学戦都市アスタリスク ~ 死神乱舞 ~   作:武者震威

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明けましておめでとうございます。(マジメ)

↑真面目な後輩が新年迎えてちゃんと挨拶してきた。
これは嬉しくて思わず握手してやった(上から目線)


促進スル道標

 

 

 

 あのあと、日番谷(ひつがや)に裏切られた山本重國がどうしたかというと、ズルズルと綾斗に引き連れられながらユリス、紗夜(さや)と共に学園内を案内されていた。

 途中、クローディアに会い、綾斗を囲む美少女たちが取っ替え引っ替えに口喧嘩らしきものをしていたが、重國は眩しいものを見るかのように目を(しぼ)ませるたけだった。

 『あれが〝りあ充〟というものかのぅ』と細目過ぎて瞼を閉じてしまっていた。

 それから、また何かとやり取りをして、噴水がある公園のような場所で休憩をすることにした。紗夜がユリスに負けじと綾斗に学園内を案内すると言っていたのに、自身は方向音痴だと告げてきたときのユリスの顔は面白かったが、重國はなんとも言えない疲労感を感じつつ、ユリス、紗夜と離れたベンチに腰を下ろしては空を眺めていた。

 耳をすませば、ユリスは紗夜と口論をしていたが、それ以外は噴水のから流れ落ちる水音が重國を包み込んでいた。

 

(空が青いのう…………こうして空を眺めるのは久方ぶ

り、うん……何度これを言えば気が済むのかのう儂は)

 

 重國は深い溜め息を吐きながらも、どこか満足感に包まれていた。どう表現すればいいのか分からないが、とにかく……生き生きとしているというのはこういうことではないだろうか?

 

「疲れたのか、重國」

 

「……おぉ、ユリス嬢、気になりましたかの?」

 

「だから、そのユリス嬢と呼ぶのは止してほしい。普通に呼んでくれてかまわない」

 

「それはそれは、覚えが悪い儂に何度もすまなんだ」

 

「古風な言い方をするな。重國は」

 

「そういうユリス殿も今時の女子(おなご)とは思えぬ言い方をしまりますな」

 

 隣のベンチに居たユリスと、それを追いかけてきた紗夜が重國と同じベンチに座った。

 綾斗は自販機に飲み物を買いに行っている最中だ。

 

「……ユリスはともかく、確かに重國は面白い言い方をする。お年寄りみたい」

 

「ホッホ! 確かに! 『儂』なんて誰も使いませんな」

 

 笑う重國に、ユリスも紗夜も思わず首を傾げる。そんな可笑しなことは言っていないのだが、と。

 

「……重國に聞きたいことがある」

 

 と、そこでユリスが神妙な顔となって何かを聞いてくる。ある程度予想出来ている重國だが、『何かのう?』と話を聞く。

 

「私と綾斗が戦った時に邪魔をしてきた襲撃についてだ」

 

「ほほう」

 

「重國、お前は何かを知っているのか?」

 

「はて? どうして儂が何かを知っていると? まるで繋がりが分からないがのぅ」

「あんなに人が沢山逃げ惑っていたというのに、お前と日番谷(ひつがや)先輩だけは、随分と……いや、恐ろしいほど冷静だった。それを見て怪しいと思うのは可笑しなことか?」

 

(綾斗に庇われながらも、視線はそこまで広く見ていたか、この娘は)

 

 ユリスが少し睨みをきかせた視線を重國に向けるも、重國は仰々しく手振りで説明する。

 

「いやいや、あの時は失敬した。あんな戦いを見せられては身動きが出来なくなってしまってのう。恐ろしゅうて動けんかった」

 

「…………それで納得しろと?」

 

「……ユリス」

 

 ユリスから一気に怒気が膨れ上がったのが分かった。まるで呼応するかのように星辰力(プラーナ)が膨れたのだろう。それを見た紗夜が止めようとするが、重國は掌をユリスにへと向ける。

 突然の重國のその行為にユリスは一時星辰力(プラーナ)を落ち着かせるが、一触即発の場面。

 紗夜は固唾を飲んで待っていると、重國は静かに言う。

 

何故(なにゆえ)納得せぬ?」

 

「なに?」

 

「何故に儂がその場から()()()()()()と判断できるのだ?」

 

「それは……」

 

「お主の観察眼の賜物か? 確かにあのは爆発の中での冷静な分析力は流石としか言い様が無いのう。だが、お主はその《(ちから)》を十分理解しているのか?」

 

 己の力を十分に、いや、十二分に理解した上で行使しているのか。

 

「お主が放ったあの炎……。野次馬とはいえ…………この学園に来た者だからとはいえ、随分考え無しに炎を放ったのう」

 

