鋼鉄のシスター   作:ジェラシー卑屈川

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お久しぶりです。

熱くなってまいりましたが、お元気にされているでしょうか。

さて、いよいよ話も大詰めかと思いきや、全然終わりません。困った。

アインズとのガチンコバトルとは何だったのか、甚だ疑問に思う毎日でございます。

今回も原作にはないオリジナル成分が濃いめになっておりますので、別物と思って読んで頂けるとありがたいです。

短めです。


悲劇:元凶

 聞くに堪えない雄叫びを上げ、眼前に迫りくる狂気の輩。

 

 こちらの攻撃が一切通らない鉄壁の防御力を持ちながら、一発が致命傷になるほどの攻撃力を併せ持つ規格外のバケモノ。

 

 そんな相手にどう対処してよいのか。いや、そもそも至高の御方と戦うという事態が異常過ぎている。

《ユグドラシル》時代、話すこともままならなかった彼らが、ましてや実際に手合わせなどした事がある筈もなく、初見で強大な力を持った存在と対峙せなばならないのだ。“恐れ”“畏怖”“絶望”、そういった感情が頭の中でしきりに警鐘を鳴らす「動け!」という意思に反して、体を石像のように固まらせてしまう。

 

(グ…私ノ渾身ノ一撃ヲ受ケテ無傷トハ…恐ルベシ…。)

 

 持参していたハルバードの用途はあくまで護衛用であり、不測の事態に備えてと言うよりかはむしろ護衛者としての“見た目”を意識した側面が強かった。

 よって今回持参していたハルバードの等級は、コキュートスが本気の戦闘で用いる武具に大きく劣るが、しかしそれでも伝説級の代物だったことは間違いない。

 それを攻撃の反動で崩壊に至るほどの威力で見舞った筈なのに、当の対象は無傷で尚も戦力は衰えていない。

 

 これを恐れずして何を恐れるのか…。

 

(手ノ内デデキル最大ノ攻撃ガ効カナイト分カッタ今、我々ニデキルコトハ最早何モナイ…)

 

 コキュートスは絶望する。

 

己の力の至らなさに、至高の御方の御力の偉大さに。

 

(スミマセヌアインズ様…我々ハココマデノ様デス…。)

 

 目の前を見れば、もうすぐそこまで死の権化は近づいてきていた。

 

(嗚呼、アインズ様…モット貴方ノオ傍ニ…)

 

 コキュートスが死を悟った時、――――待ちかねていた奇跡がやって来た(・・・・・)

 

 

――――ドガーンッッ!!!!!!!!!!

 

 

 凄まじい爆発音とともに大量の砂埃が巻き上げられる。

 

 突如として発生した衝撃によって後方へと吹き飛ばされたが、素早く姿勢を正し爆発のあった方に視線を戻す。

 

 その目には、超巨大な大質量の黒い魔球に押しつぶされているローザリアの姿が映しだされた。

 

「ギギ…グ…ガガガ…」

 

 そのあまりの重さにうまく身動きが取れず、チカチカと目を点滅させて唸り声をあげる。

 

 だが彼女への攻撃はまだ終わりではなかった。押しつぶされたローザリアを囲むように地面から無数の亡者が生え(・・)我武者羅に掴みかかり、もがき暴れる彼女の四肢を地面へと縫い付ける。

 

 それからローザリアを中心とし、半径10メートルの円周上に分厚く刺々しい骨の壁が出現すると、黒い魔球ごと取り囲む。

 

 さぁ、まだ終わらない。

 

 更にその骨壁を覆う様に真っ黒な正六面体が何重にも重なりあって巨大な棺が出来上がったかと思えば、締めと言わんばかりに巨大な四本の剣(つるぎ)がその四面と平行になるように地面に突き刺さり、それぞれの刃の間を紫電の如く魔力が迸る。

 

