…強欲で謙虚な壺、御手洗のデッキコンセプトだと悪さできちゃうんですよね…。
メタルフォーゼもCKと相性抜群ですし…。
多分まぁ、次の制限改定でマジェが死ぬから大丈夫でしょ。
だから苦渋の決断とテムジンは見逃してくださいねコンマイさん…。
あ、あとこの小説ではいくつか禁止カードが出てきます。
このカードは環境の代表だったな、ってカードは出したいんです。
そもそも禁止になる前に大体の構想考えてたので、何枚か禁止カードが物語のキーカードになっていたりするんですよね…。
私の勝手となりますが、ご了承ください。
勿論糞猿にジャグラーも出てくるよ!あの時の地獄を思い出しながら楽しみにしててね!
遊勝塾が再びアクションフィールドを纏う。
壁という壁が本棚に変わり、宙に浮く足場が出現する。
きっと、エクゾディアデッキを組んだことのあるデュエリストならこのフィールドがどのカードをモチーフにしているか分かるだろう。
「…フィールド名は『王立魔道図書館』?レベル4のアレか?」
「でしょうね。昔エクゾディアデッキでフル投入されていたらしいわ」
「エクゾディア…レプリカならよく見るな」
「あれ、曰く付きだから本物を使うわけにはいかないんでしょ」
沢渡と光津は観客席に腰を下ろしながら、広がるフィールドについてあれやこれや話している。その2人にちょっと距離を話して遊勝塾のメンバーが、フィールドで準備体操をする御手洗を奇妙な目で見つめていた。
「御手洗…変な奴だね」
「素良も人のこと言えないと思うけど」
「しかし、LDSの首席がことごとく敵わないって、一体どんな奴なんだろう?」
「あー…アユちゃん。それなんだけど…彼をちょっと調べたら戦績を見つけたんだ。見る?」
柊修造は片手に持った端末をジュニア三人に渡した。その画面を見た三人は絶句した。
御手洗 新 総合コース 1位(首席は毎年辞退)
過去5年の公式戦績 285戦中274勝2敗(無効試合有り)
今年の勝率 9割6分(ユースランク1位)
舞網チャンピオンシップシード権獲得
「嘘…」
「化け物だ…LDSにこんなデュエリストが存在するなんて聞いたこともないぞ、沢渡!」
「まぁあいつ、基本LDSの奴としかデュエルしないからな。首席も毎年辞退して、目立とうしないし」
「私に至っては昨日初めてデュエルしたのよ」
権現坂の問いにため息混じりに沢渡と光津は答えた。
「…本当に何者なんだ…?」
「変態で、デュエル大好きで、悲劇論者」
「沢渡…容赦ないな」
そりゃまぁ、事実だし、と呟く沢渡。しかしその目は半ば呆れかえって逆に楽しそうだった。
「ところで沢渡。あんたさっき、まだ御手洗は私たちに本気出してないって言ってたわね。それってどういうこと?」
光津がなんとなく不満そうに聞いた。
「あぁ…あいつがエクシーズ使っている時は本気じゃねぇよ」
「へぇ、じゃあ何を使っているの?」
沢渡の会話が気になったのか、素良が話に割り込んだ。ついでに権現坂や遊矢も聞き耳を立てている。
「あいつの本当の切り札はな…」
「おっと、沢渡クン?御伽噺をラストページから朗読するのはマナー違反だぜ?」
沢渡の声は御手洗にも聞こえていたらしく、御手洗は彼の声を遮り、口元に人差し指を当てた。
「いや、どういう意味?」
「ネタバレ厳禁って事だよ、遊矢クン」
そう言うと御手洗はぼんやりとしている栗船に向き直り、指を鳴らした。
「本当にすまないね、栗船さん。二連戦だから、断ってもいいのに」
「いいんですよー、私デュエル好きですし、連戦でも大丈夫ですよー」
御手洗の謝罪に彼女はカラカラ笑って返した。御手洗もそれを見てニッ、と笑い、両腕を高く高く上げた。
「…さぁ皆様方、そろそろ開演のお時間です。ここからはこの悲劇役者御手洗新と、新鋭喜劇師の栗船冬香がお送りいたします。演じる分野が悉く違い、描く物語も悉く違う我らデュエリスト達の茶番劇、心ゆくまでお楽しみください」
彼の口上は早口だが聞き取りやすかった。一気に捲し立てた悲劇役者は観客席に深々と一礼した。その時、光津は見逃さなかった。
