そんなことで珍しく、速めに投稿することができました。
今回も前回に続き公式にない独自設定・捏造・魔改造がふんだんに含まれております
。
特にコキュートスに至ってはもはや別人だと思って下さい。
そういうのが苦手だなとか嫌いな方はブラウザバックを推奨いたします。
ようやくまともな戦闘パートと相成りましたが、本人的には出来るだけ派手になるように心掛けたつもりです。
前置きが長くなりました。では本編をどうぞ。
鬱蒼と生い茂る森の中では、1対6の攻防が繰り広げられていた。
原始の時代の様に植生物が織りなす豊かな自然は飛び交う魔法や光線、ぶつかり合う衝撃波により無残にも破壊され、荒れ果てていく。
渾身のマーレの攻撃によって弾き飛ばされたローザリアはそのまま大きく闘技場外に放り出され、間髪入れずアインズが追撃。追い打ちを受けて尚受け身をとることも無くそのまま地面に激突したローザリアだったが、何事も無かったかのように立ち上がり追ってくるアインズ達と会敵し今現在に至る。
戦況は芳しいとは言えない。
(〈
ギリっと奥歯を強く噛み締め、顔が阿修羅のごとき様相に歪む。先程のアウラの凄惨な姿が脳裏にこびりついて離れない。
(どう見たって重症だ、それも階層守護者がたったの一撃であんな…くっ、無事でいてくれアウラ!!)
胸がキリキリと万力で絞められているかの様に痛む。
あれだけ護ってみせる言っていたくせに、あっけなく瀕死になるほどの怪我を負わせた挙句、それの償いもままならない己に嫌気が指す。何よりも彼らの生みの親であるぶくぶく茶釜さんに顔向けができない。
だからこそ、これ以上自分の過失で次の犠牲者が出てしまう前に、一刻も早く彼女を止めねばならないのだ。
作戦を実行に移す為〈
『諸君、そのまま戦いながら聞いて欲しい。私は作戦の要である転移魔法陣を形成するため“呪縛の森”へ向かう。その間、お前たちにはローザリアの注意を引いてもらいたい。…危険な任務を押し付けることになる、すまない…。』
結局アウラの二の舞になるかもしれない選択しかできないことに、悔しさがこみ上げる。しかしこの作戦を遂行させるにあたって仕方がないことなのだ。
ローザリアと戦うだけなら、守護者達なぞとっくの後方に下げてタイマン勝負をしていたことだろう、だがそれでは勝てないのだ。今の彼女と正面で戦い続けても、アーマー値を削り切る前にこちらがやられてしまうのが目に見えている。それを何とかするためにも第三階層の罠の一つである“極酸”をぶつけてアーマー値を大幅に低下させる必要があるのだ。
しかし問題なのはここが第六階層であることだ。彼女に“極酸”を浴びせたいのならば、彼女を第三階層へ連れて行くか、“極酸”をこっちへ持ってくるほかない。前者では新たな被害が広がる可能性があるため後者に絞り、そこでアインズが考え付いた作戦が“極酸の転移”だった。だがそれを行うためにはナザリック地下大墳墓の転移術式に手を加える必要があり、そのアクセス権限はギルドマスターであるアインズしか持っていないのだ。
故にこの作戦を実行できる者はアインズしかおらず、前線から引かざる負えないのである。
『何を謝られる必要があるのです。』
アインズの気持ちとは裏腹に心底不思議そうな声でデミウルゴスが〈
『我ラハアインズ様ノ忠実ナル僕。』
デミウルゴスに続くようにコキュートスがハルバードを縦横無尽に振るいながら答える。
『アインズ様から御命令をいただくことは、至福の喜びであり。』
黒い鎧を身に纏い大斧を巧みに操るアルベド。
『任務を遂行することは最大級の幸福でありんす!』
深紅の鎧にスポイトランスを装備したシャルティアは怒涛の攻めを見せ。
『ここは我らにお任せくださいませ。』
手甲を装備したセバスは軽快な脚運びでつかず離れずを繰り返し相手を翻弄する。
彼らの言葉通り、もうそこにはアインズが割って入る隙は無かった。
守護者達の力強さに思わず胸が熱くなる。
『そうか…諸君らの心意気に感謝する。アルベド、来い!』
