書いてる途中であまりにも長くなってしまったため戦闘シーンが無いです。
楽しみにされていた方、本当にすみません(土下座
時間は今から少し戻る。
そこはカルネ村から少し離れた平原で馬に乗った数十の帝国の鎧を身に纏った兵士たちが集まり、次の目的地への襲撃について作戦とはとても呼べないような話し合いをしていた。
「いや~さっきは最高だったなぁ!」
「泣きながら必死になって逃げちゃってさァ、馬に乗ってる俺らから逃げられるとでも思ってたのかよww」
「まったく逃げ惑う奴を後ろから斬るのは堪んねぇぜ!なァ!隊長もそう思うだろォ!?」
一人の兵士が呼びかけると反吐が出るほど下種い会話をする兵士たちの輪から、少し風格の違う鎧を身にまとう男が前に進み出た。
「全くお前らは人間を殺すことしか頭にないのか。ふんっまあいい…おい、てめぇら!準備はいいか?次はあの村だ、命一杯暴れろよ?一匹も生して残すんじゃねーぞ!」
「うおおおおおお!!」
「あーー…早く殺したい…」
「…下らん。」
「言われなくたって分かってますって隊長ぉ!」
その男の怒声に続くようにして周りに居る兵士たちが各々に感情を昂ぶらせる。
兵士から隊長と呼ばれているこの男の名は『ベリュース』。ある目的のために国から派遣された独立部隊の隊長だ。
ベリュースは兵士たちの指揮が上がったことを確認し、村への襲撃を命令した。
「では行けっ、さっさと八つ裂きしにしてこい!」
鶴の一声で兵士たちは口々に寄声を上げ、カルネ村に突撃していった。
だがそんな兵士たちを、彼らとは真逆の心情で冷ややかにベリュースは眺める。
(くくく低能の馬鹿どもめ…この作戦を終えれば、俺の地位がまた一段階ステップアップする事は確実だ!報酬もお前らには一切やらん、私が全て頂く!…まぁせいぜい俺の、踏み台兼捨て駒として馬車馬の如く働いてくれたまえよ。)
熱く燃える野心を抱えつつ、ベリュースもカルネ村へ突撃した。
彼は知らない。彼自身もまた国の捨て駒だということを。
帝国騎士の標的となった事を知り慌てふためくカルネ村だったが、ヨーゼフカの素早い発見と村長やローザリア等による手際よい避難指示によって、帝国兵達が到着するよりもずっと早く避難を完了させていた。
あとは外にいる村の男たちの働き次第で、この村の運命が決まるのをただ待つだけの状態だ。
「よしっ!お、お前ら気合入れて行けよ!この村の運命は俺たちに掛かってるんだからな!!」
その男たちの中心で一人叫ぶ男が居た、第一発見者のヨーゼフカである。
恐怖心が表に出てこない様に必死に自らを鼓舞して村長からの指示である男達の指揮を執っていた。
「「おうっ!!」」
ヨーゼフカの呼びかけに大きな声で続く男たちだったが、依然として足はガクガクと震え、耳にはカチカチと歯が鳴る音が忙しなく聴こえる。手慣れた筈の農具を持つ手はこれから来る恐怖に怯えおぼつかない。
こんなことでは帝国兵を前にした途端、一気に心の箍(たが)が外れて恐怖に体を支配されたまま何の抵抗も出来ずに皆殺しにされるのがオチだろう。
(……。)
そんな男たちの背中をローザリアは無言で見つめる。
村人たちを避難させるという彼女の仕事はとうに終わっており、本来ならば今は避難所で彼女の教え子達と共にしているはずだった。
しかし彼女がこうして集会場の外へ出ているのは、男たちが心配だからなのもあるが、もっと個人的な理由だ。
ローザリアは迷っていたのだ。
このまま男たちが皆殺しに合うのを指をくわえたまま見捨て、帝国騎士が村を襲うのを赦すのか、…それとも自分の正体を晒して帝国騎士達を皆殺しにするか。
正義ある者ならば迷わず後者を選ぶだろう、よく正体を隠した英雄が人助けをする話なんかは多い。ただしそれは人間の世界の人間に限った場合の話だ。
彼女は違う。『異形種』という人間からすれば立派な化け物の彼女が同じようなことをした場合はどうだろうか?まともな人間は感謝よりも先に恐怖が勝つだろう、そしてこの村の人間達も同じだ。
つまり今ここで己の真の姿を晒すということは、この村での生活を捨てることに他ならない。
この村での生活は毎日が楽しかった。21XX年と言う遥か未来の時代に住んでいた彼女は、普段当然の様に何気なく使っていた文明の利器もこの世界には存在しない。その不自由さが彼女にとっては新鮮で、何よりも新しく、楽しかった。
仲の良い友達もできた。生前の世界でも友達は居た、しかし認識としてはただ一緒のクラスになったクラスメイトみたいな感じでしかなかった。
それが今は、心から話し合える素晴らしい親友に出会った。これは《ユグドラシル》であの仲間達と出会った時以来だろう。
だから迷った。
全く知らないこの世界で不安に圧し潰されそうになった自分に救いの手を差し伸べてくれたこの村から離れなければならないことがどうしても嫌だった。
しかし決断は迫られる。
今の自分にとって何よりも大事な存在であるこの村人たちは、己に下された天罰の巻き添えをくらうのだ。
それを回避するためには、決断しなければならない。自身の正体を白日の下にさらすことを。
残された猶予は無く、しかし誰にも相談できない「迷い」が彼女の足を自然と外に向かわせていたのだ。
「ローザリアさんっ!」
そこへ声を掛けて来たのは、未だ避難所の外へ出ているローザリアを見かねて連れ戻すべく、エンリがたまらず集会場から出て来ていた。
