遊戯王GX~アザー・レコード~   作:銀猫

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ユウが『スピリット』、そして『異次元デッキ』を手に入れるまでの経緯とユウの過去の話です。

一応本編にも関係する話です。


記念話&番外編
精霊の出会い


—気付いて…オイラは此処だよ…お願い…助けて……—

 

—???:sideユウ—

 

「…また……あの夢か…」

 

 

ボクの名前は聖牙夕。普通と少し違う12歳の少年だよ。

 

 

なにが違うのかって——

 

 

 

「ユウ、起きた…?」

「うん…昨日はどうだった?」

 

 

 

 

——今ボクが此処いるのが——

 

 

 

「駄目…残飯も廃棄処分の奴も無い…」

 

 

 

——童実野町地下……通称ゴーストシティと呼ばれる地下スラム街だったから——

 

ボクは7年ぐらい前まで普通の少年だった。

兄弟は無く、少し厳しい父親と優しい母親と3人暮らしだった。

父さんの仕事はアマチュアのデュエリストだった。アマチュアリーグでは上位に入っていた腕前だった。

母さんはいたって普通の主婦だった。ただ少しドジっ子で、料理をして砂糖と塩を間違えることがまちまちだった…けど間違えて砂糖を入れても料理は何故か美味しかった。

 

けど——

 

 

 

——7年前・童実野町の外れの一軒家の2階——

 

「誕生日おめでとう」

「おめでとう!」

 

「ありがとう!父さん、母さん」

 

 

ボクが5歳の誕生日の時——その日はいつも仕事で忙しかった父さんも無理言って休みにしてもらって誕生日を祝ってくれた。

母さんは普通だったら料理は上手で、ボクの好きな料理をなんでも作ってくれた。

 

 

「そうだな…今年のユウの誕生日プレゼントはこれだ」

「なに?これって…デッキ?」

 

 

父さんがボクに渡したのは一つのデッキだった。少し使いこまれている気がしたけど、中身を見た——

 

 

「『マクロコスモス』に『グランドクロス』…それに『ダ・イーザ』ってこれって父さんのデッキ!?」

「そうだ。正確には俺のデッキをもとに改良を加えたデッキ破壊——いや、デッキ除外の『異次元デッキ』だ」

 

 

父さんはプロでもアマチュアの中でも数少ない『デッキ破壊』の使い手だった。けど自分のデッキもろとも破壊するメタモルポットや手札抹殺をして、残骸爆破でダメージを与えるデッキだった。

 

それも緻密な計算の上に成り立っているデッキ——他に『ドラゴンビート』や『超重量』といった複数のデッキを使う珍しいデュエリストだった。

その中の『デッキ破壊』を改良したデッキ——それをユウに渡したのだ。

 

 

「前に一回お前が俺の『デッキ破壊』を俺以上に使いこなした…お前ならこのデッキを使うことができるだろうな」

「父さん…ありがとう!」

 

 

ユウはまだデッキを持っていなかった。約束としてはユウが安心してデュエルできるまで持つ事を禁止されていた。

 

これがユウの最高の日になるはずだった——

 

 

「あれ?父さん、このカーd」

 

ドゴォォォォォォォォォン!!!!

 

 

「え!?な、なに!!?」

 

 

ボクがある一枚の——『絵柄の無い白いカード』について聞こうとした時、家の1階部分で爆発音が聞こえた。だが、父さんと母さんは驚く事は無かった。

 

 

「ユウ、よく聞いて」

「か、母さん!?」

 

 

パニックになっているボクを、母さんが優しく抱きしめてくれた。すると徐々に——ボクの体が透けてきた。

 

 

『な、なにこれ!?』

「ユウ、母さんと父さんはある人たちに狙われてるの。もう私達は逃げることができないわ…けど、あなたは逃げれる。今貴方を纏っているのは姿を見えなくして、攻撃から身を守ってくれるモノよ…」

『母さん!?』

 

 

すると誰かが階段を駆け上がってくる音が聞こえてきた。母さんはボクを抱きしめた腕を緩めると父さんと共に扉へ振り返った。

 

すると、僕の足元に奇妙な魔法陣のようなものが浮かび上がった

 

「元気でな、ユウ」

『父さ――』

 