 最後に、それらの上空に三重のサークル状魔法陣が浮かび上がると、ガチャンッと錠前が閉まるような音が響き渡り、先程の喧騒が嘘のように静まり返る。

 

「さて、これで暫くは(・・・)彼女も身動きが取れない筈だ。」

 

 中空から聞こえてくる一人の声。

 

 それはとても聞き慣れた、しかし心の底から安心出来る偉大なる御方の御言葉(みことば)

 

 目の前で起こる出来事をただ立ち尽くし、呆然と見ていることしかできなかった三人の前へと黒き死神が悠然と舞い降りる。

 

「「「アインズ様!!!」」」

 

「待たせてしまってすまない。」

 

 僅か数分の間しか離れていなかったというのに、まるで数十年ぶりに再会したかのような錯覚に陥り、目頭が熱くなる。

 

「ア、アインズ様ぁ~!!」

 

 絶望的な状況に救世主のごとく現れたアインズはシャルティアの心を強く打ち、嬉しさが限界を超えて抱擁と言う名の突撃をかます。

 

「ぅぐっ…」

 

 しかし返って来たのはいつもの優しい愛想笑いではなく、何か痛みに耐える様な鈍い呻き。

 すぐさま異変に気付いたシャルティアは飛び退き、青ざめた顔で自らが抱き着いた箇所をくまなく観察する。すぐにアインズが脇腹を軽く手で抑えていることが目に留まり、青白い肌から更に血の気が引く。

 

「まさかっアインズ様!どこかお怪我を!?」

 

 その一言でセバス、コキュートスもあからさまに顔色を青ざめさせる。

 

(しまった…)

 

 少し面倒になりそうな予感を察知したアインズは、これ以上深く問い詰められまいと咄嗟にオーバーリアクションに出た。

 

「ふぇ…?」

 

 最初シャルティアは自分がどのような状況であるのかわからなかった。

 しかしとにかく心地がいいのは間違いない。

 

 体全体を包み込む黒い布、顔に当たる白く堅牢な太い骨、そして何より間近で香る大好きな人の匂い(いや匂いなどするはずないのだが、アルベド含め恐らく彼女たちしか感じ取れない特殊な何かがあるのだろう…)。

 

 ぼんやりとだが、それらの要素から一つの結論が導き出される。

 

(あれ…?もしかして私抱きしめられてる…?)

 

 その真相を確かめるべく目線を上げると、そこにはストライクゾーン直球ど真ん中クリーンヒットの超イケ骨のご尊顔があった。

 

 ボンッと軽い水蒸気爆発が起きる。

 

「はわ…はわわわ…////」

 

 顔を真っ赤に熟したリンゴよりも赤く頬を染めるシャルティアに、アインズは更に追い打ちをかける。

 

「何、心配するな。こんなものはただの掠り傷だよ。それよりも私はお前たちが無事でいてくれて本当に嬉しく思う。よく持ちこたえたな、シャルティアよ。もちろんお前たちもだ、セバス、コキュートス。」

 

「「あ、有難きお言葉…」」

 

 自分の身よりも家臣の安否を優先するアインズの姿に、二人は敬服せざる負えなかった。方やシャルティアと言えば、アインズの怒涛の猛攻を受け、少し人目に晒すのを憚るくらい溶けたバターの様に顔面を蕩けさせていた。

 

(よし、何とか言いくるめられたかな…?)

