黒子のバスケ~隠れたキセキ~   作:うたまる♪

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6Q

「なんでこのタイミングでタイムアウトを取ったんだ?」

 

持田はこのタイミングでタイムアウトを取る千石に対して問いかける

 

「今のままじゃこのQ持たないからかな?」

 

今の千石はかなりの汗を流しており、それこそ1Qだけでかくほどの汗じゃないことは他から見ても一目瞭然だ

 

「大丈夫か恭一?」

 

荻原は千石のことを心配するが

 

「あ、俺の事は関係ないよ。シゲを除いた3人にアドバイスしないとこのままじゃ押し切られるから早めに対策を打っておこうと思っただけだから」

 

千石は自分はそこまで疲れていないと言いたげな顔をして話す

 

「時間が無い。早く言ってくれ」

 

片山はタイムアウトの時間を気にしながら千石を急かす

 

「まあ、時間もないし大雑把に話すぞ。黒谷のあの一瞬加速したあれ。お前の足首の柔らかさならもう少し態勢を落としても大丈夫だからもう少し前傾になってやってみな。それとあれをやる時膝が伸びきってるからあのレベルの加速で終わるんだよ。膝を曲げた状態であれをやってみな」

 

「げっ、あの状態あから更に状態を傾けんの?」

 

黒谷は千石の無茶な注文にげんなりした様子で答える

 

「モッチーは良いよ。さっき赤司にディフェンスをしてた時もそうだけどあれがモッチーの本来向いているスタイル。後はもう少し自分がやりやすいと思った自分の間合いを見つけて。モッチーは相手の呼吸を読むのがうまいんだから相手の呼吸を意識して」

 

「呼吸を意識って無茶言うな」

 

持田も千石の助言に難色を示すがそれを実行するようだ

 

「片山は文句なし…って言いたいけど少し相手とのタイミングの合わせ方が下手だね。相手の撃つタイミングを自分のリズムで数えてみな。それでタイミングが合いやすくなるはずだから。あと難しく考えすぎだからもう少し馬鹿みたいに考えなよ」

 

「タイミングの意見はありがたいが最後の馬鹿の意味が解らん。とりあえずもう少し柔らかく物事を考えるよ」

 

片山は特に表情を変えることなく助言を聞き入れる

 

「じゃあ行くぞ!」

 

「え、俺は本当にないの?」

 

自分だけ助言が無い荻原は少し不満げになりながら千石に話すが

 

「よし行くぞ!」

 

「無視するなよ!」

 

「うるさいな!静かにしろ」

 

「誰のせいだ馬鹿!」

 

千石がやかましくなったところで持田が拳骨を落とす

 

「いって~!」

 

「あるならさっさと言え。こんな状況でウケ何かいらないんだよ」

 

「はいはい、わかったわかったから。じゃあシゲのアドバイス……ディフェンスの時は何も考えんな」

 

「は?」

 

荻原は千石の言っている意味が解らず困惑の表情を浮かべる

 

「じゃあどうやってディフェンスするんだよ」

 

「お前は天然か!それぐらいは自分で考えて見つけろ。こればっかりは俺が教えてどうこうできる問題じゃないんだよ。答えは試合中に見つけろ」

 

「納得できないけどまあ……頑張るわ!」

 

「応、頑張れ!」

 

話し終えると同時にタイムアウトが終了した

 

「さあ!1Qもあと少しだ。気張っていくぞ!」

 

『おう!!』

 

持田の一言で気を引き締めなおす明洸メンバー

 

「さてさっきはよくもやってくれたね」

 

スローインが投げられ赤司にボールが渡る。勿論さっきとはボールに指が触れた時の事だ

 

「………」

 

「へえ、何も言い返さないほど集中しているんだ。だけど、これなら関係ないだろ」

 

赤司は言い終えると同時に右ドライブを仕掛ける。勿論持田は最初よりもうまく対応し赤司の進路を妨害する……が

 

「跪け」

 

赤司がレッグスルーをする。持田はそのタイミングに反応しついて行こうとするが

 

ゾワッ!