 

僕はそこで気を失った。

 

目を覚ますとそこはゴーストシティの外れだった。

 

 

そしてボクの最高な日から、最低の日へと変わった。

 

 

その次の日、ボクの家は燃えていた。父さんも母さんも遺体は発見されなかった。警察はガス漏れに引火しての火事だと判断した。遺体は燃え尽きたとされ、引き取り手のいなかった僕はそのままストリートチルドレンとなった。

 

——現在:ゴーストシティ——

 

今は似たような境遇に会った倉敷 澪(くらしき みお)福本 徹(ふくもと てつ)と暮らしている。

けど、流石に子供を雇う場所も無く、残飯や廃棄処分される食物を食べて暮らしていた。

 

しかし此処の所まともにご飯を食べていない。

徹は自分の食べ物をボクと澪に残してどこかに行ってしまったらしい。

 

 

ちなみに澪は徹の事が好きだ。そして徹は澪の事が好きらしい。

だけどボクにとってそんなことはどうでもよかった。

 

あの日から…何のために父さんと母さんは殺されたのか、それを知るまで僕は生き続けることしか考えてなかった。

 

 

「今日はボクが探してくる。澪は待っといて」

「分かった…気をつけてね」

 

 

ボクは一人地上で食べ物を探しに行くことに——けど、この日…ゴーストシティへ来て初めて後悔した。『どうして澪を一人だけにしてしまったんだろう』って——

 

 

 

——童実野町・地上——

 

 

「………こんなところかな」

 

 

ボクは裏路地を通って落ちていた食べれそうな食料をかき集めた。

少しカビの生えたパン、油の固まった肉弁当、密封状態で踏まれたおむすび——

 

これでまだいい方だ。

 

 

 

「おい小僧」

「…ん…?誰?」

 

 

呼び止められたボクは、振り返ると高校生ぐらいの男の人が立っていた。白いコートを着て、右手にはアタッシュケースを持っていたけど——何の用だろう?

 

 

「何か用ですか…」

「貴様、俺の会社の前でなにをしている」

 

 

会社?そう思ってボクはその人の背後の大きなビルを見た。

 

 

「(なるほど…ボクみたいな子供がうろつくのが目障りなだけか…)食べれる物を集めていただけです。すぐに此処からいなくなりますよ」

「…そうか。お前親はどうしたのだ?」

 

 

流石にお昼時にこんなことをしてるから疑問に思ったのだろう。だけど——その質問がむかついた。当たり前の事を聞く様な感じがして——

 

 

「いません…もう7年前に死にました」

 

「……お前「お前じゃないです。ボクは「ユウ!!!」」」

 

 

ボクの言葉に被せてきたのは、同じストリートチルドレンの…ヤマさんだ。ちなみに本名ではなく、苗字か名前か取ったのらしいが…覚えてない。

 

 

「どうしたのヤマさん」

「大変だ!!澪が危ない!!」

 

 

その言葉に、ボクは思ってい食べ物を落としてしまった。久しぶりのまともな食事なのに——という考えが浮かぶ前にヤマさんに掴みかかっていた。

 

 

「澪が危ないってどういうこと!?」

「さっき黒崎がお前の家に入って行くのが見えたんだ!!あのままじゃ——」

 

 

ボクはヤマさんの言葉を全て聞く前にその場を走り出していた。黒崎 狂多(くろさき きょうた)——ゴーストシティでは大人が介入しないことをいいことに好き勝手している野郎だ。そいつが『澪が待っている家』に入って行ったのだ——

 

 

—家:side澪—

 

「止めてください!!」

 

 

ユウが出かけて2時間ほど——その時黒崎が家に押しかけて来た。家といっても地下道の膨らみになっている所に住んでいるだけだった。ガスも水道も電気も無い——そんな感じのところだ。

 

 

そして黒崎とその取り巻き数人は——

 

 

「うへへへへ…澪タン可愛い…」

 

 

私の服を切り裂いて、写真を撮っていた。いわゆる性的暴行なのだ。

だけど私が助けを求めても警察は来ない。

 

実はゴーストシティが生まれたのは、警察の不祥事で住む場所の無くした人が多くいるのだ。その為、警察ではゴーストシティの住人は見て見ぬふりをされ続けている。そこに住んでいる=警察は関わらないという方程式が成り立っているのだ。

