中学の部の全国大会決勝の日。私-西住まゆは朝早くから自宅で決勝戦に向けての準備を進めていた。
ここまで順調といっていいほど楽に勝ち進んでいったため、去年の決勝戦よりも余裕を持って臨めていた。
昨年度、私の所属している学校は優勝した。私も一年生ながら参加メンバーに選出された上に全体の指揮させてもらった。一年生だったことや、上級生を指揮するということから焦りや、憤りをそこはかとなく感じてしまい中々うまく状況把握ができなかった。だけど、何とか勝ち進み優勝した。
準備を終えた私は家族に向けて挨拶を済ませた後、すぐに集合場所である学校へと向かった。
学校についた時、戦車の上でくつろぎ談笑しているチームメイトがいた。
「あれ、遅かったじゃん」
私と同じ戦車に乗る子がそう言ってこちらを向く。
集合時間ぎりぎりまで考えていた私は、てっきり最後についたとばかり思っていた。だから、ごめんなさいと謝罪の言葉を口にした。
でも、そこにいるべき人数がそこにはいなかった。
「あれ? ほかの人たちは?」
私がそう問いかけると、みんな「さあ」とだけ答えてまた談笑を始めた。
少しして「ごめ~ん。遅れちゃった~」と間の抜けた声が私の背後から聞こえてくる。
戦術をみんなで考察できるように少し早めに設定した集合時間は大幅に遅れ、そこまで考えられる時間は生まれなかった。
「さすがに遅れ過ぎなんじゃないかな?」
みんなを一か所に集合させた後、第一声に私はそう言った。
「集まったからいいじゃん」「どうせまゆ様がいらっしゃるから勝つし、いるだけましじゃん?」
あちこちからそんな声ばかりが聞こえてきた。
「でも、去年はみんな頑張って……」
「去年も先輩たちはあなただけが頼りだって言って、たいした意見言わなかったじゃん」
そのあともみんなを注意するつもりが、全く聞く耳を持ってもらえずに余計私が落ち込んだだけだった。
「早く教えてくださいよ~。隊長さん?」「いわれたことやるだけだしね~」
やる気のない声が、私をイラつかせた。
「……いわれたことこなせる時点ですごいことなのかもしれない。でも、少しくらいやる気見せてよ! 集合時間には遅れるし、人形みたいなこと言って! 大会中なんだよ!? どうしてそんな態度でいられるの!?」
私の悲痛の叫びも届かない。
「どうせ、私たちじゃなくても勝てるじゃん。今まであんたの一人勝ちっていってもいいくらいだし」
そう言葉を返されて、私は言葉が出なかった。
どうしてこんなやつらのために頑張ってるんだろう。
私は寝る間も惜しんでやっているのに……。
私ははっきりとしない意識の中で、目の前にいる奴らを本能のままにこぶしを出した。
そのあと、顧問をしている先生が私たちの仲裁に入るが、その決勝戦の場に向かえず不戦敗となった。
私は問題を起こし、決勝戦を棒に振ったということで1か月の停学を言い渡された。
停学の時期が終わっても私は学校にはいかなかった。
思わず転校しても、転校先で学校になじめず、戦車道からどんどん遠ざかっていくだけだった。
私はもう頑張らなくていいんだって、そう思うと気が楽になった。
拓海に「戦車に乗ってくれ」と頼まれたときは本当に驚いた。彼にも私が戦車道をやめたことを知っているはずなのに……。それほど、あの子は大切にされてるんだなあと思うとなんだかうらやましく思った。
彼女の成長のために全力を出そう。久々で何もかもわからなくなっているかもしれないけれど、頑張ってみよう。
私のように絶望しないために。