融合次元のbetrayer   作:arc-v

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仕事で土曜出勤パレード、日曜は睡眠でなかなか書けませんでした……。
一言かくべきでした……。本当に申し訳ないです。
そしてエクシーズ編に入ったため、一度プロットを修正しようと思います。
これからこうしていこうとある程度は考えていたのですがエクシーズ側の過去やアカデミアの内情が少しだけですがわかったのでできるだけずれないようにしたいと思います。長くなりましたがでは



不運は続く

「どうして遊矢が?」

 

クロノスは困惑した。自分が戦っていた人物が同じ遊勝塾の仲間である榊遊矢だとは思いもよらなかったからだ。

 

「遊矢も昨日の事が気になったからここに来たのか?しかも何でそんな不審者みたいな恰好してるんだよ?」

 

クロノスが遊矢に尋ねる。しかし遊矢は何も答えない。

 

「おい、無視してないで何か……」

 

クロノスは途中で言葉を止める。確かに目の前の人物はどこからどうみても榊遊矢だ。榊遊矢のデュエルは皆を笑顔にするエンタメデュエルをモットーとし、彼もそれを誇りにしている。決して"目の前の人物"のように怒りや憎しみでデュエルをする人物ではない。

 

「お前は……一体……?」

「貴様、そこで何をしている!?」

 

声のする方向に目をやると何やら警備員らしき人物が立っているのが見えた。連絡した甲斐があったようだ。すると目の前の人物はデュエルを中断し、そのまま走り去っていった。

 

「おい、待て。」

「お前だな。このあたりで人が暴れているという通報があった。一緒に来てもらうぞ!」

 

がしっと警備員らしき人物に腕を捕まれる。

 

「えっ?ちょっと待って、通報したのは俺じゃなくて僕なんですけど!?さっき逃げた人が犯人なんです!」

「ふん。うまいこと言って逃げるつもりだろうがそうはいかんぞ。仲間が逃げた場所もお前に吐いてもらうぞ。」

「えぇー!?」

 

見たところこの警備員は年齢が40くらいの男のようだ。かなりガタイも良い。一人ぐらいならなんとかなるかもしれないが増援を呼ばれるとアウトだ。何より顔を見られてしまっているため、調べられる可能性がある。アパートで待ち伏せなどされればたまったものではない。クロノスは抵抗することをあきらめ、そのまま警備員らしき人物にずるずるひきずられ連行された。

 

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「くっそ、せっかく通報したってのに何て奴だ!」

 

あれからクロノスはこってり絞られた。子供が一人で昼間からあのような所で何をしていたのか?学校にはいっていないのか?親は何をしているのか?と根掘り葉掘り質問された。自分の境遇を嘘半分で伝えると警備員の男は涙を流し、そのまま激しいハグを行ってきた。どうやら一人で働いて生活をしているという言葉に対して感動したようだ。その後は同情したのか昼ごはんにかつ丼を奢ってくれた。それは良かったのだがその後、警備員の男がこれと言わんばかりに自分の武勇伝を語り始めたのだ。無下にもできず話を聞いて今に至る。時間も大分経ってしまった。

 

「こりゃあ思った以上の遅刻だな……。とりあえず遊矢に」

 

連絡を入れようとデュエルディスクを起動すると大量に連絡が来ていた。その連絡主は同じ遊勝塾のメンバーからだった。そのうちの一通に目をやる。

 

「!?マジかよ!」

 

クロノスは遊勝塾に向かって走り出した。メールの内容にはとんでもない内容がかかれていたからだ。遊勝塾がピンチだと。

 

「はぁはぁ……やっとついた」

「あっクロノス兄ちゃん」

 

遊勝塾につくといつものメンバーがそろっていた。ただいつもと違い知らない人間が何名かいた。

 

「あらあら塾がなくなるかもしれないこの一大事にまさか遅刻する塾生がいるとは。結束が固いと思いましたが案外大したことはないようですね。」

 

赤い服を着た女性がこちらを見るや否や嫌味を言い放つ。

 

「ぐっ」

「クロノス。今までどこにいたのさ?」

 

何も言い返せないクロノスに対し、素良がクロノスに尋ねる。

 

「……年齢40ぐらいのおっさんに捕まって武勇伝を聞かされていました。信じてもらえないかもしれないですけど本当です。本当にすいませんでした。」

 

クロノスは静かに正座し、そのまま頭を下げた。綺麗な土下座である。

 

「話はお済みになりまして?さて話を戻しますが引き分けなどありえませんわ!延長戦です。」

 

一連の流れを見なかったかのように女性が強引に話を変える。

 

「そうだ。遊矢。お前には色々聞きたいがとりあえずデュエルはどうなった?遊勝塾は大丈夫なのか?」

 