 

 

「ククク…いい写真が撮れたぜ…」

 

「か、返してください!!」

 

 

私は黒崎のデジカメを取ろうとした——が、取り巻きが私を仰向けに押さえつけた。

それで私の大事な部分が露わに——

 

「は、離して!!!止めて!!!!!」

 

「お?なんだ〜案外乗り気じゃねぇ〜か〜」(カシャ、カシャ)

 

 

また写真を撮られた……もう、私…

 

 

「澪!!コノォ!!!」

 

「ひでぶ!!」

 

 

私が全てに絶望しそうになった時、私の大好きな人が——徹が戻ってきてくれた。

そして、私を取り押さえている人たちを睨みつけると、その人たちを蹴り飛ばした。

 

すると徹は来ていたジャケットを私にかけてくれた。

 

 

「ククク…まあ、良い。この画像、どれぐらいの値段で売れるだろうかな?」

 

 

そう言って黒崎はわざとらしく、デジカメをちらつかせた。

 

 

「澪!!徹!!」

 

 

そこにユウが戻ってきた。そして澪の状況を見て黒崎を睨んだ。すると思い出した様に黒崎が言った。

 

 

「ああ?この画像流してほしくないのなら勝負するんだな」

「勝負…!?」

 

 

徹が聞き返すと、黒崎はデュエルディスクを投げた。それを受け取ったユウは怪訝そうに黒崎を睨んだ。

 

 

「俺と勝負して勝てたらさっき撮った写真を消してやるよ。ただし…ハンデとしてそのデッキをこちらに渡してもらうぞ」

 

「「な!?」」

 

 

黒崎の出した条件——それは『異次元デッキ』を黒崎に渡すというものだった。

 

2人ともユウの『異次元デッキ』の事も——そしてユウの両親の形見だということも知っていた。

 

 

「ユ、ユウ…!?」

 

 

澪は自分の所為でユウの大切なデッキが無くなるのが嫌だった。だが、ユウは迷わずデッキホルダーごと黒崎に投げた。

 

 

—sideユウ—

 

「…20分後、時計前広場だ」

 

 

黒崎はそう言い残すと取り巻きを引き連れて家を出て行った。

 

 

「ユ、ユウ…なんで…!!」

「…………徹、澪を連れて逃げ「バカ野郎!!」グッ!?」

 

 

ユウの言葉——それを聞いた瞬間、徹はユウを殴った。倒れたユウを見下ろす徹は息を切らし、右手を握りしめていた。

 

 

「あれはお前の宝物だったんだろ!!なんで易々と渡したんだ!!」

「じゃあ徹は、澪を見殺しにするの!?」

 

 

ユウの言葉に徹は眼をそらした。確かに澪を守ってやりたい、だがその力が徹には無かった。

 

 

「2人とももう止めて!!私の所為で仲間割れするのはやめて!!」

「「………………」」

 

 

澪がそう叫んでその場は収まった。だが、ユウは家を出て行った。デッキは『異次元』のただひとつだった。その為に代わりとなるデッキが必要だった——

 

 

「(あの夢…もう、あれに頼るしかない…)」

 

 

此処最近よく見た夢…誰かが呼ぶ声に賭けるしかなかった。

 

 

 

—広場:side no—

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

 

昔徹、澪のよく3人で来ていた広場——そして夢に出てくる場所——

 

 

「確か…此処…!!」

 

 

スコップなんて持ってないユウは素手でその場所を掘り始めた。爪の間に砂や土が入り込むが、気にしない様にしていた。だが、先日の雨と本日の強力な日差しで地面はカチカチだった。

 

 

「早くしないと……っ!」

 

 

等々ユウの爪が割れた。そこから血が流れ出してしまった。しかし痛がってる時間は無い。時計前広場から逆算すると残り時間は5分だ。

 

だが、爪が割れたことにより指先に力が入らなかった。

 

 

 

 

 

「ユウ!!」

 

 

すると、そこに徹が現れた。徹は置いてきたデュエルディスクを持って走っていた。

 

 

「徹…っ!」

「ユウ…手が…」

 

 

