ゴーレムとオーバーロード   作:NIKUYA

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マーレのターンエンド。シャルティアのターン。
次回はマーレのターン…と思わせといて……どうしよ


石と……吸血鬼

22

 

「はぁ……羨ましいでありんす…………」

 

ナザリック地下大墳墓、第9階層、とある区画、通称『バー』

 

カウンターで溜息を吐き、呑んだくれてる女がいる。なにを隠そう、第1から第3階層の守護者、シャルティア・ブラッドフォールンその人だ。

 

「新聞を読みましたが、あれはさすがに、相当する手柄を立てるのは…些か難しいと思いますね」

 

シャルティアに対して発言するのは、バーの主人。先程から何度か同じような会話をループしている気がするが、まだマトモにお酒を飲んでいる内は客である。丁重に持て成さなければならない。

 

「そーなのよ……さすがに、ワールドアイテムに匹敵する手柄なんてぇ……それこそ、御隠れになられた御方々の痕跡か、同じようにワールドアイテムを手に入れるしか……でも羨ましいのよ……!!はぁ、アインズ様と、そしてNIKUYA様と、デート……ハグ……頭なでなでも…………はぁ……」

 

「こちら、カルーアです。深酔いは…しないでしょうし、甘いもので少しでも気を紛らせてください」

 

「……うん、ありがと。……これからどうするでありんすかねぇ……」

 

先刻の緊急招集での、マーレとナーベラルからの報告。あれは確かに、御方々に直接御報告するに相応しい、いや、これ以上に相応しいものなどない程の戦果だった。

もちろん、それには喜びこそすれ、負の感情なんてない。

だが、それに対する褒賞。信賞必罰とは理解しているが、それにしても、よりによって、ハグとデートなんて。羨ましい、羨ましすぎて殺気を向けてしまった程に。

だが、羨むだけならグールにもできる。真相たるシャルティアは、どうすれば同じような褒賞、デートやハグをして頂けるかを必死こいて考えに考え、なんやかんやあってバーに来て、とにかく飲もうと酒を飲み、雰囲気に酔ってグダグダと管を巻くことになった。

 

「御方々と行動を共にできる最高の名誉を賜ってるのは理解してるのでありんすが、だからこそ己の感情で無為なことはできんせん。NIKUYA様…パパの娘としての行動は、パパへの評価へと少なからず関わってしまいんす……勝手な事はできない。御方々がいらっしゃるのだから私の大活躍するような場面もさしてありんせん……はぁ、どうすれば……」

 

ほう、アホキャラにしては結構考えてるんだな、なんて考えてそうなキノコをひと睨みし、再度酒を用意させる。

 

本当に、どうすればいいか。まったく、全くわからない。

こういうときは他のものの知恵を借りれば良いのだろうが…さすがに、ハグされたい、なんて願いを叶える方法を共に真剣に考えてくれるものなんて思い当たらない。

 

はぁ。

 

 

 

「騒がせてごめんなさいでありんす。そろそろ、お暇させて貰うわ」

 

「…はい、次は良いお話を待っております」

 

 

 

 

 

 

 

 

バーを出て、風呂でも入ろうかと銭湯へ足を向ける。

すると、その先に、とある人影が見えた。こちらへ向かう、NIKUYAの姿だ。

慌てて廊下の隅により、軽く頭を下げて待つ。

酒を飲んだとはいえ、毒無効の身では酔うこともない。足元がふらつく心配もない。が、先程までその方の事を考えていた─普段以上に─ので、動かないはずの心臓が激しく動いている錯覚でふらつきそうだ。

 

長い廊下を、ゆったりとした速度で歩く音。

主に人型での活動をしているNIKUYA様の、ナザリック内部での普段着、スーツ姿。その足部、革靴の、レッドカーペットを踏む音。

段々と近づく、御方の音。揺らがんとする体を意思で押しとどめ、御方の通り過ぎるのを待つ。

 

すると、NIKUYA様は、私の前で立ち止まられた。頭を上げる事はせず、声を掛けられるであろう時を待つ。

数秒、遂に御方からお言葉をいただいた。

 

「後で俺の部屋にきて。誰にも言わず、誰にもつけられず。内密に、だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後の話をしようと思う。