 

その瞬間持田は何とも言えないような寒気に襲われる。持田はすぐさま赤司を追う事断念する。変わりにバックステップで間合いを作る。勿論スリーを撃たれてもプレッシャーをかけることのできる程度の間合いだが

 

「!?」

 

このことに赤司は驚く。赤司がさっき行ったことは天帝の眼(エンペラーアイ)によるアンクルブレイクだ。しかし何故か持田はレッグスルーをした瞬間突然間合いを取る。そのせいでレッグスルーからバックチェンジによるアンクルブレイクを起こすことが失敗した。普段の赤司なら何が起こっても冷静沈着なのだがこのことに驚きシュートを撃つことを忘れる

 

持田は赤司に対してなぜシュートを撃たなかったのか不審に思いながら自分の得意な間合いでディフェンスにつく

 

「(なぜ天帝の眼(エンペラーアイ)によるアンクルブレイクに気が付いた!?唯の勘か?どちらにしろこの男は危険だ。気を付けなければ)」

 

実際持田が間合いを取った理由は何とも言えない寒気に襲われたことと、剣道によって培われた自身の防衛本能と気配察知によるものだ。赤司はあの一瞬気配が少し変わり好戦的な支配者のような気配を醸し出していた。一度目は持田も気が付かなかったが千石のアドバイスによる呼吸を相手に合わせることによって相手の呼吸のテンポが変わったことを察知。警戒しているときに赤司の気配が一瞬にして変わったのだ

 

その瞬間持田は首に刃物を突き付けられるような感覚に陥りいち早く間合いを開けたのだ。持田の防衛本能が警鐘を鳴らしていたのだ。『これは危険だ』『速く逃げろ』と

 

結果持田はアンクルブレイクを受けることを免れそこからディフェンス陣を崩されることを防いだ。しかし、持田本人は何とも言えない気分になっていた

 

「(なんで俺はあの時こんなに相手との間隔をかけたんだ?いや、わかっている。何か得体の知れないものを感じたんだ。俺はそれに気が付きすぐに逃げたんだ。多分さっきのがあいつのディフェンス無力化の秘密のはずなんだ)」

 

持田は自分の中で考えを纏めながら赤司への警戒を怠らない

 

赤司一度何かを整理するためにマークの甘い黄瀬にパスを出す

 

「やっと俺にパスが回ってきたッス!」

 

黄瀬は意気揚々にドライブを仕掛ける。フェイクも何もしかけていない単純なドライブだ。だがそのドライブも並ではなかった

 

「はや!」

 

黄瀬の鋭いドライブに黒谷は反応することができずそのまま置き去りにされる。すかさず千石がヘルプに出る。それも紫原の事など気にせず黄瀬にプレッシャーをかける

 

千石は今までの帝光の試合パターンを見て彼らがパスをしているところなど一度も見たことがなかった。司令塔の赤司のみがパスを出しているという状況だった。そのことを考え黄瀬はパスを出してこないと推測した

 

「やっとあんたと戦うことができるッス!」

 

黄瀬はそこからさらにドライブに勢いをつけ千石を抜きにかかる。だが千石は黄瀬にぴったりくっついており抜けていなかった。黄瀬はそこからレッグスルーを2回行いその後フェイダウェイを撃つ…が

 

「そんなんで出し抜けるわけないでしょ!」

 

見事に千石のブロックに阻まれる。ボールはそのまま黒谷が捕球し前に走っている荻原にロングパスを出す

 

荻井原はボールを受け取るがその前に青峰が立ちふさがる

 

「抜いてみやがれ」

 

あからさまな挑発だ。しかし荻原はあえて青峰の挑発を受けそのままドライブで切り込む。勿論青峰は難なくついて行く。荻原はそこからレッグスルーを一度行い体の勢いを殺す。荻原が勢いを殺した瞬間青峰はボールを獲らんと手を伸ばす。だが荻原もそれに反応しバックチェンジで躱しそのまま逆サイドに切り込もうとするがそれは囮だ

 

青峰は勿論ドライブが来ると思っており荻原のバックチェンジからのドライブを警戒するが荻原はそこからさらにもう一度切り返しロールで青峰の横に並ぶ

 

「ちっ!」

 

青峰は出し抜かれたことに思わず舌打ちをするがこの距離ならまだ自分のスピードならブロックが間に合う。そう考えていたが荻原はそこでベビーフックを撃つ。青峰は当然ブロックをしようとするが荻原の逆手に抑えられブロックに失敗する。シュートはボードに当たりそのままリングをくぐる