名前を呼ばれたアルベドは反射的にアインズへ向かい、アルベドが抜けた穴をすぐさま他の守護者達がカバーする。
「アルベド、御身の命にてただいま参上つかまつりました。」
呼びつけて数秒もしないうちに到着したアルベドがアインズの前に片膝をつき、次の言葉を待っている。
「うむ、お前にこれを預ける。」
アインズが懐から五体の素材が不明な奇妙な人形を取り出し、アルベドに差し出した。
「これは…?」
得体の知れないアイテムを渡されたアルベドが丁寧に受け取りつつも不思議そうに見つめる。
「それは《
「そのような貴重なアイテムをいただいてしまっても宜しいのですか!?」
アインズの説明を受けアルベドが驚愕の声を上げる。
「よい、お前たちをアウラの二の舞にさせないためにしてやれる最大限の手向けだ。むしろそれぐらいしかしてやれないことを許せ。」
「とんでもございません!!有難く頂戴いたします。」
アルベドは恭しく頭を下げ、アインズの命令を遂行するため激しい戦いを繰り広げる守護者たちの下へと戻っていった。
アインズは〈
『よし、ではこれより作戦に移る。最後の命令だ“誰一人として死ぬことは許さん”。諸君らの奮闘を祈る、以上。』
『『はっ!!』』
守護者達の心強い返事に逆に勇気づけられたアインズは、危険な務めを果たしてくれている守護者達のために一刻も早く作戦を成功させるため“呪縛の森”へと向かった。
一方で、アインズから大命を賜った守護者達がその使命を全うするため荒ぶる破壊の化身と成り果てたローザリアと激しい戦闘を繰り返してきたが、真綿で首を絞める様に少しづつ状況が苦しくなり始めていた。
ローザリアは〈
更にその凶悪なまでの防御力を盾に1対5の波状攻撃にもびくともせず真正面から反撃して来るため防戦に徹するしかなく、また彼女の攻撃は苛烈を極めるためそもそも反撃していられる隙など与えてくれない。
絶えず防御バフを張り続け、死なないために必死に攻撃を凌ぐのが精いっぱいだった。
「あーんもうっ!ペロロンチーノ様から賜わった鎧がボロボロでありんす!!」
シャルティアはスポイトランスでローザリアの猛攻をギリギリのところでいなしつつも、その身に纏う鮮血の鎧は彼女の言う通り、いたるところに亀裂が走っている。彼女の攻撃を受け止めた時の余波が余りにも凄まじいためだ。
「そうやって無駄口を叩いているからですわ!〈
同じく漆黒の鎧に身を包んだアルベドが身の丈もある大斧に破壊のオーラを纏わせて大きく振りかぶり、隙だらけの背後を狙う。
「危ない!!」
「きゃああっ!」
デミウルゴスの警告で、すぐスキルをキャンセルし止め飛び退こうとするが、彼女の背骨付近から放たれた無数の光線が肩を直撃する。だがそれだけでは終わらず、攻撃を受けてバランスを崩したところに人体の駆動域を完全に無視した軌道で裏拳が叩き込まれ、大きく吹き飛ばされてしまう。
「っぐぅ…。」
寸でのところで斧の柄を盾にし直撃は免れたが、反動で大きく吹き飛ばされ何本も太い木をへし折ったところでようやく地面に足がついた。
「貴女もあまり人の事は言えませんね。」
「ッチ…黙りなさいデミウルゴス。」
バサバサと頭上で喧しい羽音を立てる蝙蝠をアルベドは忌々し気に睨めあげる。
「はいはい、今回復をかけますから動かないでくださいね。」
憎まれ口を叩かれながらも面倒を見る姿は、反抗期の子供を持つ母親の様だ。と言うのも、デミウルゴスはあからさまに戦闘に向いたビルドではなく、ローザリアと正面から戦えば負けることは確実なのでこうして守護者達の補助に回っている。
アルベドのカバーに回るため今度はセバスとコキュートスが二人係でローザリアを相手する。
生身で相手をすれば、先程のアウラと同様悲惨な目に遭うことが証明されているため、セバスは手甲をコキュートスは新たに取り出した二本のハルバードを装備している。
「オオオオオオオオッ!!」
