最強の王様になった『 』   作:8周目

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突発的に書いたので、続くかは気分次第となります。

この話は、ノゲノラの世界でカリスマ性抜群な者がディスボードに招かれたらどうなるのか。 というストーリーとなります。

というわけで

ではどうぞ⇩


はじまり

 

 

 

 

 

 ———『都市伝説』。

 世に囁かれる星の数にも届くそれらは、一種の『願望』である。

 

 

 ———例えばそれは、『人類は月に行っていない』という都市伝説。

 ———例えばそれは、ドル紙幣に隠されたフリーメイソンの陰謀。

 ———例えばそれは、フィラデルフィア計画による時間移動実験。

 千代田線核シェルター説、エリア51、ロズウェル事件、etc——–—

 

 

 枚挙にいとまがないこれらの都市伝説を眺めれば、明確な法則性が見えてくる。

 即ち……『そうだったら面白いのに』という『願望』によって構成される。

 火のないところに煙は立たぬという。

 だが尾ひれがつくと、しまいには魚より肥大化して伝聞する『噂』の性質を考えれば、これらの都市伝説の形成される過程も見えてくるというものだ。

 つまるところ、根はあっても葉はない(・・・・・・・・・・)

 身も蓋もなく言えば、デタラメが大半を占める(・・・・・・・・・・・)ということだ。

 だが別段それは、責めるにも不思議に思うにも(あた)わない。

 人は古来より、『偶然』より『必然』を好んできたもので。

 そも、人類誕生が天文学的確率の偶然の産物(・・・・・・・・・・・・・・・・・)だという、事実より。

誰かが人類を計画的に創った(・・・・・・・・・・・・・)と、本能的、経験則的に思いたがるように。

 世界は混沌ではなく、秩序によって構成されていて。

 後ろで糸を引く誰かを想像することで、不条理かつ、理不尽な世界に、意味を見出す。

……少なくとも、せめてそうあって欲しいと願う。

 故に都市伝説もまた、概ねそんな切実な『願望』から生まれるといえる。

 

 

 その代表として一つ、『神』を挙げてみよう。

 そもそも神とは、一週間で世界を創り、また一週間で世界を壊した、と言われている。

 今も世に残されている神話や神にまつわる道具など、それらも全て人間の頭の中で構成されたものが元となる。

 最も有名なのは、イエス・キリストだろう。

 彼は神の子と呼ばれ、そしていくつもの奇跡を世にもたらした。 

 更に、その後信徒の一人によって裏切られ、そして磔にされたのちに処刑された。

 その時キリストの脇腹を刺したと言われる槍が『ロンギヌスの槍』であり、キリストの血を受けた杯が『聖杯』である。

 ここまではいい。

 しかし、何とキリストは処刑された三日後に蘇ったと言うのだ。

 何故生き返ることが出来た? 人間ではそのようなことは不可能だ。

 ならばそれはもう神の仕業としか言いようがない。

 つまり、神とは恐ろしく気まぐれな存在であることが判る。

 もし本当にそのようなものが存在するのであれば、我々人間は堪ったものではない。

 

 

 ————さて。

 そんな天上を照らすほどの、数多の『都市伝説』の中に。

『事実だが都市伝説とされている』ものが含まれているのは、あまり知られていない。

 ———誤解なきよう、前記した都市伝説が真実であると言うつもりはない。

発生した原理が異なる都市伝説が存在する、ということだ。

 

 

 

 ————例えばそれは、あまりに非現実的過ぎる『噂』が『都市伝説』と化した事例だ。

 

 そんな『噂』がここに一つ。

 そして、当の本人にも理解不能なことに巻き込まれ、『存在そのものが非現実的』となってしまった者が一人。

 

 

 まず最初は『噂』のほうから説明しよう。

 

 インターネット上で、まとこしやかに囁かれる『 』(くうはく)というゲーマーの噂だ。

 曰く———二百八十を超えるゲームのオンラインランキングで、不倒の記録を打ち立て。

世界ランクの頂点を総ナメにしているプレイヤー名が “空欄” のゲーマーがいる、と。

 「そんなはずはない」とお思いだろうか。

 まさしくそう、誰もが思った。

 そうして至った仮説は、単純だった。

 

 

