へんな言い回しとかあるかもしれませんがご指摘いただけるとありがたいです
ーーーモモンガとNIKUYAが去った後の闘技場ーーー
「す、すごく怖かったね、お姉ちゃん…」
「ほんと押しつぶされるかと思ったよ!」
「マサカコレホドトハ」
「あれが支配者としての器を御見せになった御方々なのね…」
「ですねぇ」
皆が皆、支配者たるモモンガとNIKUYAにまみえた感想を募らせる。
「ん?シャルティア、どうかしたのかね?」
尚も頭を垂れたまま小刻みに震えるシャルティアを疑問に思い、デミウルゴスが問いかける。
「…お二方のすごい気配を受けてゾクゾクしてしまって…すこぉし下着が…」
スカートの裾を握り、恥ずかしげに答えるシャルティア。
皆がため息を吐き、心配して損したとばかりに身体を背ける。
「…実は私もそうなの。はやめに話を終えて、面談に備えましょう?」
アルベドが言う。
お前もか、という顔を向けるナザリック男性陣。それとなぜか顔を逸らすアウラとマーレ。
「そうだね、じゃああと16分後にシャルティアが面談に行き、次の者がNIKUYA様の部屋の前で待機する、ということでいいかな。」
「そうでありんすね、終わった者はどうするでありんす?」
「そうだね、終わった者になにも命令されなければ、各階層の見回りルートと防衛案の再確認をしてもらおう。万が一穴があってはいけないからね。」
「りょうかいでありんす。では下着も変えないといけないので私はこれで…」
「…うむ、時間に遅れないようにね。」
若干気まずそうにデミウルゴスがシャルティアを見送る。
「デハワレワレモメンダンニソナエテカイサンスルカ」
「そうね、デミウルゴスと私は回ってくるまでに、大墳墓の警備の案でも練っておきましょう。」
「ですね。では解散ということで」
「シャルティアか。入って。」
ここはNIKUYAの部屋。第九階層に41ある通称ロイヤルスイートのひとつ。
ワンルームであり、部屋の角にキングベッドと、真ん中に6人掛けの机が置かれている以外はほぼ何もない部屋である。
NIKUYAがAOGに加入したのはサービス終了の二年ほど前、ヘロヘロさんがまだたまにインしていた頃であり、それからはほぼナザリックの維持のために動いていたため、装飾などに気を遣う時間がなかったのだ。
それでも、元々あった装飾は部屋を彩り、まさにロイヤルスイートと呼ぶにふさわしい部屋になっている。
「失礼します。」
面談のためにシャルティアが訪ねてきた。やはり胸には何も詰めていない。
「じゃあ座って。面談を始めるよ。」
「は、はいっ」
背筋を伸ばし、手を膝の上に乗せ、顎を引いて椅子に座っているシャルティア。
「あー、そんなに固くならないで。気を抜いてくれたらいいから。」
面談というか面接だなぁと思い、気楽にしてほしいと言うNIKUYA。だがこのナザリックで至高の御方の前で気楽にしたことがある者はいない。
「御方の前で気を抜くのは不敬ではありませんか…?」
「いいのいいの。ていうか命令ね、もっと気楽にして。」
「わ、わかりました…」
若干座高が縮んだのを見て満足し、本題に入る。
「さて、面談と言っても、いくつか質問するだけなんだけどね、この質問内容は後続の者には話さないように。」
「畏まりました、NIKUYA様。」
「じゃあまず一つ目。モモンガさんが急に俺みたいに砕けた物言いになったらどう思う?」
まずはモモンガさんに頼まれていた質問。魔王ロールプレイがつらいので辞めたいから守護者に意識調査してくれとのこと。
「更に心を開いてくださったと感じるでしょう。これはナザリックの皆が同じ意見だと思いんす。」