「……それは、……」

 

「……いや、きっと考えたのじゃろう。きっと綾斗が何かしてくるに違いないと放ったのは分かっておる。じゃが……もし、それが確証無くして炎が生徒を包み込んでおったらどうしておった? ()()()()でも考えたか?」

 

「そんなこと思う筈がないッ!!! ふざけるなッ!!」

 

「その怒り尤もじゃ。じゃが……起きた後では遅すぎる。当たり前じゃのう。そうじゃ……死んでしまっては取り返しがつかぬ……」

 

「……………………」

 

「何故に納得せぬ。…………あのような巨大な炎を目の当たりにし、逃げること叶っても、逃げられなかった者がおったらどうしてた?」

 

 静かに、声を荒げることもなく、語りかけるようにして重國はユリスの眼を真っ直ぐに見て語る。

 きっと彼女はその事を十分に分かっている。分かっているが、いざとなった時。それは自制できるものなのか?

 人間そう単純ではないのだ。

 いずれは起こす。間違いを。

 

「……ユリス。お主は強大な力を持っておるのだ。相手を十分に怯えさせるものを持っている。ユリスだけではない。そこの紗夜も、綾斗も、他の力ある生徒もじゃ。それは、怪我だけでは済まされないものもある」

 

 重國は年よりのいけない癖を発揮していることを理解しつつ、言ってしまった手前中途半端気終われなくなってしまった。

 まぁいいか、言いたいことを言っておくか。と、内心老人の戯言を聞かせてやると息巻く。

 

「…………儂に何かを感じていたのも大したものじゃ。そこまで見てとれることに儂は驚いておる。じゃが、力ある者が過信してはいかん。力ある者こそ【恐怖】を持て。【恐怖】を知っているからこそ、護れるものがある」

 

 視線を落としていたユリスの肩に手を置く。

 

「………儂が言わずとも、知っておると思う。じゃが、ふとした瞬間でもいい。思い出してくれ、その力は人を恐怖に縛り付けるということを」

 

 老人の戯言極まり、重國は深い溜め息を吐きたかった。何をしている儂は、と気まずくなった。

 

(……説教で逃げてしもうたが、誤魔化すこともなかったかのう?)

 

 ユリスの言葉を待っていながらそんなことを思っていた重國は、紗夜が口を開いた。

 

「……お説教?」

 

「ゴホッゴホッ! ウホン!」

 

 小首を傾げて言ってきた紗夜は随分可愛かったが、的を得ているその言葉に思わず咳をする重國。

 そんな紗夜と重國に、ユリスは顔をあげた。

 

「……確かに話を逸らされたな」

 

(しまった……)

 

 重國はユリスから離れようとするが、真っ直ぐな眼差しで逃がさんと言わんばかりに貫いてくる。

 

「……貴重な話だった。確かに力がある私は気を付けないといけない。それは前々から重々分かっていた……。だが、それは周りの生徒たちも只者ではない者ばかりだったが為に、私は疎かにしていた面もあったのかもしれない。決闘然り、……女子寮の一部を破壊したことも然り……」

 

 ユリスら真っ直ぐに、重國を見た。

 

「……何かを教えられたような、そんな感じがするよ。重國 」

 

 少しだけ、彼女の眼差しが強くなっていた。

 『そうか』と返す重國だが、老人の戯言を真剣に聞いてくれた少女に軽く感動しながら、立ち上がろうとすると、

 

「……!!……避けろ重國!」

 

(ぬぅ?)

 

 バンっ! と突け放された重國は受け身も無しに地面に転がり回る。

 

(またも襲撃か?)

 

 重國は杖を支えに体勢を整え、襲来してきた元を見ると、

 

「ふんっ、またもや不意打ちか」

 

 ユリスは噴水から現れた黒ずくめの格好をした襲撃者に睨みをきかせると、相手のクロスボウ型の煌式武装(ルークス)が再び火が飛んでくる。

 紗夜も既に臨戦体勢になっているが、それよりもユリスが星辰力(プラーナ)を集中させ、内なる炎を創起(そうき)する。

 

「咲き誇れ───鋭槍の白炎花(ロンギフローラム)!」

 

 空中で顕現した炎の槍を、前進しながら解き放つ。

 だが、相手を貫き焼き尽くすはずの炎槍は間に入った黒い影によって遮られた。

 

「新手か……! いや。それよりも私の炎を防ぐとは……」

 

 間に入った影も襲撃者と同じく黒ずくめの格好だった。両手で構えたその巨大な斧形の煌式武装(ルークス)を盾代わりにしたようだ。

 そして、重國も形振りを構わず加勢しようとした時、

 

(……なんじゃと!?)

