蒼の軌跡   作:A4

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 閃の軌跡とのクロスもやってみたいけど時間がない…


悪魔

城館の一室に置いて下品なスーツに身を包んだ男が部下を前にして苦虫を噛み潰したような顔をしている。

 「…ここを放棄する」

 「本気ですかベルナンドの兄貴?ここはただの売春宿では…」

 客は各国の資産家を始めカルバート共和国の議員、エレボニア帝国の貴族、果てはアルテリア法国の神職者もおり、彼らに対しこの施設を使用しているというネタを利用し恐喝していた。

 「んなこたぁわかってんだよ!だがここで退かねぇと何もかもが水の泡だ。金とリストだけ回収させろ!」

 ベルナンドと呼ばれた男がそう言い机の中をひっくり返し始めた。ベルナンドは良く言えば慎重、悪く言えば臆病である。しかしこの性格が今までの彼を救い、この地位までのし上げてきた。

 「議員先生を逃がすのを忘れるな!」

 「はっ!」

 部下が部屋の外に飛び出そうとした時ベルナンドが呼び止めた。

 「あとガキどもを全員ぶっ殺すのを忘れるな!」

 「相手」をしていた少女が客の顔を覚えている可能性がある。もし少女が救出されその供述から客の誰かが逮捕されることになったら面倒な事になる。最悪彼の所属する犯罪組織は愚か母体の組織にすら被害が及ぶ事になる。そうなれば自分の制裁は間違いない。

 ベルナンドはスーツケースに切り札である顧客リストと客の「お楽しみ」の導力写真のネガを詰めた。このリストとネガの複製はいくつかに分け信頼できる部下に預けてあり万が一自分の物が失われても替えが効く。

 「…アレにも火を入れておかねぇと」

 そう言い懐からキーを取り出した。

 

  

 

 

 

 

 「撃ち方止めッ!」

 大尉と呼ばれている男の指示を受けバルコニーにいた兵が射撃をやめ弾倉を再装填する。ヒューは粉塵でできた霧を見透かそうとするが如く睨み付けている。視界は先程のバージルとレーヴェの戦闘で発生した粉塵で塞がれている。

 (回避した様子はなかった。逃げようにも一階の通路は手練れで固められてる。悪いがこれで終わりだ)

 一階にいる部下は戦技に熟達した手練ればかりである。戦技に通じ高い身体能力を持つ兵士は銃で武装した者よりも脅威と化す。

 「!」

 粉塵の中から浅葱色の淡い光が見えた瞬間ヒューから3アージュ(3m)離れた所にいる兵の頭部と右腕が斬り飛ばされた。

 「上だ!」

 誰かが叫びヒューが目を上にやると先程まで一階にいたはずの青いコートの男が抜刀した体勢で天井近くまでいるのが目に入った。

 

 

 

 

 「…これは一体?」

 レーヴェとヨシュアは円状に展開されている幾十もの浅葱色の魔剣で構成された防壁を見やる。

 「アーツ?」

 (いや、それは有り得ない。発動が早すぎる)

 アーツの効果と起動時間は比例の関係にありさっきの兵の展開前から起動していたとしても浴びせられた数百発の機関銃弾を防げるほどの防壁を張る法はない。

 レーヴェはアーツと勘違いしていたが実際は魔力という力を使い異世界の法で編まれた幻影剣という技であったがそれをわかれというのも無理のある話だろう。

 天井付近を見るとトリックアップで跳んだバージルが先程放った次元斬で銃兵を排除し、バルコニーに乗り込んでいた。

 「レーヴェ」

 「ああ、わかってる」

 ヨシュアが注意を促す。各廊下を固めていた兵士が四方から迫り、こちらを包囲しようとしている。

 「うっ!」

 「ぐおっ!」

 レーヴェは包囲網が閉じきる前に前方の兵士の一団に前屈姿勢で飛び込むと数人を切り捨てた。一人飛び込んだレーヴェを押し包むように兵士が包囲を完成させる。

 

 

 (…あの少年は何処に行った?)

 包囲網の最外部にいる兵士がふと思った。包囲網の中心では銀髪の青年が一人、4方向からの攻撃を受け流している。

 「…うん?」

 その時視界の端に影が通り過ぎた。それを目で追おうとしたのを最後に兵士の意識は途絶えた。

 「これで6人」

 ヨシュアは包囲網が狭まるや否や幻属性のアーツを自らに掛け認識をぼやかし高速で兵士たちの足元を駆け抜け網を抜けていた。その後自分の機動力と隠密性を生かし外側から包囲網を削っていた。

 

 

 

 

 銃兵を次元斬で排除した後空中からバルコニーに跳んだバージルを前後から兵士が剣で襲いかかるが斬撃が届くよりも早く神速の居合が二人を斬り捨てた。

 (…成程。得心が行く)

 バージルは血溜りの中に転がる兵士の軍服に縫い付けられた紋章を見て納得した。紋章は旧ノーザンブリア公国、そこから察するに旧ノーザンブリア公国軍の流れを汲む北の猟兵の系統だろう。バージルの目から見ても彼らの錬度は高いと言える物であった。

 次元斬から生き残った兵士が散発的な抵抗をするが銃弾を弾き、幻影剣で串刺しにした。

 (嫌な雰囲気だ。悪魔共が出て来てもおかしくはない)

