「これは....人の村?」
レギオンが確かめたかった事、それはイドゥリマにある設備の一つ、『探知』である。この能力は、本来このナザリックに近づいてくる侵入者対策の為の物で、レギオンが初めて買った『課金アイテム』、そしてこの能力は侵入者対策とは言えど、かなり広い範囲を見る事が出来る様になっている為、探知が使えるかどうかの確認の序に、セバスが言っていた場所を見ようと思っていたのである。
其処にあったのは人が住んでいる村だった。
「何だ?祭り?...戦争か?....いや、これは村が襲われているのか?」
その村は襲われていた。モンスターにではない、人間にだ。
最初は、戦争でもしているのかと思ったが、よくよくみれば鎧を着た人間が、装備を着用して無い人間を一方的に襲っているのである。そして、もう一つ気づいた事があった。
「...何とも、思わない?...」
何とも思わないのである。ついさっきまで人間だったのに、人間が殺される様を見ても、何も思わない。それ所か、何故か『興味』が湧いて来たのである。『人体』の構造はこの世界でも変わりは無いのか、魔法が普通に使える世界なのか。後者の疑問はわからなくは無いが、前者に至ってはほぼ完全に人間の考える事では無い
「....そう言うことか...」
レギオンは、何故自分が興味を持っているのかを悟った。それは、自分が研究者だからである。勿論、現実の世界では自分は漫画家で、研究者なんてものはあくまでゲームの中の自分の設定の様な物である。それに、別にそれらしく振舞ったことはほぼ無い。
だが何故、自分が本物の研究者の様な感情に、思考回路になっているのか。それは、このイドゥリマと、自分の作ったNPC、アリス達の存在が関係している。
このイドゥリマは、自分の部屋であると同時に研究所。其処を収めるのは必然的に部屋の主であるレギオンになる。そしてNPC達は、この研究所の護衛であると共にレギオンの助手。つまり、この世界ではレギオンは列記とした研究者なのである。
「世界の修正力....みたいなもんかな」
別に、抗いはしない。これは、もう一人の研究者としての自分なのだから、ならば、やる事は決まっている。
(モモンガさん、今、人に襲われている人の村を発見しました)
(ええ、丁度、自分も見てた所です。どうです?何か感じました?自分は何も感じませんでした)
(俺も、哀れみとか、かわいそうとか言うのは全く感じませんでした。だけど、興味を感じました。この世界の人間の人体構造は変わっているのかいないのかとか、魔法は効くのかとか)
(....なるほど、これって、体だけじゃなくて考え方とかも変わったってことなんですかね?)
(そうだと思います。それで、この村どうしますか?自分としては、色々試す序に救ってみても良いと思うんですけど)
レギオンのカルマ値は-50であり、ほぼ『悪』でも『善』でもない。唯、純粋な興味があるから序に助ける。それだけである
(.....解りました。確かに、この世界の平均のレベルとかも見定めなければならないですしね....でも、相手の実力もわかりません。念のため、ギルド武器持っていきます、レギオンさんもフル装備で来てください)
(了解です。直に準備してそっちに向かいます)
カルネ村は、絶対的な窮地に立たされていた。村人はほぼ拘束されるか殺され、隠れている人間も何れかは見つかる。唯一逃げ切ろうとしていたエンリも、妹のレムを守る為、背中を剣で切り裂かれ重症を負っていた。
(ネムが逃げる時間だけは....稼がないと....)
