遊戯王GX~アザー・レコード~   作:銀猫

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本作はアンゲロス編の裏側の話です。


アフター・ホスピタル

―童実野町:病院―

 

「明日アカデミアに戻るのか?」

 

「ええ、早く戻って兄さんの復学届を出さないといけないし」

 

 

優介がこの病院に検査入院として運び込まれたのは1週間前。その付き添いに雪乃とジュードが同行していたが学園での学業があるため長居はできない。

 

 

「すまないな、迷惑かけて」

 

「ううん、それよりももっと迷惑かけてよ、兄妹でしょ? あ、飲み物買ってくるね」

 

置いてあったペットボトルに飲み物がないことに気づいた雪乃は財布を持って病室を出た。

 

 

―診察室―

 

「藤原さんの診察結果は問題はないですね、数日の経過観察の後退院できると思います」

 

「ありがとうございます、先生」

 

 

優介の担当医に礼を述べたジュードは部屋を出ると横で嬉しそうな笑顔を浮かべるナタリアをみた。

 

 

『よかったね~』

 

「そうだね、ダークネスの力がどこまで蝕んでたのか心配だったけど」

 

『そういえば、ジュードと戦ってるとき優介さんなにか召喚しようとしてたよね?あれもダークネスのカードなのかな?』

 

 

それは解呪の儀でシンクロ召喚しようとしカードだ。だが解呪が失敗したのか召喚されず戦術の軸がThe Supremacy SUNへと切り替えられた。

 

「それは優介さんに聞いてみよう。もしかしたら釼都先輩と相談しないといけないかもしれないからね」

 

そう言ってジュードはエレベーターから降りて優介の病室への扉のノブに手をかけた。

 

 

 

「…あれ?」

 

 

扉を開くと、そこには誰もいなかった。

 

 

―屋上―

 

 

「君は一体誰なのかな」

 

 

 

ディスクを片手に優介の見つめる先には一人の女性が立っていた。優雅なその仕草や立ち振る舞いにはどこかの令嬢や社長のような風貌を思わせるがそのまとっている雰囲気は只者ではないとわかっていた。

 

 

「お初にお目にかかります、藤原優介。私の名前はオペラ・セリア。エネミーズです」

 

 

その名前――優介はより一層警戒心を高めた。エネミーズ、つまり転生者の敵である。彼自身、ゴスペルとは接触したことがあるがその組織自体は詳しくは知らない。

 

ダークネスと何らかの関係があることは知っているが、優介は眷属という立場のため、奥まで踏み込むことができなかった。

 

 

「目的は…一体何だ」

 

「…あなたに預けたあのカード、それを回収に参りました」

 

 

ジェネックスでの作戦、あれは大会を乗っ取って世界の矛盾と転生者を消すことではなかった。あるカードを完成させるためのものだった。

 

 

「超融合は既に人の手に渡した、ここにはない!」

 

 

解呪の義は二度行われていた。一度はエネミーズより渡された超融合の完成に必要な生贄――かつて、ある世界を犠牲に完成させたそれにかけられた呪い。それを解くために使用された。

 

 

「ふっ…超融合ではありません」

 

「…!」

 

「あなたの持つ、もう一枚のカード…それを貰い受けたいのです」

 

 

もう一つはダークネスの所持していたカード、こちらはジュードとの戦いでエネルギーが貯まるも、完成せずにそのまま優介が所持していた。というよりも、その後のツバキの失踪や優介自身の搬送のために後回しにしてそのままにしていたのだ。

 

 

「あのカードは、完成してない。それなのに何故…!」

 

「あなたには関係のないこと、渡してください」

 

 

一歩、近寄ろうとしたセリア。だが、その歩みは押し止められた。優介がディスクを腕にはめて起動させていたからだ。

 

 

「なるほど、あくまで抵抗するのですか」

 

 

残念そうにつぶやいたセリアは手を空へと向けた。すると、いつの間にかその腕にディスクがはめられていた。

 

 

「なら、あなたの亡骸からカードを回収させてもらいます」

 

「かかってこい!!」

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

―セリアのターン―

 

 

「私のターン、モンスターを伏せてターンを終えます」

 

「なに…?」

 

セリア

LP4000 手札5枚

伏せモンスター1体

伏せカード無し

 

 

―優介のターン―

 

 

伏せカードもなく、モンスターだけで終わったセリア。彼女が只者ではない以上、伏せカードはないということは攻撃を誘っているような感じだった。

 

