なんも言えねぇ…ですよ、これは。
読者の皆様方、ド素人をここまで応援していただき本ッ当にありがとうございます!!
では本編をどうぞ
帝国騎士を消し去るのに時間はほんの1秒もかからなかった。
しかしその場に未だ残っていた人間に対しては恐怖を植え付けるという意味では充分な時間であった。
村の男共は口々に叫びながら村へ脱兎の如く逃げ帰っていく。だがそれでもまだ一人残る者が居た、ヨーゼフカだ。
ヨーゼフカは帝国騎士共を一瞬で消し去った後動かなくなった目の前にいる存在に意を決して声を掛ける。
「…な、なぁ…本当にお前あの『ローザリア』なのかよ…?」
その呼びかけに呼応するようにして、固まっていた目の前の存在が動き出しヨーゼフカへ体を向けると問いに答えた。
「ソウダ。我ハオ前達ガ助ケ出シタ人間、否、異形種ノ化ケ物『ローザリア』ダ。」
ヨーゼフカは違うと言ってほしかった。
しかし帰ってきた返答は残酷なまでに真実だった。
それでも、どうしても認めたくないヨーゼフカは強引にその真実から目を背ける。
「嘘だっ!!ローザリアを何処へやったんだこの化け物!!ローザリアを返せよっ!!」
ヨーゼフカは叫ぶ。
美しかった彼女が、笑顔が素敵な彼女が、自分が思いを寄せた彼女が、この世のものとは思えない化け物になってしまった真実を否定するために。
彼の叫びは魂の叫びだ。
もし人間であったならばその熱き思いに心を動かされただろう。だが身も心も機械となってしまった今、どうしようもないくらい人間という存在に無関心になってしまったのだ。
村人達を救うために人の姿を捨てたことで、まさか人の心まで忘れてしまうとは思いもしなかった。このことを実感した時は、今まで共に暮らし友情や絆を深めていった人たちへの感謝の心を忘れるなどありえない!と今までにないくらい自分を憎んだ。が、次の瞬間にはむしろそれが当然の事であったかのように倫理観がすげ変わり、すっと馴染んでしまったのだ。
先ほど村人達に抱いていた思いや感情は機械の心になった今でも覚えている。しかし彼らに笑顔を向けていた自分が信じられないほどに今は何も感じない。エンリとの約束も、ヨーゼフカの告白も何もかもが全て遠い過去の出来事のように思えてしまった。
こうして異形と化した自分へ怒りと悲しみの感情が混ざった声で必死に語り掛けてくるこの青年にさえも…。
何か反応を返さなければ、話が進まないと思った彼女は肩をすくめ青年に話しかける
「仕方ガ無イ…。」
彼女は器用に体を変形させ、人間の姿と機械の姿を半分にして見せた。
目を背け続けていた真実をまざまざと見せつけられたヨーゼフカは絶句する。やはり目の前のコレは彼女なのだと。
「嘘でハ無イわ、コレが本来の私ノ姿なのダ。」
人の姿の時に使っていた声と機械の姿の時に発する合成音が入り混じった不気味とも言える声と口調で、口を開き目を見開いたまま動かなくなったヨーゼフカに淡々と話を続ける。
「私は此処へ来タ時からズッと人間でハ無イ事を隠シてイたのダ。村の皆ヲ、そシてオ前を騙し続けテいタのデす。イつかハ皆に正体ヲ明カサねバと思ッていタ。しカシ平穏ナ日々を捨てたクナいがたメに、何モ私につイテ聞いてコなイ貴方達に甘エ続けた結果、こノ様なナ形で正体ヲ晒スことニなってシまッた…。
ソして人ノ姿を捨てタ今、我は人ノ心まで忘レた。もう貴様等ニ今マでの様な接シ方はできヌ。今の私ナラ躊躇イなく貴方達ヲ殺すコとガデきるでしョう。…私ハ此処を去ル。こンな化け物ヲもう村デ飼ウ訳にハいかナいでショう?」
淡々と喋るローザリアの最後の言葉にヨーゼフカは反応し、驚愕の顔を懇願の表情に変えて、彼女にその考えを改めるように訴える。
「そんなこと言うなよ!?こんな事にはなっちゃったけど、いつも通りのあんたに戻ってりゃ大丈夫だって!あんたは村を救ってくれた命の恩人なんだぜ!?みんなを説得すればまた受け入れてくれるよ!!」
彼は本当にそう思っていた。ローザリアはこの村の最大の危機を救ってくれた命の恩人であり英雄だ。たとえ正体が異形の化け物だったとしても、そんな人物をないがしろにしていいわけがない!と。
「いいエ、後ロヲごらんナさイ。アの村人達の怯えた表情ヲ。我はコの村ノ皆を騙し続けタ裏切り者なノです、タとえ貴様が良クても彼ラは許さナいデショう。」
彼女にそう言われたヨーゼフカは思わず村へ振り向くと愕然とする。
村人達は村を救ってくれた恩人であるローザリアを恐怖し怯えた表情で凝視していたのだ。目を離せば次は私の番だと言わんばかりに…。
その信じられない光景に彼らへ叫ぶように問いかける。