俺としてはこう言うだろうなと予想していた回答だ。モモンガさんの危惧していた事態にはならないようでよかった。
「そうか。では二つ目。俺とモモンガさんのことどう思う?」
これもモモンガさんに頼まれてた質問。こんなん聞いてくる人とかちょっと重いんじゃない?と思ったが。
「モモンガ様はまさに美の結晶…何にも劣らぬ美と、皆を平伏させる超越者たる御方でありんす。」
「ふむふむ。」
おいおいなんだよ美の結晶て。骨じゃん…そうか、シャルティアはネクロフィリアだったか…
「NIKUYA様は…その…皆に優しく接していただけて…慈悲深く…その…私の…」
「私の?」
「…!あ、いえ!NIKUYA様は全てを破壊し得るチカラをお持ちになられる、まさにナザリックの守護神たる御方です!」
なんだかぼそぼそ言ってたのはほぼ聞き取れなかったけどまぁいい、なるほど守護神か、いいじゃない。
「ふむふむなるほど。シャルティアの気持ちは良くわかった。じゃあ最後の質問。ナザリックの10キロ圏内に人間の村があるってモモンガさんから報告があったんだけど、もし人間と友好関係を築けと言われたらできる?」
これもモモンガさんの質問。実際のところ俺からの質問はまったく思いつかなかった。
「そうでありんすね…人間は好きではありんせんが、仲良くするふりなら支障なく遂行できるでござんしょう。」
なんだかさっきの質問以降、もぞもぞとしているようなしていないような…手が動いてるような気もするが、テーブルがあって見えない。それはさておき。
「そうか。ならそういう任務があった場合は起用されるかもしれんから心の準備はしておくように。」
「畏まりました、NIKUYA様…んっ」
「どうしたシャルティア、顔が赤いぞ?大丈夫か?」
確か守護者はみんなバッドステータスに耐性あったはず…風邪とかはないし、部屋の温度は22度だし、熱を帯びる理由が見当たらない。
「いえ…なにもございません。大丈夫でありんすぇ…」
うーん、まぁ、ダメージとか受けてないみたいだしいいだろう。
「じゃあ質問は終わり。最後にそっちからの質問を聞きたいんだけど…なんかある?」
「そうでありんすね…そう…NIKUYA様は、お慕いになられている御方はいらっしゃるのでしょうか?」
お慕いに、というのは…好きな人はいるのかって事ですよね。
「そうだな、尊敬という意味ではモモンガさんだが…異性として慕ってるのは…秘密だな、シャルティア。」
俺はみんな好きだからね!シャルティアが一番かわいいと思ってるけど!
「秘密でありんすか…その…どうしても駄目でしょうか…?」
前かがみ上目遣いで攻めてくるシャルティア。誰だこの子創ったの!ペロロンチーノさんあんた最高!
「…んんっ、この事は他言無用だ。いいなシャルティア。」
「ここに誓います、NIKUYA様。」
こんな子に強請られたら言わないわけにはいかないでしょお父さん。よーしパパ頑張っちゃうぞ!
「…慕ってるものはいない。」
「…そうで…ありんすか…」
みるからに落ち込み、涙目になるシャルティア。これは事案です。モモンガさん私です。
「ただ!一番かわいいのはシャルティアだと思っている。これは本当に他言無用だ。戦争になり兼ねん。」
「………!!なんと!!私が一番…一番…私が…NIKUYA様の…」
あぁ駄目だ壊れてしまった。シャルティアが再起不能になったので、一般メイドにシャルティアの部屋に運ばせる。
「…ようやく一人目終わった…次はコキュートスか。」
部屋の温度を3℃に下げ、コキュートスを待つ。
「シツレイシマス」