「俺のターン(だが、向こうの手が分からない以上攻め込むしかない!)手札のポイズナーをコストにV・HEROファリスを特殊召喚!!」

 

ファリス/ATK1600

 

「V・HERO…」

 

 

その姿、一つ目のヒーローにセリアは呟くように驚いた。彼の使うもともとのデッキはE-HEROのはずだった。だが、ユウとの戦いのあとですべてのカードがV・HEROへと変わったのだ。

 

「このままバトルだ、V・HEROファリスでセットモンスターに攻撃!!」

 

「…………」

 

 

セットモンスターはそのまま破壊された。だがセットされていたモンスターの効果が発動された。

 

 

「セットモンスターのマッド・リローダーの効果を発動、戦闘で破壊されたので手札のカードを2枚捨てることで2枚ドローする」

 

「手札交換…何を狙っている…カードを伏せてターンエンドだ」

 

優介

LP4000 手札2枚

ファリス/ATK1600

伏せカード2枚

 

 

―セリアのターン―

 

「私のターン、手札より魔法カード、生者の書-禁断の呪術を発動します。効果で私は墓地よりダブルコストンを特殊召喚し貴方の墓地のポイズナーをゲームから除外します」

 

「アンデット…なるほど、そのカードを墓地に送るのが目的か」

 

ダブルコストン/ATK1700

 

しかし気になるのはダブルコストンはダブルコストモンスターだ。だからこのまま新たに展開される可能性もある。

 

「ダブルコストンをリリース、魔王ディアボロスをアドバンス召喚」

 

 

ディアボロス/ATK2800

 

 

召喚されたのは相手のデッキトップを確認し、それをデッキの上か下に戻すというトリッキーな効果があるモンスターだ。

何が厄介なのかは罠カードを見られたらそれで奇襲を仕掛けることも難しくなる。

 

 

「バトルフェイズ、ディアボロスよ…ファリスを葬りなさい。ルイナスオーメン!!」

 

「ッ…!!」

 

 

優介/LP4000→2800

 

 

優介の体に鈍い痛みがのしかかった。ユウの時のような闇のゲームでもないが、まだデュエルできる身でもない。それは本人も知っていることだったがここまでのダメージがあるとは、と思いながら奥歯を噛み締めていた。

 

 

「罠カード発動、幻影欠片(ヴィジョン・フラグメント)!!自分フィールドのモンスターが破壊されたとき、自分のデッキからV・HEROを魔法・罠ゾーンに永続罠扱いで置くとができる!!」

 

 

幻影欠片

通常罠

自分フィールドのモンスターが破壊されたとき、

自分のデッキ・手札から「V・HERO」と名のついたモンスターを

永続罠扱いで魔法・罠ゾーンに表側表示で置くことができる。

 

「ほお…永続罠として扱うモンスター…珍しいもの使いますね」

 

トイマジシャンなど魔法扱いでセットされるモンスターは多々ある。

だが永続罠となるのは初めてだった。

 

 

「効果でデッキからV・HEROインクリースをセットする」

 

「私はカードを3枚伏せ、ターンエンド」

 

 

セリア

LP4000 手札1枚

ディアボロス/ATK2800

伏せカード3枚

 

―優介のターン―

 

「俺のターン」

 

「ドローフェイズ前に、デッキの一番上のカードを確認させてもらいます」

 

 

deck top

融合

 

 

「…そのままデッキの一番上へ」

 

 

正直にいうと、この状況での融合は判断しにくい。手札に素材がないとも限らないが、一番下に戻すようなカードでもない。

 

 

「ドロー、手札からV・HEROマルティプリガイを召喚!!」

 

 

マルティプリガイ/ATK800

 

 

召喚された真っ赤なの炎のようなモンスター。だがステータスは下の下。

しかし、セリアはこの行動の意味を考えていた。

 

 

「わざわざディアボロスよりも攻撃力が倍以上離れているモンスターを召喚した理由、先ほどの罠扱いのモンスターですね」

 

「…そうだ、インクリースの効果を発動!!俺のフィールドのモンスター、マルティプリガイをリリースすることで特殊召喚することができる!!」

 

インクリース/ATK900

 

フィールドに魔法・罠ゾーンから飛び出したのはファリスのように一つ目の戦士だった。だが、攻撃力はマルティプリガイに毛が生えた程度、つまりなにかほかの狙いがあるということだ。

 

 