まだ走れる、妹を死なせるわけにはいかない。震える足を動かし、必死に前に進もうとしたその時、自分を追っていた騎士が声を上げた
「なっ....何だ!?」
騎士が見ている物を見ようと振り返る。そして、振り返った事を一瞬で後悔した。
――闇を見た。
それは、死を体現したような姿をしていた。それは、漆黒の禍々しい鎧を着ていた。
死を体現した様な者が何かを手で握る様なしぐさをした。それは、生きている者へ死を与える力を持つ。第九位階魔法
「《グラスプ・ハート/心臓掌握》!」
途端、エンリを追っていた騎士の一人が死んだ、心臓を握りつぶされたのだ。操り人形の糸が切れた様に、ぴくりとも動かない
「...この世界の人間達に、私の得意とする死霊系....その中でも高位の第九位階魔法が効かなければ、レギオンさんに一撃与えてもらって逃げようと思ってたが....問題無いみたいですね、レギオンさん」
「えぇ、自分も、少し試してみますね」
何を試すのか。それを騎士が悟った頃には、既に黒い鎧を着けた腕が騎士の胸を貫いていた
「えぇ....吹っ飛ばそうと思ったのに貫くって...脆っ」
「...ガハァッ....バケモノ....が...」
何も感じない。人を、今その手で殺めたというのに。むしろ、この人間を解剖して中身を見てみたいと言う欲求に狩られた位だ。それは、自分が人を辞めたと言う実感を今更ながら感じるのには十分だった
「あ、念のためモンスターに乗り移れるかどうかも確認してみます?」
それは未だ一度も試していなかった。最初は暴走しても直沈められる位の中の上位のモンスターにした方が良い。
「良いんですか?じゃあ、デスナイト辺りで試してみたいです」
「解りました。 『中位アンデッド作成 デス・ナイト』」
黒い霧のようなものが空中から滲み出、霧は心臓を握りつぶされた騎士の体に覆いかぶさるように重なった。そして騎士が何かに釣り上げられる様にフラフラと立ち上がり、兜の隙間からスライムの様な物が滲み出て、それは騎士の体を覆いつくす。そしてそのスライムがより大きな物へと変貌し、スライムが何処かへ流れ落ちる様に消えた頃には、身長2.3メートル程の巨体を持つソレは、人と言うよりは獣と言った印象に近かった
「し、死体から出来るんですね...『憑依』」
そしてレギオンは鎧を消し、デスナイトへと乗り移る
「グ....ガ、ガ、ガ、ガ、ガ....ガ...」
見た目は殆ど代わって無いが、鎖の様な紫の刺繍がデスナイトの体を覆っていた。
「.....コンナ感ジデスカネ」
「おぉ、ちゃんと乗り移れてよかったです....」
人の者とは思えない声を発したレギオン。それは、喋っていると言うよりは獣が唸っていると言う印象に近い。と、その時、開きっぱなしのゲートから武装をしたアルベドが出てきた
「準備に時間が掛かり、申し訳有りませんでした...レギオン様?デスナイトに憑依なされてるのですか?」
「少シ、確カメタイ事ガアルカラナ」
「私で良ければ、力になりますが....」
「イヤ、大丈夫ダ。アルベドニ試シテモラウ程大キナ事デハ無イ」
「わかりました。....それで、この下等生物の処分は如何いたしますか?」
「「あ」」
忘れていた。自分達のやり取りを見てはいけないものを見てしまったかの様な表情で見つめているエンリとネムという名の人間達を
「.....取りあえずの敵は...其処に転がっている鎧を着た者達だ...」
「ア、俺先ニ村ニ行ッテ試シテキマス」
「わかりました。あ、解ってるとは思いますが、殲滅しないでくださいね?」
「エエ、ワカッテマスヨ」
デスナイトに憑依したレギオンは足に力を込めると、砲弾の様なスピードで村へと向かっていった。
「オオオァァァアアアアアアーー!!」
一人の騎士を盾で吹っ飛ばし、雄たけびを上げるレギオン。然し、このまま騎士達を殲滅させるわけにも行かないので、『逃げる騎士を狙う』と言った戦法をとる
「うわあああああああああぁぁぁぁ!!」
その絶望感に耐え切れず逃げ出す兵士、まずは一人目。残像をも残さないその移動スピードで一瞬で逃げ出した騎士の前に立ち塞がると、フランベルジュで容赦なく斬り付け、真っ二つにする
「脆イ」
呆れた様に呟く
「くそっ!!」
完全に死角をとった斬り付け。然し、デス・ナイトの元々高めな防御力が憑依の力で更に強化されたのだ。剣は折れるどころか、砕け散った
「なっ!?....ぐあああああああ!!」
盾で弾き飛ばす。そして、それを見ていた騎士が悲鳴を上げて逃げれば、それを追いかけ、両断する
「...逃げない相手には剣を使わない....楽しんでいるのか!?」
「....フン、楽シモウニモ楽シメナイ位ニ貴様等ハ弱イガナ」
「なっ....言葉を話せるのか!?...知能の発達したアンデット....」
「こ、言葉が通じるのか!!?頼む!俺だけでも良いから助けてくれ!」
「ベリュース隊長!?...」
「ホウ.....良イダロウ」
「ほ、本当か!?ありが「正シ、其処ニイル騎士ヲ一人殺セ。ソウスレバ、見逃シテヤロウ」.....おい、おまえ、恨むなよ?....」