コキュートスが一礼し、入室する。
「よくきたね、コキュートス。椅子と座布団どっちがいい?」
「椅子デカマイマセヌ。オキヅカイアリガトウゴザイマス」
あのしっぽどうなってるんだろうと思いつつ、席に着かせる。シャルティアよりは固くなってないのは、やはり普段から真面目なだけある。
「じゃあさっそくはじめるね。3つほど質問するだけだから、すぐ終わると思うよ。」
「カシコマリマシタ。」
「じゃあまず一つ目。モモンガさんが俺みたいな砕けた物言いになったらどう思う?」
シャルティアはああ言ってたけど、モモンガさんに夢見てる子もいるかもしれない。
「ワレラシモベニタイシテココロヲヒライテクダサッタトカンジ、サラナル忠義にハゲミマス。」
やっぱりこの子もこう言うと思ってた。モモンガさん、みんないい子ですよ。
「じゃあ二つ目。俺とモモンガさんの事をどう思うかだけど。」
「モモンガ様ハ守護者ノダレヨリモ強者デアリ、マサニナザリックノ支配者ニフサワシイ御方カト。」
なるほど、やっぱりこんな評価なんだな。これは魔王RPも辞め時が見つかりそうにない気がする…
「NIKUYA様モ守護者ノダレヨリモ強者デアリナガラ、慈悲ニアフレ、マサニナザリックノ最後ノ盾ニフサワシイ御方デス。」
慈悲にあふれ…なんかそんな接し方したっけな?まぁ、評価は悪くない、いいことだ。
「ふむ、なんだか小恥ずかしいな。じゃあ最後の質問だ。」
「ナンナリト。」
「人間と仲良くできる自信はある?」
コキュートスはカルマ値50の中立だ。だが見た目がコレなので、外で活動させるには不向きである。もしナザリックの支配、管理下に置けた集落からナザリックに人間を招待した時などを考慮しての質問である。
「ムコウニ敵意がナケレバ、モンダイナイカト。」
「ナザリックに招待することになったら?」
「…御方々ノテガケラレタコノナザリックヲ愚弄シタ場合ハ、理性ヲオサエル自信ハゴザイマセン。」
「そうか。よいよい。」
この子らの病的なまでの忠誠心はちょっと危険だな、そう思うNIKUYAであるが、今更どうこうできるわけではない。
「じゃあ質問はおわり。次はそっちからの質問に答えたいんだけど、なんかある?」
さっきのシャルティアの時はちょっと厄介な結末になったけど、コキュートスならその辺は大丈夫だろう。
「ソウデスナ…NIKUYA様ハアウラトマーレト、テアワセヲナサッタソウデスガ」
「そうだな、それがどうかした?」
「ワタシハナザリックノ剣トシテ創ラレタ身…鍛錬ヲオコタッテハナイノデスガ、サラナル向上ヲメザスニハ、ヤハリ同格カ格上トノ訓練ガ一番カト。」
「…なるほど。俺か守護者の誰かと手合せがしたいと。」
「僭越ナガラ。」
そうだった、この子は武人。トレーニングが趣味って設定だったな。
「じゃあそうだな…シャルティア、セバス、アルベドの何れかが暇な時は一日一戦のみ、俺の監視の下で手合せを許そう。皆には俺から伝える。」
「アリガタキシアワセ…!」
「それと、何れも暇が無いときは…俺が戦ってやろう。」
「ナント…!ナント慈悲深キ…アァ…アリガタキシアワセ…ナザリックニウマレテヨカッタ…!!」
壊れ…た?コキュートスもこうなるのか…?
「コキュートス?大丈夫かー?」
「…ハッ、モウシワケアリマセン、アマリニウレシカッタノデ…」
「よいよい。他に質問ある?」
「イエ、イマハゴザイマセン。」
コキュートスはまともである。ナザリックの中では。
「じゃあ面談終わり。次呼んできてね。」
「デハ、シツレイシマス。」
一礼し、静かに部屋を出るコキュートス。
(あ、椅子凍ってる…)