クロノスは遊矢の方をつかみゆさぶる。

 

「うぉぉ揺らすなってクロノス。1勝1敗1引分だよ。」

「って事は引き分けか……。良かった。」

 

ゆさぶられながらもクロノスの質問に答える遊矢。どうやら負けにはならなかったようだ。クロノスもほっとしてその場に座り込んだ。

 

「でも」

「そう引き分けなどありえない。延長戦を行いお互い1勝をあげたもの同士でデュエルする。よろしいわね。」

 

なるほどとクロノスは思った。

メールにはLDSの塾生とデュエルをすることになり、負ければ遊勝塾がLDSに取られてしまうというものだった。そして誰と誰がデュエルを行ったかまではわからないが結果が引き分けだったため、LDS側が延長戦を行って何としてでも決着をつけようとしている。

話を全て聞いた訳ではないがおそらくこんなところだろう。

 

「見た感じ遊矢は勝ったみたいだな。」

「ああ、延長戦も勝って、塾を……父さんのデュエルを守って見せる。」

「決まりのようね。ではこちらは……」

「待て。決着は私がつけよう。」

 

声とともにフードを被った青年があらわれる。

 

「あれ?さっきあそこ通ったけど人なんかいたっけな?」

「クロノスお兄ちゃん気づかなかったの?」

「うっ。」

 

アユに素朴に尋ねられ、言葉につまるクロノス。急いでいたとはいえ、それほどせまくない通路に人がいたかどうかさえ覚えていない自分が情けなかった。

 

「もし私が悪意をもって侵入した人間であれば、君はみすみす侵入者を見逃したことになる。急いでいたとしても周りには気を付ける事だ。」

 

青年はフードをおろしメガネをくいっと指で上げる。

 

「……ご忠告どうも。僕としてはどうしてあなたほどの方がどうしてここに来られたのか気になりますけどね。」

「ほう、私の事を知っているのかね?」

 

クロノスの質問に対し、メガネをかけた青年が興味深そうに尋ねる。

 

「現レオ・コーポレーション社長、史上最年少でプロ資格取得、これほどの経歴を持つ人物を知らない訳がないですよ。ねぇ?赤馬零児さん?」

「なるほど。私の事は既にリサーチ済みというわけか。」

「あなたほどの人物ならリサーチせずとも情報は耳に入ってきますよ。」

 

零児に対して、淡々と会話するクロノスに遊勝塾のメンバーも、そしておそらくLDS側の塾生であろうメンバーも驚いている様子だった。赤馬零児。クロノスの働き先のそしてLDSの運営をしているレオ・コーポレーションを率いる男がまさしく目の前にいる。この事実にクロノスは内心動揺していた。だがここで動揺を見せる訳にはいかなかった。自分が動揺している姿を見せれば周りに不安を与えることになる。少なくとも最年少プロという肩書きは動揺を与えるには十分すぎる。クロノスはそれを知ったうえであえて冷静に零児に対応することで周りに不安をあたえないようにした

 

「失礼。話が長くなってしまったようだ。君とはまた話し合いの場を設けさせてもらおう。」

「その時はぜひ。」

 

零児と話を終え、遊矢の元に戻るクロノス。対戦相手がプロという現実とプロ相手に普通に会話をするクロノスに遊矢はただ驚いていた。そんな遊矢の肩に手を置き、一言声をかける。

 

「気張るなよ遊矢。お前には"あれ"がある。自信持て」

 

自分の心を見透かされたかのように声をかけられはっとする遊矢。勝たなければ遊勝塾を取られてしまうというプレッシャーがなかったとはいえない。自分ではわからないが顔がこわばっていたかもしれない。だがクロノスの言葉で心が軽くなった。

 

(ありがとうクロノス。このデュエル勝って見せる。)

 

そして遊矢と零児のデュエルが始まった。零児がどのようなデッキ、デュエルスタイルを使うかまではクロノスは知らなかったが遊矢には彼にしかできない戦い方がある。いつもの戦い方さえできれば相手がプロでもひけをとらない。クロノスは遊矢なら問題なく勝利できるだろうとこの時はそう考えていた。この時は……。

 

「冥府に渦巻く光の中で、今ひとつとなりて新たな王を生み出さん!融合召喚!生誕せよ!DDD烈火王テムジン!」

 

(一ターンめでいきなり融合召喚……。融合使いか?)