彼の表情が、昨日見た時のように「愉しんでいた」のを。
「それでは栗船さんーーー」
「はい!アクション…」
「デュエル!」
KURIHUNE 4000
vs
MITARAI 4000
「先行は御手洗君、どうぞ〜」
「では、有難く頂きましょう。私のターン!スタンバイ、メイン!」
御手洗の丁寧なフェイズの確認に遊勝塾のメンバーは意外そうな顔をした。
「うむ、彼のデュエルへの情熱を感じるな!」
「父さんみたいな熱血タイプじゃないけどね」
感心する修造と突っ込む柚子。
「しかし、不利だな御手洗」
「不利?先攻なのに?」
「あいつの下級モンスター全部、サイバー・ドラゴンと同じ効果持ってるのよ」
あーなるほど…。という空気が観客席に流れた。相手フィールドにモンスターが存在しないと特殊召喚出来ないという事は、展開が出来ないということである。
しかし、御手洗は観客席の反応を聞いて凄く嬉しそうな顔をしながら、手札から二枚のカードを栗船に見せつけた。
「俺はPスケール3の『Nv. スプラッタ・ダブルギア』と、Pスケール6の『Nv.スプラッタ・フォックス』をPゾーンにセッティング!」
「な…!?」
御手洗のフィールドに所々赤くなっている歯車と、半分顔がなくなっている狼が現れ、赤い光のアークを描いた。
(御手洗が…Pカードを使った!?)
沢渡と光津も、遊勝塾のメンバーとともに驚愕していた。しかし沢渡には心当たりがあった。
(社長だな。なんだよ、御手洗のやつにも作ったのかよ)
沢渡は渡されたPデッキ『妖仙獣』をチラリと見て舌打ちをした。…ただ、光津と戦った時は正直Pカード無しでも十分戦えそうだった。しかし、途中で御手洗が乱入してきたので有耶無耶になってしまったが。
(そう考えると腹立たしいな…ったく!)
悪態を吐く沢渡を他所に御手洗はプレイングを進める。
「鈍り輝け、血の呪術式。少女の血を贄に、凄惨で救われぬ御伽噺を綴りたまえ!ペンデュラム召喚!来い、少女を貪り喰らう化け物共!レベル4、『Nv. スプラッタ・インセクト』!同じくレベル4、『Nv.スプラッタ・ボート』!」
赤いアークが一層色味を増し、血のような液体を纏いながら、刺々しいフォルムで血に濡れたボートとグロテスクな虫が出現する。
二体とも攻撃表示でフィールドに降り立ち、悲鳴のような気味の悪い声を上げる。
「『Nv. スプラッタ・ボート』の効果を発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功した場合、自分の墓地または自分フィールド上のカード一枚を選択し、除外できる!俺は『Nv. スプラッタ・ダブルギア』を除外する!」
御手洗の宣言とともにボートが唸り声をあげながらダブルギアを飲み干した。
「え?Pカードを除外…?」
「なんで自分のカードを…?」
ジュニア達からからどよめきが漏れる。それに気づいたのか、御手洗が観客席に向き人差し指を立てて左右に振った。
「さらにフィールド上で除外された『Nv. スプラッタ・ダブルギア』の効果発動!このカードがフィールド上で除外された時、デッキから『
彼の言葉通り、ボートが魔法カードを吐き出した。御手洗はそれをキャッチし、手札に加えた。
「この効果で『
「なるほど!除外することで効果を発揮するのか!」
「敵だけど痺れるぅ〜!」
御手洗のプレイングにフトシ達が歓声を上げる。御手洗は観客席の反応に満足したのか、優雅に一礼した。
「調子乗ってんな、ありゃ足元すくわれるぞ」
「沢渡クン、『足元』はすくえない。すくわれるのは『足』だぜ?」
さらに沢渡の呆れ声に笑顔で突っ込む。
「や、やかましい!いちいち人の粗探ししやがって!いいからデュエルに集中しろよ!」
顔を赤くして怒る沢渡を軽く鼻で笑いつつ、御手洗は魔法カードを発動した。
「俺は魔法カード『
御手洗は『Nv. スプラッタ・ダブルギア』をデッキに戻す。デュエルディスクが彼のデッキをシャッフルし、そこから御手洗が一枚ドローした。そして、彼がニタリと笑みを浮かべる。引いたカードは『
(あの時のカード…!)