一般メイドに椅子を交換させ、部屋の温度を22度に変更し、アウラを待つ。
「失礼します!」
アウラが一礼し、入室する。
「ん、掛けて。なんか飲む?紅茶しかないけど。」
コキュートスが部屋を出た後、一般メイドに頼んで持ってきてもらった紅茶だ。
俺はモモンガさんと違って口の奥には胃がある。無機質だけども味はわかるし、実は種族特性で変形できたりもする。
「いえ、御方の前で飲食など、我々シモベには…」
やっぱり断られる。社長室で出されたお茶に手をつけないのと同じだ。
「紅茶は嫌いか?」
「いえ、紅茶は好きですが」
「じゃあ命令、一緒に飲んでのんびりしよう。砂糖いくつ?」
実はアウラとは一番仲良くできるとおもっているNIKUYA。ほかの守護者への対応に比べて砕けている。
「あ、じゃあお言葉に甘えて…お砂糖はひとつでお願いします」
「ん…あぁ、うまいなコレ。じゃあさっそく、質問していくけど。」
「はい!なんでも答えさせていただきますよっ!」
二人で紅茶を飲みながら、さっそく質問にはいる。
「まずは…モモンガさんが俺みたいな砕けた物言いになったらどう思う?」
「そうですね、モモンガ様がどうあろうと、我々は忠義を尽くすまでです。支配者たられるのは、物言いではなく、存在故ですから。」
この子意外と大人…ってそうか、76歳だった。見た目に騙されたらダメだ。
「そうだよね、モモンガさんはモモンガさんだもんね。」
「そうですよ、モモンガ様はモモンガ様です!」
「んじゃあ二つ目ね。モモンガさんと俺の事どう思う?」
この子の面談は滞りなく終わりそうだと思うNIKUYA。もしかしたらナザリックではアウラが一番大人かもしれない。…いや、一番はデミか。
「モモンガ様は慈悲深く、深き配慮に優れた御方だと思います!NIKUYA様も慈悲深く、その、私のお慕いする御方です…」
お慕い…慕うこと、思慕すること、などの意味の表現。「お慕い申し上げます」などの表現で用いられ、尊敬の念や恋心などの意味合いで用いられる。
「そ、そうか…なんか、うん、ありがとね。」
「い、いえ…すみません…」
気まずい。気まずいぞこれ。面談に呼んだら告られたでござ…いやまて、尊敬の意味だろ、そうだ絶対そうだ。
「じゃあ、最後の質問…人間と仲良くできるか。人間をナザリックに招待したらどう思うか。」
「命令であればまったく問題ないかと。ナザリックに招待するのも、ナザリックの素晴らしさを妬まない人間なら問題ないですね。」
アウラはカルマ値-100。中立~悪ではあるが、仲良くするフリは問題なさそうだ。
「そうか。アウラも人間に近しい姿だから、そういう任務に就かせる可能性も考えててほしい。」
「畏まりました。私にお任せください!」
うんうん、元気でいい。子供はこうでないとね。76歳だけど。
「じゃあ最後に、アウラからの質問に答えるよ。なんかある?」
「そうですね…NIKUYA様の好きな食べ物と嫌いな食べ物はなんですか?」
好き嫌いを聞かれるとは思っていなかった。小学生が異性に最初に聞くことランキング一位のこれが。
「そうだな、好きなのは肉と海鮮、嫌いなのはキノコ…料理長達のことじゃないぞ?あと野菜はあんまり好きじゃないな。」
「ハンバーガーはお好きですか?」
ハンバーガー。そういえばこの子、ジャンクフード好きな設定だったっけ。何気にそういう設定は覚えているNIKUYA。
「ハンバーガーは好きだよ?…そうだ、今度二人で食堂でハンバーガー作ってもらおうか!」
「二人で!?二人で…これって…」
あ、これは向こう側へ行くパターンか?この子もそっち系か!?
