学戦都市アスタリスク ~ 死神乱舞 ~   作:武者震威

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う~ん。進まない。
本当にすみません(T_T)

亀更新です。


星ガ導ク館②

「ようこそ、〝アスタリスク〟へ」

 

 高みから見下ろす町並みを眺め、実に整然としていた。

 巨大なクレーター湖に浮かぶ人工都市は、その正六角形の市街地エリアと、それぞれの角から稜堡(りょうほ)のように飛び出した六つの学園からなる。いわば雪の結晶なような形。この都市の正式名称が【六花(りっか)】なのは、それが由縁なのは周知の事実だった。

 また各学園から市街地エリアを横断して、対角の学園までまっすぐ大通りが延びている。その姿は確かに星印───アスタリスクだ。

 後者の異称のほうが根付いてしまったのは、世界中から学生が集まるがために和風の名前が馴染まなかったからだという。

 

「我が星導館学園が特待転入生としてあなたたち二人に期待することはただ一つ、勝つことです」

 

 町並みを見下ろしたまま、クローディアが言葉を続ける。

 

「ガラードワースに打ち勝ち、アルルカントを下し、界龍(ジェロン)を退け、レヴォルフを破り、クイーンヴェールを倒すこと。すなわち《星武祭(フェスタ)》を制すること。そうすれば我が学園は、あなたの望みをかなえて差し上げましょう。それが現世で叶う望みであれば、どのようなものであれ」

 

(……ここで〝現世〟などと聞くとはな。生きている者の世界で可能な願いなら叶えられるというものかのう……)

 

 重國は、かつての住みし霊界を思い浮かべるも、頭を軽く振っては霞を払う。

 重國は無言でクローディアに返すと、クローディアは瞑目し、そして次に綾斗を見つめる。

 綾斗はあまり願い事が無いと答える。

 この各学園の背後に、統合企業財体の『現世でなら一人の人間の願い』を叶えることの力があることを前もって重國は知らされていた。その力は形骸化して久しい国家という枠組みを超越し、法をねじ曲げることさえ容易くやってのけるだろうと。富も地位も名誉も望むがまま。

 

「そう簡単に願いを叶えられると聞かされてものう」

 

「けどまぁ、事実、このアスタリスクに集まる学生はおおよそ半分はそうした願望を叶えるためにやって来たと言ってもええなぁ。みんな我欲が無い訳がない。それが人間やで」

 

 クローディアが平子をキッと睨むが、どこか半場諦めた睨みだった。こうした平子の反応はクローディアにとってもう諦めた風を感じさせられた。

 

「そんで残りが《星脈世代(ジェネステラ)》としての力をもてあました奴らが集まってきた。自分の力を試したい、一度でいいから全力を出してみたい。そないな学生が仰山(ぎょうさん)居る。ここは世界で唯一、思う存分に暴れられる場所なんやからな。でも……そこの天霧綾斗は違うんやろ?」

 

 不敵な笑みを浮かばせて、平子がそう告げると、クローディアが続けて話す。

 

「すみません、平子くんが勝手に……」

 

「いいえ、別に……」

 

「でも、あなたがそうしたことにまるで関心がないということは分かっています。特待生としての招請(しょうせい)を一度ならず断っていることも」

 

 クローディアはそこで言葉を区切ると、イスを正して綾斗と正面と向き合う。

 

「ですが、近年《星武祭(フェスタ)》における我が学園の成績は芳しいとは言えません。前シーズンは総合五位。六位のクイーンヴェールはその戦略上総合順位を度外視しているので、これは実質最下位に等しいのです。我々はなんとしてもこの状況を打破せねばならず、そのためには有力な学生を一人でも多く確保しなければなりません」

 

 重國の方にも視線を向け、クローディアは美しい長い金髪を揺らして話を続ける。

 《星武祭(フェスタ)》はあくまで総称であって、実際には三つの種類に分けられる。

 すなわち一年目の夏におこなわれるタッグ戦の《鳳凰星武祭(フェニクス)》、二年目の秋に行われるチーム戦の《獅鷲星武祭(グリプス)》、三年目の冬に行われる個人戦の《王竜星武祭(リンドブルス)》の三つ。