 

16-11

 

「やりやがったな」

 

「まさか、こっちは一杯一杯だよ」

 

荻原は大変だと言わんばかりの表情で青峰に言い返す

 

「無様だな大輝」

 

「あ”!」

 

赤司の言葉にあからさまに怒りの表情を見せる青峰

 

「あれほど傲慢な態度をしていたにも関わらずこの体たらく。僕を失望させるな」

 

「ふざけんな!お前こそしっかりしろよ。あんな奴にてこずってんじゃねーよ」

 

青峰の言葉に赤司は目を細める

 

「それはどういう意味だ?」

 

赤司は青峰の言葉に対し少しいらだった様子で聞き返す

 

「そのままの意味だよ」

 

「僕が負けるわけがない。勿論大輝、お前にもな」

 

「んだと!」

 

「ここまでお前達を従えてきたのは誰だと思っている。この僕だ。頭が高いぞ」

 

赤司と青峰の口論は熱を上げていく

 

「なら見せてみろよ!お前の力ってのを!」

 

「言われるまでもない。大輝こそこれ以上僕を失望させないでくれ」

 

2人は話を終わらせボールを運んでいく

 

「さて、君たちには悪いがここから僕は少し本気でやらせてもらう。今まで通りやれると思わないことだ」

 

その瞬間赤司の雰囲気、纏っている空気が変わった

 

「!!」

 

持田は一瞬にしてそれを察知する。そして先程よりも膝を曲げ警戒を最大限にする

 

「無駄だ。君たちとは身分が違う」

 

赤司は天帝の眼(エンペラーアイ)を使い持田のバランスを崩す。今度は横の切り替えしではなく前後の切り返しだ

 

「やべっ!」

 

持田は対応することができずそのまま倒れる。赤司はそのままぺネレイトするが千石がすかさずヘルプに出る

 

「そのマジックは何かな?」

 

千石は茶化すような話し方でヘルプに出るが

 

「千石恭一、君はやりすぎだ。少し大人しくしてもらおう」

 

赤司は狭い空間の中で細かな切り返しを何度も行う

 

「おわっ」

 

そして千石も倒される

 

「頭が高いぞ」

 

そのまま赤司はシュートを決める

 

16-13

 

赤司はそのまま一瞥もせず戻っていく

 

「なるほどね。こういう仕掛けか」

 

千石はニヤッと笑いを浮かべる

 

「面白いことしてくれるね!てかNBAでもこんなことできねぇって」

 

千石は何が面白いのか途端に笑い出す

 

「だ、大丈夫か恭一?頭打ったか?」

 

千石の不気味な笑いに心配する荻原

 

「ああ、大丈夫大丈夫。パス頂戴」

 

不思議がる荻原をそのままにして千石はボールを運んでいく

 

「まあ、相手も面白いもの見せてくれたんだ。こっちも手札の一つを見せようか」

 

そう言うと千石はハーフラインでドリブルをやめそのままシュート態勢に入る

 

「な!?」

 

その様子に緑間が驚愕するが、そんなことを気にせず千石はそのままシュートを撃つ。そのシュートは普段より少し弾道が低くそのままボードに当たり決まる。その光景に観客が盛り上がる

 

19-13

 

「マジかよ!あそこハーフラインだぞ」

 

「あの8番本当に中学生か!?」

 

「てかこの試合自体中学生の試合じゃねーよ!」

 

観客はすでに明洸のファンになりつつあった。この試合には高校の監督も多く着ておりその監督たちは大きな口を開け信じられないというような表情をしている

 

「まさかキセキの世代に此処まで善戦するとはね」

 

「にわかに信じられませんね」

 

「それよりあの8番は何者なんだ?」

 

「8番だけじゃない。明洸もキセキの世代ほどではないが中学生のレベルではない」

 

上から秀徳の監督中谷、桐皇の監督原澤、海常の監督武内、陽泉の監督荒木だ。いずれにしても桐皇を除いて全国的に有名なバスケの名門高校だ

 

「それにしてもあの8番。少し妙ですね。彼は今までCをやっていたはずなのですが」

 