「インクリースは魔法・罠ゾーンから特殊召喚に成功するとデッキからV・HEROを1体呼び出す、ヴァイロンを特殊召喚!!」

 

 

ヴァイロン/ATK1000

 

 

「そして、融合を発動!!フィールドのインクリースとヴァイロンを融合してV・HEROアドレイションを融合召喚!!」

 

 

2体のモンスターが合わさるとまるで司祭のような風貌のHEROが現れた。

 

アドレイション/ATK2800

 

 

「ですが、アドレイションの攻撃力は私のディアボロスと同じ、相打ちが狙いですか」

 

「いいや、こうするんだ。永続罠幻惑を発動!!このカードは自分フィールドにV・HEROと名の付く融合モンスターが存在する場合、相手モンスターを選択して発動する。選択したモンスターの攻守を半分にする!!」

 

 

ディアボロス/ATK2800→1400

 

アドレイションの足元から伸びた影がディアボロスに纏わりつくとまるで怯えるかのようにして弱体化した。

 

 

「バトルだ、アドレイションでディアボロスに攻撃!!アンビション・サンクションズ!!」

 

「ほお…」

 

 

セリア/LP4000→2600

 

アドレイションの攻撃でセリアのライフが減った。しかし、ディアボロスは破壊されておらずそれどころかその横に新たなモンスターが出現した。

 

 

疫病狼/ATK1000

 

 

「罠カード、攻撃の無敵化とダメージ・ゲートを発動しました。効果でディアボロスの破壊を無効にし、受けたダメージ以下の攻撃力を持つモンスターを墓地より特殊召喚します」

 

 

だが、幻惑の効果はフィールドに存在する限り有効だ。攻撃力2800のアドレイションを突破するのは難しい。

 

 

「ターンエンドだ」

 

 

優介

LP2800 手札1枚

アドレイション/ATK2800

幻惑

 

 

―セリアのターン―

 

「私のターン、フィールド魔法ダークゾーンを発動します。闇属性モンスターの攻撃力を500アップし、守備力を400ポイントダウンさせます」

 

 

フィールドが魔界というような場所へと変わりその中でディアボロスと疫病狼が力を得たことにより凶暴化した。

 

 

ディアボロス/ATK1400→1900

 

疫病狼/ATK1000→1500

 

 

「だが、V・HEROは全て闇属性だ。そのフィールド魔法は俺のフィールドにも作用される」

 

 

アドレイション/ATK2800→3300

 

このフィールド魔法があり、今まで使用されたカードを考えるとセリアのデッキは闇属性のファンデッキの可能性が高い。

 

 

「……(まてよ、攻撃力を上げた…?)」

 

 

「疫病狼の効果を発動、このモンスターの攻撃力を2倍にします」

 

 

疫病狼/ATK1500→2500

 

 

攻撃力2500。数字だけ見たら十分上級モンスターに届くがアドレイションよりも低い。だが、この攻撃力のラインは――

 

 

「!」

 

「気づいたようですね」

 

 

疫病狼を使う理由を考えるとしたらダメージ・コンデンサーなどの効果で召喚しやすいようにするためか攻撃力を2倍にする効果を使用してのコンボだ。それなら――

 

 

「リバース罠、闇のデッキ破壊ウイルスを疫病狼をコストに発動します」

 

「やはり、ウイルスカード…!!」

 

 

闇属性とシナジーがありトリッキーかつ強力なカード軍、それがウイルスカードだ。

 

疫病狼はもともとの攻撃力が死のデッキ破壊ウイルス、二倍にすれば魔のデッキ破壊ウイルス、

そしてダークゾーンなどで強化すれば闇のデッキ破壊ウイルスのコストにすることができる。

 

 

「このカードの効果であなたのフィールド及び手札、そして3ターンの間ドローしたカードの中から宣言した種類のカードを破壊させてもらいます。私が選択するのは罠カードです」

 

「っ…フィールドの幻惑は破壊される。手札はモンスターのグラビートだ」

 

 

だがフィールドの幻惑が消えたことによりディアボロスは幻惑の呪縛から解き放たれ、攻撃力が元に戻る。

 

 

ディアボロス/ATK1900→3300

 

 

「さらに手札から装備魔法サクリファイス・ソードをディアボロスへ装備します。効果により攻撃力を400ポイントアップさせます」

 

 

ディアボロス/ATK3300→3700

 

 

攻撃力がわずかにアドレイションを上回ってしまった。手に持った剣を掲げ、ディアボロスが構えた。

 