 大会ごとに成績上位者とその所属学園にポイントが与えられ、《王竜星武祭》終了時点で総合成績が確定する。つまり三年で一区切りのワンシーズンとなる。

 クローディアが言うように、星導館学園の成績はここ数シーズン低迷しているという。

 

「学生は三回まで《星武祭(フェスタ)》に出場する権利を持ちます。ですが、それは逆に言えば、どんなに優秀な学生でも三回しか出場できないということでもあるのです。正直、現在の我が学園はとても層が厚いとは言えません」

 

 《星武祭(フェスタ)》に出場登録できるのは十三歳から二十二歳までの十年間。その間、どの《星武祭(フェスタ)》に出場するかは学生の自由だ。

 

「例えばやけど。シーズン全ての《星武祭(フェスタ)》に出場してきっちり三年で学園を去る者もいれば、九年かけて《王竜星武祭》だけ出場する者もおるなぁ」

 

「なるほどのう……優秀な学生は多ければ多いほうがいい。そのためにどの学園も有能な人材引抜(ひきぬき)を何人も雇い、世界中からかき集めておると」

 

 重國が以外と理解していたことに、多少の不安も抱いていたクローディアはパァと笑顔になりながら首肯する。

 

「学費の免除、生活費の補助、装備や物資面での援助などなど各学園によって待遇の差はありますが、特待生とは学園側から『ぜひうちに来てほしい』と白羽の矢を立てられた学生なのです」

 

 それを前もって聞かされてた綾斗は困った顔でクローディアに聞く。

 

「そもそもなんで俺なんかを特待生に? 自分で言うのもなんだけど、そんな大層な扱いを受けるようなものじゃないと思うよ、俺」

 

「そうですね。あなたは完全に無名でしたから、ぶっちゃっけスカウト陣からは猛反発を受けました」

 

 にこやかにそんなことを言うクローディアに綾斗は『君が俺を推薦したの!?』と驚いている。

 平子は何故か微妙な顔でしかめて、重國はその言葉内から伝わる真実味に違和感を覚えながら話を聞いていく。

 

「ええ、むりやり押し通りましたけどね。あの時ほど生徒会長をやっていて良かったと思ったことはありません。権力万歳です」

 

「……可愛い顔して強引やで」

 

「ほっほ、なかなか剛毅ではないか」

 

 小気味よく笑う重國に平子は『下手なこと言わんといてくれ』と言わんばかりしかめ面が強くなっている。きっと副会長としての面として、これ以上会長を好き勝手やられると大変なのだろう。

 

「勘弁してほしいわ。もし天霧綾斗くんが断ってたらどないしてたんや」

 

「会長として面目丸潰れですね♡ 心変わりをしてくれて助かりましたよ」

 

「……別に、心変わりしたつもりはないんだけどね」

 

 平子は心底うんざり顔で、クローディアは愉快顔で、綾斗は困り顔で肩をすくめる。

 

「では、どうしてこの学園に?」

 

「…………」

 

 クローディアにそう聞かれた綾斗は、ふいに真剣な表情で執務机に両手をつき、まっすぐクローディアの目を見つめた。

 

「クローディア、姉さん(・ ・ ・)が───天霧(あまぎり)(はるか)がここにいたっていうのは本当なのかな?」

 

「さて、どうでしょう」

 

 クローディアはその視線を真っ向から受けとめ、人差し指を立てた。

 

「この件に関しては私が知っているのは一つだけ。かつてこの学園に在籍していた『とある女生徒』のデータが、何者かによって抹消されていたという事実です」

 

「抹消て……ほっほ。そんなことが容易くできるものなのかの?」

 

「普通になら無理や」

 

「生徒会長でも?」

 

「さすがにこのイスもそこまで万能ではありません。───上の方々なら別かもしれませんが、ね」

 

 苦笑するクローディアに対し、綾斗はあくまでも真剣な表情を崩さない。

 上というのはつまり【統合企業財体】のことだろう。

 