この中で唯一まともにローザリアと渡り合える事が出来るコキュートスは巨大な二本のハルバードを四つの腕を使い、攻防を巧みに織り交ぜながら目にも止まらぬ速さで打ち込んでいく。
「―――――――――ッ!!!」
しかし、それがどんなに鋭く重くとも「関係ない」と言わんばかりにローザリアは避けもせずコキュートスの攻撃を食らいながら、無理やり自分の攻撃を押し通してくる。
そのため有効打に欠け、効果的な一撃を加える事が出来ない。むしろ打ち合いになってしまえば防御を気にしないローザリアの方が圧倒的有利であり、コキュートスの青く美しい水晶のような外骨格にはところどころヒビが入り始めている。
(グオオ…押サレ、始メテイル…武人トシテ作リ上ゲラレタ私ノ全力ノ連撃ヲモノトモシナイトハ、流石至高ノ四十一人ノ一人デアラレルオ方ダ。ダガ…)
絶対零度の冷気を身に纏う極寒の化身であるはずの彼の胸の内には、その性質とは全く真逆の熱い高ぶりがこみ上げていた。
「ダガ負ケル訳ニハイキマセヌッ!!コノ身ハナザリック地下大墳墓ト言ウ神域ヲ作リ上ゲラレタ創造主タル至高ノ御方々ニ捧ゲラレタモノ!デアルナラバッ!我ガ身、我ガ命ガ燃エ尽キルマデ御仕エスルノガ被造物タル我ラノ絶対ノ務メ!必ズヤローザリア様ヲ苦シミノ淵カラ解放シテ見セマスゾ!!」
眼孔は鋭く光り、ガンガンと力強く顎が打ち鳴らされる。そこには固い決意と共に興奮の色が混ざっていた。
武人建御雷に創造されたコキュートスは、そのすべての能力が戦闘に特化した構成になっている。そして本人も創造主の意向に沿い、誰よりも武人であろうとしてきた。しかしその力を最大限に発揮できた機会はほとんど無く、同時に自分の力と渡り合える相手が居なかった。
だからこそ、今の状況が最高に自分を興奮させていた。
今までの誰よりも強く凶悪で、全力で自分を殺そうとしてくる攻撃は事実当たれば必殺級の極限の命のやり取り。強大な敵に守護者としてではなく、ただ一人の武人として挑むことがこれほどまでに己を昂らせている事実に“守護者”というフィルターのせいで本質的には気づけていない。がそれらを全て目の前にいる狂気に取り込まれた主人を救うという原動力に変えてただひたすらにハルバードを振るう。
しかしいくら打ち合っていても埒が明かないため、コキュートスが打って出た。
「全テノ厄災ヲ焼キ切ラン〈
スキルを発動させると同時に、持っていたハルバードを交差させ瞬く間に表面を氷が覆いつくしたかと思えば、すぐさま割れた。
しかしその割れた氷の中から表れたのは目を疑う程の巨大な
大口を開けたそれをコキュートスが屈強な4本の腕を使い力任せに
「――!!」
圧倒的な力で挟み込まれ、ローザリアは身動きが取れなくなったことに少しばかり驚いたように見えた。
「マダマダァッ!!」
コキュートスが鋏に魔力を流すと鋏全体が赤く輝き始め、次の瞬間
―――
と、身動きの取れないローザリアの体が激しい炎で包み込まれた。
ローザリアの影すらも残さないほどに激しく燃え盛る炎は、そのあまりの熱に周囲の植物をも燃やし始め辺り一帯を地獄絵図に変えてしまう。
氷に覆われた第五階層を守護するコキュートスは、その見た目からも氷雪系の使い手であることが容易に想像でき、保有スキルに関してもそういった関連の物が多い。しかし攻撃スキルに至ってはその限りではなく、今使用している〈
普通ならば、コキュートスの怪力とこの炎で対象はあっという間に切断されて絶命するか、骨も残さず灰になるかのどちらかである筈なのだが、依然としてこのローザリアと言う化け物はどちらにも当てはまらないようだ。
(コノ技ハ魔力ノ消費ガ激シイ、後ドレダケ持チ堪エラレルカ…。ソレニシテモ手応エガ全ク感ジラレナイノガ空恐ロシイナ…。)
コキュートスは絶対零度の外殻に何か冷たいものが流れる様な錯覚を覚えた。されど鋏を握る手は緩めず、決して油断はせず轟々と燃える眼前の存在へ集中する。
すると、燃え盛る炎とは別の「パキパキ」といった音がすることに気付いた。
(何ダ?)