光津は身体中に悪寒を感じた。光津が勝利を確信したその瞬間をぶち壊し、一気に流れを変えたあのカードを、自身の手に引き寄せたのだ。
「さあ、俺は二体のモンスターでオーバーレイ!」
笑みを浮かべたままの御手洗の一喝とともにスプラッタ・ボートとスプラッタ・インセクトが二つの閃光となり、黒い渦へと飲み込まれる。
「繰り返される惨劇、血に染まる少女。少女刑事よ、この物語の謎を解け!エクシーズ召喚!ランク4!『Nv. キャプテン・エストレイド』!」
御手洗の口上とともに黒い渦から二丁マシンガンを担いだ『Nv. キャプテン・エストレイド』が攻撃表示で現れた。
「エクシーズモンスター…!」
遊勝塾のメンバーからどよめきが漏れる。
(やっぱりまだ、エクストラに入れるカードを持ってる奴は遊勝塾にはいないのか)
観客席の反応を見た御手洗は心の中で呟く。
「最後に俺はカードを二枚伏せターンエンドだ」
御手洗がターンエンドを宣言すると同時に、彼のフィールドに裏側のカードが二枚現れる。
「凄いです!御手洗くん、その黒いカード、使えるんですね!」
彼のプレイングを見ていた栗船が目をキラキラさせて感動していた。
「お褒めに預かり、光栄です」
優雅に一礼する御手洗。しかし。
「私も負けないくらいに頑張りますね!その黒いカード使って!」
「…え?」
栗船の言葉に全員が硬直した。
(やっぱり、こいつは…とことん愉しめそうだな…)
観客が言葉を失う中、御手洗だけが笑みを浮かべていた。
「では、私のターン、ドロー!…みなさんお待たせしました、今から最高のコメディデュエルが始まりますよー!私はPスケール1の『CK グリーンクリーン』と、Pスケール5の『CK ハードワーカー』をPゾーンにセッティングします!」
栗船が2枚のカードをPゾーンにセットすると、緑色のローブに身を包み赤い杖を持った青年と、書類で埋もれたデスクの上で突っ伏した少女が現れた。
「光り輝け、誇り高き騎士達よ!我らが追い続けるは究極の喜劇!さぁ、パーティーの始まりです!皆様、拍手でお迎えください!」
栗船が口上を叫ぶとともに、天空に虹色の召喚陣が現れた。そこから2つの稲光が走り、彼女のフィールドに降り立つ。
「まずは1人目!皆様お馴染drive&explotionのカイトテール、レベル4!攻撃態勢で参上!」
黒いシルクハットとサングラスをかけた青年が奇妙なポーズをとりながら現れる。
「さらに2人目は、初のお披露目となります!魑魅魍魎も彼の前にひれ伏さん、普通にして異常なる喜劇師、アキラマタラギ、レベル4!勿論!攻撃態勢ィ!」
さらに大きなアホ毛が目立つ、大きな銃を持った男が気だるそうな表情を浮かべながらカイトテールの隣に降り立つ。
「…レベル4が2体…!来るぞ…エクシーズが!」
権現坂が興奮気味に呟くが、栗船は首を横に振った。
「いいえ、まだまだ!私は『CK グリーンクリーン』のP効果を発動!『CK』モンスターのP召喚に成功した場合、グリーンクリーン自身を破壊することでデッキから『C』魔法・罠カードを手札に加えることができます!」
栗船の言葉通り、Pゾーンのグリーンクリーンが杖を振ると、鮮やかな閃光とともに彼の姿が消えて一枚のカードが現れた。
「私は『Cホットブラッド』を手札に加え、発動します!効果処理としてカイトテールの攻撃力を600アップします!」
赤いオーラがカイトテールにまとわりつき、攻撃力を2300まで上昇させる。
「あの永続魔法か…なるほど、エクシーズする前に俺のエストレイドを倒す気か?」
御手洗は感心したように呟くが、彼女は頷かなかった。
「それはどうでしょう?まだ私には通常召喚が残ってますよ!ってことで、私はレベル6の『CK ダブルウォーター』を召喚します!」
「レベル6!?」
観客席の困惑の声も意に介さず、栗船はカードをマシンにセットする。同時に白と黒のドレスを着た少女が現れる。
「ダブルウォーターはリリースなしで召喚できます。その代わり、レベルは4になって攻撃表示から変更できないですけどねー」
彼女の言う通り、モニターに表示されたダブルウォーターのレベルは6から4に減っている。さらに攻撃力は0…リリースなしの場合、デメリットを負うようだ。
(…いや、レベル減少はデメリットになってない。フィニッシャーになりうるカイトテールを残しつつ、ランク4エクシーズを呼べる…それに特殊召喚すればレベル6としても扱える。P召喚できるならなおさら、ランク6エクシーズの素材にも出来る…!エクストラ無しだとおもってたせいで、妨害用のカードを入れ損ねた…ったく、馬鹿だなぁ俺)
御手洗は心の中でサイドデッキとして用意した『妖怪のいたずら』を入れなかったことを後悔し、舌打ちした。
(エクシーズを持っていると知っていたら色々と用意してたんだがな。…いや、ポジティブに考えろ。こいつには久々に本気を出せそうだ!とにかくこのターン、耐えてみせる!)