 

「攻撃力3700…!!」

 

「バトルです、ディアボロスでアドレイションを葬り去ります。サクリファイスオーメン!!」

 

 

「くっ…!!」

 

 

優介/LP2800→2400

 

 

これで優介のライフがさらに削られてセリアよりも低くなってしまった。盤面も最悪な上に罠カードをドローしたらそのカードが破壊されてしまう。

 

 

「戦闘ダメージを受けたとき、墓地のV・HEROインクリース、ヴァイロン、マルティプリガイは罠カードとして置くことができる!!」

 

 

フィールドに幻惑として3体のV・HEROが置かれた。幸いなことにウイルスはサーチカードなどで手札に加わったりフィールドに出現した場合は効果は適用されない。

 

 

「私はこれでターンエンド」

 

 

セリア

LP2600 手札0枚

ディアボロス/ATK3700

サクリファイス・ソード

ダーク・ゾーン

 

 

―優介のターン―

 

 

「俺のターン!」

 

「ドローフェイズ前にデッキトップを確認させてもらいます…そのままで」

 

 

この状況、デッキトップにそのままにされるとなると考えられるのはいま発動できない魔法カードか――

 

 

「ドロー…っ…ミラーフォースは罠カード、墓地に送られる」

 

 

闇のデッキ破壊ウイルスで破壊される罠カード。おそらくセリアのデッキのミソはディアボロスでデッキトップを操作してウイルスカードで破壊し、戦力を削ぐデッキだろう。

十代たちのHEROデッキもそうだが純粋に攻撃力勝負となれば部が悪い。今は耐える手しかない。

 

 

「手札からグラビートを召喚!!」

 

 

グラビート/DEF2000→1600

 

 

巨大な盾を持ったHEROが出現するも、ダーク・ゾーンの効果で守備力が下がり、ちょっとしたアタッカーで十分突破されてしまう。

 

 

「フィールドのインクリースの効果を発動!!グラビートをリリースして特殊召喚し、自身の効果でデッキからウィッチレイドを守備表示で特殊召喚!!」

 

 

インクリース/DEF1100→700

 

ウィッチレイド/DEF1900→1500

 

 

モンスターを特殊召喚するインクリースと上級モンスターのウィッチレイドが召喚された。だがウィッチレイドも攻撃力があるが強化されたディアボロスよりも下だ。

 

 

「ヴァイロンの効果を発動!!フィールドのインクリースをリリースして特殊召喚する!!」

 

 

ヴァイロン/DEF1200→800

 

 

「ヴァイロンの効果!!デッキからV・HEROを1体墓地へと送ることができる、ミニマムレイを墓地へ!」

 

 

めまぐるしく変わる優介のフィールド。その展開力はまるでシゲルの剣闘獣のようだ。

しかしHEROである以上攻撃力の突破は現段階では難しい。

 

 

「ターンエンドだ」

 

 

優介

LP2400 手札0枚

ヴァイロン/DEF800 ウィッチレイド/DEF1500

マルティプルガイ

 

―セリアのターン―

 

「私のターン、カップ・オブ・エースを発動します。効果で正位置、逆位置の回転を行い、正位置が出たら私が、逆位置が出たら貴方がカードを2枚ドローします」

 

「ここでギャンブル…(いや、ドローしたカードは闇のデッキ破壊ウイルスで確認される…デメリットは少ない…)…ストップだ!」

 

 

 

回転していたカードは優介の言葉で止まった。それは名前が上――つまり正位置。これでセリアはカードを2枚ドローできる。

 

 

「カードを伏せてイグザリオン・ユニバースを召喚!!」

 

 

イグザリオン・ユニバース/ATK1800→2300

 

 

闇の騎士の格好をしたケンタウロスが出現した。下級アタッカーとしてはなかなかのステータスだが、問題はその効果だった。

 

 

「イグザリオン・ユニバースでヴァイロンに攻撃…その瞬間、効果を発動!!攻撃力を400ポイントダウンし、貫通能力を得ます!!」

 

「くっ…うおおおおおおおおおおおぉぉ!!!!!!」

 

 

イグザリオン・ユニバース/ATK2300→1900

 

優介/LP2400→1300

 

 

突き刺した闇の雷の槍の余波が優介を襲った。しかしその瞬間墓地のカードがフィールドへと出現した。

 

 

「墓地の、インクリースとヴァイロンをフィールドに永続罠として出現させる!!」

 