異変に気付いたのもつかの間、鋏を何かが強くつかみコキュートスの怪力を超える力でじりじりと鋏の刃を開いてゆく。そしてそれ以上に恐ろしいものがコキュートスの目に映る。
それは劫火の中にあってもその光に負けない二つの赤い煌めきが、真っすぐコキュートスを睨めつけていたことだった。
「グ…オオオオオオオオオオオオ!!!」
焦りを覚えたコキュートスは鋏に送り続けていた魔力を止め、肉体強化に回しこれまで以上の力で鋏を締め付ける。魔力の供給を止めた為これにより炎は消えてしまうが、何が起きているかわからなかった炎の中の状況を確認するためでもあった。
「あ゛亜アぁあアァア…」
消えた炎の中から現れたのは、炎に包まれる前と何ら変わらないローザリアの姿だった。唯一違うとすれば、動かない両腕から枝の様に細い副腕が二本生えて鋏を掴んでいたことくらいだ。
肉体強化をかけているにも関わらず、信じられないことにその枝の様な副腕だけでどんどんと鋏は開いていき、ついに両腕の開放を許してしまう。
ローザリアはそのまま腕をクロスさせて副腕で抑えていた鋏の刃を掴んだ。
「ナニ!?」
途端に押しても引いてもびくともしなくなった得物に驚きを隠せないコキュートスをよそに、ローザリアは両肩から三本ずつ鋭い突起物を生やしたかと思うと、その間でバチバチと激しい電光を走らせ、それに連動するかのように刃を掴む両掌が赤く輝き始める。
「武器を放しなさいコキュートス!!」
後ろで戦闘に加わる機会を伺っていたセバスの声にハッと我に返ったコキュートスが反射的に手を離した瞬間、ローザリアの両肩の棘が目にも止まらぬ速さで収容され、両掌から尋常ではない量の赤い稲妻が迸った。
稲妻の奔流をもろに食らった鋏は数秒形は残したもののすぐさま耐え切れずに跡形も無く消え去ってしまった。あの鋏はアイテムの階級でもかなりの上位に入る名のある伝説級のハルバードを変形させたものだった
コキュートスは震える両手を強く握りしめる。もしあれを直に食らっていたら…
(良クテ両手ガ吹キ飛ブ、最悪ハ…死、カ。)
すぐさまセバスがコキュートスとローザリアの間に割って入る。
「一人で戦っているわけではないのですよ、貴方は一旦下がって次の戦闘の準備を!」
セバスは半ば放心している彼に喝を入れ戦線から下がらせつつ、たった今武器を破壊した両手を確かめるようにワキワキと動かしているローザリアを注意深く睨みつける。
(アレを食らえば無事ではいられない…不本意ですが遠距離から攻めざる負えないでしょう…ならば!)