 

さすがは最年少プロデュエリストというべきか。いきなりの融合召喚にクロノスは舌を巻く。ともあれ融合自体は素良も使っている。

 

「なんか全然違う。もしかして本物?でも……」

「どうした素良?」

 

素良は融合召喚した事よりもそのモンスターに対して驚いているようだ。

 

「ううん。何でもない。」

「?そうか」

 

確かにDDDというモンスターはクロノスも見たことがない。ともあれ見たことがないという意味であれば遊矢のモンスターは勝るとも劣らない。零児が手札を使い切りターンを終了し、次は遊矢の番だ。

 

「俺はEMウィップ・バイパーを召喚!」

 

ウィップ・バイパーの効果で攻撃と守備の値を入れ替えテムジンを破壊しようとするものの、結果的にアクション魔法で防がれてしまった。遊矢はターンエンドを宣言する。

零児の場には自分のターンにダメージを受けるカードが複数発動されており、それが発動すれば勝利なのだが

 

「契約は無効になった。」

 

別のカードの効果でそれらの効果を無効にし、さらにその効果でデッキから再びカードを手札に加えた。だが遊矢は落ち込むどころか笑っていた。相手のカードの効果で勝つのではなく父親から受け継いだデュエルで勝ってみせると言い放ったのだ。

 

「榊遊勝のデュエルでか……。」

「父さんを知っているのか?」

 

クロノスもさすがだといわんばかりに零児の方をみやる。アクションデュエルを築いた男と言われるだけあって知らぬものはいないだろう。もっともいい意味で有名なだけではない。

 

「お前の父ちゃんは有名人だからな。」

「逃げ出した元チャンピオンとしてね。」

 

竹刀を持った少年と紫の服を着た少年がさげすむように遊矢に言葉を放つ。むっとしたクロノスが言い返そうとすると

 

「黙れっ!」

 

意外な事に零児が反論した。彼はアクションデュエルの隆盛を築き上げたパイオニアとして遊勝の事を尊敬しているとそしてその息子である遊矢にも本気をみせると言い放った。

 

「闇を切り裂く咆哮よ。疾風の速さを得て新たな王の産声となれ!シンクロ召喚!生誕せよ!レベル7!DDD疾風王アレクサンダー!」

 

「この世の全てを統べるため、今 世界の頂に降臨せよ!エクシーズ召喚!生誕せよ!ランク4!怒濤王シーザー!」。

 

(融合だけでなくシンクロ、エクシーズまで……。

さすが最年少プロデュエリストと呼ばれるだけはある。)

 

クロノスもここまでは予想する事ができなかった。融合だけでなくシンクロ、エクシーズ召喚も行ったのだ。

 

驚いたとはいえ融合、シンクロ、エクシーズは周知のものだ。遊矢のとっておきと違い落ち着いて対処すれば何とかなる。

 

「3つの召喚法を操るなんて正直驚いたよ。」

 

さすがの遊矢も驚きを隠せなかったようだ。

 

「俺は融合もシンクロもエクシーズもできないけど、俺には、俺だけに与えられた力がある!」

 

融合、シンクロ、エクシーズ。確かにこの3つの召喚によって現れるモンスターは強力なステータスや効果を持つものが多い。クロノスもさきほどエクシーズモンスターの強力さを味わったところだ。だが遊矢には"あれ"がある。"あれ"の強さもクロノス自身が身をもって経験している。なにより自分を興奮させた"あれ"は相手があの赤馬零児であろうと肝を抜ける。

 

(何だ、この胸騒ぎは?)

 

しかしクロノスはここにきて胸騒ぎがするのを感じていた。

 

「ペンデュラム召喚!」

 

遊矢が見事にペンデュラム召喚を決める。周りが騒ぐ中クロノスは零児の方に目をやる。彼は驚きも戸惑いも笑いもせず、ただ前を見つめるだけだった。

 

(ペンデュラムを目の当たりにして無表情……。例え知っていたとしても、無表情というのはありえるのか?)

 

胸騒ぎが大きくなる。赤馬零児はレオ・コーポレーションの社長だ。レオ・コーポレーションの技術力はそこで働くクロノスがよく知っている。レオ・コーポレーションの技術力をもってすれば"ペンデュラムの解析も可能ではないか?"