御手洗は心の中で決心し、栗船に向き直る。彼女は丁度、エクストラから呼ぶエクシーズを決めたようだ。
「私はアキラマタラギとダブルウォーターでエクシーズ!」
2体のモンスターが稲光とともに笑い声を上げながら黒い渦に吸い込まれる。
「絶望にまみれた動物園に差し込むは一陣の光!脇目も振らず希望の道を進み運命の喜劇師へと昇華せよ!…えっと…あ!エクシーズ召喚!ランク4!チャンスを掴む少女、『CK ヘッドロング・コメディアン』!」
栗船の口上とともに黒い渦から、和服を着崩して胡桃割り人形を引き連れた少女が飛び出してきた。
表示された攻撃力は2400…エストレイドの攻撃力を僅かに上回っている。
「でも…エストレイドは…」
光津は昨日のデュエルを思い出す。エストレイドの効果によって返り討ちにされた瞬間を。
「恐らく御手洗は攻めてくるモンスターを返り討ちにする…ヘッドロング・コメディアンが墓地に行けば間違いなく『隷従の御伽噺』でオーバレイユニットのコントロールを奪うだろうな…まぁ?俺ならこのターン攻撃しな」
「バトルです!私は『CKカイトテール』で『Nv. キャプテン・エストレイド』を攻撃!そしてカイトテールの効果で攻撃力が2600になります!」
「な…!?」
佐渡が言い切る前に栗船は攻撃を宣言した。
「オイオイ!?なんで攻撃しちゃうんだよ!?」
「そりゃそうでしょ!彼女はエストレイドの効果を知らないんだから!」
佐渡と光津が叫ぶと同時に御手洗がハッ、と微かに笑い声をあげる。
「甘い!俺はエストレイドの効果を発動!このカードより高い攻撃力を持つモンスターと戦闘を行う場合、オーバーレイユニットを二つ取り除いて攻撃力を倍にする!」
カイトテールの放ったミサイルを、自身の効果で攻撃力が倍になったエストレイドは目にも留まらぬ速さで回避する。
しかし。
「モンスター効果が発動した時、ヘッドロング・コメディアンのオーバーレイユニットを二つ取り除いて、その効果を無効にし、攻撃力を800ダウンします!」
「…な!?」
栗船が叫んだ通り、ヘッドロング・コメディアンが投げたカードがエストレイドの目の前で炸裂し、展開された目の細かい網が少女刑事を襲う。逃走しようとしたエストレイドだが、そのまま網に絡みとられてしまう。効果を無効化され攻撃力が1500までダウンした彼女に、カイトテールがもう一発のミサイルを打ち込み、命中させた。
エストレイドはファンシーな爆発に包まれ断末魔をあげて消滅した。そして爆風が御手洗を襲う。
「くっ…!」
御手洗 4000-1100=2900
「まだまだ終わらないですよ!カイトテールの効果で、破壊したエストレイドの攻撃力分だけダメージを与えます!」
体勢を崩している御手洗の頭上にデフォルメされたエストレイド人形が出現し、爆発した。
「ガハッ…!」
モロにタメージを受けた御手洗はそのまま壁際の本棚まで転げ飛んだ。
御手洗 2900-2300=600
「凄い…LDSの生徒を…」
「一方的に追い詰めてる…!」
栗船の強さに、遊矢と柚子が驚愕の声を上げる。勿論、佐渡と光津も驚いていた。
「…まだ栗船ににはヘッドロング・コメディアンが控えてる…流石にあいつも万事休すかしら…?」
「確かに…もうAカードにかけるしかないかもな…」
絶望的。このデュエルを見ている者全員が、御手洗の戦況をそう評した。
しかし、御手洗はフラフラと立ちたがる。その口元は、確かに笑みを浮かべている。
「…クックックッ…あー最高。やっぱりデュエルはこうでなきゃなぁ…?一瞬の油断、失策が敗北に繋がる、どんな策を巡らせても成すすべなくなる、そんな…瀬戸際が…一番楽しいんだよなぁ…」
ブツブツと、ゆっくりと喋る彼の口角は徐々に上がり、栗船の顔を見つめる時には満悦の笑顔を浮かべていた。
「久しぶりに、負けそうだ。だけど、まだ戦いたいぜ」