 

 アインズの怪我について誰も言及してこなさそうなので、アインズはいよいよ本題へと入る。

 

「ローザリアについて分かったことがある。」

 

「「!!」」

 

 突如として暴れ出したもう一人の至高の御方の原因が分かった。これは守護者達にとって朗報以外の何物でもない。なぜ突然我々に牙を剥いたのか、なぜあんなにも心を乱しているのか、そもそもなんでこんな事態になってしまったのか、湧き上がる疑問は後を絶たない。

 

「ストップだ。皆色々言いたいことがあるだろうが、それらに答えていられる時間は残念ながら微塵も無い。」

 

 しかしそんな雰囲気を瞬時に察知したアインズが片手を突き出し、守護者達から言葉が出る前に黙らせる。

 

「見て分かる通りだが、私の持てる上位の拘束魔法をアルベドの補助魔法で更に強化することで今現在彼女を封じ込められてはいるが、恐らくあと数刻も持たない筈だ。」

 

「なんと…!!」

 

 アインズから告げられた事実に守護者達は驚きを露わにする。なぜならばもうすでに勝敗が決したものだと思っていたからだ。そりゃ誰だってあれだけ巨大で強力な封印を見せつけられれば勘違いしてもおかしくはない。

 

「すべては終わった後だ、まずは私の話を聞いて欲しい。…よいな?」

 

 守護者達は一様に頷く。その誰もが、危機的状況が未だに続いている現状に表情を強張らせていた。

 

「うむ、では始めよう。先に結論を言っておく。現在、彼女は一つの“パッシブスキル”に自我が蝕まれている(・・・・・・・・・)せいで暴走状態に陥ってしまっているのだ。」

 

 

――――少し前

 

 

(うっ…ここは…?)

 

 意識が朦朧とする。

 

(くそ、駄目だうまく頭が働かない…。)

 

 視界は霞みがかり、周りの状況が思う様に呑み込めない。

 《ユグドラシル》時代、敵の攻撃により、視界不良、麻痺、毒といった状態異常に陥ったことは何度もあった。だがそれはあくまでゲーム上の演出であり、実際はステータス画面に状態異常アイコンが点灯し、それに伴った効果が適用されるだけでリアルな症状が反映されるわけではなかった。それに鈴木悟として過ごした現実世界でも、意識が朦朧とするような生活を送ったことは一度もない。

 

 だからこそ今、初めての経験に体がついていけていない状態だ。

 

 瓦礫の山から手を伸ばし、手探りで掴めるものを探していると誰かに手を握られた。

 

「アインズ様!ご無事ですか!!」

 

 耳慣れた声。少しクリアになった視界で声がした方向を見ると、黒髪の美しい女性が今にも泣き出しそうな顔でこちらを覗き込んでいる。

 

「アルベドか…すまない、そのまま引っ張り上げてくれ。」

 

「畏まりました。」

 

 アルベドによりゆっくりと上半身が起こされる。しかし

 

「ぐおっ!!」

 

 突如、猛烈な痛みが脇腹に走る。だが、そのショックで皮肉にも意識は完全に覚醒した。

 

「もしやどこかお怪我を!?」

 

 アルベドが悲鳴に近い声を上げるが、アインズにはそれに答えてやれるほどの余裕がなかった。

 

―――痛い。

 

 アインズの頭の中はこの言葉で埋め尽くされていた。

 さっき、意識がどうのとか言っているレベルではない。余りの痛さにある筈のない内臓がひっくり返るほどの吐き気を催す。

 

 RPGゲームなんかに夢中になっているとき、プレイヤーが操作するキャラが大ダメージを受けた時など思わず「痛い痛い」と言ってしまった経験は無いだろうか?

 強力な攻撃を受け、瀕死の状態に追いやられてもあくまでそれはゲームの世界の中であり、敵と瀬戸際の攻防を繰り広げるスリルが面白さに繋がる。たとえ死んでしまったとしても、セーブデータをロードし直せば一から万全の状態で再戦できるのだ。

 だから大抵は、敗因から反省点を見つけ出し、改善していくことで見事敵に勝つ事が出来れば、「あのボス強かったなぁ」とか「一撃で全滅したこともあったっけ」など最終的に笑い話になったりする。

 

 だがこれを、プレイヤーに操られるキャラクターの視点で考えてみてほしい。

 

 プレイヤーにとって操作キャラがいくら切り刻まれようが死のうが関係は無い。だがキャラクターにとって、それは紛れもない現実なのだ(・・・・・)

