感想等ございましたら、書いてくださると喜びます
これは、私が入学してすぐの話。
中学からの実績や、ほぼ一人暮らしの状態でお母さんが通っていた高校に通うことになったのが誇らしく思っていた私は、すっかり天狗になっていた。
入学式が終わるとすぐに、戦車の置かれている倉庫へと走って行った。
先輩たちよりも早くにたどり着いた様な気がしてやまなかった私だったけど、一足遅かった。そこには、茅野先輩が一人、試合で使われる戦車の前に立って静かに微笑んでいた。
容姿は女性らしさを物語っているのにもかかわらず、彼女の目は男らしく、頼りがいのありそうな目だった。
「おや?」と私がいることに気が付いた様子の彼女は、こちらに身体を向け、両手を腰に当てた。
「君は新入生か?」
私は「はい」と短く答える。
「今年はみほさんの娘が入学してくるという噂を聞いているんだ。戦車道を選択してくれると思うかい?」
学校中に私のことを期待して待ってくれている人がいるんだ、とうれしかった。
「する。と思います。だって、お母さんと同じ学校に行って、同じ戦車に乗って、優勝したいって思うはずだから」
「そうかい。じゃ、期待させてもらおうか」
独り言のようにつぶやいた茅野先輩は、私から目線を外し眼前にある戦車を見上げた。
はっきり言って、私はみんなから期待されていた。
私が西住みほの娘であること以前に、中学校の成績を踏まえても十二分な成績を残していたから。それほど自分に自信があったし、期待に応える覚悟はあった。
1年生になってすぐに試合に出してもらえたし、茅野先輩から「期待している」と声をかけてもらったこともある。
でも、初めての試合は勝てなかった。情けなく、散った。
私は何もできなかった。それでもみんなは、次があると言って励ましてくれた。そして、「期待している」とも言った。
みんなからあからさまに一目を置かれていたのに、今ではみんな「西住まゆ」に期待して、頼りだした。
私に向けられていたものが、全て奪われたような感覚がした。
だからなのかはわからないけれど、私は彼女を「いい人」として見れなくなっていた。
私が西住だということが広まるのには時間がかかった。それは、性が変わってしまっていることもあるが、単に私が目立たなかったせいもある。
でも
西住まゆは、私とは違った。
性が「西住」のままであり、そして、同性ある人ですら目を引くほどの美貌を持ち、私よりも戦車道の成績が良かった。
勉強も、戦車道も、容姿も、何一つ私は彼女に勝てるものがない。
ただ、チャラい。
授業中の居眠りは当たり前。バッグにはキーホルダーを幾つも吊り下げ、スカートは校則で決められた長さよりも短い。口を開けば、やる気のなさそうな声と態度。それで成績が良く、運動神経が良いのだからたちが悪い。
そんな彼女にみんなはこう言う「さすが西住」と。西住まほ、私のお母さんの姉であるまほさんの娘であるとみんなすぐに感付いた様で、すぐにそう言うようになった。
そして、戦車道を選択している人たちも当然変わり始めた。
それは、ある日の休み時間から起こり始めた。
同じ学年で他のクラスの戦車道を選択している子が、休み時間になってはすぐにまゆさんのもとへと駆け込んでくるようになった。
「戦車道、選んでくれるよね?!」
嬉々とした表情でそう詰め寄られるまゆさんは、寝起きで完全に目が覚めていないようで、薄い反応でしか言葉を返さない。
「……嫌だって言ってる、じゃん」
「そこを何とか!」
必死の態度を見せる戦車道選択者に対して、めんどくさいを口でわざわざ言わなくても伝わってくるような態度で接するまゆさん。
暫くその光景を見ていたが、さすがにしつこいなと感じた私は仲介に入った。
「これ以上やっても無駄、じゃない?」
私の言葉に「でも……」と食い下がる戦車道選択者。
「うみは悔しくないの? あんなひどい負け方をしてさ。今の私たちじゃ優勝なんてできっこないってわかったでしょ? それに、今ここにはとっても頼りになる人がいる。西住がいるんだよ? だったら、力を借りなきゃ」
ただ純粋な目でそう言う戦車道選択者。
でも、私はそんな彼女の目が許せなかった。
「……私だって……」
「西住」なのに……。
「……嫌がってるんだから、仕方ないんじゃないかな?」
私は、できるだけ感情がこもらないように気を付けながらそう言った。
ふと、まゆさんに視線を落としてみると、うつぶせになって気持ちよさそうな寝息を立てていた。
みんなが真由さんに期待の念を露骨に向け始めた日の帰り道。
いつものようにタクが校門前で待ってくれているとばかり思っていた私にとって、少し驚く光景が目に映った。
死角になって誰と話しているかわからないが、タクが何やら真剣な面持ちで会話をしていた。
会話の途中で私が近づいてきているのを目にしたタクは会話をやめて、こちらに向かってきた。
「誰と話してたの?」
私がそう声をかけると、タクは首を横に振り苦笑いを見せた。
「たいしたことではありません」
「そう?」
「それでは帰りましょう」と言い踵を返すタク。
帰路についてからしばらくして、タクが神妙な口調でこんなことを聞いてきた。
「もし、目の前にとても大きな力があったら、あなたはすべてを捨ててでもそれを手にしますか?」
「すると、思う。だって、今の私には力がないから」
「……わかりました」
それ以降、私たちの間には会話がなかった。
今回の話では、私自身が全く経験のないところや、心情を書こう!というコンセプトでやっていて、正直いろいろきちんとなっているか不安です。
更新できるだけ早くできればいいんですけど、なかなか時間が取れませんで……
とまぁ、頑張っていく所存です。
ではでは