誤字脱字等の報告が多く読者の方から寄せられています。
今後は確認作業を入念に行いたいと思っています。
今後も温かい目で見守り下さい。
千石は1Qを終えベンチに戻り座ると自身の異変に気が付いた
右手首から痛みがする
千石自身は気が付いていないが千石の右手首はすでに限界に近いところまで疲労し、手首が傷つき始めているのだ。なぜ今まで千石がそのことに気が付かなかったかというと、試合中に千石自身が身体から出している大量のアドレナリンが原因だ。そしてそのアドレナリンが少し収まってきたところ1Qが終了。そして痛みに気が付いたのだ
「ま、これくらいならいっか」
「どうした恭一?」
「なんでも~」
荻原にばれまいと、とっさに嘘をつきいつも通りの表情に戻す
しかし千石は知らなかった。自分の
千石は自身の最大の武器が手首の柔らかさであることを知っている。しかし知っているだけでその限界点を知らないのだ。そして千石は知らないことだがキセキの世代には赤司から言われていることが一つだけあった
自分の力を全力で使うな
赤司は知っていたのだ。自分たちの大きすぎる才能に今の身体が追いついていないことを。そして常に全力でキセキの世代と同等の実力を持つ千石が全力とは言えないが5、6割の力で戦っているキセキの世代達を一人で相手にしていたのだ。故障は必然である。仮にもそれが他のキセキの世代達であっても避けることはできない。何故なら彼らはまだ
千石は現在紫原のダンクを止めるために手首の力を使い弾き飛ばしていたのだ。キセキの世代で一番パワーのある紫原を相手に数回とはいえその手首はかなりのダメージを抱えていた。それだけならまだ耐えることができるが千石は更に自分の奥の手の一つを出す
ハーフラインからの弾丸シュートだ
このシュートはループの高さを犠牲にし飛距離を伸ばしボードを狙い決めると言うシュートだ。勿論手首にかかる負担は低いとは言えない。それにここまで何度もスリーを撃ち続けている。それすらも少しずつ疲労に繋がっている
さっきの青峰を吹き飛ばしたダンクも手首にかなりの負荷をかけていたのだ。元々のパワーは青峰の方が高く正面からぶつかると競り負けてしまう。そこで千石は自身の手首の力を最大限に生かしボールを触られた瞬間手首の力で半ば無理やり押し込んだのだ。その時に手首に決定的なダメージを与えた。今は少し痛む程度で済むがまだ1Qが終わったばかりだ。そして相手はキセキの世代、手を抜ける相手ではない。そしてこれが千石の計算を大きく狂わせることになることを本人もまだ知らない
「これはあまりよくないな」
赤司はスコアボードを見てつぶやく
28ー22
6点差とはいえ帝光が負けているのだ。キセキの世代が3年生になってからは一度も起こったことのない異例の事態だ
「ねえ~赤ちん。もう少し本気でやっていい?」
紫原はこれ以上黙ってやられることが許せないのか赤司に許可を求める
「そうだぜ赤司。久々にマシなやつが出てきたんだ。もう少しやらせろよ」
青峰も6割しか力を使っていない現状に不満が募る
「わかったよ。確かに今回の相手は一筋縄ではいかないようだ。5割ではなく8割までなら許そう。しかし、そこまで本気になったんだ。徹底的に潰せ」
「わかってるっスよ!さっきはまんまとやられたッスからね!しっかりお返しをしないと!」
「それは俺の台詞なのだよ。奴は俺と同じことができる。だが同じことができる者は二人もいらん!俺だけで十分なのだよ」
「なら2Q目は敦に変わって真太郎が奴のマークにつけ。負けることは許さない」
「当然なのだよ」
緑間は今までのどの試合の時よりも気合に満ち溢れた眼をしている
「真太郎が格付けを終え次第マークを変えるつもりだ。彼とやりたいと思うのは真太郎だけじゃないはずだ。もしお前たちがやる気が無いのなら俺がマークにつこう」
「はっ!やるに決まってんだろ!俺に勝てるのは俺だけだ!」
「俺もやるッス!さっきのドライブなんかよりもっとすごいものでやり返してやるッス!」
「今度こそ徹底的にヒネリつぶす。あんだけ笑ってバスケやってる意味が分かんないし。なによりムカつく」
残りの3人もやる気は十分な様子に赤司は冷めた笑みをする
「では気を引き締めなおせ。勝つのは僕達だ」
そして2Q目が始まる
紫原は珍しくスクリーンを行い緑間のマークの片山を緑間から引きはがす
「スイッチ!」