「それは今まで8番がCをやらないといけなかったからだろう。確か無冠の五将にもいただろ。CでありながらPGの素質を持つ異質なCが」

 

原澤の言葉に武内が補足をする

 

「それでもほとんど8番が点を取っている。それも単独でだ」

 

「少し異常だよねぇ」

 

荒木の言葉に中谷も同意する

 

「キセキの世代も面食らっているのでしょう。今まで自分たちとここまで同等に戦えるものなどいなかったのですから」

 

「それにキセキの世代もこのまま黙っているとは思えない」

 

監督たちがこう話している場所でも似たような話をしている者が多くいた

 

 

 

 

洛山

 

「冗談じゃないわ。こんなの中学生のレベルじゃないわよ」

 

「これが来年には高校に上がってくるのか」

 

「凄すぎでしょ」

 

上から実渕、根武谷、葉山だ。この3人はさっき監督達が話していた無冠の5将だ。この3人はこの試合に戦慄していた

 

「帝光にはキセキの世代がいるのよ。それもフルメンバー。それを相手にリードしているなんて信じられないわ」

 

「しかもあの明洸の8番紫原のダンク防ぎやがったぞ」

 

「明洸の4番もあの青峰のドリブルに何とかついてってるし」

 

3人は両チームの引けの取らないこの試合に驚きを隠せずにいた。そして予測もしていた

 

「でもこのままじゃあの8番……速くて2Q、遅くても3Qには落ちるわよ」

 

「そうだねレオ姉、明らかにあの8番オーバーぺースだもん」

 

「むしろまだ持ってることに驚きだぜ」

 

彼らは感じていた。この均衡は長くは続かないことを。そしてその均衡が破れる時が流れの変わる時であることを

 

 

 

 

 

誠凛

 

「凄まじいな、あの8番。シュート力は勿論、シュート範囲も広すぎる」

 

「それにパッと見分かりづらいが常に全体を見渡し状況把握をしている。それに加えてあのドリブルスキル、PGも十分できる。それに鉄平にスタイルが似ているな」

 

「そうか?少なくとも似てはいてもスタイルは全然違うよ。彼の方が何枚も上手さ」

 

「それにしてもすご過ぎない監督の知り合い?強いってレベルじゃないんだけど」

 

「私もここまでとは思っていなかったわ。少し驚いたわね」

 

上から日向、伊月、木吉、小金井、相田だ。彼らは相田リコの誘いを受け今回の全中の観戦に来ていたのだ。相田の知り合いが試合に出るという事から応援に来たわけだが

 

「あの8番だろ?監督の知り合い。聞いた話ではちっさいって聞いたけど」

 

「私もあそこまででっかくなってるって知らなかったのよ!最後にあったのなんか小学4年生の頃だし」

 

日向の質問に相田はこっちが気きたと言いたそうな表情で話す

 

「それにしてあの8番。まるで一人でキセキの世代達と戦ってるみたいだな」

 

「いいや、そんなことないさ」

 

伊月の言葉に木吉が反論する

 

「よく見ると8番がボールを運んでいる時、何か用があったりするときは話したりしているし、それに」

 

木吉はコートを見て

 

「一人でやってるならほかのメンバーがあんなに笑ってるはずがないよ」

 

コートの中ではシュートを決めた千石が他のメンバーに手洗い感謝の扱いを受けている最中だ。明洸のメンバーは誰一人つまらない顔をしておらずどこか楽しそうにバスケをしている様子が見える

 

「楽しそうだな。俺も彼らとバスケがしてみたいな」

 

「そうだな。俺もあいつらとバスケがやってみたいな」

 

「安心して。この大会が終わって暇になったらうちのバスケ部にも顔を一度出してくれるみたいだから」

 

『はあ!?』

 

さっきまで話していた木吉や日向も「今なんて言った?」というような顔をしている

 

「電話で少し話したんだけど、この大会が終わったらいろんな高校を体験入部みたいな形で回るんですって。その時にうちにもバスケ部あるから来てみないって言ったらオッケーもらったわ」

 

相田の言葉に全員信じられない問うような顔をしているが木吉のみ

 

「そうか、なら一度話してみたいな」

 

