とりあえず今回もバグってます。
そして次回で原作前のお話は終了予定。
なお、次回は今までで一番バグるもよう。
ナナイ・ナナセという男がロキ・ファミリアに入ってから数週間が経つ。
見たことのない服装、都合の良い記憶喪失、恩恵もなしにレベル二のベートを組伏せる“あいきどう”という技術。
話を聞いて適当にポイするはずだったが、酒の力もありその場の勢いで恩恵を与えられた彼。
そんなポッと出の男が何もせずフラフラしていれば他の者から反感を買うのは目に見えていた。
しかし、この男、厄介にも程があった。
僅か数時間でのレベルアップ。これだけならまだしも、いや十分おかしいのだがそれは置いておいて。
数日後にはオラリオ最強と戦い生還、そしてレベルアップ。それから一週間後にまたレベルアップ。
加えてレアスキルのオンパレード。レアスキルというよりは珍スキルと言った方が適切かもしれない。
しかもIからSまでしかないはずのステータスをJやKやらとマイナスに振り切る始末。
ともかく、そんなバグった存在を表に出すわけにはいかなかった。
神々とは面白いもの好きがほとんどでこんな異常を通り越した者の存在を知ればどうなるのかは火を見るより明らかである。
故に隠し、ダンジョンには行かせなかった。しかし他の子供達の言い分も確かである。
ダンジョンにも行かず、サポーターもせず、バイトすらしない。
穀潰しでしかない彼に不満を持つのは当たり前であった。
「獣耳」
「お前何やってるんだ!」
というわけでバイトをさせてみたが――失敗。
ステータスやスキルがバグってるのと同じく性格もバグっていた。主に獣耳。
獣耳狂いの彼。従業員はおろか、客に獣耳がいただけで軽く暴走する。
一日どころか数時間でクビになることが大半であった。
ならば人に会わないバイトならどうだ、とやらせてみたがこれも失敗。
裏で野菜を切る仕事では全て獣耳の形に切るなど、雑用関係は気が付けば獣耳が侵食し、書類整理はそもそも文字が読めないという無能っぷり。
「どないすればええねん……」
ロキ・ファミリアの主神たるロキは頭を抱えていた。
ダンジョンもバイトもダメ。ステータスも性格もイカれた厄介野郎。
しかし半ば強制的にファミリアに入れたのだ。厄介だからポイとはいかない。
それ以前にこんな面倒しかない男でも可愛い子供なのだ見捨てられない。
あーでもない、こーでもないと悩むロキに追い打ちが。
「おぉ、愛しのアイズたん! どうしたんや、そんな不安そうな顔して」
「……ジャガ丸くんが昨日からいない」
「……ジャガ丸くん……?」
「……違った、ナナイだった」
「ジャガ丸くんと間違えられるアイツって……ん? いないやって?」
「……うん、昨日からいない」
「……あのアホなにやってんねん」
放っておく訳にもいかず、手の空いてる者に探させた――が見つからず。
「残りはダンジョンか……」
レベル四とはいえ、ステータスはマイナスに振れレベル二かそれ以下程度のもの、更には戦闘経験も無くダンジョンの知識もない。
もしダンジョンに行き、モンスターに囲まれては為す術がない。最悪死んでしまう。
幸い、与えた恩恵の数は減っていないので死んでいることはないが猶予はない。
「チッ、クソ野郎が」
「……ジャガ丸くん」
「ナナイ大丈夫かなー?」
集められたショタ&ロリーズ。ヘイトを集めているナナイ捜索に手を貸してくれる者は少なく、その中でミイラ取りにならずにナナイを連れて帰れる実力者となると選択肢は少ない。
流石にフィンやリヴェリアに頼むわけもいかず、結果としてショタ&ロリーズに白羽の矢が立った。
――そして
「何だよ、これ」
彼らがナナイを見つけたのはダンジョン十六層。精々一桁の層にいると思い、探していた彼らだったが見つからず、既に死んでしまったのではないかと思い始めた頃、帰還する冒険者の会話が聞こえてきた。