「構いません、ディアボロスでウィッチレイドへ攻撃、サクリファイスオーメン!!」

 

 

赤い魔女もディアボロスの剣で切り刻まれて消滅してしまった。これで手札もなく、フィールドには罠カードとして存在する3体のV・HEROしか存在しない。

 

 

「私はこれでターンを終えます」

 

 

セリア

LP2600 手札0枚

ディアボロス/ATK3700 イグザリオン・ユニバース/ATK2300

サクリファイス・ソード 伏せカード1枚

ダーク・ゾーン

 

―優介のターン―

 

「俺のターン!!」

 

「ドローフェイズ前にデッキトップを確認…一番下へ」

 

 

デッキの一番上にはモンスターのV・HEROブラッドリバースがいた。だがそれで再びインクリースからの展開を危惧したのか、それともウイルスカードによる破壊のためかデッキの一番下に送られてしまった。

 

 

「ドロー!」

 

「闇のデッキ破壊ウイルスの効果、確認させていただきます」

 

 

ドローしたのは魔法カード、死者蘇生だった。だがたとえアドレイションを蘇生してもディアボロスに攻撃力が届かない。しかしこのままでは攻撃されて終わりだ。

 

 

「死者蘇生を発動!!墓地のV・HEROアドレイションを特殊召喚する!!」

 

 

アドレイション/ATK2800→3300

 

 

「バトルフェイズ、アドレイションで――!!」

 

「リバース罠、闇霊術-「欲」を発動いたします、フィールドのイグザリオン・ユニバースをリリースすることでカードを2枚ドローします。相手は手札から魔法カードを公開することで無効にできますが、その手札もありません。よってカードを2枚ドロー!」

 

 

攻撃対象としていたイグザリオン・ユニバースが消えてしまい、ディアボロスに自爆特攻を仕掛けることもできないため、優介は苦悶の表情でバトルフェイズ終了を告げた。

 

 

「インクリースの効果…アドレイションをリリースして再び特殊召喚!!効果でデッキから2体目のヴァイロンを守備表示で召喚!!」

 

 

インクリース/DEF1100→700

 

ヴァイロン/DEF800

 

 

「そして、インクリースをリリースしてヴァイロンを守備表示で召喚、効果でネクロプリズンとブラッドリバースを墓地へ…ターンエンド…!」

 

 

優介

LP1300 手札0枚

ヴァイロン/DEF800 ヴァイロン/DEF1200→800

伏せカード無し

 

 

―セリアのターン―

 

「私のターン、ランサー・ドラゴニュートを召喚します」

 

 

フィールドに長い槍を持ったドラゴンが出現した。ダーク・ゾーンで力を得、そしてこのモンスターもイグザリオン・ユニバースと同じく貫通能力を持つモンスターだ。

 

 

ランサー・ドラゴニュート/ATK1500→2000

 

 

「ランサー・ドラゴニュートでヴァイロンへ攻撃、ドラゴ・スパイラルダンス!!」

 

「うおおおぉぉぉぉぉ!!」

 

 

優介/LP1300→100

 

 

1200と決して低くないダメージをくらって優介はその場に蹲ってしまった。忘れているようだが、優介はまだ病み上がりでデュエルすること自体難しいのだ。それなのに実際のダメージが働くこのフィールドで勝負するのはムチャがあった。

 

 

「…あのカードをこちらに渡してください。そうすればこのデュエルは中止いたしましょう」

 

「だれ、が…墓地より我がフィールドに戻れ…幻影の戦士たちよ…!!」

 

 

墓地にいたインクリース、ブラッドリバース、ミニマムレイ、マルティプルガイが罠カードとして戻ってきた。4体なのは魔法カードをドローした時に発動するスペースを開けるためだろう。

 

 

「そうですか…なら、ディアボロスで最後のヴァイ――」

 

「兄さん!!」

 

 

屋上の扉が蹴破られるようにして開いた。そこから飛び出したのは雪乃とジュード、優介の日用品の買い出しから戻ってきた荒木の3人だ。優介がいなくなったため、ずっと探していたのだが、今の状況とセリアの顔を見て驚いていた。

 

 

「なんで兄さん、デュエルを…」

 

「…Ceria , whether you were my enemy?」

 

 

「…ふふ、英語で言わなくて言いですよジュード・ファイン。あの時は雰囲気で言ってましたが日本語でも十分です。転生者と藤原優介の妹さん」

 

 

