『我が名はエクスデス』
どうも目を覚ました赤毛の青年に聞かれて、思わずそんな答えを返してしまった俺です。エクスデス先生やってます。
ちなみに言語関係はフリーパスで翻訳されている模様。少なくとも、赤毛の彼は日本語使ってないので。口の動き的に。
「エクスデス……殿。自分は、アルト。王国近衛騎士団の騎士、でした」
何かを悔いるようにそう言った赤毛くん、もといアルトくんは、ポツリポツリと懺悔するように事情を話してくれました。
突如として侵攻する帝国、崩壊する王国、逃げ延びた王女と殿軍となって壊滅した近衛騎士団、裏切り者の貴族。
なるほどFF2か!
すみません、せめて心の中で茶化さないと重いんです。話の内容が。
まあ、概要的にFF2でも間違って這いないと思う。さすがに皇帝が黄泉の国の力を使ってるかどうかまでは分からないけど。
「そして自分はこの森に逃げ込み、エクスデス殿、おそらくは貴方に助けられたのでしょう」
アルトくんは、話の最後をそう言って締めた。聞いてみたら、自分の体についていた傷がなくなっていたことからの予想らしい。
身の上を説明しながら、自分でも状況を整理していたんだそうな。
聡明で責任感が強く、唯一生き残りでついでに美形。アルトくんの主人公力(しゅじんこうちから)の高さに、俺ビックリです。
で、分かりきったことだったけど「行くのか?」と聞いたら、「はい」と重々しい返事が返ってきました。
「分かってはいます。自分一人では、帝国の包囲網を抜けることすらかなわないだろうと」
アルトくん個人に対するものまでやってるかは分からないけど、帝国による敗残兵狩りが行われているのは想像に難くない。
見つかろうものなら、きさまら反乱軍だなってやつである。
一人のほうが身軽と言う点は利点にも見えるが、食料やら水の調達に目的地までのルート探しも全部一人でやる必要があるのだ。
アレコレやってる内に、多分警戒網にひっかかる。
ふむん。……。
「命を救っていただいたことに感謝を、ですが自分は」
「待て」
今にも永訣の言葉を告げそうなアルトくんの言葉をさえぎって、俺は実に久々にその場から立ち上がった。
それによって下半身に巻きついていたつる草がブチブチとちぎれ、甲冑に積もっていた土や草がボロボロと零れ落ちる。
二度三度、肩や腕を回してみるが特に問題はない。
「エクスデス、殿?」
「私も行こう」
随分と小さくなった、もとい立ち上がったら視点が上がって見下ろす形になったアルトくんに、俺はそう言ってみせる。
それをなぜかと問われれば、まあ助けたんだから最後まで面倒見ようぜって程度。
無事にたどり着けたかどうかでやきもきするのが嫌だった、とかそんな感じだ。
「それは……いえ、本当によろしいのですか?」
「よい」
どうやら、アルトくんは俺の同行を許してくれるようだった。
かっこつけて立ち上がったのはいいけど、俺の姿って超絶目立つからね。ありがたいけど、ちょっと……って言われないか不安だった。
しかし、そうなるとさすがに土まみれの格好はどうにかしようという気分になってくる。
こう、ふんっ! と気合入れたらどうにかならないだろうか?
「ふんっ!」
「っ!?」
なりました。どうにか。
ちょっと土やほこりや草なんかが飛び散ってアルトくんをビックリさせたものの、エクスデスメイルは新品同様のピカピカに。
そのあと、せっかくなので積み重なっていた動物たちからの『お供え物』を幾つか持っていくことにする。
飲み食いいらずの俺はともかく、アルトくんには必要だからね。運搬にはエクスデスマントを外して風呂敷包みに使用しました。
再生成すればマントはいくらでも増やせるし、意外と便利だなこの能力。
あ。
いかん、忘れるところだった。使いどころは思いつかないけど、放置は不味い。
「ふっ!」
「!??」
と、言うことでもう一回気合を入れて、『そいつ』を手元に引き寄せる。
土と草を蹴散らし、ビュンと風を切って俺の手元まで飛んできたのは、ほとんど地面に埋没していた死神の剣。
またも驚かせてしまったアルトくんにはごめんなさいである。
しかし、これでこんどこそ出発の準備は整った。
「では、行くとしようか」
「は、はい」
なぜか背筋を伸ばして返事をしたアルトくんに案内を頼みつつ、俺は森の泉を後にする。
ずっとこの場にいるのも悪くはないと思っていたが、いざ外の世界へ思いをはせればやはり自然と心がおどるものらしい。
今さらながらここが異世界だと確定したことでもあるし、落ち着いたらアルトくんに色々と聞いてみるのもいいだろう。
「ファファファ……」
「!?」
思わず笑ったら、アルトくんがすごい勢いで振り向いていた。
すまぬ、すまぬ。
序盤のお助けキャラ程度の働きはするから、許してほしい。
パラディン(仮)だけに。
銀の槍はもってないけどな!
つづくん?