鋼鉄のシスター   作:ジェラシー卑屈川

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作者は非常に嘘つきです。
今回『子供達』を出す事が出来ませんでした。平伏することしかできません。なんなら切腹します。

楽しみにされていた方、本当に申し訳ございませんでした。

ニグンさんの原作とは逸脱したキャラ崩壊があるので御注意下さい。


望まぬ来客

 

「なん…だと…?」

 

 王国最強の戦士、人類の希望、13英雄の生き写し、その他数々の名誉ある二つ名を持つ本当に最後まで気に食わなかった男『ガゼフ・ストロノーフ』は、我らスレイン法国の独立特殊部隊『陽光聖典』の手により確実に討ち取った筈だった(・・・・)

 

 だが、どういうことなのだこれは…?

 

 ニグンは信じられない光景を目の当たりにしていた。

 

 時間は少し巻き戻る。

 ニグンはガゼフ・ストロノーフを討つべく、監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)によって強化された大量の上位天使(アーク・エンジェル)と魔法兵による援護攻撃を命令し、その衝撃で地面の砂が大量に巻き上げられたため巨大な砂煙が発生し著しく視界の明瞭度が悪くなったが攻撃をする前から既に奴の死は確定済みだった。

 砂煙が晴れるまでの時間を呆けたまま無駄に突っ立って居るほど馬鹿な真似すまい、と死亡したであろう男に背を向けて祖国へと帰る準備をしようと思ったのだ。

 

―――一人の兵士が声を上げるまでは…

 

「なんだ…あれは?」

 

 そう一言だけそばにいた兵士が呟いたのをニグンは聞き漏らさなかった。

 もしやまだ生きているのか!?と反射的に振り返ったそこには未だモクモクと舞う砂煙があったが、あったのはそれだけではない。

 

 直立する黒い影があったのだ。

 

(そんな馬鹿な!?奴は不死身か!?)

 

 ニグンは思いっきり顔を歪めて胸ポケットへと手を伸ばす。服からはまだ出さずその手に掴んでいたのは高位階の魔法が封印されているマジックアイテム『魔法封じの水晶』だ。これには第7位階と言う到底人類では到達しえない未知の位階の魔法が封じられており、その価値は一国を買えるほどだろう。しかしどうして彼がそんなモノを持っているのかと言えば、彼の上官である神官長から直々に「もしもの時に使うよう」と預かっていたからだ。

 

(使う気はさらさら無かったが、まさかこれを使わなねばならない程の相手だったとは…)

 

 心の中で敗北にも似た感情を抱きながら無言で黒い影を見つめ、砂煙が晴れる時を待つ。

 

 そこへ一陣強い風が吹いた。

 急速に砂煙が晴らされていくとそこにあったのは、攻撃をくらう最後まで自分たちに闘志を燃やして反発し続けた戦士の死体は欠片も無く、その代りにそこに居たのは全く見覚えのない美女が見慣れない黒い服を強風ではためかせながら立っていた。

 

 そして今に至る。

 

「お初にお目にかかります、陽光聖典の皆さま。私は『ローザリア』と申す者でございます。」

 

 目の前の女は優雅なお辞儀と共に自己紹介をした。

 その流れる様な美しい所作と場違いすぎる唐突な出来事に、陽光聖典の兵士たちは口をアングリと開けたまま目を丸くして呆然と立ち尽くすしかなかった。

 

「…こっこれはこれはどうもご丁寧にお嬢さん、自己紹介をどうもありがとう。いやぁしかしおかしいですね…先ほどまであなたの居たその場所にはボロ雑巾のような男が居たはずなんですがねぇ?すみませんが、何かご存じありませんか?」

 

 ニグンは呆けそうになる頭を必死にフル回転させ、名乗ってすらもいないのに自分達の存在を知っているこの女に危機感を覚え、冷静に対処するべく彼女に返答しながら女の素性を探り出す。

 

 だが女はニグンの詮索など気にもかけないで、投げかけられた質問にただ答えていく。

 

「えぇ、存じております。そのボロ雑巾のような男の名はガゼフ・ストロノーフ、王国の戦士長をされている方で、人間達からは王国最強の戦士と呼ばれているみたいですね。」

 

 そのはっきりしながらも明らかに自分を嘲る様な物言いに思わず眉尻がピクリと撥ねる。

 

「フム…よく、ご存じで。では次の質問、その男を何処へやった(・・・・・・)?」

 

