれた大きな肉を取り出して切り株の上へと置いた。
はち切れんばかりに振られたフェンリルの尾、そして肉に齧り付くその姿は飼い犬を眺めているような気分になってしまう。
そして男は自分の分も虚空から取り出し、そこで食事を開始した。
共に肉を食べ終えると、どちらからともなく開けた場所へと向かい対峙する。
「それじゃ今日もよろしく頼むよ」
男の言葉にフェンリルは頷くと、突如として氷塊が現れて男に殺到する。
それは氷の魔法であり、災厄級の魔獣であるフェンリルが得意とするモノである。
常人ならば、この氷の魔法に貫かれて即座に屍を晒すであろうが、こんな場所で暮らす男が常人であるはずも無い。
男から放たれたのは業火の魔法、飛来した氷塊と男が打ち出した火球は互いにぶつかり合って消滅する。
消滅する際に残った砕けた氷の欠片が日の光を反射して眩く輝き、その戦いを美しく彩る。
御伽噺の英雄譚か、物語に語られるような幻想的な光景がそこにはあった。
しかしながら、男の服装は朝と変わらず作業服であり、お世辞にも英雄であるとはいえたものでは無い装備のままであるのだが。
そんな不可思議な時間も唐突に終わりを迎える。
どちらかが死んでしまった訳でも無い。
それは腹ごなしの軽い運動だったかの如く、軽い空気を醸し出している。
魔法を打ち消しあった衝撃によって平らだった地面は凹凸が激しいモノになってしまったが、男が何か呟くと元通り平らな地面になる。
「いい鍛錬になったよ、ありがとう」
男の礼に満足気に頷いたフェンリルは、その場で丸くなるとそのまま昼寝を始めた。
男は丸まったフェンリルに近づくと、あろう事かフェンリルの腹に背を預けて昼寝を始めたのである。
麗らかな日差しにまどろみ、ゆったりとした時間が過ぎて行く。
このような拓けた場所で隙だらけで寝ていれば、この危険な土地では即座に襲われるだろう。
だが、この森最強である魔獣フェンリルに手を出すような愚かな魔物や魔獣はこの森には居ない。
居るとするのであれば、どこからかやってきたドラゴンくらいなものであろう。
穏やかに過ぎた時間、まどろみから覚める。
「ああ、よく寝た。それじゃ、またな」
フェンリルは尾を、男は手を振る。
それが別れの挨拶だったのか、フェンリルは森へと戻って行った。
「さてと、仕事を再開するか」
男は畑いじりを再開し、日が傾いき山に顔を隠し始めた頃に切り上げる。
男が向かうのはログハウスではなく、この世界には存在しないであろうはずのドラム缶が鎮座されている場所であった。
男は魔法で湯を生み出すと、ドラム缶に注ぎ込んだ。
露天ドラム缶風呂である。
ファンタジーな世界らしくないその風呂に入りながら、美しく輝く星空を眺めながら温まる。
風呂から上がれば、後はログハウスに戻って眠るだけである。
これはそんな日常を過ごす男の物語だ。
お一人様系のぼっち異世界スローライフ農業モフモフ小説が読みたくて書いてみました。
検索とか苦手なのでオススメあったら教えてください。(他力本願)
ハーレム無しだと尚良しです。