悔しそうだが、その身振りは全くの諦めを感じさせない。御手洗は未だ、戦うことを諦めていない。
「でも、無理じゃないですか?私にはヘッドロング・コメディアンがいますよ?」
栗船が不思議そうに首をかしげる。御手洗も苦々しく笑い、肩をすくめる。
「あぁ…確かに。Aカードは戦闘破壊への体勢を持たせるカードは多いが、戦闘ダメージを無効にするカードは少ないから、ね。」
「そうですよね。…でも、その、言い方は悪いですけど…なぜ、諦めないんですか?」
御手洗は、栗船の問いに乾いた笑い声をあげる。
「…ハッ、以外と鬼畜な性格してるね、栗船さん。確かに君の言うとおりだ。…だが、諦めるわけにゃいかんのさ。俺の自論にかけてな」
「自論…?」
首をひねる栗船を見て御手洗は笑みを浮かべる。
「…人が成長するために必要な物は何だ?努力?才能?いいや、違う!一番大切なことは思い悩む事だ!大きな壁にぶつかった時、その壁から逃げたら人は成長できねぇ…悩み、苦しみ、足掻いて…答えを見つけ出す者こそ、新たに成長できるのさ!…だからこそ、人が苦しみ、悩む姿は素晴らしい!そして、答えを見出した者は、さらに美しい!」
彼は1人、熱く語る。その自論には染み入るような説得力と、有無言わさぬ迫力があった。
まるでそれは舞台に立つ役者のように。
勇ましく、朧げで、儚いような、彼の言葉に観客席は圧倒されていた。
(あの時の表情は…)
光津は昨日のデュエルを思い出した。
自分の困惑を愉しそうに見つめていた御手洗の本心が、なんとなくわかったような気がした。そして、さらに認識した事もある。
御手洗という男は…とことん歪んでいるのだと…。
「さぁ、栗札さん。ここからどうする?」
満面の笑みを浮かべたまま、御手洗は尋ねる。
「そりゃ勿論…ここでトドメを刺しますよ!」
栗船は膨れっ面で答えた。
「貴方の自論は理解できます。でも、共感はできません!理由はないですけど!苦しまなくても人は成長できますよ!きっと!」
「あやふやだね」
「余計なお世話なのです!やっぱり舞台もデュエルも、喜劇が一番なんですよ!」
涼しげな顔の御手洗に真っ赤になって反論する栗船は、デュエルディスクの『ヘッドロング・コメディアン』に触れた。
「このデュエルはハッピーエンドで終わらせるんです!『CK ヘッドロング・コメディアン』でダイレクトアタックです!これでデュエルエン――」
「Pゾーンの『Nv. スプラッタ・フォックス』の効果発動!相手モンスターの直接攻撃宣言に、Pゾーンのこのカードを特殊召喚し、バトルフェイズを終了する!」
栗船の攻撃宣言を遮り、御手洗が叫ぶと、Pゾーンの『フォックス』が猛スピードでモンスターゾーンに滑り込み、ヘッドロング・コメディアンがけしかけた胡桃割り人形を叩き潰した。
「P効果…!ただスケールを揃えるためだけじゃなかったのか…」
素良が驚きの声をあげ、栗船は複雑な表情で舌打ちした。
「やりますね」
「そりゃどうも。まだまだ、負けたくないんだよ俺。だから、まだ抗わせてもらうよ」
栗船の嫌そうな顔を見て、御手洗は嬉しそうに手をはたく。そして、御伽噺のモノローグのように語り始めた。
「さぁ皆様方、喜劇に勝る私の御伽噺、此処からが本番で御座います。善良なる生物さえ血に飢える怪物へと変貌してしまう殺意の感染…一瞬たりとも見落とすこと御座いませんように…!」
同時刻。
…遊勝塾の外で、黒いフードとガスマスクを装備した男がデュエルディスクで会話している。
「あぁ、もしもし、ユート?ゴメンな、今日は無理だった。明日やるからまたお前らに協力できなそうだ…スマンな、いい大人が自分の都合で勝手に動いちゃってな…」
男は左手のカードをふりながら、電話を切って歩き出す。
そのカードには、血のようにどす黒い煙が渦巻いていた…。
カード紹介
CK グリーンクリーン 星6 1000 2700 光 魔法使い族 青1 赤1
P①:自分は「CK」モンスターしか特殊召喚できない。この効果は無効化されない。