「二人でいくけど、食堂にはみんないるからねぇ」
「そ、そうですよね、でも、そっか…二人で…楽しみです!いついきますか!?」
子供のようにキラキラとした目で、握った両手を胸の前に構えて訪ねてくる。犬のようである。
「うーん、なにも問題がなければはやめに…その時ははやめに連絡するよ。朝連絡して、昼飯に食べに行こう。」
「はいっ!お待ちしておりますっ!」
しっぽがあったらブンブン振り回してるだろうなというほど喜んでいる。ここまで喜ばれるとは思わなかったのでちょっとびっくりしている。
「ほかに質問あるかな?」
「いえ、特にはございません!」
「そうか、じゃあ面談終わり。マーレ呼んできてね。」
「畏まりました!失礼しましたー!」
(よし…マーレも紅茶でいいかな。)
一般メイドにカップを下げさせ、新しい紅茶を持ってこさせる。
なんとなく嬉しそうな一般メイドを退室させ、マーレを待つ。
「し、失礼しますっ」
「どうぞ、マーレ。さあ、掛けて」
4人目の面談ともなれば、NIKUYAに少しあった不安も薄れている。段々と砕けてきてるのは誰も気づかないだろう。
「はい、NIKUYA様っ…」
シャルティアの時のように、膝に伸ばした手を置き、膝を閉じ、胸を張り、顎を引くマーレ。
それ女の子の作法やでマーレ君…違和感はないのだが。
「もっと気楽にね。紅茶は砂糖いくつ?」
「お、御方の前で飲食など…」
「命令ね、一緒に飲もう。アウラも飲んだから。」
「で、ではお言葉に甘えて…砂糖は大丈夫です。」
マーレより大人な舌なのかな?それとも男の子補正か…
「じゃあ質問3つほどするからね。まず一つ目、モモンガさんが俺みたいな砕けた物言いになったらどう思う?」
もうなんかみんなおんなじような事しか言わないと思うんだけど、ほんとに。
「僕は…嬉しいです。もっとお近づきになられたような気分になります。」
なんだろうこの違和感。男の子だという前提がなかったら見逃しそうな違和感。まぁわかんねぇや。
「そうか。じゃあ二つ目。俺とモモンガさんの事どう思う?」
なんだかんだ一番予想できないマーレ。もしかしたら一番大変なことになるのではないかと思っているNIKUYAだが。
「モモンガ様は、とてもお優しい方だと思います。」
あら、それだけ?…いや、今までが複雑すぎたんだ。この子ぐらいのが一番わかりやすくていい。
「そうだな、あの人は優しい人だ。」
「NIKUYA様は力に溢れ、とても頼もしい御方です。」
シンプルイズベスト。この子はもしかして、この面談が俺の負担になるのではないかと思ってはやく終わらせてあげようと思ってる…!?
「なかなかシンプルで分かりやすい回答だな。じゃあ最後の質問。」
「はいっ」
「人間と仲良くできるか。人間をナザリックに招待することになった時、どう思うか。」
マーレもアウラと同じ属性値。性格は違うが、問題はなさそうだが。
「命令であれば問題ないですが…自主的にとなると、その、興味が湧かなくて。ナザリックに招待なされる場合も同じです。」
興味がないか…嫌悪しているよりはマシだが、感情の洞察などはできなさそうだな。
「ふむ、そうか。じゃあ最後に、マーレから質問はあるか?」
「そ、そうですね…NIKUYA様は、僕の格好についてどう思いますか?茶釜様に頂いた服なので、不満というわけではないのですが…」
女装させられてるがまんざらでもないのをどう思うか、か…
「俺は嫌いじゃないよ。茶釜さんがそうあれと創ったんだから、間違っているわけがない。ただ…そうだな、お風呂はちゃんと男風呂入れよ?」
「わ、わかってますよー!!僕は変態じゃないんですから!!」
…お、おう。そうだな。
「んんっ、じゃあ他に質問はないかな?」
ちょっと距離が縮んだ気がし、多少いい気分になったNIKUYA。なんでも答えてやるぞと問いかける。
「うーん…モモンガ様とNIKUYA様の出会いについてなどお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「…長くなるぞ?」
ここから約二時間、途中モモンガさんからアルベドを外に連れ出していいかとのメッセージに返答しながら、延々と昔話を続けるNIKUYAであった。
