「お~、ここでバスケするのか~。やべっ、テンション上がってきた」
「そう言えば恭一は初めての全国だもんな」
「シゲシゲ~、去年もここだったの?」
「そうだな、去年もここだったぞ」
「じゃあリングとかコートの感覚はすぐになれるからいいか」
千石はすでに試合の事を考えコートの広さリングの感じを見るために座席の一番前でみている。荻原達は去年もここで試合をしていたが千石にはそんな経験は一切ない。しかし千石は緊張も一切せずまるでここが自分の庭だとでも言わんばかりにのびのびとしている
「おっ、もう試合やってんじゃん」
その試合を見ると千石は目を見開いた
「何だよこの試合……」
その試合は帝光中学対平峰中学今の点数は
168対6
千石が驚いたのは点数のせいでもあるが一番驚いたことは
「なんで誰もパスとか出したり連携しないんだよ」
確かに一対一で勝てる相手なら連携をしないことなどはざらにある。しかしこの帝光中学は違う。一対一で相手を抜いた後ヘルプが来ても一切パスを出さずそのまま自分で決めてしまう。千石はこれをバスケだと思いたくなかった。なざなら帝光中学の選手は勝っているにもかかわらず笑顔や喜びを一切見せずただ淡々とシュートを決めるという作業をしているだけだ。この光景を見て千石は帝光中学を軽蔑した
「確かに全体の選手としてのレベルは高い。中学なんてレベルじゃない。向こうでもここまでの選手はそうそういなかった。だが俺はこんなバスケ認めねぇ。こんな楽しくねぇバスケはバスケじゃねぇ!ぜってー倒してやる帝光中学校!」
そう言い千石はその場を後にした
千石は次の自分たちの試合をするためにアップをしているメンバーたちのいる場所に着き千石もアップを始める
「お、珍しいな。恭一がアップするなんて」
荻原が驚いているが千石本人はある目的のためにやっているだけで合って特にアップをしたくてやっているわけではない
「ちょっとやりたいことができてさー、このアップはその為の準備みたいな?」
「よくわからないが千石がアップに参加してくてくれるならそれでいいさ」
持田は嬉しそうにしながらボールをつく。当の千石本人がやっていることは簡単なボールハンドリングをし体を温めている
「ちょっとさ~、決勝戦までちょっと俺の我儘聞いてもらってもいい?」
千石が突然チームメイトに話し始める。最初はいきなり話し始めた千石に驚いていたがチームメイトも落ち着き代表として持田が聞き返す
「内容によるが何だ?」
「明日からの試合は俺センター止めるわ」
『はあ!?』
明洸メンバー全員が驚く。それはそうだ、今まで明洸のセンターは片山であったが身長が高いという事で千石が起用されたのだ。それがいきなりセンターをやめると言っているのだ。驚かないわけがない
「いやいやいや!それは流石にダメだろ!」
流石の荻原も千石の話を否定する
「それじゃあセンターはどうするんだよ!」
持田も慌てたように聞くが
「言い方が悪かったな。わかりやすく言うとセンターはディフェンスではやるけどオフェンスではやらないって言いたかったんだ」
「それじゃあオフェンスはどうするんだよ?」
「シューティングガードをやる」
「はあ?確かにうちにはこれと言ったシューターはいないけどできんのかよ!?」
黒谷も怪訝な顔で聞くが
「勿論できる。最初に言っただろ俺はどこのポジションでもできるって」
「じゃあどうやって中から攻めるんだ?流石に今まで通り中で攻めるのは難しいぞ」
持田のいう事はもっともだ。今まで中の千石を起点として攻めていたのだ。その機転がなくなるという事は明洸にとってうれしい事ではない。むしろ試合が厳しくなるのではないかと考えているのだ
「いつも通り攻めるのはやめよう。これから決勝戦まで全部速攻で点を稼ぐ。それなら中に人がいなくてもどうにかなるし」
「おま!本気で言ってるのかそれ!?」
持田が慌てるが千石は一切気にせず話を続ける
「速めに大差を付けたら控えのメンバーと交代することもできて疲労も減る。俺達の情報も多く出さずに済む。それに帝光に勝とうと思っているならこの程度の事が出来なくてどうするのさ。俺はあんな奴らに絶対に負けたくない」
沈黙の空気が周りを包む。そしてこの空気を破ったのは
「いいね!恭一の話にのった!」
荻原だった。そして荻原を皮切りに次々と声が上がる
「俺も千石の話に乗るよ」
「てかいつもより少し走るだけの話じゃん」
「ベンチにいる俺らに出番しっかりくれよ!」
皆納得してくれたようだ。これなら俺の考えた通りに行くだろう
「それじゃあこれからの目標は前半だけで50点以上だ!」
『ハードル高っ!』
千石は言いたいことだけ言うと試合の準備に取り掛かった。キセキの世代を倒すための千石恭一の挑戦が始まった
それから一日の試合が終わるまではすぐだった。一回戦は甲延中学と試合だ。そして千石の話した通り明洸は速攻重視のラン&ガンで点を稼いでいく。1Qでダブルスコアになるまで点数差をつけ相手の士気を下げ、止めと言わんばかりに2Q目でトリプルスコアまでつけ2Qで60点もの点数を取った。後半はベンチメンバーと交代ししっかり勝利を収める
2試合目は風見中学、去年までは無冠の五将の一人実渕玲央がいたことで強豪だったが今年はもういない。戦力の大幅な低下の否めない風見中学は今の明洸の相手にはならず一試合目よりも多くの点を取り明洸が駒を進めることになった
夜