 今の質問に答えたことで、目の前の女はガゼフと何らかの関係を持っていることが分かり、そしてこの状況に関与していることもまた明らかになった。ならば次に問うべき事はこの女が奴を何処へやったかだ。しかし問題はその方法だ。

 

 ニグンは聡明と自負する灰色の頭脳で今起きている状況を分析する。

 

(先ほどの状況を可能な限り整理するならば、ガゼフ、そして奴の仲間達までもがこの女の出現する間に消えていた。ガゼフであるならば、…考えたくはないがあの状況で何かしらの〈武技〉を発動させ天使と魔法の攻撃を避けて、あの砂煙の中逃げ出すことはできるだろう。だが四方八方を我々に囲まれた状態で誰にも見つからず砂煙の中から脱出することなど不可能だ。そして何よりも奴の部下が一緒に消えたことが説明できない。奴等の中には魔法を使えるような者は存在していなかった、つまり魔法による方法で脱出の可能性は無い。そもそもそんな事が出来る魔法など私が知っている中で一つしかない、それも書物の中の存在だ。…第6位階の魔法〈転移(テレポーテーション)〉私ですら到達できない域にある魔法をあの筋肉ダルマが使える訳がない!ならばもう残る可能性は二つしかない、マジックアイテムの可能性とこの女だ。しかし王国にこんな真似が出来るマジックアイテムが存在するなど聞いたことも無い。

 

 残ったのは目の前この女のみ…

 

 今まで生きてきた中で一度も見たことがない黒い服を着たこの女は得体が知れない。名乗ってもいないのに既に我々の部隊名を知っていたことから相当情報に長けていると考えられる。先に自分から名乗ったことで、深く詮索できなくしたのも賢しい…侮れない相手だ。だが、コイツ以外に原因が見つけられない。なんとかして口を割らせなければ…)

 

 ニグンは思慮耽っていた頭を目の前の謎に満ちた女に切り替え、情報を聞き出すことに専念する。

 

「いや、失礼した。"やった"などとぶっきら棒な言葉を使ってしまって申し訳ない、少しびっくりしてしまったものでね。では改めて、貴女はガゼフ・ストロノーフをどのようにして此処から移動させたのですか?」

 

「お気になさらないで下さい。それよりも方法ですか…そうですね"神に祈ったから"とでも言っておきましょうか。」

 

「なにィ?」

 

 問いかけに答えた女の返答があまりにも抽象的過ぎて繕っていた紳士の表情を崩してしまう。

 

 (一体どんな手段や方法が飛び出てくるかと思えば、神に祈っただと?ふざけるな!さっきからこの女は私を馬鹿にしているのか!?そうだ、そうに違いない!その奇麗な顔の下にどれ程の醜い本性を隠しているのやら!!)

 

 それからのニグンは、自分に対してふざけた態度を取る女へ向けて考えうる限りの論理で捲くし立て「お前以外がこの状況を作ることは出来ない」と言うことを唾をまき散らしながら述べた。

 

 必死の説明を聞き終えた女は何か納得したような顔をして

 

「…なるほど。貴方の話を聞く限りでは、この世界で転移をするというのはどうやら相当に大変な様ですね。」

 

「はァ!?さっきからお前は何を言っているのだ!いい加減白状をしろこのクソアマァ!!」

 

 女だからと言って穏便に事を進めようと努めて苛立ちを我慢していたが、全然会話にならないこの状況に頭の中でプッツンと糸が切れたニグンは、溜まっていた鬱憤を吐き出すかのように全身で怒りを表現した。特にその顔は般若の如く醜く歪み、火が出そうなほど赤くなっていた。

 

「もういい!ガゼフのことなど後回しだ!!女ァ、死にたくなかったら答えろ!お前は此処へ何をしに来たのだ!!!」

 

 隠すことのない怒気は周りの兵士をも背中を縮ませる迫力だったが、女は全く表情を変えず柳に風で気にも留めていないようだ。それが更にニグンの怒りのボルテージを上げるのだが女が喋り出したので「流石に命は惜しいか。」と少しだけ頭を冷やす。

 

「そのご質問にはお答えしましょう。私はあなた方を煉獄へ案内するために赴いた次第です。」

 

「…。」

 

 ニグンは呆れてものも言えない。女は話を聞かないという噂はどうやら本当の様だ。

 しかし、女の余りにも世間知らずというか怖いもの知らずな発言に陽光聖典の中からは思わず吹き出す者が続出し、嘲笑が巻き起こる。

 この女は我々になんと言ったのだ?煉獄へ連れて行くだと?この陽光聖典を?ここまで冗談のセンスがあるというのは素晴らしいな。

 ニグンも部下たちに吊られて、呆れていた顔を徐々に笑いに変えていく。ついには満面の笑みなり、大声で笑いだした。

 