 

 僅かな()()を感じた重國は高速歩法《瞬歩(しゅんぽ)》でその場からすこし先まで一瞬にして跳ぶと、立っていた重國の場所には一筋の電光が(はし)っていた。

 

「まだ襲撃者がいるのか!?」

 

 ユリスは再び襲撃者してきた黒ずくめの二人と、重國に攻撃してきた者を視界に入れた。重國を襲撃したものも黒ずくめの格好をしていたが、あちらははっきりと気配を感じているところをみると、完全に気配を消している残りの二人とは違ってレベルは低く感じたが、

 

(目に見えない(はや)さだった)

 

 電光は既に消えているが、重國ではなかったら確実に仕留められていたであろう一撃だっただろう。

 これは油断など出来ない。ユリスが星辰力(プラーナ)に集中しようとした瞬間、

 

「……どーん」

 

 地面を震わせるような重低音と共に、ユリスに襲いかかっていた二人の黒ずくめが吹き飛んでいた。十数メートルの距離を舞った黒ずくめの大男はそのままきりもみするように地面に落下。ピクリとも動かない。

 

「…………は? 」

 

「ほっほー! お見事! 」

 

 荒々しい爆風が吹き荒れる中、唖然としながらユリスが目をやれば、紗夜が自分よりも巨大な銃を構えていた。更にその奥には紗夜に拍手を送って絶賛している白髪男が一人。

 紗夜が持っているものは最早、『銃』というカテゴリーに入るのかと疑うほどの大きさで、『大砲』と言っても過言ではないだろう。

 

「……なんだそれは」

 

「三十八式煌式擲弾(てきだん)銃ヘルネクラウム」

 

()()()……、ということはまさかグレネードランチャーか?」

 

 こくりと可愛らしく頷く紗夜だが、重國はそれよりも銃の名の方が戦々恐々とした。『へるね……へネねク、ねヘ、へク? へくね……く、あるあうく? うん? うむぅ!?』と銃の名前が言えないでいた。

 そんな重國をよそに、紗夜の銃身に光を帯びた。星辰力(プラーナ)が急速に高まり、巨大な銃へ集まっていく。マナダイトが煌々と輝き増していた。

 つまりこれは───

 

「───流星闘技(メテオアーツ)か!」

 

 ずんぐりとした体型の襲撃者は噴水の中から身をおこし、あわてえ逃げ出そうとしていたようだがもう遅い。

 

「……どどーん」

 

 なんとも気の抜けるような掛け声とは裏腹に、発射された光弾は着弾と同時に炸裂した。

 耳をつんざくような轟音を響かせ、噴水を木っ端微塵に粉砕していた。

 わずかに残った基底部分から、猛烈な勢いで水が噴き上がる。まるでシャワーのように周囲へ降り注いでいる。

 爆発の規模としてはユリスの『六弁の暴焔花(アマリリス)』の方が上かもしれないが、純粋な破壊力だけを比べれば紗夜達に軍配があがるだろう。

 

 そして、残りの襲撃者。

 重國を襲ったであろう黒ずくめの男はゆっくりと姿を現した。ゆらゆらと肩を揺らすようにして大人しく立っている。フード越しからでも分かる鋭い睥睨が分かる。

 

「……(かたな)?」

 

 そして、黒ずくめの男が装備しているのは、煌式武装(ルークス)でもなんでもない普通の日本刀であった。

 普通な世界ならば、日本刀(それだけ)を手にしていれば、かなりの恐怖となりえようが、この場にいる可憐な美少女たちは()()から程遠くはかけ離れた者たちだった。

 グレネードランチャーを手に真顔で銃口を向けてくれば、それだけで白旗ものだろうと重國は若干襲撃者に同情を向けるも、

 

(なんじゃ、あ奴……。なぜ退こうとせぬ?)

 

 怯えることも無く。

 退こうともしないその姿勢には間違いなく裏があると確信する重國。

 

(一体何を……───)

 

 そう思考を巡らせた瞬間だった。

 

 

 

 

『……散れ…………』

 

 

 

 

 なに? 今なんと言った? なぜ……そこで一言止める?

 

 重國は思考が停止したと思った瞬間、()()は、放たれた。

 

 

 

 

 

『……〝千本桜(せんぼんざくら)〟……』

 

 

 

 

 

 千の刃が舞う桜の花吹雪が、少女二人に吹き荒れた。

 

 

 




あけぉめフォォォォォオオッ!!(チャラい)

↑チャラい後輩が新年迎えてダメな挨拶してきた。
これはムカついてラリアット食らわせてやった。
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