我輩はエクスデスである。名前は、名前……先生の名付け親って誰なんだろうね? 自称?
はい、どうも。今日も相変わらずエクスデスやってます。
アニマルパラダイスのご神体と化してから、ざっと一ヶ月ちょいといったところでしょうか。
飲まず食わずってこともないんですが、あからさまに健康に悪そうな野外生活を続けていても大事はありません。
雨にも降られ、風にも吹かれ、季節の過酷さにこそさらされてませんけど、野ざらしの私は元気です。
すごいね、エクスデスボディ。
ここしばらくは、変わりばえもせず魔法を試したり、動物を愛でたり、森の木々に癒されたりしています。
腰を下ろしてから微動だにしていないもので、魔法使うときに動かす上半身は置いても、そろそろ下半身に根が生えていないか心配です。
まあ根付いたら根付いたで仕方ないので、このまま御神木と化すのも悪くは無いと思ってます。
割りと本気でそんなこと考えちゃうあたり、俺の思考は人間だった頃とは随分とズレてきているのでしょう。
何か以前からこんな性格してたような予感もヒッシヒシとしますけど!
しかし、そうしてあらためて己の姿を省みると、ずいぶんと自然に埋没し始めていることが分かる。
上半身の胸甲には土や細かな草の欠片などの堆積物が張り付いているし、下半身なんてツタ系の草が巻き付きはじめているほどだ。
あ、ちなみに一番自然の侵食が激しいのは、初日に投げ出してそのままになっていた死神の剣です。
もう完全に雑草の海に沈んで、パッと見で所在地が分からねえや。ファファファ。
錆びてたらゴメンな。
でも、即死付与のお前さんの使いどころが無かったんじゃ。
そんなある日のこと、俺から見て背中側の低木をかき分けて一つの足音が聞こえてきた。
足音の主はカチャカチャと金属質な音を鳴らしながら、二歩、三歩と俺の、と言うよりは泉のほうへと近付いて、ドサリと地面に倒れる。
実に見事な、絵に書いたような行き倒れをやってのけたのは、金属製の軽鎧を身につけた赤毛の剣士だった。
行き倒れは、少しばかり薄汚れたなりをしているものの端整な顔立ちをした青年だ。
彼を剣士と呼んだのは、倒れると同時に投げ出された杖代わりにしてきたのだろう長剣があったから。
実際は、剣の柄頭に刻まれた紋章や軍服に通じるような軽鎧の意匠から騎士と呼ぶのが適切かもしれない。
まあ直接聞いてみないことには正確なところはわからないので、今は置こう。
問題は、彼をどうするかだ。
これが普通の動物ならいつも通りのケアルして終わりなのだが、なにしろ相手は人間だ。
今は先生やってるが俺も元は人間なので見捨てるに忍びない感情はあるが、同時に助けてもいいものかという考えも湧いてくる。
感情とか倫理道徳とか社会とか宗教とか、色々と面倒くさいからね、人間って。
助けるか。
そう決めたのは、人間も動物の一種だしいつも通りでええやろ、とそんな考えからだ。
いやまあ、ちょうどやってきていた狼が、赤毛の彼に鼻を寄せてスピスピさせていたからってのもちょっとあるけどね?
見た目はほほえましいが、ここ一ヶ月余り動物たちを見続けてきた俺には分かる。
あのスピスピは、「大丈夫?」じゃなくて「食っていい?」だと。
青年にレイズかけたときにちょっと残念そうに去っていった狼一家には悪いが、目の前で人間がモグモグされるのは勘弁だった。
かくして、とりあえずの命の危機を脱した青年を、俺は右手でもって持ち上げ自分に寄りかからせるようにした。
後はケアルでもかけて、目覚めるまで放置しておけばいだろう。
ケアル、そうケアルだ。
ケアルラでもケアルガでも、ましてや影の薄いケアルダでもなくただのケアル。
多分使おうと思えば上位の回復魔法も十分に行使可能なのだけど、今のところはケアル一本で間に合ってたりする。
エクスデス先生由来の大魔力も関係しているのかもしれないが、重症からの急速回復にレイズを使うくらいでケアルラ以上に出番が無い。
……過剰回復で鼻血出ちゃうかどうかが怖くて、試していないとも言う。
一応、全快状態の自分に回復魔法をかけてみたところ、無傷の状態で回復させても特に悪影響は無いようには思える。
ただし、治験の対象がエクスデスボディなので、ぶっちゃけ参考になるかどうかは微妙。
悪い予感が当たって過剰回復で体がパーンしたりしても、あっさり復元できそうなんだもの。
「ケアル」
と言うことで、行き倒れさんにはケアルかけといた。完治した。顔についてた細かい傷も、もうなくなった!
ところで攻撃魔法主体の黒魔法を使った記憶がここしばらくありませんが、俺は暗黒魔道師です。
どの魔法が得意か聞かれたら真っ先に回復補助系と答えますが、俺のジョブは暗黒魔道師です。
あと真空波とか打てます。
……。
これさ、パラディンじゃね?
ただし、ドラクエの方の。
つづこう。