 明かり一つない廊下を見据えて思う。この城館全体に漂う歪んだ淫欲と今しがた作られた大量の死体、これらは悪魔召喚の触媒として十分に成り得る。

 「ッ!」

 傍の兵士の死体の下から突如刺突がバージルに襲いかかった。先程の次元斬の嵐を凌ぎ切った後ヒューは兵士の死体に隠れ気配を殺していたのであった。

 「オオオオオオオオオオ!」

 自分自身に加速のアーツを掛けた上で戦技を利用しバージルに怒涛の攻めをかけた。

 「チッ!」

 死体に紛れた隠行に完全に不意を突かれた形となったバージルは守りに回る。

 「まだだぁ!」

 バージルは戦技が途絶えた瞬間を狙い剣を振るおうとするがヒューは剣をバージルに向けて投げつけ行動を制限する。間髪入れずにホルスターから拳銃を抜き至近距離から撃ちまくる。

 しかしそれがヒューの命取りとなった。

 バージルの驚異的な動体視力と高速の居合によって放たれた9㎜弾は弾き返されヒュー自身に命中する。その隙を逃さずバージルの刺突がヒューの腹に突き立てられそのまま壁に磔にされる。

 「…やっぱり強いな」

 自分に刀を突きたてている青いコートの男の目は全く揺らいで無い。人を殺すという事に何の痛快も抱いてないのだろう。

 (…それ程の力があれば娘を救えたのかもな) 

 ヒューは塩の杭で自分の町と唯一の家族の娘が塩の塊と化したのを目にしている。それを埋めるために任務に打ち込んだ。しかしその結果は自分の娘と同年代の少女が慰み者になっている地獄の警護であった。これで彼の軍人としての誇りと心は完全に折れてしまった。

 「…なぁあんた、死にゆく者の頼みを一つ聞いてくれないか?」

 バージルが腹に深々と突き刺さった閻魔刀を引き抜いた。傷口から夥しい量の血が溢れ出る。

 「奥に嬲られてる子供が……いっぱいいる。フェルナンドの野郎は…間違いなく……殺すだろう」

 せき込みながらも言う。バージルは閻魔刀を鋭く振り血を振り落し鞘に納めた。

 「……頼…む助けて……やってくれ」

 バージルはつまらなそうに鼻を鳴らし踵を返しホールに戻って行った。返答は得られなかった。しかしヒューはあの男ならやってくれるはずだと確信していた。一度でも剣を交えた同士の縁と言うべきものがそうだと確信させた。

 旧ノーザンブリア公国軍第3軽歩兵連隊少佐ヒュー・アーウェンは微かな満足と共に目を閉じた。

 

 

  

 

 

 レーヴェは最後まで残った兵士を斬り飛ばした。しかしレーヴェの一撃の防御成功した兵士は体勢を崩すだけに留まった。

 「ヅァッ」

 レーヴェはその兵士の顔に向け蛮刀を投擲し頭をかち割るのを確認し振り返るとヨシュアも最後の一人の喉を掻っ切るところだった。

 「ようやく終わりか」

 上を見るとバージルが腕を組みこちらを見下ろしている。レーヴェは代わりの刀剣を拾い上げた。

 「そっちも終わったよう…!?」

 その瞬間本館の奥から連続して銃声が聞こえてくる。

 「…お前らの仲間か?」

 「いや、増援の話は聞いていない」

 そう聞くなりバージルは踵を返した。

 「お前らは左から行け。精々俺の役に立て」

 レーヴェが次に目を向けた瞬間には既にバージルの姿はなかった。

 「……勝手な奴だ…」

 レーヴェは目でヨシュアを促すと薄暗い廊下へと進んでいった。

 

 

 

 

 

「ああッ!クソッ!俺だけ貧乏籤か!」

 ガキを殺せ、組織の兄貴分からそう言う命令を受け男は『商品』の頭を拳銃で撃ち抜いていた。

(相変わらず気味がわりぃ)

 この『商品』は元はどこかの施設で人体実験を受け『使用済み』になったのがここに送られて着たと来ている。どんな実験を受けたのかは知らないがほとんどが人形のようであり殺されることに何の感情も持っていないようである。

 「この部屋は終わりか…」

 男はそう言うと拳銃の弾を補充すると今日の『パーティー』が行われていた会場に向け駆けだした。男が去った仄暗い部屋には十数体の物言わぬ躯が転がっていた。

 

 

 

 

 

 生者がいなくなり屍だけが残るホールでは動く者はいないはずである、それにも関わらず死体から流れ出た血溜りからナニカが這い出ようとしている。屋敷の奥から銃声が響くたびにナニカが這い出ようとする力は強まって行く。

 銃声が13発を数えた時そのナニカはついにこの世に這い出た。血で染めた様なマントに大鎌という絵に書いたような死神が血溜りの中から這い出た。

 バージルの世界に置いてヘル=ラストと呼ばれる存在は暗く嗤い、滑るようにして壁をすり抜けて行った。

 




 そろそろ緋弾のアリアの方も更新したいのですがバージルを書くのが案外楽しくてほったらかしになってしまってるのがつらい
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