「何馬鹿言ってんだ木吉!何が何でもうちにいれるぞ!こんなチャンスめったにないぞ!」

 

「一応言っておくけど無理やりの勧誘は意味ないどころか逆効果よ。恭一のモットーはバスケは面白くだから」

 

誠凛はそのまま試合観戦をそっちのけで千石の話に変わってしまう始末であった

 

 

 

 

 

 

試合では

 

「おらぁ!」

 

「クソ!」

 

青峰と荻原の一対一が繰り広げられていた。今まで荻原はギリギリのところで青峰に追いすがっていたが青峰は尻上がりに調子を上げていく傾向を持つプレイヤーだ。そして赤司との言い合いにより完全に調子が上がってしまった

 

青峰は荻原を抜き去るがすかさず千石がヘルプに出る

 

「普通のシュートは止めれてもこれは止めようがねーだろ!」

 

青峰は明らかにシュートを撃つような形ではなく野球をするようなオーバースローの形でシュートを撃つ

 

「くっ!」

 

千石も対応しきれずボールは荒々しくリングをくぐる

 

25-22

 

千石の一人オフェンスにも少し限界が来ていた。理由は紫原以外の選手が明らかにヘルプ寄りのポジションで守っているからだ。そのせいで千石はスラッシュすることができずスリーに縛られての戦いを強いられている。勿論紫原が簡単にスリーを撃たせるわけもなく身長差もあり簡単にシュートを決めることができなくなっていた

 

クソクソクソクソ!

 

荻原は表面に出してはいないが心の中では悔しがっていた。明らかに自分が青峰を止められなくなってからうまく流れに乗れてこれなくなっていることに気づいているからだ。荻原は青峰の複雑なストリート仕込みのドリブルに苦戦していた

 

「(今のままじゃダメだ!もっと速くもっと速く反応しろ!すべての動きに対応しろ!フェイクにつられるな!見極めろ!)」

 

荻原は頭の中で自分がやるべきことを全てやろうと必死だった

 

「シゲ~、いい加減にしろよな」

 

その時千石が荻原に声をかける

 

「恭一?」

 

千石の珍しい怒りに困惑する荻原

 

「シゲがあいつに負けてることに怒ってんじゃねーよ。馬鹿みたいに考えすぎてることに怒ってんだよ。なんでもっと自分の思うままにやんねーんだよ。自分のプレイスタイルを見失うな。あいつにできてお前にできないこともある……けど、あいつにできなくてお前にできることもある。それに気づけよな」

 

千石は自分の言いたいことだけ言うと荻原を放ってボールを運んでいく

 

「ははは」

 

荻原は乾いた笑いをする

 

「(そうだ、なんで俺は相手に張り合ってたんだ。あいつのスピードに自分がかなわないことはもうわかったはずだ。なら俺は自分の長所で闘えばいいはずだ。それなのになんで俺は相手に張り合ってたんだろうな。恭一が怒るのもわかるわ)」

 

その時の荻原の顔はさっきまで自問自答していた時の顔はなく、いつも通りの楽しそうな表情に戻っていた

 

「やっぱバスケは楽しく自分のやりたいことをするべきだよな!」

 

その後千石は残り時間を調整しながら時間ぎりぎりにスリーを決める。そこで1Q目が終わった。スコアは

 

28-22

 

明洸は帝光に点数差を少しつけ優位な状況を保った状態で1Qを終えることができた。しかしいいことばかりではない。千石は表面上は余裕そうに見せているが内面的にはその疲労度は凄まじいものがある。並の選手なら既に倒れているほどだ。それでも千石が立っていられるのはアメリカでの血反吐吐くような練習のおかげである。そんな千石でもすでに半分近い体力を消費していた。洛山が言っていたようにこのままでは2Qが終わるころには千石は体力ぎれでベンチに戻る事になる

 

しかし千石は予定通りと言わんばかりの顔をしていた。千石自身もこのまま自分一人で闘おうとする気持ちはサラサラない。千石はこの1Q目で帝光にある一種の思い込みを植え付けていたのだ。それを発揮するために今まで千石1人で戦っていたのだから。そしてそれを実行するのは2Q目からだ

 

 

 

 

 

 

千石恭一の脳内シミュレーション勝率12%

 

 

 

 

 

 

 

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