そう微笑みかけたのはミサに向けたのと同じ顔だが、その裏に隠れている殺気にジュードと雪乃は気づいていた。

 

 

「ッ…知ってたのか…」

 

「ええ、ミサが接触したのは偶然ですけどね。あの子は本当に女神のようですね」

 

「…ミサも、転生者…エネミーズなのか?」

 

 

荒木の言葉にただセリアは微笑むだけだった。だがデュエル中だったのを思い出したように優介のフィールドのヴァイロンを指差した。

 

 

「ディアボロス、ヴァイロンを葬りされ。サクリファイスオーメン!!」

 

「ッ…!!」

 

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

 

セリア

LP2600 手札1枚

ディアボロス/ATK3700 ランサー・ドラゴニュート/ATK2000

サクリファイス・ソード 伏せカード2枚

ダークゾーン

 

―優介のターン―

 

 

「俺のターン…!!」

 

「ドローフェイズ前に確認させてもらいます…なるほど、ブラックホールですか」

 

 

セリアの手札はレベル12の最上級モンスター。ブラックホールでフィールドを破壊されたら展開することができないかもしれない。

 

 

「…一番下へ」

 

「頼むぞ、俺のデッキ……ドロー!!」

 

 

ドローしたカード――それは。

 

 

「魔法カード、マジック・プランターを発動!!フィールドの罠カード扱いのブラッドリバースを墓地に送ってカードを2枚ドロー!!」

 

「なるほど…永続罠扱いのデッキにはいいカードですね。ですが、リバース罠、魔のデッキ破壊ウイルスを発動!!アックス・ドラゴニュートをリリースして攻撃力1500以下のモンスターを全て破壊させてもらいます」

 

「新たなウイルスカード…」

 

 

ドローしたカード、それを見て優介は笑った。そしてそのカードをセリアへと見せた。

 

 

「引いたのは両方共魔法カードだ。幻影融合を発動!!フィールドの魔法・罠ゾーンのV・HEROを素材に融合することができる!!俺はインクリース、ミニマムレイ、マルティプルガイの3体を除外!!」

 

 

優介のフィールドにいた3体のモンスターの幻影が消えるとそれが合わさり、一体のHEROへと変貌した。

 

 

「幻影召喚、V・HEROトリニティー!!」

 

 

トリニティー/ATK2500→3000→5500

 

 

マルティプルガイに似た赤いHEROが出現するとその攻撃力が一気に倍へとなった。

 

 

「このモンスターは融合召喚したターン、攻撃力が2倍となる!!さらに魔法カード、ダーク・バーストを発動!!墓地の攻撃力1500以下の闇属性モンスター、マルティプルガイを手札に加える!!」

 

「なるほど、うまく穴を付くというわけですね」

 

 

「そしていま手札に加えたマルティプルガイを召喚!!」

 

 

マルティプルガイ/ATK800→1300

 

 

これで盤面が整った。トリニティーでディアボロスを破壊し、マルティプルガイで直接攻撃をすれば――

 

 

 

「バトルフェイズ、トリニティーでディアボロスに攻撃…なにっ!?」

 

 

 

トリニティーとディアボロスの間、そこに1体のモンスターが割って入った。かつてE-HEROデッキを使っていた時に優介も使用し、十代も所持しているモンスター――ネクロガードナーだ。

 

 

「ネクロガードナーの効果を発動、墓地から除外し、攻撃を無効にします」

 

「そんな…!!」

 

 

 

唯一見えた光明が絶たれたことに雪乃が絶望したように呟いた。その横でジュードも苦虫をかんだかのようにしてフィールドを睨んだ。

 

荒木はもしもセリアがこれ以上優介に危害を加えるつもりなら飛び出すつもりだった。

 

 

「………」

 

「これで終わりです」

 

 

そう、圧倒的な戦略。セリアの隠された実力にただただ驚く優介。

本当に、これで『終わり』だった。

 

 

「タイミングを間違えたな!!」

 

「!」

 

 

「トリニティは3回の攻撃が可能なモンスターだ、ただ相手に直接攻撃することができない!!1度止められようが、まだ2回の攻撃権を残している!!トリニティー・クラッシュ!!」

 

 

「くっ…!!」

 

 

セリア/LP2600→800

 

 

始めて驚愕の色が出たセリアに追い討ちをかけるかのようにトリニティーがディアボロスを破壊してダメージを与えた。そして残るは――

 

 

 

「最後だ、マルティプルガイで――」

 