 当のゲーム開発スタッフが、身元が割れないようにランキングに『空白入力』したのがいつしかブームになり、様式美となったもので、実在はしていないプレイヤーであると……。

 

 

 だが奇妙なことに、対戦したことがあるという者は跡を絶たない。

 曰く……無敵。

 曰く……グランドマスターすら破ったチェスプログラムを完封した。

 曰く……常軌を逸したプレイスタイルであり手を読むことが出来ない。

 曰く……ツールアシスト、チートコードを使っても負かされた。

 曰く……曰く……曰く————。

 

 

 そんな『噂』を、普通ならば鼻で笑うだろう。

 だが調べてみれば、誰もが言葉を失った。

 何故なら『 』(くうはく)名義のユーザーは間違いなくどのゲーム機、どのSNSにも確かにアカウントとして存在しており、また誰もがその実績を閲覧出来るそこに並ぶのは。

 文字通り『無数』と表現されるべき数の実績(トロフィー)と、ただひとつの黒星もない対戦成績(・・・・・・・・・・・・・・・)であるからだ。

 —————そうして謎は更に深まり。

 事実があるにもかかわらず『噂』は逆に非現実味を帯びていく。

 

 『敗北実績を消しているハッカーである』

 

 『ハイレベルプレイヤーが誘われるゲーマーグループがある』————などなどと。

 

 こうして新たな『都市伝説』が生まれていくわけだ。

 

 

 

 そして次に『存在そのものが非現実的』な者についての説明だ。

 

 その者は、最初は何の変哲もないただの人だった。

 ゲームやアニメが大好きで、休みの日などは家に引きこもり、トイレや風呂などの最低限のこと以外では決して部屋から出ないような、そんなただのどこにでもいる人。

 しかしある時気まぐれに外を散歩していたら、雲ひとつ無かった快晴であったにもかかわらず、頭上から特大の雷が落ちた。

 その者は即死し、蘇ることなど当然無かった。

 

 だが次の瞬間、自我のようなものが残っていることに気付き、目があるわけでもないのに周りを見渡す。

 すると目の前には、途轍もなく胡散臭そうな髪の長い男が立っていた。

 その体にはボロボロのマントのようなものを着ており、背にはカドゥケウスを思わせる双頭の蛇が巨大な首をもたげていた。

 そいつはその者のことをジーッと見てから、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべた。

 まるで新しいオモチャを見つけたとでもいうように。

 そこからそいつの行動は早かった。

 どこからか『黄金の鍵』のようなものを取り出すと、その者の魂にねじ込んだのだ。

 『暇潰しにはちょうど良い』と言いながら、その魂を適当な世界へ送り込んだ。

 始終ニヤニヤと笑いながら。

 

 送られた先で、その者は一人の男の子として産まれた。

俗に言う『転生』というものであろう。

 名付けられた名前は『空』。

 空とは仏教で言うところの『縁起を成立せしめるための基礎状態』である。

 自分の両親が何を思ってこの名を付けたのかは判らない。

 だが、その者にはそれ以上に重大なことがあった。

 それは、あの胡散臭いボロマントにねじ込まれた『黄金の鍵』である。

 

 生前……否、転生前とでも言うべきか。

 その時ハマったゲームがアニメ化し、当然貪るように最後まで見た。

 そしてその中で登場するやたらとギンギラギンに輝く黄金の王。

 そいつが持っていた宝物庫の鍵がまさしくあの時ねじ込まれた鍵そっくりなのだ。

 

 最初のうちは『そんなことあるわけ無い』と思っていたのだが、赤子であるが為睡眠時間はたっぷりある。

 その時夢に見る光景はいずれもあの傲岸不遜な王の姿。  そして夢の世界を覆い尽くさんばかりの財宝の数々。

 

 一度両親がいない時に、あの宝物庫が開けるかどうか試したことがある。

 するとどうだろう。

 金色の波紋が小さな手の上に浮かぶではないか。

 その者は歓喜した。

 憧れていた二次元のチカラを使うことが出来る、と。

 だが鍵を宿した弊害からか、意思とは別に思考がそれはダメだと昂った心を無理矢理冷静にする。  何故ならそんなことをすれば、即拉致監禁され様々な非人道的な実験や、下手をすれば洗脳されてから兵器として扱われる可能性もある。

 