何故か幾分警備の薄まったスイートルーム前の廊下を、変装して進む。ペストーニャに見つかったが、こちら側の手の者だったらしく、それとなく御方のお部屋まで案内された。

 

NIKUYA様の部屋に入り、臣下の礼をとる。

 

NIKUYA様は顔を上げ、椅子に座るように仰られた。

 

それから、ニックとティアの演技の練習として、和やかにお茶を楽しみ、談笑する名誉を賜われた。

まぁ、任務の為の稽古のようなものだと言われたので、賜われた、のとは違うていだが。

 

さて、私がお呼ばれしたのは、この為だったのかというと、半分そうで、半分違った。

 

 

 

 

「普段の、ティアとしての任務、シャルティアとしての任務、共に、褒賞に足る働きだと、俺と、アインズさんが認めた。でだ。なにか、望むものがあるなら、ある程度叶えてやろうと思うんだよね。なんか欲しいものある?」

 

身に余る光栄、旅の共をさせていただいているだけで幸せだと、もちろんそう言った。当然そう思ってるし、褒賞が欲しいとは思っていても、それに足る働きだとは自らが認めていない。

だが、私が認めなくても、御方々が認めたのだ。ならば、褒賞を頂かなくては失礼にあたるであろう。

 

なので、再度問われたとき、思い切って……それこそ、本当に、心臓が、体が破裂しそうな気持ちを必死に堪え、お願いを、言った。

 

「……え、それ、逆にいいの?いや、いいのかな……ダメな気がす……まってアインズさんに確認する。………………いいの!?……あ、はい。じ、じゃあ……後ほど……いま!?う、うん。切りますね。………じゃ、シャルティア。目、瞑って……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

身に余る光栄だと、そう思った。

だが、自らこそが相応しいのだと、そうも思った。

ドス黒いナニカと、真っ白なナニカが、頭の中を占領せんとせめぎ合うようだ。

これが、幸せなのか、それとも……

 

『ここまではアインズさんの公認だけど……ここからは2人だけの秘密、だぞ』

 

頬と唇に残る感触は、あの方の声を思い出させる。

この事は、誰にも言えない。誰にも、言いたくない。

 

私と

NIKUYA様と

2人だけの

秘密

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ところでアインズさん、アルベドとアウラへの褒賞はどうしました?』

 

『ああ、アルベドへは、私の自室での職務を許しました。何故かあの子、自分の部屋なかったんですよ!アウラは、また今度、騎獣に乗ってのピクニックを、と。そっちはどうです?』

 

『コキュートスへは、今度、しっかりとした模擬戦の約束を。デミウルゴスは、ペイン系のレジェンド級アイテム数点の貸与、それとプレアデス各員へは、活きのいい要らない人間の優先的な供給と、食事会同席権…俺が同席する側ね。そんなもんかな』

 

『で、シャルティアは、どんな様子でした?』

 

『あ、ああ。うん。喜んでたよ?うん』

 

『?……NIKUYAさん、余計な事してないでしょうね』

 

『いや、してない!法に触れることなんて!してないから!』

 

『ナザリックでの法は私ですよ、NIKUYAさん』

 

『横暴だ!離反の計画をたててやる!』

 

『アルベドもデミウルゴスも、パンドラもこちら側ですが?』

 

『…………勝てねえじゃねえかよ!くそ!……ま、まあ、とくに、大したことはなかったです。ほんとに』

 

『……まぁ、良いですよ。ペロロンチーノさんも、寝取られるならNIKUYAさんみたいな人がいいって言ってましたし。あれって遠回しな嫁にくれてやる宣言だったのかな』

 

『いや、まだそんな関係じゃないし』

 

『まだ?』

 

『しまった……まあ、はい。清らかな関係でいたいです。当分は』

 

『はあ……シャルティア泣かせたら、拷問にかけますからね』

 

『嬉し涙は見逃してください』

 

『では、切りますね。これからアルベドからの報告があるので』

 

『ああ、頑張ってくださいね。では』

 

 

 

 

 

「はあ……」

 

唇に手を当てる。

 

「……こっちでは、初めてだったんだ」




NIKUYA絶対許さん 略してN絶許
シャルティアは自室でどえりゃーことしてるイメージはあるけど、あくまで女の子相手ですからね、ええ。
……N絶許
ニューロニストさんがアップを始めました

活動報告を更新しました みるべし
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=178339&uid=118726

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