 

(いや、ありえない。ペンデュラムカードを持っているのは遊矢だけ。解析する機会なんて……)

 

クロノスははっとする。自分が遊勝塾に入塾する前にペンデュラムカードをLDSの沢渡シンゴに盗まれたと遊矢が言っていた。レアカードが欲しいと言って盗んだらしいがもしそれが本当は"誰かの指示"だったとしたら?そして3つの召喚法を操るデュエリスト赤馬零児。だが本当に3つしか操れないのか?自分の頭で否定をしようとすればするほど否定を打ち消す否定が出てくる。

 

「遊矢にペンデュラム召喚があるかぎり、遊勝塾は守れる!」

「燃えたぞ遊矢!やっぱりお前は遊勝塾のエースだ!」

 

気が付くと零児のモンスターは遊矢によって全滅させられたようだ。そうペンデュラムは遊矢にとって切り札だ。"他の誰かが使う"など考えられない。

 

ズキッ

 

考え事をしたせいか頭が痛む。軽く額に手をあてるクロノス。

 

「怒濤王シーザーはオーバーレイ・ユニットを1つ使うことによってそのターンバトルで破壊されたモンスターをバトルフェイズ終了時に特殊召喚することができる。」

 

零児がモンスター効果で破壊されたモンスターたちを復活させる。しかしこのままだとダメージを受けてしまうため罠カードの効果でモンスターをデッキに戻し、新たに2枚のカードを手札に加えた。

 

「あんた本当にすごいな。やることなすこと全部俺の想像を超えてる。この先あんたがどんなことをして俺を驚かせてくれるのか楽しみだよ。」

 

遊矢も零児のプレイングに驚いたのか笑顔になっている。そう自分が初めてペンデュラムを見たときと同じ顔だ。しかしクロノスは笑顔になれない。遊矢は振り子メンタルな所がある。今の遊矢を支えているのは父親から受け継いだエンタメデュエルとペンデュラムだ。もしその一角が崩されれば

 

「君こそ見事だった。ペンデュラム召喚がどのようなものか確かにこの身で実感させてもらった。」

 

ズキズキ

 

零児の言葉と同時に頭痛が激しくなる。あまりの痛みに声が漏れてしまう。

 

「?どうしたのクロノス。」

 

クロノスの異変に気づいた素良が声をかける。他のメンバーも気づいたようだ。

 

「ぐぅぅぅぅ。」

 

クロノスは頭を押さえる。この痛みは初めてではない。遊矢がストロング石島と戦った時、突然激しい頭痛に襲われた。あの時と同じ症状だ。

 

「ひどい汗。まってて。今タオル取ってくるから。」

「クロノス?大丈夫か?」

 

柚子は急いでタオルを取りに行く。苦しむクロノスの権現坂も声をかける。

 

「はぁはぁいや大丈夫だ。それより……ペンデュラムが」

「ペンデュラムがどうかしたのか?」

「ペンデュラムが……pendulumが……。大丈夫だ……。デュエルを見届けるまでぶっ倒れられるか!」

 

クロノスは何もなかったように権現坂に強気で返す。

 

「わかった。だが無理はするな。何かあったらすぐ言うんだぞ。」

「ああ、悪いな。」

 

そう今ここで倒れる訳にはいかない。このデュエル、自分の予想が当たれば最悪の結果になる。それを見逃すわけにはいかない。

 

「では次は君の番だ。ペンデュラム召喚が君一人だけの力かどうかその目で確かめるがいい!」

 

零児から衝撃の言葉が走る。

 

(くそっ……。ここにきて……。)

 

頭の頭痛がさらに激しくなる。

 

「私はスケール1のDD魔導賢者ガリレイと。スケール10DD魔導賢者ケプラーで……。ペンデュラムスケールをセッティング!」

 

零児が2枚のカードを使い、ペンデュラムゾーンにカードをセットする。

 

「……sop……th.exe……にエラーが……。」

 

頭をおさえながらクロノスは自分にしか聞こえない程度の声でぼそぼそ何かを呟く。

 

「これでレベル2から9のモンスターが、同時に召喚可能!」

「クロノス!タオルと氷水よ。とりあえずこれで汗を……。」

「うそっ?」

 

タオルを取りに戻った柚子も、あの素良でさえ言葉を失った。

 

「我が魂を揺らす大いなる力よ。この身に宿りて闇を引き裂く新たな光りとなれ!」

 

「……erra……th.exe……を許可……。」

 

零児の言葉に反応するかのようにクロノスは何かを呟く。

 

「ペンデュラム召喚、出現せよ私のモンスターたちよ!」

 

この瞬間ペンデュラムは榊遊矢だけのものではなくなった。

 

「全ての王をも統べる3体の超越神、DDD死偉王ヘル・アーマゲドン!」

 

赤馬零児の手によりペンデュラム召喚が行われ3体の強力なモンスターが一度に召喚された。紛うことなき"本物"のペンデュラム召喚である。

 

「何で……どうして……あいつがペンデュラムを……。」

 

遊矢もデュエルを見ていた他のメンバーもただ驚く事しかできなかった。クロノスが予想していたことが最悪の結果として現れてしまった。そして当のクロノスは

 

「プログラムを停止しました。pendulumは"不完全"です。」

 

と誰にも聞こえないようにぼそっと呟きそのまま倒れてしまった。

 

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