蒼の軌跡   作:A4

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 この話で一度終わる予定でしたがもう1,2話伸びるかもしれません。こんなのバージルらしくないという方がいたらスイマセン。バージルがコミュニケーションを取ってる姿が思い浮かばない…
 とりあえず本作ではマイルドなバージルを目指しております


剣帝

 「die(死ね)」

 バージルの次元斬をレーヴェが受け止める。

 「ッ!」

 次元斬を受け止めたレーヴェの長剣が鈍い金属音を発する。レーヴェは刹那の判断で身を捩り次元斬を上へ受け流した。

 受け流された次元斬が天井を切り刻みガレキを発生させる。

 「ちっ!」

 ガレキを避けるために後方に跳んだレーヴェのさらに後方から冷めきった声がかけられる。

 「…どこを見ている」

 「!」

 振り返り防御をするもできたのはそれだけであった。不安定な体勢で受けたバージルの連撃を受けたレーヴェは大きく吹き飛ばされる。空中で体勢を立て直し着地するもその時既にバージルはエアトリックでレーヴェの眼前にいた。

 「ヅゥッ!」

 今度は痛烈な蹴りを腹に喰らい先ほどのヨシュアの如く壁に叩き込まれる。

 「遅いな」

 バージルが呆れた目で壁に叩きつけられたレーヴェを眺める。その瞬間レーヴェ周囲の空間が揺らぎ白銀色の刃が幾つも現れ放たれる。

 「!」

 バージルも思わずこれには目を剥いた。白銀の刃は一度拡散したかと思うとバージルを包み込むような軌道を取り収束していく。

 「……やったか?」

 レーヴェが身を起こしながら言う、白銀の刃で砕かれた大理石の床の粉塵でバージルがどうなったのかを確認できない。

 「成程」

 バージルが粉塵の煙の中から閻魔刀を携え出てくる。

 「……馬鹿な…」

 レーヴェが唖然とする。レーヴェが知る由はないがバージルの持つ刀は閻魔刀と言い人界と魔界を隔てた伝説の魔剣士であるスパーダの振るった一振りであり闇と魔を切り裂き喰らう刀である。それによりバージルはレーヴェが発動した導力魔法を切り裂いたのである。

 「高位の幻属性のアーツか。戦闘と並行して演算を終わらすとはな、どうやら凡愚ではなさそうだ」

 バージルが興味深そうに言う。アーツ、所謂戦術オーブメントを利用して放たれる導力魔法は一度発動準備に入ったならばそれに集中しなければ良くて大幅な減衰、悪くてキャンセルである。それを容易く行う辺りレーヴェが剣士としてもアーツ使いとしても一流であることを暗に示している。

 「ッオオオオッ!」

 アーツが無効化された衝撃を打ち消すがごとく気勢を上げ切りかかる。それに対しバージルは冷笑と共にそれを受ける。

 「くっ!」

 鍔迫り合いに持ち込んだのは良いがレーヴェはバージルの半人半魔の膂力に推されることとなった。バージルがじわじわと閻魔刀で圧し切るようにレーヴェの長剣を圧す。

 (…このままでは剣が圧し斬られる)

 レーヴェの長剣も悪い物ではないが閻魔刀との剣としての圧倒的な差、次元斬と連撃を受けたダメージの蓄積により剣が限界を迎えようとしていた。

 レーヴェは鈍い金属音を放ち断ち切られつつ長剣を捨てると大きく飛び退いた。そしてバージルが斬り倒した警備兵の剣を拾い上げた。西洋風の長剣と東方風の蛮刀を拾い上げる。

 「二刀はあまり経験がないんだがな」

 (あの男を倒すには手数で押すしかない)

 何時ものスタイルでは刀剣の差でいずれ負ける、ならばひたすら攻めて攻め押すしかない。レーヴェはそう結論付けバージルまで駆ける。

 (幸いにも油断が見て取れる。そこを一気に突くしか勝機はない)

 そう考え戦技を発動させる。

 『双連撃二式』

 ヨシュアが主に使う戦技を即興で改良し本来ならば二撃で終わる剣戟を幾多もの高速連撃へと昇華させる。しかしバージルはその怒涛の連撃をそれ以上の速度で捌いていく。

「it’s order(終わりだ)」

 連撃が絶えた瞬間の硬直を狙い疾速の刺突がレーヴェの心臓に叩き込まれる。

 「ガッ!」

 レーヴェが苦悶の声を漏らしゆっくりと体を倒しバージルが閻魔刀を納めた。

 『鬼炎斬』

 莫大な闘気と共に重厚な斬撃がバージルに振るわれる。

「!」

 バージルの顔が驚愕に染まる。今しがた心臓を貫いたはずのレーヴェの戦技はバージルに深手を与えた。

 「止めだッ!」

 西洋風の長剣による刺突がバージルの心臓に吸い込まれ大量の血を撒き散らした。バージルの倒れ伏したのを確認しレーヴェは残心を解いた。しかしそれと同時に膝を着く、その体から少なくない量の血が滴り落ちた。