徹がユウの指先を見て息を呑んだ。ボロボロの爪に血が不気味さを出していた。

だが、話す時間も無くユウはまた、その場所を掘ろうとした。

 

 

「待て」

 

 

それを徹は止めた。そしてユウを押しのけると、ユウの代わりにその場所を掘り始めた。

 

 

「何かは知らねぇけど…此処に何かあるんだろ?」

 

 

掘りながら徹が言った。だが、それにユウは応えることができなかった。所詮夢の話だから、話したところで信じてもらえるのかもわからなかった。

 

 

「多分お前の事だから、ホントは、なにも、無いかもしれない、と思ってるんだろ」

 

 

徹が掘りながらそう言っていた。それにユウは俯いた。徹には何もかもお見通しだった。「だが」と徹は前置きして言った。

 

 

「お前の話を俺は信じるぜ。お前は、嘘を……?」

 

 

そう言って徹は掘った穴から何かを取り出した。土まみれの————

 

 

 

 

「言わないからな」

 

 

——黒いデッキケースだ

 

 

それにユウは驚いていたが、受け取ると中を見た。ユウ本人はあまり見たことの無いカードだが、これで戦うことができる。

 

 

「急げ、結構時間が危ない…俺は澪の様子を見てからすぐに行く」

 

 

—時計前広場—

 

 

黒崎が時計前広場でユウの異次元デッキを見ていた。

 

 

「ふっ…なかなか良いデッキだ。あいつらはこれにしか頼れないからな…あ〜残り30秒が待ち遠しいぜ〜」

 

 

黒崎の言葉に取り巻きたちが笑った。だが、そんな彼らの前に——

 

 

「間に合った…」

 

 

ユウがやってきた。それを見て黒崎がめんどくさそうに立ち上がった。

 

 

「ハッ!わざわざ不戦敗の報告をしに来るとは、お前達律儀だな〜〜」

 

 

また黒崎の言葉に取り巻きが笑った——

 

 

ガシュン、ガシュン、キュィィィィィィィン!!!!

 

 

 

が、その笑いが凍りついた。ユウのデュエルディスクが起動したのだ。デッキをセットして無いとディスクは起動しないのだ。

 

 

 

「デッキならある。さっさとやるぞ…!!」

 

 

 

響いたユウのドス黒い声。そう——これが初めての『処刑モード』だった。

 

 

 

—ユウのターン—

 

「俺のターン!!カードを3枚伏せ、モンスターを伏せる。ターン終了!!」

 

 

ユウ

手札2枚 LP4000

モンスター1体

伏せカード3枚

 

—黒崎のターン—

 

「ヘッ、俺のターン!!俺はゴブリン突撃部隊を攻撃表示で召喚!!」

 

 

ゴブリン突撃部隊/ATK2300

 

黒崎の場に大勢のゴブリンが現れた。ゴブリン突撃部隊——有名な攻撃単体モンスターだ。おそらく次に——

 

 

「カードを2枚伏せて、バトルフェイズ!!」

 

 

伏せカード——あれは最終突撃命令か、スキルドレインの様なカードだろう。

だが、その前にゴブリン攻撃を何とかすることが先決だ。

 

 

「ゴブリン突撃部隊で攻撃!!」

「伏せカード発動!フローラル・シールド!!相手の攻撃を向こうにして、カードを一枚引く!!」

 

 

ゴブリンの向かった先に現れた花が、ゴブリンの攻撃を受け止めた。

だが、攻撃を無効にされたゴブリンは守備表示にならない。

 

 

「ターンエンドだ」

 

 

黒崎

LP4000 手札3枚

ゴブリン突撃部隊 /ATK2300

伏せカード2枚

 

 

—ユウのターン—

 

「俺のターン!!伏せカード発動!!ゴブリンのやりくり上手!墓地に存在するゴブリンのやりくり上手の枚数分+一枚カードを引く!!」

 

「だがお前の墓地にカードは…」

 

 

と、黒崎はバカにした様に笑った。それを遠巻きに呆れた表情で見ている男がいたのだが、それにその場にいたメンバーは気付いていない。

 

「速攻魔法ダブル・サイクロン!!自分と相手の場の魔法・罠カードを破壊する!!俺はゴブリンのやりくり上手を、お前の場の伏せカードを破壊する!!」

「な…チェーンブロック!?」

 

