エクスデス先生(仮)   作:Rakusai

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エクスデス先生6

 草を踏みつけ、低木の枝を切り払い、木立の合間を縫って森を行く。

 足元には獣道。

 しかしそれも途切れ途切れのつたない線でしかなく、眼前にはどこまでも続く樹木のとばりが下りている。

 

 そんな感じの未開の森からこんにちは、今日も今日とてエクスデス先生をやってます。

 

 いやしかし、ここ一月ほどを暮らしていた場所は、割りと掛け値なしの未開の地だった模様。

 森歩きに慣れてないとは言え、専業軍人であるアルトくんの足で七日歩いても踏破できないと言う点も森の広大さを感じさせます。

 もういっそ、樹海と呼んでも差し支えはないでしょう。

 

「森の奥地は、迷いの森とか帰らずの森と呼ばれることもあると聞きます」

 

 とはアルトくんの弁。

 兎にも角にも木々の数が多く似たような景色が続く上に、熊に狼、時々虎まで出るので、その厄い名称も納得ものです。

 まあ、我が魂の故郷……は日本なので、我が肉体の故郷(多分)のムーア大森林に比べたらマシだと思いましょう。

 少なくとも、森の木が動いて道を作ったり塞いだりはしないようですし。

 

「森の精霊、魔物、そういった噂話は昔からありますが……少なくとも、自分は目にしたことがありません」

 

 アルトくんは、チラリと俺の方へと視線を向けてからそう言う。

 ああ、うん。そうね。この森に不可思議存在はいるか? って聞かれたら間違いなく俺=エクスデス先生だよね。

 ここに来てから時間はたっていないので、噂話とは無関係だけど。

 

 そもそも、精霊と言うほど清廉じゃあないし魔物と呼ばれるほど邪悪でも……邪悪、でも……後者は自信ないわ。うん。

 エクスデス先生の出自を考えると、ガッチガチの邪悪の化身言われても否定できないです。暗黒魔道師だし。一応。

 

「ファファファ」

 

 そんなわけで、笑って誤魔化しておくことにした。自分でも説明し切れる気がしないのでしかたがないと思いたい。

 中の人の俺はともかくとして、外の人ことエクスデスボディがどこから来たかも謎ですし。おすし。

 アルトくんも、特に追求することなく小さく息をつくだけに留めてくれた。

 そして俺たちは、再び言葉少なに南に向かって森を歩く。

 

 木々や地形が邪魔になれば迂回し、時には下草や低木を払って前進した。

 ここで役立ったのが死神の剣。まさか植物相手に即死発動してくれるとは、このエクスデス先生の目を持ってしても見抜けなかった。

 死神の剣で低木ぶった切ったら、あっという間にシオシオと枯れ果てて後は蹴りでも入れればあっさりと道を作ることが出来た。

 らくちん、らくちん。

 隣で見てたアルトくんはすごい引きつった顔した後に、一歩離れて歩くようになったけど。

 

「そろそろ日が暮れます。今日はここで夜営にしましょう」

 

 そうやって進んでいる内に見つけた少し広めの木々の合間で、アルトくんはそう言って歩みを止めた。

 夜通し森歩きをするんじゃないかと思っていたが、どうやら今は無茶をするような場面ではないと判断したらしい。

 焦りとか色々とあるだろうに、本当に人が出来ているなあ。

 

 さて、ここで一つ、森歩きなんてせずにテレポ使えばいいんじゃね? と疑問が湧いて出る。

 

 時空魔法テレポ。

 大変便利で浪漫溢れる空間移動魔法であり、FF5的にはダンジョンからの脱出手段にあたるものだ。

 まさに今の状況にピッタリのこの魔法、しかし俺はとある恐怖から使うことができないでいた。

 

 いしのなかにいる。

 

 ゲームが違うとか言われようと、転移魔法言われるとこの可能性が脳裏をよぎるのだ。

 それに俺はこの森の奥地から一歩も動いたことがなく、森の入り口にテレポしても何所に出るのか分からない。

 これで北側の、帝国の制圧下にあるだろう方向に出てしまったら目も当てられない。

 この辺を考えると、世の移動魔法使いたちが一度行った場所にしか転移したがらない理由が何となく理解できるってもんだ。

 まあもちろん、いつかはダテレポでビュンビュン移動してみたいので、石ころや何かを使った実験は進めるつもりでいる。

 俺、いつか教会の屋根でふんぞり返ってる異端審問官の隣にテレポするんだ……。

 この世界に居るか分からないけど、異端審問官。

 

 そんな益体のないことを考えながら行っていた野営の準備も終わり、目の前には焚き木が積み重なっている。

 エクスデスマントの風呂敷包みから、今日の食事を取り出しているアルトくんの姿を眺めながら、俺は指先を焚き木に向ける。

 そして全力でやるとえらいことになるので慎重に慎重に魔力を調整しつつ、魔法を発動した。

 

「ファイア」

 

 ボッ、と音を立てて極小の火が焚き木に火をつけて暗くなり始めていた周囲を照らす。

 うむ。これだけはお供えの調理のため時たま使っていただけあって、火力の調整は完璧だ。

 

「エクスデス殿……今の力は」

 

 そして、ちょっといい気分になった俺の視線の先では、突如生み出された炎を前に神妙な顔をするアルトくんがいた。

 

 あれっ?

 

 

つつく

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