鋼鉄のシスター   作:ジェラシー卑屈川

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人生初めての投稿となります。

見直しは行っておりますが、誤字・脱字あると思います。その場合は脳内補完の方お願いします。

玄人様から見ればちゃちな物語になると思いますが、どうか生暖かい目で見守ってください。



第1章
交通事故


「はぁっはぁっはぁっ...」

 

 暗い夜道にコツコツとヒールが道路を叩く音が響く。

 

「まったく、今日はなんてついてないのでしょうか…はぁ」

 

 少し大きめの独り言を呟きながら小走りで走る修道服を着た女性の名は、『黒須真理亜(くろすまりあ)』という。

 彼女はこの町にある小さな教会のシスターだ。

 

「ここまで帰りが遅くなるなんて思ってもみなかったわ…はぁ、ふぅ」

 

 遅刻してしまったことをぼやく真理亜は、普段から運動らしい運動をしてこなかったので、あまり長くない距離を走っただけでも鉛のように重くなっていく体に鞭を打ち、普段の生活を改めなければいけないと思いながら自宅へ向けてひた走る。

 

 運動が苦手な彼女が走ってまで急ぎ帰らなければならない理由…それは2126年に全世界で一大ブームを引き起こしたあるオンラインゲームが原因である。

 

 仮想現実体感型オンラインゲーム《ユグドラシル》。このオンラインゲームは膨大な情報量を売りにしたゲームであり、その膨大な情報量から作られた広大なオープンフィールドを、探検・開拓・発見していくことが目的のゲームである。

 その方法はプレイヤー次第であり、仲間を見つけて共に旅に出るのもよし、あるいは同じプレイヤーを倒してアイテムを略奪するもよし…他にも数えきれない程の様々な要素がてんこ盛りで、その高い自由性が話題を呼び、瞬く間に一大ブームと化したのだった。

 

 そんな一大ブームとなったオンラインゲームに、ゲームなど今まで無縁の存在だと思っていた真理亜も興味をそそられ、友達は居た者のあまり多くは無く、教会での仕事もあってなかなか外へ遊びに行く機会がなかった事をきっかけにしてなんとなく遊んでみることにしたのだ。

 

 《ユグドラシル》の世界に引き込まれるのはそれはあっという間だった。

 今まで味わうことのなかった感動や興奮、達成感を《ユグドラシル》は彼女にたくさん与えたのだ。気がつけば、真面目だった彼女も休みの日には一日中《ユグドラシル》をプレイし続けるほど、無類の《ユグドラシル(大好き)プレイヤー》になっていたのだった。

 

 更に《ユグドラシル》の中で唯一無二の素晴らしい仲間たちに出会えたのだ。

 真理亜は《ユグドラシル》をプレイする中で何が一番良かったですか?と聞かれれば真っ先に仲間たちと出会えた事だと答えるだろう。それくらい、仲間達と過ごした時間が彼女にとって大事なものなのだ。

 

 彼女の所属していたギルドの名は《アインズ・ウール・ゴウン》。

 《ナザリック地下大墳墓》を拠点とする《ユグドラシル》のプレイヤーで知らないものは居ないほど悪名高い異形種ばかりが集まったPKKを積極的に行うギルドだ。

 真理亜も立派にその一員で、『鋼鉄のシスター』として恐れられ、また多くのプレイヤーの心を折ってきた悪名高いプレイヤーであった。 

 

 しかしそんな楽しかった日々もある理由により《ユグドラシル》をプレイできなくなってしまった。

 

 それは愛すべき父の死。

 

 真理亜は悲しみに明け暮れ、更に父が亡くなったことで教会は真理亜一人だけになり仕事量が倍増。満足にログインができない日が続いて、ついに真理亜は引退することを決意する。

 仲間達との別れは辛かったが、ギルドメンバーは父の死を家族の様に悲しんでくれ、またログインできなくなると真理亜が言った時も誰も反対せずむしろ暖かく見送ってくれた。

 

 彼らの優しさに応えるべく、現実世界に戻り父の死と言う悲しみから立ち直った真理亜は、今日にいたるまで忙しい日々を過ごしながらも充実な暮らしを送っていた。

 

 自分が《ユグドラシル》から去ってどれくらいの時間が経っただろうか?それでもあの楽しかった日々は昨日のことのように思い出せる。

 

 だが時間の経過と言うのは残酷だ

 

 素晴らしい日々を過ごしたあの《ユグドラシル》が遂に時代の波に置いて行かれ、プレイヤー数が激減。かつての賑わいが今では嘘のように廃れたこのゲームは今日、そのサービスを終了させる。

 

(あそこの角を曲がればもう家ですね)

 

 その余りにも悲しい情報を知った真理亜の下へ、かつて共に冒険をしたギルドのリーダー、『モモンガ』氏からサービス終了の時間までお話ししませんか?といった内容のメールが届き、懐かしと長らくログインできなかったお詫びも兼ねて是非参加しようと思っていたのだ。

 

 しかし、今日はことあるごとに不運が重なり、気づけば時間はもう日付が代わるのに幾ばくもかからない時間だった。これでは満足にお話もできないと思いつつも、せめてお世話になった方たちに顔だけでも出そうと決意し、今に至る。

 

 時刻は夜中の11時45分。この調子でいけば何とか0時00分前までにはログイン可能な時間だ。

 

(何とか間に合いそうですね、もう少しの辛抱です頑張りなさい私!)

 

(もつ)れる足を何とか振るい立たせ、速度を上げる。

 

しかし、走る勢いを殺せぬまま曲がり角を曲がったとき

 

 

―――この日"最大の不幸"が彼女に降りかかるのだった。

 

 

(あぁ…これは…)

 

 曲がり角を飛び出す形で交差路に出てしまった真理亜は、早く帰らなければという焦る気持ちで周りが見えていなかったことに気づき後悔する。しかし"後悔先に立たず"と昔の人はよく言ったもので、彼女が気付いた時にはもう遅すぎたのだ。

 

 彼女が後悔した理由、それは飛び出した先で鉢合わせたトラックが、自分めがけて突っ込んで来ていたのだ。

 

 トラックの運転手も飛び出してきた女性に反応し、けたたましいクラクションを浴びせるが、トラックの走る勢いは止められない。

 

(…まったくもって、自業自得、ですね…)

 

 トラックとぶつかる刹那の間に、走馬燈の如く頭の中で色んな人の顔が思い浮かんだ。そして真理亜は心の中でその人たちへと謝罪をする。

 

(ごめんなさい…お父さん、そしてギルドの皆さん…さようn)

 

―――キキィーーーッ!!ドン!

 

 午前0時00分。大きなクラクションがあたりに鳴り響いた。深夜にもかかわらずその大きな音に何事かと人々が集まって来る。それからすぐに全身を激しく打った女性が発見され、その凄惨な姿はそこに集まった誰の目に見ても即死の重症だった。

 

 

 

―――…はずだった。

 




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