セバスは呼吸を整え浅く腰を落とし、両拳を腰のあたりで構え気を溜める。その両手はうっすらと光をまとい、徐々に光が強くなっていく。セバスが装備している手甲は防御力もさることながら、彼の使う”気”を何倍にも高める効果があり、装備するだけで総合的に強化されることと同意義になる大変な優れ物だ。
「練気最大出力〈気弾〉!」
勢いよく両手を突き出し、最大まで高めた“気”を撃ち放つ。
〈気弾〉は文字通り気を圧縮し、膨大な生命エネルギーの塊として相手に撃ち込むものである。直撃したときの物理ダメージも相当ながら、被弾した者の生命エネルギーを局所的に増大させることで、被弾箇所の生命エネルギーが暴走し内部から崩壊させるという、対生物においてはかなり有効かつ恐ろしい技である。しかし…
「………。」
「ぬかに釘」「暖簾に腕押し」と、生物と言う概念を超越した
「っ!まだまだぁっ!!!!」
だがそんなことは鼻っからわかり切っていることであり、セバスもそれを承知で次々と〈気弾〉を打ち込んでいく。
それを次々と叩き落としていくローザリアだが、目的はダメージを与えることではない。作戦の要であるアインズから注意を逸らし、少しでも時間を稼ぐことが守護者達に与えられた本来の役目である。
「はぁっはぁっはぁっ…」
数えきれないほどの〈気弾〉を短時間で撃ち続けることは例えLv100のキャラクターだとしても楽なことではない。体力のギリギリまで粘ったセバスは肩で息をする。同じく数えきれないほどの〈気弾〉が撃ち落とされたため、地面は大きく
「…?」
すぐに反撃が来るものだと警戒していたセバスだが一向にその気配は無く、あたりは嘘のように静まり返る。
突如訪れた静寂に、一抹の不安を覚えながらも次にいつ訪れるかどうかも分からない好機を利用し、各々の状況を確認するため守護者達が集合する。
「皆さん、あとどれ程戦えますか?」
デミウルゴスの単純にして明快な質問が問いかけられる。
「正直なところ、あと一回打ち合えるかどうかと言ったところね…。肉体強化のスキルを使い過ぎて、もうほとんど魔力がないわ。それにしてもほぼ防衛だけに魔力を使い切るなんて初めての経験よ…。」
「はぁ」と珍しく溜め息をつきながらアルベドが気弱に答える。普通の戦闘においては自分だけのために魔力を使うため、そこまで魔力の消費と言うものは激しいものでは無い(強力な魔法やスキルを頻繁に使用すれば話は別だが)。しかし今回の戦闘においてはアルベドの豊富で優秀な防御スキルがローザリアの魔手から逃れる生命線となるため、全員に施され尚且つ剥がれればすぐさまかけ直すことを繰り返していたため、魔力の消費は通常の何倍も激しかった。
それに、「誰一人として死ぬな」という王命を守るためにも生命線となる自分の能力を生かすために常に気を張っていなければならず、その心労は計り知れない。
アルベドを皮切りに、それぞれがそれぞれの事情で限界が近いと言う事を口々に漏らし始める。
(ふむ、これはいけませんねぇ…)
第三者の観点からデミウルゴスが冷静に状況を確認する。
(全員まだギリギリ戦えそうではありますが、お互いの状況を確認し合ってしまったがために限界が近いことが分かり士気が落ち始めている。)
顎に指を当て思慮に耽るその姿は正に参謀らしい姿だが、内心は穏やかではない。
(士気の下がった武将などそこらの雑兵と何も変わりません。このままでは戦闘はおろかアインズ様の盾にもなれずに野垂れ死んでいくでしょう…なんとか士気を高めねば。)
戦いで士気の落ちた兵達を再び燃え上がらせるのに最も効果的な方法は、彼らをまとめ上げる存在からの激励である。しかしその存在は作戦の準備のため不在、邪魔をするわけにはいかないので呼びつけるのはもってのほかだ。
(しかし、どうすれば…失礼を承知でアインズ様にお言葉をいただくか?この情けない現状を説明するというのか?馬鹿馬鹿しい!!)