ゆっくりと、近くに居る騎士に剣を持ち近づくベリュース。然し、その歩みは強制的に止まる事になった。ふと、ベリュースの足を何者かが掴む。何かと思い足元を見れば、其処には先程真っ二つになった騎士の右半身がいた
「うぎゃああああああああああああ!!?」
「オイ、早ク殺セ。三」
「う...うおおおおおおおおおおお!!!」
デスナイトのカウントダウンが始まると同時に、アンデットを引きずりながら騎士の下へ必死で走っていく。当然、狙われた騎士は逃げるが、アンデットに捕らわれたままの足では追いつける筈が無い
「二」
「誰か!!誰かオレの為に死んでくれ!!何でもするから!頼む!!」
パニックを起こし、可笑しな事を言い始めるベリュース
「一」
「嫌だ!!嫌だああああああああ!!!」
「時間切レダナ」
一瞬でベリュースの元へ移動し、足を切り飛ばす。転んだベリュースに何度も何度もフランベルジュを突き立てる
「たじぇ、たじゅけて! おねがいします! なんでもじまじゅ!おかね、おあああ、おかねあげまじゅ、おええええ、おだじゅけて――」
はなから助ける気は無かった。騎士達が悟り、絶望する
「....やだ、やだ、やだ」
「神様!如何か!」
無残に殺されたベリュース。それを見た騎士達は、より一層脅え、錯乱し始める。然し、騎士達は逃げ出そうにも逃げ出せない。逃げ出した瞬間、次の犠牲者になってしまう事は明らかだからだ。
「――落ち着け!!!」
一人の騎士、――ロンデスが叫んだ。もう、これ以上の犠牲者を出さない為に
「――撤退だ! 合図を出して馬と弓騎兵を呼べ! 残りの人間は笛を吹くまでの時間を稼ぐ! あんな死に方はごめんだ! 行動開始!」
騎士は一斉に行動を開始した。錯乱を起こし白紙になった頭に命令が入ったことによって、それだけを考える脳になったがゆえの完璧な行動だ。これほどの一糸乱れぬ動きは二度と出来ないだろう。そして、笛を吹ける人間は今は一人しかいない。この一人を守る為に、騎士達はデス・ナイトに立ち向かう
「「「「うおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」
レギオンはこれには流石に剣を使い、無残に切り捨てる。然し、騎士達は全く怯まずに次々と立ち向かっていく。そして、ロンデスも人一倍迫力のある声を上げて、立ち向かっていった
「ウオオオオオオオオオオオオオラアアアアアアアア!!!!」
「....ホウ...オマエ、気ニ入ッタゾ」
決めた。コイツ、実験体にしよう。そんな固い決意を胸に、ロンデスを殺さない様レギオンは全力を尽くす。ロンデスが剣を振り上げた直後、後ろに回りこみ、完全な隙が出来た瞬間に、全力で手加減をして当身。それでも威力は十分だった様で、事切れた様にロンデスは倒れこんだ。その直後である
「デス・ナイトよ。其処までだ」
モモンガが来た。いや、アインズが。元々なれなれしい口調が得意では無かったレギオンだが、今はほぼアインズと同じ立場。せめて他の者達の前では研究者らしいキャラを作ろう。そう心の中で決めたのである
「...丁度イイナ。アルベド、コイツヲアリス達ニ渡シテオケ」
「はっ」
倒れているロンデスを拾い、アルベドに渡す。アルベドは一つ返事で承知し、転移していった。
そして、突然の襲来者に目を丸くする村人と騎士達。アインズは地面に降り立ち、お構いなしに言葉を続ける
「はじめまして、諸君。私はアインズ・ウール・ゴウンと言う」
少し名前と顔に違和感を感じたレギオンであるが、此処は黙っておく
「諸君には生きて帰ってもらう...そして諸君の上司...飼い主に伝えろ。この辺りで騒ぎを起こすなら、今度は貴様等の国まで死を告げに行くと....行け!!そして確実に我が名を伝えよ!!」
騎士達は一目散に走っていった。そして、アインズとレギオンがふと呟く
「はぁ...演技も疲れるなぁ...」
「デスヨネ」
「あ、貴方様は...?」
「この村が襲われていたのが見えたんでね、助けに来たものだ」
「さて、君達はもう安全だ。安心して欲しい.......とは言え、唯と言う訳ではない。それなりの礼を頂きたい」
村人達の疑問の視線の意味に気付いたアインズは、咄嗟に理由を付け加えた。営利目的と思われた方が、余計な疑いを掛けられずにすむのだ
「あ、あの...貴方様の後ろに居る...その....」
「ああ、コイツは、少し特殊なアンデットでしてね、知能が発達しているんですよ。大丈夫です、余り好戦的では無いので無闇に人は襲いません」
「ほ...本当に大丈夫...なのですか?」
「貴様等ヲ殺ス理由ハ今ハ未ダ無イ。騎士達ノ死体ガアルオカゲデ、実験用ノサンプルハモウ必要ナイシナ」
さらっと恐ろしい事を言ったレギオンに、村人たちは少し身震いをするが、自分達に危害が加わらないと言うことが解っただけでも十分な気休めになった。
アインズのセリフはほぼアニメと同じです。あと次回位にレギオンの設定を書きたいと思います。此処が可笑しいとか、疑問に感じたこと、誤字等があったら感想で教えてください。評価とか感想とか、お待ちしてます