「なんで!?なんでお前等はそんな顔をしているんだ!この人は帝国共から村を救ってくれたんだぞ!そんな目で見るんじゃない!!やめろよぉ!!そうだ、村長っ!あんたも見てんだろなぁ!?なんか言えよ!!!」
彼の言っていることが正しいことくらい村人たちも分かっていた。だがそれでも恐ろしいのだ、見たこともない禍々しい雰囲気を携える血に濡れた様な化け物が、常識では考えられない出来事を平然と行ったが彼女が。
確かに彼女は村にとっての恩人であり英雄だ。それでもこの恐怖を拭うにはあまりにも足りない。村長でさえも自分の中の恐怖を隠すことができず悔しそうに俯いてしまっていた。
「想像セヨ、ヨーゼフカ。仮にモ私が村へ帰ったトしまショう…コンな状態デ以前と同じような生活がデきルと思うカ?」
「っ…!」
この村人たちの反応を見れば一目瞭然だ、そんなこと叶うわけがない。例え彼女が戻ったとしても、いつ殺されるかわからない恐怖に村は静まり返るだろう。
彼にはもう何も言い返す術が無いと思ったローザリアは村に帰るように促す。
「さァ、早くオ戻りナサい…あナたの住む世界ハあちラです…。」
だがそれでも諦め切れないヨーゼフカは必死に食い下がる。
「でもっ…でもっ!」
あれだけのことを言ったのに、まだ食い下がろうとする彼にいい加減怒りを覚えたローザリアは完全形態へと姿を戻し脅すように声を荒げる。
「早ク戻れレト言ッテイル!ソレトモオ前ハ我ニ殺サレタイノカ!?」
その殺意と怒気に、必死で恐怖から耐え続けていた心が遂に折られた。
「ヒッ…くそっ…くそおおおおおおおおおおお!!!!」
悔し涙を流しながら、彼女から向けられる殺意から逃れるようにして村へ走る。
(俺は何もできなかった、彼女に何もしてやれなかった、彼女を怖いと思ってしまった、彼女を恐ろしいと感じてしまった!彼女を愛していたはずなのに!!)
悔しさに涙が止まらない。
彼女に正体を明かさせてしまった己の不甲斐なさに嫌悪感を感じずにはいられなかった。
走り去っていくヨーゼフカの背中を、ローザリアは悲しみの籠った目で見つめる。
(さようなら、ヨーゼフカ。もう会うことは無いでしょう…。これでよかったのです、私が歩む道はもう人の道ではないのですから…。)
ローザリアは心の中でヨーゼフカに別れを告げ、これからの生き方に覚悟を決めた。
彼が避難所に着いたことを確認すると、村人達が見つめる中完全形態を解いて地面に向かって両手をつけた。
「スキル発動、〈
彼女がスキルを唱え終えるのと同時に、村を囲うようにして地中から黒い金属の壁が出現した。
村人達はこれから自分達が殺されるのではないかと戦々恐々だが、これはそんなことするようなスキルではない。
彼女が使ったスキル〈
本来ならば村の出入り口に出現した門などは作れなかった筈だが、試しに『門がある〈黒鉄の防壁〉』をイメージしながら発動させると全くその通りに出現したため、どうやらこの世界ではある程度のスキルに応用が利くらしい。
未だにぶるぶると震える村人達を安心させるために、普段通りの優しい口調で説明をする。その声は決して大声ではないのにもかかわらず、村人全員の耳に届いていた。
「村の皆様、どうぞご安心ください。今出現したこの壁は貴方達を傷つけるようなものではございません。この壁は耐久力が無くなるまで貴方達を守るでしょう…。今まで大変お世話になりました。私のような人ならざる者を置いて下さり感謝の言葉もございません。私はこの村から去ります、貴方達を殺すような真似も致しません。今まで本当に有難うございました。」
今まで世話になってきた人々へ別れの挨拶を済ませると、村に背を向け、帝国騎士達の吹き飛びそこなった部位をアイテムボックスから取り出した布に綺麗に包んでいく。
人の心を忘れたとは言え、彼女は修道女である。人の死は丁重に扱わなければならない。
流石に村の目の前で墓を作るわけにはいかないので、どこか見晴らしの良い場所を見つけてそこに自分が葬ってしまった人の墓を作り弔おうと思ったのだ。
すべての破片を包み終えた時、彼女が新たな敵影が現れないかと予め発動させていた探知スキル〈プロヴィデンスの瞳〉にこのカルネ村へと近づいてくる
哀れみとも諦めともとれる表情でカルネ村を見る。村人たちは未だに怯えた表情でローザリアの事を見つめていた。
(次から次へと…カルネ村の人たちにとって今日は厄日ですね…。)
ちょっと今回は短めになってしまいました。スイマセン
半人半機のローザリアのセリフの読みにくさったらないね…
ローザリアは本当の姿になった事で、原作同様身も心も機械になってしまいましたが、まだ感情の起伏は残っております。
つまり精神操作無効スキルは未だに発動していないんですね。
次回から原作キャラとの絡みが多くなっていくのかな⤴?