千石は宿泊しているホテルの外でスタメンを呼び話をしていた
「どうしたんだ恭一?何か思う事でもあったのか?」
普段ならみんなのいるところで話をしようとする千石が珍しくスタメンのメンバーのみを集めて話をするのだ。荻原以外も何事かと少し身構えた状態で話を聞こうとしている。そして千石の口が開く
「今日帝光の試合を見た……正直言うと個人能力、チームの総合能力全てにおいて俺らより何枚も上手だ。正直言うとこのままやると勝ち目は一切ない」
千石の言葉にスタメンのメンバーは驚き半面わかっていたというような顔半面で話を聞く
「だけど俺はあいつらに勝ちたい!だから俺に力を貸してくれ!頼む!」
千石はこの場にいる者すべてに頭下げる。するとすぐに
「当たり前だろ!勝つためにチームメイトが力を貸すのは当たり前だろ!」
「むしろこっちが力を貸してほしいぐらいだ」
「帝光に勝ってやろうぜ!」
上から荻原、持田、黒谷だ
「みんな……ありがとう」
「で、そうはいったもののどうするんだ?」
「やることは決まっている。唯……これは俺の技術だけではどうにもならないことなんだ。今まで隠してたわけではないんだけど」
そう言って千石は地面に置いてあるボールを持ちドリブルをつき始める
「今から壁に向かってパスを出すからしっかり見ておいてくれ」
そして千石は意識を集中させドリブルをつく。そして
バン
一瞬の出来事だった。気が付いたらボールが壁にぶつけられていた。このことを確認できたのは千石本人以外誰もいない
「す、すっげー!今のパスは何なんだ?」
荻原が驚きながら千石に先程のパスの詳細を聞こうとつめかかる
「わかったわかった、いったん落ち着けって。このパスはなほとんどモーションがないんだ」
さっきのパスを出すときに千石自身はほとんど身動きはしていない。あえて言うならばドリブルをついている手首が急激に動いただけだ
「確かにいつパスを出したのかわからなかったがどうやってパスを出しているんだ?」
持田が感じた疑問を千石に投げかける。それもそうだ。ほとんどモーションを行わずパスを出すなど中学生のできるレベルじゃない。それこそ時間をかけて何年も何年もフォームの見直しをしながら少しずつ完成させていくパスの基礎中の基礎だ
「それはねこういう事」
千石はボールを片手で持ち手首のスナップだけでボールを上空に放り出す。そのボールにはしっかりと回転がかかっており、尚且つ10mは上がっている
「これでもまだ全力じゃないけど、御覧の通り俺は手首が異常に柔らかくて強いんだ。あのパスはドリブルをしながらパスのターゲットを探してターゲットを見つけた瞬間予備動作無く味方にパスを渡すための技なんだ」
「なるほどな。つまりこのパスを決勝戦で使うって言いたいんだな?」
持田が千石の考えていることを言い当てる。千石は嬉しそうに話を進めるがその表情に影が下りる
「そうなんだけどさ、ちょっと問題があってね…」
千石が困った表情で頭をかきながら口を濁す
「もしかしてパスを出す千石に問題があるんじゃなくて俺達捕る側に問題があるんじゃないのか?」
ここで初めて片山が口を開く
「流石片山、よくわかってるな。さっきのパスを見た通りあのパスには俺も加減ができないんだ。だからとる人を選んでしまう。アメリカでも取ることができた人は少なかったしな。だから」
千石が言おうとしていることを黒谷が遮り話す
「今からパスを受ける練習をしよう…って言いたいんだろ?」
「すまん迷惑をかける」
千石は申し訳なさそうに頭を下げるが
「気にすんなって、俺達がまだ未熟だったから怪我をしないように気を使ってくれてたんだろ?それぐらいわかってるって」
荻原はまったく気にしていないと言わんばかりにパス受ける準備をしている
「じゃあ始めるか」
「突指気を付けろよ」
「大会最中なんだから怪我だけはするなよ」
そう言いながらスタメンメンバーはパスを受ける準備をし始める
「じゃあ練習するぞ!しっかり目を凝らしてボールを見ろよ!」
こうして明洸中学の夜の練習が始まった
翌朝
「ふぁ~~。眠たい」
「流石に試合の後の練習はきついな」
「あと二日身体もつかな?」
上から千石、荻原、黒谷だ。持田と片山は身体をほぐすために柔軟をしている。三人は身体をお互いに柔軟をしてほぐしあっている
こうして全国大会二日目が始まった
三回戦の相手は上崎中学だ。この中学も去年までは井上と言うキセキの世代が覚醒する前のエース青峰と良い勝負をするほどのプレイヤーがいたが今年は井上がなぜかベンチにおらず順当に点差をつけ勝利を収める
四回戦は京泉だ。準決勝に上がってくるだけあって今までのチームと一味違い戻りが速く速攻がなかなか決まらない。しかし千石が外からスリーポイントを連続で決めたことによって京泉の意識が千石に向かう。その隙をつき荻原、黒谷の二人がぺネレイトしそのままシュートを決めていく。途中までは苦戦したが京泉は中と外の波状攻撃を防ぐことができずそのまま離されていく
結果だけを言うと明洸のダブルスコアで完勝で終えることができた
「よっしゃー!決勝進出だ!」
「やったな!」
「このまま最後も勝ってやろうぜ!」
スタメン以外のベンチメンバーもここまで全員出場することができている。そのおかげかチーム全体の士気もかなり高い。スタメンの疲労も想像していたより少ない
「ようやくここまでたどり着いた。待っていやがれよキセキの世代」