「結局あれはなんだったんだろうな」
「さぁ? 獣耳の神かなにかじゃないか?」
「神はダンジョンには入らねーよ馬鹿」
その獣耳だけでナナイだと確信した。その後、冒険者達にソイツがどこにいたのかを聞き、驚愕。
ナナイがいたのは十六層であった。
一刻を争う事態。ショタ&ロリーズは全速力でダンジョンを駆け抜けた。
――獣耳の波
それ以外にどう表現することができようか。彼らの目の前に広がるのは獣耳、獣耳、獣耳。
ダンジョンのありとあらゆる獣耳のモンスターが列を成し、襲いくる非獣耳モンスターを尽く葬っていく。
その波の中央、ミノタウロス四体が岩でできた椅子を抱えていた。
「もふもふ」
そして視界に入るのはその椅子に座り、ヘルハウンドを侍らせ撫でまくるナナイの姿。
「……」
「……」
「……」
言葉を失う三人。無言でナナイを殴り飛ばした彼らは悪くない。
その後、彼らに連れられナナイは無事生還した。
「……で、なんでそんなことなってん」
ダンジョンに行った理由、そして獣耳モンスターの大軍の真相をロキは聞いた。
――時は遡り昨日
「穀潰しが良いご身分だな!」
「ダンジョンにでも行ってこいよ!」
我慢の限界がきたファミリアの数人はナナイに罵詈雑言を浴びせた。
しかし、特に気にせず「何言ってんだコイツら。というか獣耳ないのに話しかけるなよ」的な視線を送るナナイに更に腹を立てた。
そして彼らの中の一人が一つの策を企てた。
「知ってるか穀潰し。ダンジョンには獣耳天国があるらしいぜ」
ダンジョンに行かせて自滅させる。馬鹿げた作戦。誰もが成功するはずがないと笑っていたが
「――獣耳」
ナナイはそれ以上に馬鹿であった。
「犬耳」
ダンジョンに乗り込んだナナイを出迎えたのはコボルト。――獣耳である。
ナナイは一瞬にして背後に回るとコボルトを撫で回した。無意識に【獣耳殺し】を使用して。
見事ナナイに落とされたコボルトは彼に懐き離れようとはしなかった。ナナイもそれを良しとして撫でいた。
しかしそこはダンジョン。壁から新たなモンスターを生み出した。
襲ってくるのはゴブリン。獣耳ではない。故にナナイは何の抵抗も出来ずに殺られるはずだった。
「お前……」
ゴブリンを殺したのはコボルト。ナナイの“撫で”があまりにも気持ちが良く、その邪魔をされたためコボルトはゴブリンを殺したのである。
「獣耳、マジ獣耳」
そんな感じでナナイはあるはずもない獣耳天国を目指し、下へ下へと進んでいった。
――襲いくる獣耳を撫で回しながら
結果としてナナイを囲うように獣耳モンスターが集い、邪魔をするモンスターを殺していった。
「――」
それを嘲笑うダンジョン・ワーム。コボルト達は一層から四層のモンスター、ダンジョン・ワームは十三層のモンスター。
――勝てるはずもなかった。
しかし、ナナイの獣耳を愛する想いと獣耳モンスターのナナイを守るという想いが重なり、奇跡が起きた。
ナナイ・ナナセ Lv5
力 :L-299
耐久:L-299
器用:L-299
敏捷:L-299
愛撫:C677
スキル
【
・愛が続く限り獣耳
・愛の丈により獣耳
【
・獣耳に対する、愛、欲求、獣耳のいずれかが最高点に達した時に発動
・獣耳を無条件で撫で殺す
【
・獣耳カチューシャを投影
・カチューシャをつけたものは獣耳と一体化し尻尾が生える
・一定時間で消失
【
・能力範囲内の獣耳を強化
・獣耳への愛の丈により範囲決定
・対象の獣耳への愛に比例して強化
新たに発言したスキルにより獣耳モンスターは強化、もはや敵なし。非獣耳モンスターを屠り、獣耳モンスターを取り込み、やがてあの大軍が完成していた。
「――ということで獣耳」
「……もう好きにせぇ……」
ロキは考えるのをやめた。
次回もレベルが上がるよ!
――上がるよ!