 

 そして今、アインズは正にその状況に置かれている。

 

 ここは《ユグドラシル》のバーチャル世界なんかではない、紛うことなき現実世界(リアル)なのだ。

 

(くっそ、ダメージを食らう事がこんなにも苦痛だったとは…)

 

 激しく痛む脇腹を見ると、太くゴツイあばら骨が一部欠損していた。その傷跡からローザリアとの戦闘が脳裏にフラッシュバックする。

 

(そうだ、たしか回し蹴りを食らってぶっ飛ばされたんだよな。)

 

 ふと違和感を覚える。

 

(回し蹴り…?)

 

 そうだ、何か引っかかる。なんだこの違和感は…ああ、くそ駄目だ!まだ頭が回らない!!

 

「あぁっ!なんと酷いお怪我を…すぐに治療しなければ!!」

 

 しかしアインズの傷口に気が付いたアルベドによって思考が妨げられる。少しそのことに苛つきを抱きつつも呑気に治療を受けるている場合ではないので、一先ずアルベドを落ち着けることに専念する。

 

「いや、その必要はない。この程度の怪我なら、こうすれば…元通りだ。」

 

 傷口に当てていた手がほんのりと淡く紫色に輝くと、欠損していた部分がパキパキと音を立てて再生していく。あっという間にいつも通りの逞しいあばら骨に戻り、怪我をしていたことを微塵も感じさせない。

 

「な?」

 

「は、はい…。」

 

 と言っても、見てくれだけを治したに過ぎず実ダメージはまだ治療しきれてはいない。アインズの所持するスキルにより時間経過で体力は回復するのだが、全快するまでにはまだ時間がかかりそうだ。まあ、治ったと思わせる分には十分な効果が得られたようだから良しとしよう。

 

「しかし…理性を失えど、さすがは偉大なる御方と言うべきでしょうか…」

 

「ん?」

 

 先程とはまた違った面持ちでアルベドが嘆息を漏らす。

 

「いえ…私はローザリア様のことを他の偉大なる御方々から聞き及んだ“射撃の名手”と言う事ぐらいしか存じ上げませんでしたので…。あの尋常ならざる身のこなし方、まさか近接戦闘においても長けている(・・・・・・・・・・・・・・)とは思いもよりませんでした…。あのお方に我々が付け入る隙はあるのでしょうか…?」

 

「!!」

 

 アルベドの一言で霧散してしまっていた違和感が再び実態を取り戻し、尚且つその答えまでが導き出された。

 

「それだアルベド!そうだ、何故気が付かなかった!ありがとう!!」

 

 突如、興奮状態になったアインズに両肩を力強く掴まれ前後に揺さぶられながら覚えのない感謝をされたアルベドは、頭の中が嬉しさと混乱でごちゃごちゃになる。

 

「そうだ、おかしいんだ!彼女の回し蹴り程度(・・)で俺がダメージを食らう筈が無い(・・・・・・・・・・・・)!!」

 

 最初に感じていた違和感の正体はこれだった。アルベドと違いアインズはギルド長という立場からギルドメンバー達の特徴をよく把握していた。もちろんローザリアのことだってよく知っている。なにせあのピーキーすぎるステータスは一回見れば忘れたくても忘れられない。

 

 少し彼女についておさらいをしよう。

 

 彼女の初期種族である『人型機械(アンドロイド)』は『無機物異形種』という括りの中でも『機械生命体』という系統に属する。

『機械生命体』はプレイヤーの成長のさせ方によって多少の差は生じてくるものの、最終的には大半が“射撃攻撃”主体のビルド構成になる。そして、大抵こういったビルドに見られる傾向として“物理攻撃”が相対的に低くなる(・・・・)のがRPGの常だ。そして彼女の種族はそれが更に顕著に表れる。

 

 そう、彼女の“物理攻撃”は初期ステータスから毛ほども成長していない(・・・・・・・・・・・)

