真剣で私に恋しなさい!―Existence of a duplicate―   作:輝雪

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002 東西交流戦

 

 

 

 

 

 

『では、只今より東西交流戦 第二夜を始めるぞい』

 

夜の廃工場。

川神鉄心の号令と共に東西交流戦第二夜 三年生の戦いの火蓋は切られた。

 

「ワクワクしてきた。スキップスキップ」

 

川神百代が嬉しそうに燥いでいた。

強者との戦いを何よりの楽しみとしている百代にとっては最高のイベントだろう。

そんな喜色満面な百代とは対照的な、

 

「始まってしまった」

 

心底、嫌そうな表情を顔に張り付けた雹は盛り上がってる中、一人浮いている。

 

「こういうのは観客であるから面白いんであって、当事者になったら全然面白くないんだが」

 

「そこに関しては少し同意しよう。ところで君は戦わないのか?」

 

雹の横に立っている男子生徒、京極彦一が問うた。

 

「はぁ、おまえこれ、戦うとか以前の問題だろうが」

 

そう溜め息と共に洩らした雹が眼をむけた先は、

 

 

『『『『天・神・合・体!!! ゆくぞ川神百代!!! この奥義で貴様を倒す!!』』』』

 

 

某光の巨人に出てきそうなデザインの、十メートルはゆうに超える巨人(生物?)が居た。

 

「ほう、三年生全員が一つとなり巨大な生物のように……」

 

感心する様に京極が、

 

「すごいな天神館。それ妙技だぞ、練習大変だったろう」

 

面白がりながら百代が、

 

「……効率とか色々、無視し過ぎだろ」

 

そして呆れ純度100%の雹の呟き。

 

「態々、的をデカくしてどうするんだよ……馬鹿か?」

 

現実にはアニメのように『合体すれば強くなる』なんていう便利な設定(システム)などあるはずもなく、

 

『川神流星殺しぃぃ』

 

百代の掌から放たれた膨大な気のビームが天神館の巨人の腹に直撃、貫いた。

バラバラと崩れ落ちていく天神館の三年を憐れみを籠めた視線で見つめる。

思いのほかあっさりと決着がついた。

とりあえず現実離れした光景を見て雹は、

 

「あれ、絶対かめ○め波だよな?」

 

百代の星殺しを見て思ったことを口にした。

 

「雹、そういうことは思っても口に出すべきではない。時として、余計な言葉は災いの元となる」

 

「言霊部部長からの直々の諫言とは、ありがたいな。でも、その台詞……言った時点でお前、墓穴掘ってるって気付いてるか……」

 

「……」

 

図星を突かれたのか、黙る京極。

痛々しい沈黙が場に落ちた。

京極が気まずそうに顔を背ける、なんてことは相当珍しい事なので雹は思わず携帯を取り出し、写メを撮ろうとする。

京極の写真は結構な高値(もちろん女子の間でだ)で取引されている。

だが、残念ながらそれは中断させられる。

敵の闖入によって。

 

「負けん!! 負けんぞ、我らはぁ!!!」

 

ボロボロな姿で雹と京極の前に現れた天神館3年生。

満身創痍な姿を見る限り、百代の一撃によって吹き飛んだ巨人を形作っていた一人で間違いないようだ。

だが、やる気と戦意(自信は喪失していたが)だけは微塵も傷ついてはいなかった。

 

「あれ、もしかして俺狙われてる? おい……京極、何とかしろ。親友だろ」

 

敵の眼は間違い無く雹の方を捉えていた。

敵が複数存在する場合、弱い方から潰すのというのは兵法では定石である。

要するに雹の方が弱そうだから狙われたのであった。

まぁ、確かに余裕そうに悠然とたたずむ京極と地面に座り込んで全身から無気力オーラを放つ雹、どちらが弱そうかと聞かれれば答えは明白だろう。

 

「ここで私に丸投げとは、大した親友だな」

 

「お得意の言霊は?」

 

「残念ながら、私の言霊は強い意志を持っている者には効きづらい」

 

「役に立たねーな」

 

はぁ、と何度目か分からないため息を吐きながら雹はめんどくさそうに立ち上がる。

パンパン、とお尻に付いた砂埃を払う。

 

「覚悟しするがいい! ゆくぞ!」

 

わざわざ宣言しなくても良いものを天神館三年生は律儀に攻撃のタイミングを宣誓する。

アホと貶すべきか、正直と褒めるべきか、迷うところである。

 

「チッ、仕方ないな……」

 

雹は悪態を吐きながらも、ゆっくりと、腰を低く落とし、構えをとる。

天神館の三年は構えた雹を警戒し攻撃を中断、一歩下がった。

京極は後方で面白そうに眺めていた。

 

「ふっ、俺の必殺技を見せてやる」

 

不敵な笑みを浮かべ、雹は自信満々に告げる。

 

「ッ、何をするつもりだ?」

 

