若干のキャラ崩壊があるかもしれません、ご注意下さい。
CV:子安武人さんでどうぞ
…はっきり言って奴らの事を舐めていた。
ガゼフは窮地に追い詰められていた。
王国の至宝を身に纏っていない体は傷だらけになり、体力もほとほと使い果てまっすぐ立っていることも困難な状態だ。
周りは数百の天使が取り囲みその後ろには数十のスレイン法国の魔法兵、誰がどう見たって絶望的状況にしか見えない。
しかしガゼフは剣を固く握りしめ、目の前の敵を睨みつける。
「さぁ狩りも最終段階だ、獲物を休ませるな。天使たちの攻撃を止めさせず、交互に攻撃を仕掛けろ。」
ガゼフに睨みつけられても顔色一つ変えずにガゼフを攻撃をするよう命令した男は、スレイン法国『陽光聖典』の隊長、『ニグン・グリッド・ルーイン』である。
ニグンには『タレント』という特殊能力を生まれつき保持しており、その効果は『召喚したモンスターを強化する』と言うものだ。そしてニグンの後ろに存在する巨大な天使は
ニグンは先程まで無表情だった顔を勝ち誇った歪んだ笑みを浮かべた顔に変え、まるでボロ雑巾のような姿になったガゼフに最後の言葉を送る。
「…止めだ。ただし一体で行かせるな、複数で確実に息の根を止めろ。」
命令された部下たちは一斉にガゼフへと天使を突撃させる。
その圧倒的物量差、圧倒的優位差に勝利は目前だろう。
ニグンは興奮を堪えるのに必死だった。何せ王国最強と謳われる男を自らの手で葬り去ることができるのだ、これに喜ばずしてなんとしようか!この男を討伐した暁には、スレイン法国の神官長から名誉の勲章が与えられ、自分の地位はさらに高いものになり、強大な権力で多くの部下を意のままに操ることさえ容易いだろう!
想像するだけで涎が出るくらい歓喜に身が振るえるが、部下たちの手前余り情けない姿を見せる訳にはいかないので、修行で鍛えた強い意志と理性により何とか表面化しないように封じ込める。それでも隠し切れない愉悦に今か今かとガゼフの悲鳴が聞こえてくるのを心待ちにするニグンだった。
「があああああああああ!なめるなぁあああああああ!!!」
だが、己の運命にまだ抗おうとする心底哀れな男がニグンを失望させるのだった。
ガゼフは限界を迎えた体で尚も抵抗し続け、突撃させた天使が真っ二つに切られていく。だが、そうする間にも魔法兵が放つ遠距離魔法攻撃が容赦なく全身を叩き、また地面に膝をついて口からは苦痛の呻きが漏れる。だがその瞳は真っすぐにニグンを睨み続け、執念の炎はまだ燃え尽きていない。
あれだけ痛めつけたのにもかかわらず未だに対抗心を燃やし続け、自分に刃向かってくる姿は滑稽としか言いようがないが、常人には真似できない偉業だろうと素直に感心してやる。
「諦めろ、見苦しいぞガゼフ・ストロノーフ。お前は今日、今、此処で、私に殺されるのだ。」
「黙れぇ!!俺は王国戦士長!この国を愛し、そして守護する者!我が国土を!大切な民を!土足で踏みにじる貴様らに負けてたまるものかぁ!!!」
自分に対して激昂するガゼフへ冷ややかな視線を送り、話にならないと溜息をつく。なんと哀れな…戦士であるならば潔く散ったらどうなのだ。
「そんな夢物語を語るから死ぬのだよ、お前は。もっと現実を見れば良かったのだ、あんな辺境の村など切り捨てて逃げるほうがよっぽど賢いとは思わないのか?お前が死ねば我々は万々歳だが、お前の祖国にとっては多大な損失となるのが分からないわけではあるまい、本当に国を愛しているなら村人の命など捨て置いて、さっさと逃げるべきだったのだ。」
「下種が……お前とは…平行線の様だ……行くぞ。」
ぼろ雑巾とも呼べなくなった男は地面に剣を突き刺し、腕の力でまた体を無理やり立たせると、剣を引き抜きニグンに切っ先を向けるのだった。
いつまでも諦めないガゼフの姿勢にニグンは軽く苛立ちを覚える。
どうせまともに動けないのだ、いくらでもそこで吠えていろ。すぐに大切な民とやらと同じ場所へ送ってやる。
「無駄な足掻きを止め、其処で大人しく横になれ。せめてもの情けに苦痛なく殺してやる。」
ニグンは本当に最後になるであろう命令を部下に下す。
「各員、全力をもって奴を始末しろ。」
先程の倍以上の天使の突撃と、魔法兵による援護射撃が繰り出された。この攻撃をくらえば誰が相手だろうとしても生き残れる人間はいないだろう。
成す術なく死んでゆけ…
興味が薄れたニグンはもう結末が分かっている戦闘に早々に見切りをつけ、帰還の準備を始める。
―――始めようとした時、目を疑った。
ガゼフは絶体絶命の極限的な状況で限界突破した脳は、周囲の時間を遅く感じさせていた。俗にいう走馬燈を見ているような状態だ。
(クソッもう駄目なのか!?俺が手塩にかけ共に戦ってきた仲間たちも奴等の手に倒れていく…俺の体はもう指先一本でさえ動かせない…このまま王国の何の罪もない国民を無残に殺した憎たらしい敵を叩き斬ることもできずに死んでいくのか俺は!?何か、何かないのか?この状況を打開する会心の一手は!?)
必死になって思考を巡らすが、出てくるのは仲間達の顔と、一緒に過ごしてきた思い出ばかりが浮かんでしまう。
もう駄目なのか…そう諦めかけた時一人の美しい女性の顔がフッと何の脈略も無く浮かんだ。そこから先の行動は早かった。
ポケットに入れていた木の人形を握りつぶさんばかりの強さで握り締め、手の平から血が滴るのもお構いなしに神にも
(頼む、俺のことなどどうでもいいから仲間と民を救ってくれ!そして叶うなら、あの憎き王国の敵に天罰を!!)
―――汝の望み、叶えましょう。
願った瞬間すぐ耳元で凛と澄んだあの美しい女性の声が聞こえた。
そしてガゼフ気づいた時は、先程まで戦っていた戦場とは遠く離れた場所にある草原だった。隣を見れば兵士たちや馬までもが揃っており皆混乱の表情を浮かべていた。
「隊長!無事ですか!?」
「…副隊長か…?私は大丈夫だ。それよりも…我々はどうなったのだ?」
「それが…私にもわかりません、気づいた時には皆ここに居ました。…ただ一つだけわかるのは、部隊全員の命が救われた、と言う事だけでしょう。」
ガゼフは副隊長の「命が救われた」と言う言葉で張り詰めていた緊張が一気に解け、立っていられるのが不思議なほど酷使した体は膝から崩れ落ちた。それからやっと手の平に痛みを感じ、握り締めていた物事ポケットから引き抜く。
取り出して見ると、ずっと握りしめていた木の人形は見事なほど縦に奇麗に割れており、この人形が我々を救うために力を使い果たしたのだと理解した。
しかし皆の安全を願った時に聞こえて来たあの女性の声は…
「…フフッ、なぁ副隊長よ、つくづく何者なのだろうな…あの美しい女性は。」
「え?」
そうしてガゼフは眠るように気絶した。
短くてすみません、いい感じにくぎれなかったものですから…
次回からは戦闘パートに入っていく形になっていきます、
今回もここまで読んで頂きありがとうございました!