 ならばどうすればいい。

 隠し通すしか無い。

 極力チカラを使わず、死ぬまで隠し通すこと。

 それが一番安全な策だと思考回路が告げる。

 チカラを使えないのは惜しいが、厄介ごとに巻き込まれるよりはマシだ。

 そう思い直し、鍵の存在は心の奥にそっとしまった。

 

 

 それから何年か経ち、両親が離婚。

 そして今、空は父親の再婚相手と向き合っていた。

 最初は何の興味も抱くことはなく、ただ周りの会話に適当に相槌を打ち、表面だけの薄っぺらい笑顔を浮かべていた。

 その時、再婚相手の横に座っていた真っ白な少女がこちらを見て、こう言った。

 

 

 

 『ほんと…空っぽ』

 

 

 

 この言葉に空は思わず感動した。

 自分の名前と薄っぺらい笑みを浮かべるような心をダブルミーニングで罵ったのだ。

 

 空という『存在そのものが非現実的』な者が初めて他人というものに興味を持った瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

◆*◇

 

 

 

 

 「…にぃ…手、止まってる…よ?」

 

 

 「ん?……あぁ悪ぃ悪ぃ。 ちょっと昔のこと思い出してた」

 

 

 「……?」

 

 

 「白と初めて会った時のことだよ」

 

 

 「むぅ…にぃ、変態」

 

 

 「さっきの会話から何でそんな答えが出てくるのか兄ちゃんはさっぱりわかりません」

 

 

 「小さい…白…思い、出して……コーフン…してた」

 

 

 「いやいや、確かに白は完全無欠な美人さんだが、さすがの兄ちゃんも年齢一桁に興奮はしねーよ」

 

 

 「じゃあ…二桁なら……するの…?」

 

 

 「そりゃもちろん……と言いたいが、せめて十八歳にはならないとな。 十八禁の世界にゃ白はまだ早い」

 

 

 

 義理とはいえ兄妹の会話としてはどうかと思うようなやり取りをしながら、二人はネットゲームに興じていた。

 部屋は十六畳ほどの広さだろうか。 中々に広い。

 だが無数のゲーム機と、一人四台……計八台のパソコンが接続された配線は、近代技術を思わせる複雑さで床を這い、開封されたゲームパッケージが錯乱したそこに、本来の広さを感じさせる余地は見受けられない。

 ゲーマーらしく反応速度を重視させたLEDディスクプレイが放つ淡い光と、とっくに昇った太陽が遮光カーテンから落とす光だけがぼんやり照らす部屋で、二人は言う。

 

 

 

 「……にぃ、就職……しないの?」

 

 

 「金目のモンなんぞ腐るほどあるからなぁ。 その辺の国より金持ってるぞ、兄ちゃん」

 

 

 「…やっぱり、にぃ……チート」

 

 

 「しゃーねぇだろ。 兄ちゃんが望んで手に入れたチカラじゃねーんだから。 それに、なんだかんだで白もコレ利用してるだろ」

 

 

 

 空が白の横に金色の波紋を出しながら言う。

 白もそこから半分ほど飛び出ているカロリーメイトを取り出しながら、もそもそと食べる。

 

 

 

 

 

◆*◇

 

 

 

 

 

 兄……空。

 十八歳・無職・童貞・シスコン・ゲーム廃人。

 典型的な引きこもりを思わせるジーパンTシャツ、そしてボサボサの黒髪の青年。

 そして黄金の鍵を持つ者。

 

 妹……白。

 十一歳・不登校・友達無し・いじめられっ子・対人恐怖症・ブラコン・ゲーム廃人。

 空とは対照的な真っ白な髪。

 踵まで届きそうな長い髪、だが丁寧に手入れされたように枝毛などは一切ない。

 転校したその日以来、家の外で着たことはない小学校のセーラー服の少女。

 

 

 それが『 』(くうはく)……即ち、『空と白』というゲーマーの正体である。

 

 

 

 ————と。

 かくこのように、知らないままにしておくのも。

 夢があっていい都市伝説(・・・・)もまた、存在するのである。




どうでした?

作者はfate大好き厨二病患者なので、こんな話は結構妄想内で繰り広げてたりします。

エミヤの方はもう少しお待ちください。

感想待ってまする(ノ*´>ω<)ノ

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