「リバース罠、エクストラ・キャプチャーを発動!!自分フィールドにモンスターが存在せず、手札のモンスターを1体墓地に贈り、そのモンスターと同じレベル、属性の相手のエクストラデッキのカードを私のフィールドに特殊召喚する、そしてその後その攻撃力と同じダメージを受ける」

 

 

エクストラ・キャプチャー

永続罠

自分フィールドにモンスターが存在せず、

相手フィールドにモンスターが存在する場合のみ手札のモンスターを墓地に送り発動することができる。

墓地に送ったモンスターと同じレベル・属性のモンスターを相手のエクストラデッキから特殊召喚する。

この効果で召喚したモンスターの効果は無効化され、攻撃宣言を行うことができない。

その後、召喚したモンスターの攻撃力分のダメージを受ける。

 

 

 

「兄さんのエクストラデッキ…!?」

 

 

優介のエクストラデッキはHEROという特性上融合モンスターが多く、そして属性もV・HEROは全て闇属性。そうなれば、当たる確率は高いが――

 

 

「貴方のデッキはおそらく、E-HEROから本来のV・HEROとなったときのまま。つまり貴方のエクストラデッキにはあのカードが存在してます」

 

「………!!」

 

 

そのカード――つまり、セリアの目的はこれだったのだろう。

雪乃と荒木は何かわかってないがジュードも気づいたようだ。ジュードとの戦いで召喚されようとしたシンクロモンスターが存在する。

 

 

「手札のレベル12、闇属性モンスターを捨てます。レベル12の闇属性モンスターを貴方のエクストラデッキからいただきます」

 

「まさか、最初からそのカードを使うことが目的か!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええ――頂いてきます、『ブラッディ・クロス・ドラゴン』を」

 

 

 

 

その名前を聞いて3人は頭の中が真っ白になるほどの衝撃が走った。かつて聞いた管理局の回収失敗のロストロギア。世界を滅ぼすほどの力を秘めているそのカードがなぜ優介のエクストラデッキに存在するのか

 

 

 

「だ、だがブラッディ・クロス・ドラゴンはまだ解呪出来てないカードだ!!ただの白紙のカードなら――」

 

「いいえ、貴方は間違えていたのですよ。このカードの本来の力を」

 

 

そう言ってるうちに優介のエクストラからセリアのモンスターゾーンへと1体のシンクロモンスターが置かれた。

 

 

「いでよ、ブラッディ・クロス・ドラゴン!!」

 

 

《―――――――――――――!!!!!》

 

 

 

言葉に表すことにできない咆哮。それに4人が身を固めて蹲った。

ブラッディ・ソウル・ドラゴンよりも荒々しく、スピット・クロス・ドラゴンよりも強力な力。

 

それはまさに嵐とも言える存在だった。誰も身動きができない、そして状況が理解できない。

 

 

セリア/LP800→0

 

 

 

「っ…あっ…!!」

 

「「「「!!!」」」」

 

 

呻くような声に顔を上げると『闇』という言葉を体現したようなドラゴンの足元でセリアがぐったりとしていた。

 

 

「ふ、ふふ……効果を…封じて…これほど……とは…」

 

「ご苦労だった、セリア」

 

 

デュエルが終了し、消えたドラゴンの影から屈強なスキンヘッドの男性――ゴスペルが現れた。それを見届けたセリアは眠るようにして気を失った。

 

 

「ゴスペル!!」

 

「あいつが…!!」

 

 

ホワイト寮での戦いでは早々に万丈目と明日香を相手にしていたジュードと雪乃は顔を知らないが荒木と優介は知っていたようでその男を睨んでいた。

 

 

「そう構えるな、我はこの女を回収しに来ただけだ」

 

「生憎だけど、それを指をくわえて見てるわけには行か――なっ!?」

 

 

そう言って荒木が構えるがその足元に植物の蔦が絡まった。雪乃とジュード、蹲っている優介も同様でこれでは身動きが取れなかった。

 

 

「無用な戦闘は互に疲労するのみ。無能ながらもコンダクターという戦力を失った我らとて戦いたくはない」

 

「無能なコンダクター…?」

 

「…そこの女…荒木の因縁とでも言っておこう」

 

 

荒木と因縁があるコンダクター。それは思いつくのはただひとりしかいない。ホワイト寮で姿を現して、撤退していた――

 

 

「木田を、殺した…のか…!?」

 