一般メイドは紅茶の入れ替えのために8度の入退室を許可され、外に待っているデミウルゴスと苦笑いを交わすまでに仲良くなっていた。
「…ああもうこんなに時間が…すまんな長くて。」
「いえ!!こんなに幸せな時間は今までございませんでした…!ありがとうございました!」
「ん、じゃあ面談終わり。デミウルゴスは部屋の前で待ってるみたいだし、これ以上待たせてもね。」
「はい、し、失礼しましたっ!」
一礼して退室するマーレ。デミウルゴスらしき者に笑顔で話しかけているようだ。
(さて、デミウルゴスはコーヒーかな。)
一般メイドに、コーヒーがくるまであと少し待っててとデミウルゴスに伝えるように言い、コーヒーを持ってこさせる。
「お待たせ、デミウルゴス。」
なんだかんだで2時間ほど待たせた。だってマーレがあんなに嬉しそうに話を聞いてくれるのだから。
「いえ、お呼びいただき光栄でございます。」
やっぱりデミウルゴスはデミウルゴスだ。まったく出来た子だ。
「じゃあ席着いて。コーヒーでよかったよね?アウラとマーレは紅茶で…その前は出すの忘れてたから内緒ね?」
「かしこまりました。砂糖、ミルクは結構でございます。」
やっぱり大人はブラックだよね。俺は砂糖4つとミルク2つで。
「じゃあさっそく面談ね。3つほど質問するだけだから気楽にね。」
「はい。」
俺が一口飲んだあとに続いて飲むデミウルゴス。動きに隙がない。
設定的に裏切られたら一番大変なのはこの子だ。設定的に一番裏切らないのもこの子だが。
「まずひとつめ。モモンガさんが俺みたいな砕けた物言いになったらどう思う?」
「…そうですね。私としてはそちらの方が、深遠なる思想を僅かながらも読み取りやすくなるなるかと。」
深遠なる思想。ないです。俺とモモンガさんは小卒です。せ、せめてこの子の前ではボロがでないようにしないと…。
「そうか…じゃあ二つ目ね。俺とモモンガさんの事どう思ってる?」
マーレみたいに単純な感想がわかりやすくていいんだけど、この子はどうせ難しい言葉を使ってくる。脳内の辞書を待機させ言葉を待つ。
「モモンガ様は賢明な判断力と瞬時に実行なされる行動力を有される御方。まさに、端倪すべからざるという言葉が相応しい方かと。」
「ふむふむ。」
え、なに?たんげいってなに?つまり…どういう意味?あとでモモンガさんに聞こう。
「NIKUYA様は…昔、ウルベルト様が仰っていました言葉をお借りします事をお許しください。」
「かまわんかまわん。いってみい。」
なんだろう。ウルベルトさんだから悪がどうの正義がどうのかな?
「NIKUYA様はまさに、『力こそパワー』の権化であられると、ウルベルト様が仰っておりました。力はNIKUYA様、NIKUYA様は力であると。」
なるほどウルベルトさんがそんな事を。あの人も意外とそういうスラングとか好きな人だったっけ。
「なるほどな、デミウルゴスもウルベルトさんと同じ意見というわけか。」
「至高の御方のお言葉をお借りした事、どうかお許しを。」
「いや、それはいいんだ。やっぱりデミウルゴスはウルベルトさんの子だな…」
ぼそっと言った一言だが、悪魔の耳には届いたようだ。身震いし、顔が火照るのが見てわかる。
NPCを製作者に絡めて褒めると大変なことになると痛感したNIKUYAである。デミウルゴスですらこうなるのだ。
「ああ、取り乱してしまって…申し訳ありません。」
「いいよいいよ。じゃあ、うん、最後の質問だけど。」
一旦間を置き、コーヒーを飲んで落ち着く。やっぱりお茶の方がよかったかも。苦い。
「人間をどう思うか、仲良くできるか。ナザリックに人間を招待した場合どう思うか。」
デミウルゴスはカルマ値-500の極悪。ウルベルトさんに悪であれと創られた存在だ。
だが真の悪はただ単に人を恨み蔑む存在ではないとウルベルトさんが言っていた気がする。
「そうですね、人間は暇潰しにとても役立つ玩具だと思っております。肉体的には我々にはとても及びませんが、群としての思考などは見習う点があるとも思っております。仲良くするのは命令であればまったく問題ないでしょう。ナザリックに招待され得るような価値のある人間がいるかはさておき、御方の決定された事項であればこちらも問題ないでしょう。」
なるほどやっぱりデミウルゴス。しっぽさえ隠せばどう考えても外に持っていきたいNPCナンバーワンだわ。