「『彼女』は《星武祭(フェスタ)》に出場した記録もありませんし、『存名祭祀書(ネームド・カルツ)』入りしたこともないようです。いえ、そもそも本当にこの学園に通っていたのかどうかも怪しいところですね。なにしろ五年前なら、まだ当時のクラスメートや担任がこの学園に残ってます。それなのに、誰一人『彼女』のことを覚えていない。お手上げです」

 

「出場記録も改竄されているという可能性は?」

 

「ありえません。それはすなわちアスタリスクそのものを、引いては何億何十億という世界中の《星武祭(フェスタ)》ファンの目をごまかすということです。《星武祭(フェスタ)》はリアルタイムで世界配信されますし」

 

「『存名祭祀書(ネームド・カルツ)』も随時更新されたものがネット上で公開されんのやで? 街中で偶発的に発生する決闘でさえ、あっという間にメディアに補足されてまうのがこの都市や。先程(さっき)の天霧綾斗くんとユリスちゃんの決闘も既にネットに流れてるんやないか」

 

 だったら……。と綾斗の言葉をさえぎるように、クローディアは手元の端末を操作した。空中に空間ウィンドウが開き、一人の女性が映し出される。

 

「っ!」

 

 綾斗の眼が大きく見開かれた。

 

「復旧できたデータはこれだけです。入学は五年前、その半年後に本人都合による退学。名前も、生年月日も、個人的なデータはほとんど残ってませんでした」

 

 だが、済まなそうにしていたクローディアに対し、綾斗は責めの言葉なんて吐くことなんてなかった。吐くことすら思い浮かばなかった。そのデータだけが、充分だった。

 

「……クローディアはどうやってこのデータを?」

 

 データを復旧するには、当然ながらあらかじめ『抹消されたデータがある』という事実を知っていなければ不可能なこと。しかしその学生の存在は記録にも記憶にも残っていなかったという。

 だとしたら、どこからそれを知ったのか?

 

「すみませんが、それは申し上げることはできません。それでは信用なりませんか?」

 

(何を言っとるかこの小娘は?)

 

 そこが一番の大部分であろうところを暈すところを見ると、やはり怪しいと見ては十分ではずだった。

 だが、綾斗は。

 

「ああ、いや、そんなことはないよ」

 

(何を言っとるかこの小童(こぞう)は?!)

 

 重國からしてみれば、今このチャンスこそ生徒会長であるクローディアに様々な質疑などをおこなえるチャンスだったというのに、綾斗は深く追求しなかった。だが綾斗も考えた結果が『生徒会長ともなれば、きっと様々な情報源があるのだろう』と思ったのだろう。

 重國は口出しすることもなく、そのまま流す。

 

(きっと、『少なくとも言えない』と明かしたことでありがたいと考えているのだろうが、それだけではあまりにも…………)

 

 

 重國には不安ににりなりながらも、様子を見る。

 

「ただこれは私見となりますが……どのような経緯があったにせよ、おそらく『彼女』はもうこの学園にはいないでしょ。もし、あなたがここにやってきた目的が『彼女』だとしたら───」

 

 クローディアは言葉を濁し、言いづらそうにしていると、

 

「ありがとう。でもいいんだ。別に俺は姉さんを探しにきたわけじゃないからね」

 

 それでもクローディアは探るような視線を綾斗に向け、もう一度同じ言葉を繰り返した。

 

「では、どうしてこの学園に?」

 

「うーん……」

 

 綾斗は腕組みをして、しばらく考え込むと、小さく笑って答えた。

 

「強いて言えば、自分が成すべきことを探すため、かな」

 

「それはまた……」

 

「抽象的な模範解答やな」

 

「えっ、そうかな? すごく学生らしい答えだと思ったんだけど」

 

「ふふふ、なかなかあなたも食えませんね」

 

 クローディアははぐらかされたと思ったらしい。けれど綾斗は、ある意味正直に答えたつもりだった。

 

「会長、なにか大切な連絡事項ありませんでしたっけ?」

 

 平子がふいにそれを言うと、クローディアもぽんと手を叩いて思い付く。

 

「えぇ、そうでした。我が学園の特待生には各種費用の免除の他にもいくつか特権がありまして、その中の一つに学有純星煌式武装(オーガルクス)の使用に関する優先権があります」