「そうだ。貴様の復讐はすでに終わっている…おしゃべりはここまでだ」

 

「待て!!」

 

 

 

ジュードの言葉も聞かず、ゴスペルとセリアは消えた。それと同時に4人を拘束していた蔦も消えた。

優介はヨロヨロと立ち上がるとエクストラデッキからあのカードを探した。

 

 

「くそ…持ってかれた…!!」

 

「兄さん…なんでブラッディ・クロス・ドラゴンを…」

 

「あの時、僕との戦いで出そうとしたカードですよね」

 

 

マーダー・シンクロンを使用してシンクロ召喚しようとしたカードのようだが、解呪失敗してそのままエクストラデッキにあるはずだった。

 

 

「…もともと、プラネットモンスターを使用して解呪しようとしてたのはブラッディ・クロス・ドラゴンの方だ。超融合はダークネスが過去に完成させ、その後封印されてたのをSUNが自身の力を使って解呪した」

 

「でも、あの時は召喚できなかったはずじゃ…」

 

「ああ…解呪か、何かを間違えたようだ。あの手のカードを調べるのは俺の得意分野だから、大徳寺先生と吹雪と調べるつもりだった」

 

 

確かにダークネスの研究をしていた優介と大徳寺、そしてそれに関わったことがある吹雪だと何かがわかったかもしれない。

 

 

「…ひとまず、病室に戻りましょう」

 

 

ツバキ失踪の裏で行われた戦い。その中で判明したセリアというエネミーズの存在、そして奪われた世界を滅ぼすほどの力を秘めた『ブラッディ・クロス・ドラゴン』の存在。

 

 

それは新たな戦いの前触れだったのだろうか




シゲル「ジェネックス後の病院での決戦か…」
時間的にはユウVS連斗ぐらいですね。
まあ、長い間入院してるってのもやることが無いでしょうし、他校交流が始まるぐらいにはいますね。
脳内では実は優介VSヨハンというのを考えている。
釼都「デッキコンセプト的なものでか?」
うん、永続罠として扱うV・HEROと永続魔法として扱う宝玉獣似た感じのコンセプトデッキの戦いも面白いかなって。

ツバキ「それとエネミーズの一人と判明したセリアさん…」
実を言うとゴスペルが一番信頼を寄せてるのがセリアだったり。まあ、癖の多いコンダクターの中では一番忠誠を誓い、実力もある。
今回も目的である【ブラッディ・クロス・ドラゴン】を奪取するのに成功してる。
紫苑「してやられましたね…相手の方が上手ででしたか」
ちなみに『12日後の戦争編』の「turn76 憎しみと復讐」の最後で木田とデュエルしてたのもセリアです。そしてそのまま処分しました。
シゲル「人知れず、荒木の復讐は終わってたのか…」

そしてデュエル解説

まずは優介の使用したV・HEROについてですね。
紫苑「永続罠としてフィールドに出現するモンスター…なかなかトリッキーですね」
カードの効果と外見はPixivのオリカ製造をしてる方のを元にしました。ただV・HEROは「魔法・罠ゾーンには2体以上同名モンスターを置くことができない」というものを持つことにしてます。
釼都「理由は…聞くまでもねぇな」
うん、インクリース3体並べて3体連続で召喚して展開することができ、明らか甲虫装機ダンセルよりもひどいことになるから。
というわけで同名モンスターを魔法・罠ゾーンに置くことはできないことにします。

ユウ「ところで、セリアさんのデッキって…なに…??」
「トラクチャーデッキ-暗闇の呪縛-」をベースにした闇属性ウィルスデッキです。
シゲル「うん、なんでそんなマニアックなところにしたんだ?」
これを書いてる時、本編では星光とエンディミオンの戦いでストラクチャーデッキを見ていたら思いついたから。

そして奪われたブラッディ・クロス・ドラゴン
紫苑「名前だけでブラッディ・ソウル・ドラゴンに似てますね」
釼都「てか、ブラッディ・ソウルとスピット・クロスの名前を合わせた感じだな」
前も言ったかもしれないけど、本当はこれユウかシゲルに持たせようと思ってたカードだからね。スターダスト→シューティング・スター→シューティング・クエーサーというふうに考えていたらこうなった。

ユウ「もしも、今回セリアさんが言ってた使い方を優介さんが知ってたら…」
まあ、その使い方を実現できたのならジュードもユウも負けていたかもね。

さて、では番外編アフター・ホスピタルはここまでです。
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