 

 100を最大とした時、彼女の物理攻撃ステータスはたったの20しかない。分かり易くこの20という数値を例えるなら、初期エリアでのBOSSエネミーが何とか殴り殺せる程度。10レベル帯であるならば相応の強さと言えるが、彼女の場合はこれ以上成長する事ができない上限MAXの100レベルなのだ。同じレベルの土俵で考えれば、その値はもはや『無い』に等しい。魔術師(マジックキャスター)のアインズでさえ40近くは所持しているのだから、彼女がいかに物理攻撃が得意でないのかがよくわかる。

 

 故に、60レベル以下のダメージを無効にするスキルを持つアインズに対して、なんのスキルも使用せず蹴りと言う単純な近接攻撃でダメージを負わせることなど絶対に不可能である。

 

 …だがどうしたことだろう、現に彼女の蹴りは体のパーツが欠損する程の威力を持ち合わせていた事実が説明できない。

 彼女に防御力を著しく下げられたような痕跡はなく、かといって〈上位物理無効化Ⅲ〉を解除していたわけでもない。

 

(考えたところでキリがない、確かめるのが一番だ。)

 

 アインズはコンソールを呼び出しギルド長権限でローザリアのパーソナルデータへアクセスを試みる。

 

 戦いにおいて『情報』は“力”だ。

 敵の弱点、習得しているスキル、武器や防具の特性、パーティーを組んでいるのか…こういった情報を知ることで、“備える”という大きな“力”が生まれ、自分がいかに不利な状況に晒されていようと、逆転の一手に繋がる可能性が大いにあるのだ。

 

 アインズは手慣れた指さばきでコンソールを操り、次々と画面が移り変わる。そしてギルドメンバー一覧表までたどり着いたとき、止まることなく動いていたその指先が固まった。

 

―――”THIS DATA IS BROKEN.”

 

 (データが破損しているだと?)

 

 ギルドメンバー41人が並ぶ中で、丁度ローザリアの名前が表記されている部分だけが赤くノイズがかった文字でそう書かれていた。

 

 アインズは困惑した。《ユグドラシル》をプレイしていた頃にこのような表示は見たことが無かったからだ。

 単純にギルドメンバー然り、NPCなどの名前が赤く表示されるのであれば、その人物が「Dethした」という証明であることは当然知っている。だが、今回の様に名前以外の表記がされているのは完全にイレギュラーだ。

 

(どうする…。)

 

 何事にも万全の策を講じるアインズは、当然このイレギュラーに対して原因の解決を図ろうとした。しかし、一刻も早く彼女の異常事態の原因究明にたどり着きたかったアインズは、焦りもあり目の前にあるイレギュラーよりも彼女のステータス画面を覗くことを優先してしまった(・・・・・・・・)

 

 彼女のステータス画面が現れる。

 

 時に情報は“力”だと言った。

 

それは相手を知ることでこちらが有利になれるよう“備える”事が出来るようになるからだ。だがそれは相手にとっても同じことであり、ましてやただ漫然と自分の情報が漏洩させている様な奴は自殺願望者の他でもない。そして万が一にも自身が秘匿してきた情報を覗くような者が居れば、当然“報復”を与えるだろう…。

 

 

___

 

(A L E R T)

 

____(A L E R T)(A L E R T)

 

____________(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)

 

(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T) (A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)

 

(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)(A L E R T) (A L E R T)(A L E R T)(A L E R T)

 

 

 だが次の瞬間――――おびただしい量の(A L E R T)の文字で画面が真っ赤に染まった。

 

(…しまっ!!!)

 

 経験したことがあるだろうか?