 

純星煌式武装(オーガルクス)って、あの特別なマナダイトを使っているっていう?」

 

「えぇ、ウルム=マナダイトですね」

 

 《落星雨(インペルティア)》によって地球に落ちてきた隕石は、万応素(マナ)と呼ばれる未知の元素とマナダイトと呼ばれる特殊な鉱石をもたらした。マナダイトは万応素(マナ)が結晶化したものだとされており、近年では質は落ちるものの人工的に作り出す方法も開発されている。

 万応素(マナ)やマナダイトの研究は落星(らくせい)工学(こうがく)という新たな科学技術の分野を開拓したが、その最たる申し子がコアにマナダイトを用いた万応素(マナ)変換式エネルギー兵器である煌式武装(ルークス)だ。

 起動させるとマナダイトに記憶された元素パターンが実体化し、そこからさらに万応素(マナ)を集約させた光状の刃(あるいは矢や弾)が生成される。

 既存の武器武装とは違って威力の調整が可能な上、さらにその発動体は手のひらに収まるという運用面での絶対的利点(なにしろ銃器にいたっては弾丸も不要)もあって、現在では個人が所持するような武器類はほとんどが煌式武装(ルークス)となっている。その普及率たるや、威力調整されたものが護身用グッズや子供向け玩具として普通に流通しているくらいだという。

 そしてマナダイトの中には稀少ながら極めて純度の高い結晶が確認されている。ウルム=マナダイトと呼ばれるそれをコアに用いたとのが純星煌式武装(オーガルクス)だ。通常の煌式武装(ルークス)とは比較にならないエネルギー量を誇り、《魔女(ストレガ)》や《魔術師(ダンテ)》のような特殊な力を発現するそれは、一方で扱いが難しいことでも知られていた。

 大半の純星煌式武装(オーガルクス)は統合企業財体によって管理されているが、その一部はデータの収集も兼ねて各学園に提供されている。

 

純星煌式武装(オーガルクス)を嫌う方もいますので、当然強制ではありません。それに物によっては副作用のようなもの……我々は『代償』と呼んでますが、そういったものが必要となる場合とあります。いかがいたしますか?」

 

「確か適合率とかそういうのもあるんだよね?」

 

 純星煌式武装(オーガルクス)は使用者によってその能力を引き出せる割合が大きく変動する。噂によると武器それ自体に意思のようなものが宿っており、使い手を選ぶという。

 

(……斬魄刀(ざんぱくとう)とちと似よるところがあるのじゃな……)

 

 重國にとって、理解は出来ないものではないが、興味が薄く、話をしているクローディアや綾斗にもはや意思は向いてなかった。

 今は早く、落ち着ける場に向かいたかった。

 

「あぁ……すまんがのう」

 

「……はい?」

 

 重國は申し訳なさそうにしながら、聞いてみる。

 

「〝おーがにくす〟やら〝るーくす〟とやら知らぬが、ちと儂は疲れた。休みたいところを紹介して欲しいんじゃが」

 

「ちょ、重國!」

 

 さすがに綾斗もそれは少し失礼などではと口を挟む。クローディアはわざわざ一から説明してくれているのだから。

 だが重國もそれは百の承知の上で聞いてみた。

 

「せやなぁ。だったら俺が山本に与えられた部屋を案内するわ」

 

 そこで、平子が自ら案内すると提案すれば、クローディアは自分になにか不備やら不満やらあったのか不安に思ったが、すぐに顔を正常に戻し『分かりました。後は平子くんにお任せします』と重國を部屋へと案内させた。

 そこで、クローディアはまたチラリと重國を一目見る。

 

 顔立ちは自分たちと同じ年齢相応の少年然としているというのに、どうしてか彼には年期を感じさせられた。

 太い巨木を思わせる大地に根付く芯の強さを、肌で感じたが、それはかなりの微量なもの。

 

(……初対面でここまで『警戒』させられたのは、久し振りです)

 

 クローディアは綾斗に目を向けながらも、内心冷や汗を垂れ流していた。

 

 

 

 

 

 

 

 




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誤字の感想ありがとうございます(T_T)



2015/12/10 改善
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