全くもって情けない彼らと己の姿に親指の爪をギリギリと噛む。
(…であるならば、この現状を逆手に取るしかありませんね。)
ふと冷静さを取り戻したデミルルゴスはパンと軽く手を叩き注目を集めさせる。
「今の貴方達をアインズ様がご覧になられたらさぞや悲しまれることでしょうねぇ。戦意を喪失した戦士ほどみじめなものはありません。我々はアインズ様直々にご命令を受け作戦準備完了までローザリア様を抑えるという大役を任されたのですよ?それをそのまま項垂れてアインズ様の御命令と信頼までをも裏切りになるおつもりですか?」
静かだが明確な怒りの色が混ざった厳しい言葉に守護者達はハッと我に返る。
統率者が居ない今、その次に有効な手段は彼らが狂おしい程に尊敬し信仰するアインズから見放されるという未来を匂わせる事である。
自分たちの創造主であり、《ユグドラシル》が終わった後もお隠れにならず自分たちのために残って下さった大変慈悲深い方に恩義を仇で返す様な真似は、死んでも許されない最大級の罪である。もしそんなことを仕出かそうとする輩がこのナザリックに居たならば、ナザリック中から非難を浴びその存在すら初めから無かったかのように全てが抹消されるだろう。
だからこそ、アインズに仕える最高位の家臣とも言える階層守護者の彼らにとって、今のデミウルゴスの発言は絶対に許せるものでは無く、熱い忠誠心の炎が燃え上がる。
「そんなこと…してたまるもんですかっ!!」
シャルティアが蝋のように蒼白な顔を少し赤らめて叫ぶ。それはシャルティアだけでなくほかの守護者達も同様に戦意を取り戻した様が見て取れた。
デミウルゴスは心の中で不敵に笑うも、彼らに再びやる気を取り戻させることができたことに少しばかり安堵する。
「でしたら、やるべきことがございましょう?」
鷹揚にデミウルゴスが手をローザリアの方へ向ける。未だに土煙が収まっていないことから、相当量の土が巻き上げられたのだろう。
「えぇ、皆まで言う必要はないわデミウルゴス。だけれど少し
アルベドの指摘に緊張が張り詰める。
そう、おかしい。先程まであれだけ激しく攻防を繰り広げていたにもかかわらず、このやり取りが終わるまでの短い時間、一向に動く気配がなかったのだ。
一抹だった不安が大きなものに変わるのにそう時間はいらず、焦燥感が体を覆う。
「誰かあの土煙をどかしなさいっ!!」
「〈ブリザード・ブレス〉!!」
アルベドの指示に間髪入れずコキュートスがスキルを発動させた。
コキュートスから吹き出される極寒の暴風が瞬く間に世界を白銀の世界に染め上げていく。
切り裂くような冷気の奔流が跡形も無く土煙を吹き飛ばした。
「「!!?」」
そして驚愕の“モノ”を目にする。
「なんだ…あれは…」
息をするのも忘れ、誰かが静かに呟いた。
――――そこにあったのは、全身を変形させ巨大な砲身と化したローザリアの姿だった。
もうすでに発射体制は整っており、威力未知数の攻撃がいつでも撃てる様子だ。その証拠にローザリアから漏れ出した圧倒的熱量により吹雪が蒸発し、光を歪ませる
理性よりも先に生物の本能が体を突き動かさせた。“逃げろ”と。
「総員退――――」
一瞬だけ見えたローザリアの顔は嗤っていたように見えた。
彼女は何故彼らが無防備な状態の時を狙わなかったのか。否、
奴らが何をしようと自分の攻撃から逃れる術はない、その
彼女の思惑通り、全てはもう遅いのだ。その結末からは何人たりとも逃れられない。
「――〈
―――世界が赤く染まった。
毎度最後まで読んで頂きありがとうございます。
宜しければご意見ご感想等をいただけますと、有難いです。
そういえばついに『オーバーロード』の新刊が発売されましたね。皆さんはもう読まれましたでしょうか?
ネタバレする気はさらさらありませんが、最高にデミウルゴスがデミウルゴスしてる内容となってましたね。
下巻が楽しみです。
それでは