 バグやウィルスによりパソコンの画面が警告音と共に大量のウィンドウで埋め尽くされていく恐怖を。だがこれはそんな生易しいことだけでは終わらない。

 

「アルベド!離れろっ!!」

 

「きゃっ!!」

 

 寄り添っていたアルベドを力任せに突き放した直後、眼前のコンソールに写る(A L E R T)の文字が凝縮し、膨大な魔力の奔流となって殺戮の光線が発射される。

 

(えぇいっ、間に合え!!)

 

 コンマの後にいくつゼロが並ぶだろうか、それほどの速さで両手に魔力を集中させ向かってくる赤い光弾を真正面から受け止める。

 

「ぬおおおおおおおおおおおっっ!!!」

 

 バチバチと凄まじい音を立ててアインズの両手が焼かれ、その激しい痛みで顔が苦痛に歪む。何とかして別の方向へと受け流したいが、尋常じゃない直進力のせいで受け止めていられるのが精一杯だ。

 

 異形ゆえの超人的な反射速度で両手のみだけは目の前の破壊力に耐えうるように保護できたが、逆を言えばそれ以外に魔力を割いている余裕がない。もしこれを腹にでも受けてみろ、一瞬で保健室の骨格人形みたいにバラバラになるぞ…。

 

「おぉおおおおおっ!」

 

 ぶつかり合う衝撃波で猛烈な暴風が吹き荒れ、周りの瓦礫は舞い上がり、ローブがバタバタとやかましくはためく。

 

「アインズ様!お手伝いいたします!!〈籠城せし重騎士の甲冑(コントラディクション・アーマー)〉!!」

 

 一目瞭然の主人の危機に黙って見ているような嫁(自称)はいないとばかりに、最上級の防御スキルをアルベドが発動させる。

 

 〈籠城せし重騎士の甲冑(コントラディクション・アーマー)〉は自身または他者に対して神器級も真っ青の防御力を持つ鎧を魔力で作り出し、強制的に対象へ装備させるスキルである。ただし、装備した者は一歩でも動くと鎧が剥がれてしまうという制約がある。

 しかし動こうにも動けない状況に居るアインズに対しては、むしろ最適解と言えよう。

 

 アインズの手、足、胴体に次々と重厚な西洋鎧が装備されていく。

 

 明らかに両手に掛かる負担が軽減されたことを感じたアインズは、この好機を逃さないよう更に魔力を込める。

 

「ぐ、があああああああああああああああ!!!!!」

 

 兜の奥から紅い眼孔が迸る。

 

 ダンッ!と力強く踏み込み、その反力を利用して思いっきり両腕を真上へと跳ね上げた。

 

――――ズガンッ!!!

 

 真上へと弾き返された光弾は目にも止まらぬ速さで第六階層の天井へぶち当たり、そのまま貫通していった。恐らくすべての階層をぶち破ってもあの勢いは殺せないだろう。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…。」

 

 こちらの世界に来て初めて死の恐怖に直面した。本当に一歩間違えば自分が死ぬ状況だったのだ。冷や汗が止まらない。

 鎧はいつの間にか消えていたが、装備していた時よりも手足が鉛の様に重く感じる。

 

「アインズ様…お怪我はありませんか…?」

 

 おずおずとした声が、張り詰めていた緊張を解かす。

 

 何度目になるだろうか、アルベドから同じような質問を受けるのは。

 

「アルベドか…あぁ、すまない…大丈夫だ。さっきは助かった、感謝する。」

 

「いえ…しかし両手が…」

 

 眉をこれでもかというくらい“への字”に曲げて心配そうな顔をする。

 

 言われた通り両手を見やると、手の甲に至る部分までが真っ黒に焦げていた。正直感覚が麻痺していて痛いのかどうかさえ分からない。とりあえず強がっておく。

 

「心配するな、こんなものはただの煤だ。それよりも…」

 

 一瞬だけ写ったローザリアのステータス画面を思い出す。

 

 決して見逃さなかったある文字を。

 

「“〈乱射狂い(トリガーハッピー)〉”だと…。」

 




最後まで読んで頂きありがとうございます。

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