 

黒崎が驚いたように声を上げた。だが取り巻きたちは何のことなのか分かっていなかった。

 

 

「チェーンが積まれた事により、逆順処理…まずダブル・サイクロンの効果処理から。ゴブリンやりくり上手とその伏せカードを破壊する!!」

「はぁ!?あいつ馬鹿じゃねぇの!?自分で発動させたカードを破壊してんぞ!!」

 

 

取り巻き…Aがバカにしていた。が、黒崎は気付いていた。このデメリットのダブル・サイクロンをメリットに変える方法に——

 

 

「更にチェーン処理!ゴブリンやりくり上手の効果…墓地にやりくり上手は1枚あるため、2枚ドロー!!」

 

「な!?カード破壊してんのに効果使うのか!?」

「ルール上は問題ない。ゴブリンやりくり上手はあいつのカードで破壊されただけ…効果を無効化されていない」

 

 

今度は取り巻きBが驚いていたが、黒崎が静かに説明をした。

確かに魔宮の賄賂の様なカウンターを使われていないため、効果は適用される。

 

 

「そして手札のカードを1枚デッキの一番下に置く、手札からフィールド魔法、死皇帝の陵墓を発動!!」

 

 

辺りが巨大な墓場へと変わった。更にユウは伏せていたカードを発動させた。

 

「ディストラクト・ポーションを発動!!自分の場の雷帝神を破壊し、その攻撃力2000分のライフを回復する!!」

 

「ライフを2000も!?」

 

 

ユウ/LP4000→6000

 

 

「更に手札から二重召喚を発動!!このターン俺は2回の召喚を行える!!」

「はっ、だが俺の場には2300のゴブリンが…」

 

 

と言っている黒崎。だが、ユウはもう勝利までの方程式を完成させていた。

 

 

「死皇帝の陵墓の効果発動!!ライフをモンスターの生け贄×1000払うことで、そのモンスターを生贄なしで召喚できる!!ライフを2000払い火之迦具土を攻撃表示で召喚!!」

 

ユウ/LP6000→4000

火之迦具土/ATK2800

 

ユウの場に、上半身裸の炎を纏った男性が現れた。その姿を見た黒崎が怯え始めた。

 

 

「ば、バカな…スピリットモンスター…だと…!!!」

 

 

あまりのビビり様にただ事じゃないと感じた取り巻きたち。だが、それを無視してユウは続けた。

 

「更に二重召喚の効果で2回召喚を行える、ライフを2000払い八岐大蛇を召喚!!!」

 

ユウ/LP4000→2000

八岐大蛇/ATK2600

 

 

今度は火之迦具土の横に八つの頭を持つ巨大な龍が現れた。

そしてその顔の目——全てが黒崎を捕えた。

 

 

「バトルフェイズ!!火之迦具土でゴブリン突撃部隊へ攻撃!!紅蓮滅殺拳!!」

 

「うわぁぁぁぁ!!!」

 

 

黒崎/LP4000→3500

 

 

火之迦具土がゴブリン相手に無双をしていた。

 

 

「更に八岐大蛇で攻撃!!屍山血河!!」

 

「ウワァァァァァァアァァァァ!!!!!!!!!!」

 

 

今度は八つの頭から放たれた光線に黒崎が包み込まれた。

 

 

黒崎/LP3500→900

 

 

「更に八岐大蛇が戦闘ダメージを与えた場合、手札が5枚になるまでドローする!!」

「はぁ!?てめぇ卑怯だぞ!!」

 

 

取り巻きたちが何か言っているが、ユウはそれを無視してカードを5枚引いた。

そしてその中の2枚のカードを伏せ、一枚の装備カードを火之迦具土に装備させた。

 

 

「八汰鏡を火之迦具土に装備!!ターン終了時にスピリットモンスターは手札に戻るけど、八汰鏡の効果で火之迦具土は場に留まる!!」

 

 

ユウ

手札3枚 LP2000

火之迦具土/ATK2600

八汰鏡 伏せカード2枚

 

—黒崎のターン—

 

「俺の「この瞬間、火之迦具土の効果発動!!」はっ!?」

 

 