P②:P召喚に成功した時に発動できる。このカードを破壊し、デッキから「C」カード一枚を手札に加える。
コメディナイトの若き騎士。過去に荒れていた時、座長に拾われた。巧みな毒舌と魔術を駆使した爆笑必至の大立ち回りは必見。
元ネタヒント「チョコレート幼稚園児」
通常Pモンスター。自身を割って「C」サポートカードをサーチ出来ます。
スケールは1ですが、どっかのペルソナのように甘くなく、召喚制限がかかっています。
しかし、サーチ効果自体は任意の上なので柔軟にスケールの張替えができます。
通常モンスターなので『召喚士のスキル』で呼ぶことも可能です。
フレーバーテキストに書かれている『座長』は、栗舟の切り札といえる存在です。
これについてはいずれ紹介したいと思っています。
CK ヘッドロング・コメディアン 星4 2400 900 闇 魔法使い族
「CK」レベル4モンスター×2
「CK ヘッドロング・コメディアン」の①の効果は一ターンに一度しか発動できない。
①:モンスターの効果が発動した時にこのカードのX素材を二つ取り除いて発動できる。
その効果を無効にし、攻撃力を800ポイントダウンさせる。
この効果は相手ターンにも発動できる。
②:このX素材をもったこのカードがモンスターと戦闘を行う場合、このカードの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで400アップする。
元ネタヒント「五反田で二次会」
ヘッドロングは脇目も降らず、などを意味する英単語です。日本語ならある四字熟語に置き換えられますが…これ以上は元ネタがばれてしまうので書きません。
口上も若干ながらヒントですよ!
①の効果はジャイアント・ハンドとの相互互換…かな?
ジャイアント・ハンドが表示形式を固定するのに対し、このモンスターは打点をダウンさせます。ま、あっちは素材の縛りがないので間違いなくギラグさん有利は揺らがないでしょうね。
②の効果は…本当は元ネタからの洒落で800にしたかったけど…それじゃあ強すぎるからな…
え、なんで800に拘っているのかって?ほら、『突進』ってさ、猪が描かれてるだろ?
…そういうことさ。
Nv. スプラッタ・フォックス 星4 900 100 闇 機械族 青6 赤6
P①:相手モンスターの直積攻撃宣言時に発動できる。このカードを自分フィールドに特殊召喚し、バトルフェイズを終了する。
「Nv. スプラッタ・フォックス」の①②の効果は一ターンに一度、いずれか一つしか発動できない。
①:相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、手札のこのカードを特殊召喚できる。この効果で特殊召喚したターン、自分は「Nv.」モンスターしか特殊召喚できない。
②:このカードが墓地に存在する場合、このカードを除外して発動できる。除外されている「Nv. スプラッタ・フォックス」以外の「Nv.」モンスター一体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターは効果を発動できない。
元ネタヒント「ピザ屋の盗塁王」
機械族なのは元ネタのせい。
P効果はPカード版「バトルフェーダー」ですね。いかんせん、Nv.の強みを生かそうとすると自分から死にかけになるので、なかなか役に立ちますよ。
モンスター効果は①が共通効果。②の効果はどっかのジャグラーのように墓地に落ちたターン発動できるようになってますが、①で特殊召喚したら使えなくなるので大丈夫でしょう。
ジャグラーもこのぐらいすりゃいいのになぁ…。
うっすら気付いたかもしれませんが、「Nv.」の主軸となるのが除外です。
まだ「CK」と比べてふわふわしてるんですけどね。
next story...『悲劇の感染』