「エンリ…」
親友の姿を目にするもローザリアの表情は優れない。
「さぁ!早く避難しましょうっ、ここは危険です!」
エンリが泣きそうな顔をしながらローザリアの手を取り必死に連れ戻そうとする。しかし彼女は動かない。動けない。
そのような態度をとる彼女に少し苛立ち、声を荒げる
「男たちが心配なのはわかりますっ!私もさっきからずっと心配で、胸が張り裂けそうで苦しくて仕方ありません!でも非力な女の私たちにはどうしようもできないんです!!」
遂に泣き出してしまったエンリは、それでも動こうとしないローザリアに必死に訴えかける。
(この子なら、私のためにここまでしてくれる彼女になら相談してもよいかもしれない…)
大粒の涙を浮かべながら自分の身を案じて泣いてくれる親友に、ずっと胸の中に抱えて来た迷いを打ち明けることを決意した。
ローザリアはエンリの瞳を真っすぐに見つめる。
「エンリ、少し私の話を聞いてはいただけませんか…」
しかしエンリはこの緊急事態に何を言っているんだ!といった表情で却下する。当然だろう、誰がこんな危険極まりない場所で話しなどしたいものか。
「避難所に着いたら幾らでも聞きますから!今は早く戻りましょう!」
「それでは遅すぎるのです…どうか、お願い…。」
エンリはようやくローザリアの雰囲気がいつもとは違うことに気づいた。
女の中では最も親しい仲だったエンリにも、一度として見せたことはなかった彼女の迷いが露わになった表情に驚きを隠せない。
彼女が自分に初めて見せた弱気な態度に、きっと何か大事なことを話そうとしてくれているのだと感じ取り、ローザリアの話を改めて聞く姿勢になる。
「っ…わかりました。でも手短にお願いします。」
その言葉を聞いたローザリアはちょっとだけ嬉しそうな顔をしたがまたすぐに迷いの深い表情へと戻ってしまった。
「ありがとう、やっぱり貴女は優しいわね。では、単刀直入に聞きます…エンリ、貴方はもし私が
エンリにはローザリアの言っていることが理解できなかった。ローザリアが化け物?それこそ一体何を彼女は言っているんだ…?
いや、ちがう、そうじゃない、今考えるのはそこじゃ無い。彼女は自分に問うたのだ、「化け物でも好きでいてくれるか」と。
それならばエンリの答えは一つしかない。
「ローザリアさんの言った『化け物』という言葉の意味が私にはよくわかりません。でもこれだけはハッキリ言える!私はね…この村で誰よりも優しい心の持ち主の貴女が、奇麗で美しくて思わず見とれちゃう貴女が、子供達と一緒に遊んで泥だらけになった貴女が、この村のことを一番に思ってくれて、真っ先に貢献しようとしてくれる貴方が…そして何よりも、私の、エンリ・エモットの親友である貴方が私は大好き!」
エンリの告白を聞いたローザリアは心底びっくりした様な表情をした後、いつも彼女に見せる慈母のような優しい笑顔へと変わっていた。
もうローザリアに迷いの影は無い。
「ふふっ…そう、ありがとうエンリ。そこまで言われてしまうと、何だか一人で悩んでいた私が馬鹿みたいね。
私も貴女のことが大好きよ、言葉で表しきれないくらいに。こんな親友を手に入れてしまっては、もしかしたら一生分の運を使い果たしてしまったかもしれないわね。」
彼女は朗らかに笑う。それからまた突拍子も無い事を言うのだ。
「聞いてエンリ、私は今から男たちを助けに行くわ。そしたらもう村には戻れなくなるかもしれない。でも大丈夫、私の名に懸けて必ずこの村を守って見せるわ。」
本当にさっきから目の前の女性はとんでもない発言ばかりして心臓に悪い。私の気持ちを伝えたために彼女はこんなことを言い始めてしまったのか?…しかしその奇麗な顔に喜びの感情を爆発させながら握っていた手を逆に握られてブンブンと振り回されると、とても「行っちゃ駄目だ」なんて雰囲気ではない。
でもやっぱり駄目だ、私の家族と同じくらい大事な彼女を戦地へ向かわせるわけには彼女の親友として意地でも許さない。
「駄目です!!」
「知ってるわ。」
えぇ…そんなニコやかに言われたから意地がどっかに飛んで行っちゃったよ…。
…多分もう何を言っても彼女はきっとこの調子だろう。ならば親友として彼女に言えることはまた一つしかない。
「わかった…でも本当はスッゴク嫌!だけど、止めるのは無理そうだから諦める。でもこれだけは約束して、絶対に帰ってくるって。」
エンリの「帰ってくる」と言う言葉を聞いた瞬間、ローザリアの表情が少し哀しみの籠ったものになる。
「私が帰ってこれるかは、貴方達次第よ…」
しかしまたすぐに明るい声と表情に戻り、言葉を続ける。
「もし私が帰ってこれなくても、心配しないで。それとこれを貴女に授けます、賢い貴女になら使いこなせるはずよ。」
そうして彼女から手渡されたのは両の掌に収まるほどの何の変哲もない二つの小さな角笛だ。
エンリは受けると親友へと真っすぐ見つめて送り出す。これは最後の意地だ、絶対に帰ってきてもらうための魔法の言葉を使う。
「またね」
「えぇ、またね」
というわけで、お別れ編でした。
ここまで戦闘シーンを引っ張るってオーバーロードSSとしてどうなのよ?と自分でも言いたくなりますが、どうかご勘弁ください。
次回こそ戦闘シーンありますんで!どうか、どうかお許しを!!
役立たたず!ポンコツ!(褒め言葉)とかでも良いんで感想、ご意見お待ちしております。