ユウの言葉に驚いていると、黒崎の手札が燃え上がった。

 

 

「熱ちちちちちちち!!!!!」

「火之迦具土が戦闘でダメージを与えた場合、相手の手札を全て墓地に送る!!」

 

「卑怯者!!」

「汚ねぇぞ!!!」

 

 

取り巻きたちが火之迦具土の効果にそう叫んでいた。だが、ユウはそれを無視して黒崎を睨んだ。

 

 

 

「どうした?お前のターンだろ?」

 

 

ユウの言葉に黒崎は顔をしかめながらカードを引いた。だが、すぐに口を吊りあげて笑った。

 

 

「伏せていたリビングデッド呼び声を発動!!墓地のゴブリン突撃部隊を特殊召喚!!」

 

 

再びゴブリン達が黒崎の場に現れた。だが、あの手札——恐らくゴブリンは生け贄用員だった。

 

 

「ゴブリン突撃部隊を生贄に偉大魔獣ガーゼットを召喚!!」

 

 

フィールドに強大な悪魔が現れた。だが、攻撃力が決まって無い——

 

 

「ガーゼットは生け贄に捧げたモンスターの攻撃力の2倍となる!!ゴブリン突撃部隊は2300…つまりその2倍、攻撃力——」

 

 

ガーゼット/ATK0→4600

 

「バトル!!ガーゼットで火之迦具土に攻撃!!魔獣轟拳撃!!!」

 

 

ガーゼットは腕を振り上げ、火之迦具土を殴りにかかってきた。だが、その火之迦具土の前に巨大な鏡が現れた。

 

 

「八汰鏡の効果発動!!このカードを破壊して装備モンスターの戦闘破壊を無効にする!!」

「だが戦闘ダメージを受けろ!!」

 

 

「うわぁぁぁあぁぁ!!!!」

 

ユウ/LP2000→200

 

 

黒崎

LP900 手札0枚

偉大魔獣ガーゼット/ATK4600

リビングデッドの呼び声

 

 

—ユウのターン—

 

今のユウの手札は——先程のターン戻った『八岐大蛇』、貫通能力を与える『草薙剣』、そして今の状況では意味の無い『死皇帝の陵墓』だ。

 

そして伏せカードは『受け継がれる力』と何故か入っていた『闇次元の開放』だった。

 

 

少なくともこのターンで決めないと、火之迦具土が破壊され、勝つことが不可能になる。

 

 

「…ボク(・・)のターン」

 

 

だが、ユウは怖くなかった。デッキの一番上のカード——それが『逆転の切り札』だと信じていたからだ。

 

 

「ドロー!!」

 

 

引いたカード——ステータスだけを見てみたら攻撃力の低い下級モンスター。

だが、その効果は勝つために必要不可欠な効果——

 

 

『あ、やっとオイラに気付いてくれたね』

「……え…?」

 

 

ユウはどこからか夢の声が聞こえた気がした。だが、周囲には黒崎の取り巻きしかいない。気のせいだと思いそのカードをもう一度見ると——

 

 

『………(パチ)』

「……!!(ウィンクしたァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!)」

 

 

そのカードは思いっきりパチッとウィンクした。だが、「早くしろ!」とせかす黒崎の声で気を取り直してそのモンスターを出した。

 

 

「因幡之白兎を攻撃表示で召喚!!」

『初陣だよ〜!!』

 

 

因幡之白兎/ATK700

 

うん、間違いないとユウは思った。確実に因幡之白兎が喋っている。だが他のメンバーは気付いていない——いや、気付かないのはおかしい。

確実に気付くぐらいの大声を出していた——つまり、『自分にしか聞こえない』?

 

 

「まあ…それは後で良いか……伏せカード受け継がれる力を発動!!場の火之迦具土を生贄に、その攻撃力…2800ポイントを因幡之白兎に加える!!」

『力が漲るよ〜!!!』

 

因幡之白兎/ATK700→3500

 

 

「はっ!!だが攻撃力なら俺のガーゼットが上だ!!」

 

 

 

黒崎はそう言った。だが因幡之白兎は相手のモンスターを倒すモンスターではない。

 

 

「バトルフェイズ!!因幡之白兎で攻撃!!