「あーっはっはっはっ!!面白い事を言う女だ!つまりお前は私たちを殺す(・・)と言うのだろう?あー可笑しい…世間知らずにもほどがあるだろぅ?お前は最初に言ったよな?我々の部隊名を、『陽光聖典』となァ!!それを殺すだと!?お前のような野暮ったい女に我ら陽光聖典に対して何ができるというのだァ!!あーなんだか段々イライラして来たぞ!!お前はガゼフ・ストロノーフすらあと一歩で殺すところまで追い詰めたこの陽光聖典に喧嘩を売ったのだァ!もう全てどうでもいい、たっぷりと後悔して死んで行けこの愚か者がァ!!!」

 

「…あと一歩のところで逃がしているじゃないですか。」

 

 ニグンの発言に思わずポロッと本心が出てしまったローザリアは「やってしまった」と後悔したがもう遅い。目の前の男は赤かった顔が更に赤くなりブチィッ!!と何かがちぎれるような音を男から聞いたような気がした。

 

「こんのビチグソがァ!!お前たち!あいつをぶっ殺せェ!!!」

 

 ローザリアの要らぬ一言で下がりかけていた怒りのボルテージがMAX120%なったニグンは、ほぼ絶叫の命令を部下達に下す。そしてニグン同様に苛立ちを高めていった部下たちはその命令を待ってましたと言わんばかりに待機させていた全ての天使を突撃させる。天使は円形に隊列を組み円の輪を狭めていくようにして対象に向かって突撃する。その間にも怒りでいつも以上に気合の入った魔法攻撃で360°から攻撃し、相手を一歩たりとも動かせる隙を作らせない。

 

―――ドガァアアアアアアアアン!!!!

 

 天使と魔法兵による見事な連携プレイにより終始一歩も動けなかった女は呆気なくその数えるのも億劫になるほどの天使たちの刃によって体を貫かれた。

 

 ニグンは歪んだ笑みを顔に張り付けたまま余裕の態度で最後まで眺めていた。

 

(もし仮に無傷のガゼフがこの攻撃を受け止めたとしても、一撃で瀕死の重傷にまで持っていける威力だろう。ただあいつの場合は〈武技〉を使うせいでここまで上手くは決まらないがな…。まぁいい、こうして奇麗に攻撃が決まった今、あのクソ生意気な女が生き残れるはずも無い。見るも無残にぐちゃぐちゃの挽肉になっただろう。情報は聞き出せなくなったが、どうせ離れた場所にはいないだろうしあの怪我だ、動くことすらままならないだろう。斥候を出して周辺を探索させれば問題なくすべてが片付く。)

 

 もうすでに勝敗は決しているのだから、早くガゼフの捜索に映らなければならないのだが、自分をここまで怒り狂わせた女の最期くらい見て行ってやろうと、未だに剣を突き刺している天使を下げさせるため命令を下す。

 

「…ん?なぜ動かないのだお前たち…?」

 

 それからの出来事は一瞬だった。

 

 天使たちの間から一瞬だけ赤く光った輝きを眩しいと感じ、瞬きをして、目を開けたとき

 

―――女を突き刺していた大量の天使たちが全部焼け堕ちていたのだ。

 

 まったく訳が分からない…一体何が起きたというのだ?なぜ天使たちは焼け堕ちている?それよりもなんであの女は生きている…?

 陽光聖典は全員このような思考に陥っただろう。

 相も変わらずあのクソッ垂れな女は砂埃一つ被らずにそこに立っている。しかし、いや違う、そうじゃない。いけないのだ、駄目なのだ。彼女は本来ならば立っていてはいけないのだ。挽肉になってなければいけないのだ。あのガゼフでさえ一撃で瀕死に追いやるとニグンは豪語したのだ。だから普通の人間が喰らっては跡形も残っていい筈がないのだ。

 

 ならなぜ彼女は傷一つない澄ました顔でそこに立っているのか?

 

 答えは、彼女が彼らが思う程普通じゃなかった(・・・・・・・・)からだ。

 

「まだ、天使は出されますか?」

 




どうして自分が書く悪役は全部某世紀末モブになってしまうんでしょうかねぇ…

そういえばUA数がつい最近1万を突破して毎晩布団の中で悶えるています。

読者の皆様方、本当にありがとうございます。
まさかここまで拙い作品を閲覧してもらえるとは思いませんでした。

今後ともよろしくお願いします。
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