 (…危なかった。まさかこんな曲芸をやる羽目になるとは)

 あの時のバージルの刺突は間違いなくレーヴェの心臓を貫いていた。そのカラクリは戦技の『分け身』であった。気で本体と全く劣らない技量を持つ分身を産み出すその戦技を刺突が当たるコンマ数秒で発動させ変わり身としたのである。

 しかしそれでも負傷を完全に避ける事はできず浅くない手傷を負う羽目になった。

 レーヴェは水属性のアーツのティアラルを発動させる。とりあえず止血とある程度の回復を済ませ立ち上がる。

 (…剣はとりあえずこれで問題ないか)

 愛用の長剣が断ち切られた事に惜しみつつも取り敢えずの武器を拾った蛮刀を拾う。

 「ヨシュア、動けるか?」

 武器を確保するとこの場を離れるべくヨシュアに声をかける。死んだとは言えあの悪魔染みた男と同じ部屋にいるのは精神衛生上よろしくない。

 (しかしどうにも気になる)

 あの凍り付いたような目にどうにも惹かれ気になった。

 「レーヴェ!」

 何故自分はあの男が気になったのか考えに浸っているとヨシュアの声がホールに響く。心を奪われたからこれ程の声を聞くのは初めてであった。ヨシュアを見るとレーヴェの背後を見据えている。まるで幽霊でも見たような顔だ。

 「ッ!」

 背後に言いようもない怖気を感じ振り返ると有り得ない光景を目にすることになった。先程心臓を刺し貫いたはずの男が何事もなかったかの世に佇んでいる。心臓を貫いた証拠に長剣はバージルの胸の辺りに留まっている。

 「…詫びよう」

 突き刺さっている長剣が胸筋に押し戻されゆっくりと体外に排出されていく。背中まで貫通するほど深く突いたはずなのに。

 「お前を人と侮っていた、赦せ」

 長剣は完全に抜け地面に落ちからりと澄んだ音を立てる。流れ出る血液は既に止まっている。高位の魔であるスパーダの実子である彼にとって心臓を貫かれた程度では致死には至らない。

 (…アーツか?)

 レーヴェはその光景に何も声を発することができなかった。導力魔法による回復も考えたがすぐに頭の中で否定した。最高位の回復のアーツであってもあれ程の致命傷を回復することはできない。

 バージルが手を柄に掛けレーヴェを睨みつけた瞬間そのその体から膨大な殺気と剣気が発されレーヴェを襲う。

 (…動けないだと?)

 先ほどから展開される有り得ない光景と莫大な殺気にレーヴェは呑まれまともに構えを取る事が出来なかった。バージルの身体から莫大な魔力が放出され紫電が走る。

 (…最初の居合か!?)

 レーヴェは最初に放たれた次元斬を撃とうとするのを察する。しかし先ほどとは桁違いのバージルの殺気から察するに先ほどの物と同じとは思えない。

 「…チッ!」

 バージルが舌打ちし空間を歪ませる程の殺気が霧散した。レーヴェがバージルを見ると室内にある2階バルコニーを見ている。怪訝に思うがすぐにその理由を察した。

 (……50、60。いや、それ以上か)

 1階の廊下の奥や2階の奥に多数の伏勢がいる事を遅れて察した。

 「…お前の目的は何だ?」

 バージルがレーヴェに問う。既に闘気はなかった。

 「この買春組織の壊滅だ」

 レーヴェは『身喰らう蛇』よりある教団の資金源となっている少女買春組織と運営している教団傘下の犯罪組織の壊滅を命じられていた。

 「俺の目的も同じだ。尤もそれだけではないがな」

 バージルの依頼内容はそれに加え利用者の抹殺、客のリストの入手であった。

 「では手を組むと?」

 「貴様とそこの餓鬼を殺すのは容易い。しかし今は時間が命、一秒すら惜しい」

 時間をかければかけるほど客や運営者は逃げ、相手をしていた少女の命は危ぶまれる。その事をレーヴェは察した。

 「……頼む。俺達に手を貸してくれ」

 「良いだろう、足だけは引っ張るな」

 バージルがそう言った瞬間2階の廊下奥からボディアーマーと軽機関銃で武装した兵隊が音もなく素早く2階バルコニーに展開していく。タイミングを同じくして1階の各廊下からも10数人ほど短槍や刀剣で武装した兵が出てくる。バージルが先程通ってきた通路からも気配が感じられる。

 回復系の導力魔法で回復したヨシュアがレーヴェの背後に着く。

 「撃てッ!」

 指揮官らしき男が命令を出し2階バルコニーで展開を終えた30人ほどの兵がバージル達に向け一斉掃射を浴びせかけた。

 




 かっこいい戦闘の書き方を教えて欲しい
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