「馬鹿め!!ガーゼットの攻撃力の差は700!お前のライフは0に——」

 

 

と黒崎が言ってるが、因幡之白兎はガーゼットをスルーして黒崎に向かっていた。その不可解な光景に言葉を失う黒崎。

 

 

「残念だけど因幡之白兎は————相手プレイヤーに直接攻撃しかできない」

「なっ!?ば、馬鹿な!!!そんな効果卑怯だぞ!!!」

 

『餅つきアタックゥ!!!』

 

 

そういいながら因幡之白兎は杵で黒崎に突撃した。ちなみに普段なら何かとぶつかったな…という感覚ぐらいの威力だが、今因幡之白兎は火之迦具土の攻撃力分上がってる————

 

 

「ウゴォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

——つまり、トラックと正面衝突並の衝突の様な衝撃が黒崎を襲った。

吹っ飛ばされた拍子にデジカメと、ユウの『異次元デッキ』のホルダーが落ちた。

 

 

「これは返してもらうよ!!後こんなもの!!!」

 

 

と言い、ユウはそのデジカメを踏みつけた。取り巻きが止めようとするのもむなしく、デジカメは粉々に砕けた。

 

 

「き、貴様!!!よくウゴォ!?」

「金ちゃん!?うげぇ!?」

 

 

取り巻きたちがデジカメを踏みつぶしたユウに襲いかかろうとするが、

 

 

「おいおい…逆恨みも良いところだぞ」

 

 

そこは徹がいた。実は徹は空手の有段者なのだ。その後ろには徹のジャケットとユウの変えのズボンを履いた澪がいた。

 

 

「クッ…クソ!!貴様…俺の親父を知ってるのか!?海馬コーポレーションの幹部――」

 

「ふぅん…中々の強かさだ」

 

 

遠巻きで見ていた男性がユウ達の元へと歩いていた。それを見た残り取り巻きが苛立ちを隠さずにその男に絡んでいた。

 

 

「おい!てめぇ一体なにもんだぁ!?」

「ぶちのめされたくなかったらさっさグフっ!?」

 

 

取り巻きBがその男に掴みかかったが、逆に顔面を殴り返されていた。

するとユウはその男性が先程ヤマさんが黒崎が押し掛けてきた事を伝えに来た時にユウと話していた人だった。

 

 

「今の戦術…中々のモノだ。デュエリストたる者、相手の戦術を卑怯者呼ばわりするとはこの俺が許さん!!!」

 

「なっ!?あ、あんたは…伝説の決闘者の一人…海馬瀬人!?」

 

 

黒崎がそう驚いていた。ユウも父親から聞いたことのある名前だった。

第一回バトルシティ開催者にしてベスト3に入った海馬コーポレーション社長だ。

 

 

「さて…俺の知る限り黒崎という重役は一人しかいない…だがあいつはもう俺の会社に必要ない…磯野!!」

 

「はい、瀬戸様」

 

 

何処からか海馬の執事?秘書?の様な男性が現れた。その手にはユウと話している時海馬が持っていたアタッシュケースがあった。

 

その中から海馬は書類の様な物を取り出した。いや、紅い書類を取り出した。

 

 

「黒崎はクビだ。老害には消えてもらう」

「な!?ま、まって——」

 

 

黒崎がそう言うが手早く書類に必要事項を書くと、それをアタッシュケースに戻した。すると磯野は何処かへ向かった。それに黒崎はパタンと頭を下げた。

 

それに興味が無い海馬はユウ達を見た。

 

 

「お前…名前は」

「あ、言って無かったかな…ボクは聖牙夕、で大切な家族の福本徹と倉敷澪」

「えっと…初めまして…」

「初めまして…」

 

 

澪と徹は海馬に挨拶をする、すると海馬は磯野が残したアタッシュケースから3枚の書類を取り出した。

 

 

「中々のデュエルの腕前だった…それを腐らせるのもいささか納得いかない。そこで貴様には海馬コーポレーション経営の孤児院に入ってもらう。ついでにそこの2人にもだ」

 

「「「…………What?」」」

 

 

 

3人が英語で聞き返してしまった。「だが」と前置きして更に一枚の紙を取り出した。

 

 