「すぅぅぅ……」

 

雹は大きく息を吸い込み、丹田に気を溜める、ような動作をする

それを見て、相手はさらに警戒を強めた。

そして雹は、深呼吸を何度か繰り返し――

 

「おい、川神百代ー! ここにお前と戦いたがってるやつがいるぞーー!!」

 

――ただ叫んだ、大声で。

 

「何だとっ。どっこだぁー」

 

嬉しそうな声とドゴォ、という衝撃と共に何処からともなく飛んできた百代。

 

「そこ」

 

雹は百代の登場に動じる事も無く、天神館三年を指さす。

 

「ほう、お前か……中々根性ありそうじゃないか」

 

獲物を見つけた肉食獣のような眼で相手を見る。

相手は先の事がトラウマになっているのか、震えながら後退する。

 

「なぁ、貴様ぁ、卑怯だぞ! 正々堂々と戦え!!」

 

正面からやりあわない雹に対する怒りと、百代に怯える自分の心情を誤魔化すためか、雹に向けて罵詈雑言を吐く天神館三年生。

だが、その程度の事で動揺するほど柔くない雹は涼しい顔で聞き流していた。

『どんな手を使おうが勝てばいい』

それを信条としている雹からすれば、正々堂々戦って負ける奴の方が理解できなかった。

 

「とりあえず、俺に構ってていいのか?」

 

雹はそんな負ける奴が不憫すぎてか、親切に優しく忠告してあげた。

 

「何だ……ッ」

 

天神館三年生の言葉が途中で途切れた。

百代から発せられる膨大な気に気付いたからだ。

 

「クソ……」

 

「おっ、ようやくやる気にやったか」

 

自分に向けて構えた相手を見て、百代は笑みを浮かべた。

 

「我ら西の力、今こそ軟弱な東に示すとき!!」

 

勇ましく叫ぶ。

流石は天神館の最上級生。

放たれた怒号はビリビリと辺りを震わせた。

 

「はああぁ!!」

 

薙刀を頭上でブン回して、遠心力を乗せる。

そして、

 

「川神百代、まずは貴様を倒す!!」

 

真一文字に薙刀が力任せに振われた。

衝撃により砂埃が舞い上がり、視界を奪う。

確かな手ごたえを感じたのか天神館三年生はニヤリと笑みを浮かべた、が

 

「甘いな」

 

「なっ……馬鹿な!?」

 

渾身の一撃は百代にあっさりと受け止められていた。

 

「中々、良い一撃だったぞ」

 

驚愕に彩られた相手に、

 

「川神流無双正拳突き!」

 

百代の一撃が胸部に直撃し、上空に吹き飛んだ。

そして十数秒の滞空時間を経て、落下してきた。

ちゃんと加減はしたようで人工衛星(お星さま)にはならなかったようだ。

 

「フッ、見たか? これが俺の必殺技“ターリキホンガーン”だ!」

 

落ちてきた天神館三年生に向け、ドヤ顔で言い放つ。

何かもう色々台無しである。

 

「さて、もっと強い奴探しに行こーっと」

 

百代はまだ物足りないのか、さらに相手を求めに行こうとする。

 

「いや、その意味はなくなったようだ」

 

今までずっと傍観を決め込んでいた京極が百代の言葉に口を挟んだ。

 

「それはどういう意味だよ、京極?」

 

「……どうやらそこに倒れている者が敵方の大将のようだ」

 

「へっ……」

 

思わぬ京極の言葉に素っ頓狂な声を上げた百代。

そんな百代を無視して雹は京極に尋ねた。

 

「こいつがか?」

 

「ああ」

 

「じゃあ、終わりって事か?」

 

「まぁ、そういうことだな」

 

京極の言葉を脳が理解すると同時に雹は叫んでいた。

と、同時に百代も。

 

「イヤァァアホー、やっと終わったぜーーー!」

「そんなぁぁ、私はまだ満足出来てないぞぉぉーーー!」

 

二人の対照的な叫びが川神の夜空に轟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして東西交流戦第二夜は川神学園の勝利で幕を閉じ、決着は二年同士の戦いに持ち越された。

 

 

ちなみに、終わりに納得できなかった百代が倒れた天神館の大将をムリヤリ覚醒させようと、顔面に往復ビンタを食らわせ、川神鉄心や学校の教師陣は百代を抑え込まさせられるハメになり、交流戦に関係なかった教師陣にもケガ人が続出していたのはまた別のお話である。

 

 

 

 

 

 




『雹、一体何だ、そのネーミングは……?』

『変か? “ヒトノテカーリル”のほうが良かったか』

『そういう問題じゃないと思うが……成分に名付けられそうな名前だな』

『文句の多い奴だな。じゃあ、“TOO LIK HOH GAN”でどうだ?』

『……英語っぽく言い直しただけだろう。本当に飽きないな、君は』

『それ、褒めてんのか?』

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