使いやすすぎる。頭がいい、愛想がいい、仲間に優しい、もうデミウルゴスに全部任せて引きこもろうよモモンガさん。
でも、玩具か…シャルティアのソレとは方向性が違うし、暴走の心配も少ないが、今後これがどう表れてくるか。
「うむ、もしそういう任務があれば起用される可能性も考えててね。この世界の人間の賢さがあまりに高かったらそれこそ全部デミウルゴスに任せることもあるかもしれないし。」
「私めにお任せください。全て滞りなく完遂させてみせましょう。」
口角を上げ、右手を胸の前に添え、一礼するデミウルゴス。なんだろうこのやる気。
「うん、まぁ、頼りにしてるよ。じゃあ最後に、デミウルゴスから俺になんか質問ある?」
とんでもなく口角が上がって小刻みに震える姿に既視感を覚えつつ、問いかける。
「質問、ですか…NIKUYA様は、人間をどう思っておられますか?」
違和感のある質問だな。俺は元々人間だったわけだが、今はゴーレム。人間だったころならどう答えていたか…
「今は、そうだな。特にどうとも思わない。仲良くできるなら仲良くしたいし、敵対するなら滅ぼしてもいいと思ってる。」
「私めの質問に答えていただき、ありがとうございます。」
今はそう思ってる。ゴーレムの俺は。
「ほかに質問はないかな?ないなら面談終わりだけど。」
「ではもう一つだけよろしいでしょうか。」
「よいよい、なんでも聞き給え。」
「NIKUYA様はお酒などはお飲みになられますでしょうか?」
ん、アウラみたいな質問だなぁ。
「日本酒とかワインは苦手だけど、酎ハイとかカクテルは好きだよ。でもお酒よりはおつまみメインかなぁ。」
リアルでの味覚は引き継がれているのはコーヒーで分かったのだ。
「そうですか。実はコキュートスと9階層にあるバーによく行くのですが、よければ…」
「ん、一緒に飲みたいと?」
軽い問い返しに身体を強張らせ、自分の発言が浅はかで不敬であったと認識し冷や汗を掻くデミウルゴス。
「も、申し訳ございませんNIKUYA様!シモベたる私如きがお食事のお誘いなど…!」
いまにも自害しそうなデミウルゴスに若干引きながらも、誰かと一緒に飲むのなんてAOGのオフ会以来だなとワクワクするNIKUYA。
「いや、一緒に飲もう。コキュートスも誘ってね。他に一緒に飲める子いる?」
「あ、ありがとうございます…っ!!他にはシャルティアやアウラ、マーレも偶に見かけます。プレアデスのユリアルファも何度か見かけたことがありますね。飲んではいませんでしたが。」
ふむふむ、アウラとマーレも飲むのか。まぁ76歳だし、問題ないよね。シャルティアは酔い癖悪そう…
「じゃあ…どうせ外交はモモンガさんがやるだろうし、暇な守護者が集まり次第適当に飲み会やろう。…そうだ、宝物殿に人間化できるアイテムもあったような…モモンガさんもそれで飲み会に参加させよう、そうしよう。」
「モモンガ様もこられるのですか!それはなんと幸せな…シモベ一同、心よりお待ちしております!」
うんうん、息抜きは大事よ。たしか人間化したらバッドステータス無効化できないから、その点モモンガさんが了承するかどうか…
「もう質問ないかな?」
「ええ、これ以上ない上質な時間を過ごせた事、心より感謝いたします。」
「よいよい。じゃあ次のアルベドを…っと、アルベドはモモンガさんと外に出てるんだっけ。」
そういえばマーレに昔話をしているときにそんなメッセージが来たような…
「ええ、今はカルネ村なる人間の集落を救い、陽光聖典なる者たちとの戦闘の末に村長との取引中のようです。」
ふむふむなるほどなんだってー!!
「助けた!?戦闘!??なにやってんのあの骨!!慎重に行こうって言ったそばからあの骨は!!デミ、モモンガさんに怪我は!?」
「ダ、ダメージを少々受けたようですが、それ以外はなにも問題なかったようで…」
「問題ないだぁ!??今すぐシャルティアを呼べ!すぐにモモンガのとこにいく!」
「か、あ、畏まりました!すぐに!」
デミウルゴスが涙目になり膝を震わせていたことなど気づかず、怒りの余りにテーブルを殴り壊し命令するNIKUYA。
「あの骨…なにやってんだよ…!!」
次回はすべて収まったあとのカルネ村に殴り込む予定です。
ニグン?あぁ、まだ生きてます。ナザリックで。