「海馬コーポレーションが運営するデュエルアカデミアでデュエルの腕を磨き、その後は何らかの形で我が社に貢献してもらうぞ」

「…………(この話…結構いい話じゃない…?このまま地下で暮らしていてもなにも…あの事件の手掛かりがなにも入ってこない…それにあの生活じゃあまともにその日を生きるのもままならないし…それに父さんはアカデミアでデュエルの腕を磨いたって言ってた。父さんを越えるためにも…)」

 

 

そう考えたユウは2人を見た。2人はユウが「イエス」と答えたらそのままついて行き、「ノー」と答えたら再びあの生活に戻る気だった。

3人は一緒に暮らしていた。それは今までも——これからもそのつもりだったからだ。

 

 

だから行くときも、戻る時も一緒だ。

 

 

「…その話受けます」

「ふぅん…なかなか賢い選択だったな。その孤児院へは後で迎えを寄こす。期待せずに待っとくんだな」

 

 

そう言い残し、海馬はその場から離れて行った。

 

 

 

—3年後:sideユウ—

 

 

「行ってきます!」

 

「「「「「「「「「行ってらっしゃ〜い!!!!」」」」」」」」」

 

「頑張れよ」

「気をつけてね」

 

ボクは同じように親がいない『家族達』と徹、澪に見送られながらアカデミアの入試試験会場へ向かった。

 

ちなみに2人はデュエルの腕が駄目だったらしく、海馬さんに止められた。

だけど徹は海馬コーポレーションの経理、澪は孤児院のお手伝いとして働いていた。

 

 

 

会場へ向かうボクの横にはボク以外には見えない『イナ』が浮かんでいた。

 

 

あの日——2人と離れていた時、イナがボクに話しかけたのだ。

 

 

そしてお互いの事、精霊の事、夢の事——色々と話をした。徹と澪だけにはイナの事を話した。2人は見えていないが、イナがいる事を信じてくれた。

 

 

「「だってユウがそんなデタラメ言う訳ない」」

 

 

と、正直ボクは嬉しかった。あの日からボクは『スピリット』を使っている。父さんからくれた『異次元デッキ』は『スピリット』のホルダーの横にある。

『異次元デッキ』はボクの『本気』だったから。けど——結局あの『白いカード』の事は分からなかった。海馬さんに聞いても首を傾げていた。

 

まあお守り代わりにスピリットの融合デッキに入れている。

 

 

「まあ、良いか」

『どうしたの〜?』

 

 

いつの間にか準備室についていたみたいで、周りに他にも受験生がいた。するとイナがフラフラ浮遊しながらボクに話しかけてくれた。孤児院から出ても大切な家族がいてくれる。それだけでものすごく嬉しい——

 

 

「離して!!」

 

 

そこには白髪の綺麗な女の子が不良たちに絡まれていた。

 

 

——————————————————————

 

 

これがボクの物語の始まり。そしてツバキと―シゲルと―…これから多くの繋がりができる親友とも、家族とも言える仲間たちとの出会いと、ボクの人生ともいえる戦いの始まりだった。

 




ユウ「ボクって結構すごい生活してたんだね…」
にじファン時代、初めは普通に家族がいる設定で…その後孤児で…最終形態がストリートチルドレンになった。
なぜこうなったのか、当時の俺はどうかしていたようだ。

ユウ「ゴーストシティ…?」
GX時代のサテライトみたいなものって思ってくれた方がわかりやすいかな。
イメージだと遊星のアジトみたいな地下道・地下鉄に家やらなんやらが作られてる感じ。
ユウ「そんなところが…」
まあ、ある種の都市伝説みたいなものだね。今現在だと海馬瀬人が一帯を封鎖している。

そして…スピリットデッキは…
ユウ「なんで埋まってたの?」
まあ、それはおそらく7章あたりで出てくるね
ユウ「7!?どれぐらい長いことになりそうなの!?」
…少なくとも8章程まで行くね。大体130話ぐらいになりそうだな。
ユウ「え、えええ……」
今現在すぴばる小説部で投稿してるのが5章80話。それで半分超えたぐらいだから…
先が長い…

ユウ「そういえば徹と澪は?」
一応2人も本編で出てくる。まあ、サブキャラだけどね。

さて、本編もお楽しみに。
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