千石がすかさず緑間に追従する。しかし赤司は緑間が空いた一瞬を見逃さず絶妙なタイミングのパスを出す。緑間はすぐさまシュートを撃つ態勢に入る。千石は撃たせまいとブロックに跳ぶかそれは囮だ
緑間はポンプフェイクをし、千石をフェイクにつらせそのまま跳ばせる。その間にドリブルで千石の横を抜けそのままスリーを決める
28-25
「ヒュー、ドリブルもできるのか」
緑間は基本的にスリーポイントしか打たないことからドリブルが苦手だと思われがちだが人事を尽くす緑間がそのような苦手をそのままほっておくことはない。唯、赤司という強力なPGがいることでドリブルをつく必要が無く自分の仕事であるスリーに専念することができているだけである。そしてそのドリブルスキルも並の選手より上だと言うのは言うまでもない
「ドンマイ!やられたらやり返してやれ!」
黒谷がスローインを出し千石を励ます
「わかってら!」
千石はすぐにドリブルをつきボールを運んでいくが
「!?」
ハーフラインを超えたあたりで千石が立ち止まる。自分のマークが紫原から緑間に代わっているのだ。紫原は緑間とマッチアップが変わりゴール下で目を光らせている
「お前もシューターのようだな」
緑間が千石に突然話しかける
「ま~、シューターなのかね?」
千石は曖昧な返事を緑間に返す
「ふん、どんなことがあっても俺が勝つのだよ」
千石は緑間のこの言葉で理解した。帝光は、いや緑間は自分との勝負を望んでいるのだ。どちらが格上か決める勝負を
千石は個人的に緑間と戦う事を快く思っていなかった。まずは体力である。ただでさえ消耗している状態だ。これ以上無駄に体力を使うことはできない。そして手首の痛みだ。少し痛み始める手首を無意識のうちに負担をかけることを拒んでいたのだ
そして千石は
「あっそ」
無視することにした。自分の勝利とチームの勝利。どちらが大切なのか誰でもわかることだ。当然千石はチームの勝利を優先する
千石はそこからレッグスルーを使い緑間に揺さぶりをかけるが緑間はぶれない
「ちっ!」
千石は正攻法では簡単に抜けないことに気づき奇襲をかけることにした。千石はフロントチェンジからの左ドライブを仕掛ける。勿論緑間は難なくついて行くが突如千石が緑間の視界から消える
「なっ!」
緑間は一瞬のうちに姿を消した千石が何をしたのかすぐに考える
「(これは黒子の使っているミスディレクションか!?いや、違う。これは!?)」
緑間は足元で動く影を見つける
「貴様!」
千石が行ったのはスリッピンスライド。これもストリート技でありこの技の肝は一度こけたかのようにその場に座りこむことだ。千石は緑間の高い身長を利用しその場に座り込み一瞬で緑間の視界から消えたのだ。緑間は今まで自分と同じほどの背丈が大きい千石が突然座り込んだことからまるで姿が消えたかのように見えたのだ。最も成功したとして大きな要因はこの全国大会という場所でそのような技を使うという意外性である
緑間はすぐさま追いかけるが遅かった。緑間は千石を一度見失ったことによって対応が遅れる。千石はその隙を逃さずぺネレイトする。そしてジャンプシュートを撃つ態勢に入るが
「その程度でどうにかなると思ってんの?」
紫原の巨体がブロックに跳ぶ。千石は一瞬のうちに間合いを詰めた紫原の反射速度に感心しながらシュートを撃つ。そのシュートは紫原を越えるがリングから少しずれる
「躱すために外したら意味ないよ~」
「まさかシュートなんか最初から狙っていないよ」
リングからそれたボールは紫原のマークである片山に渡る。千石の狙いは最初から片山のアリウープだ。紫原を自分に引き付けることが成功した時点で千石の役目はすでに終えていたのだ
「ナイスパス」
片山はそのままダブルハンドを叩き込もうとするが
「甘いっすよ!」
そこに現れたのは黄瀬であった。黄瀬は片手で片山のダブルハンドを弾く
「む!」
片山は自分のダブルハンドを片手で破られたことに少し動揺する。今まで千石の単独プレイが多かったのは仲間へのパスをするという意識をなくすためであったがキセキの世代にはそれすらもお見通しだったのかそれとも千石にそこまで警戒をしていないかのどちらかである
「よくやった涼太」
黄瀬が弾いたボールは赤司が拾い前面に走っている青峰にロングパスを出す
「させない!」
荻原は青峰が走り出したことに気づきロングパスの滞空時間を利用し青峰の前に回り込む
「邪魔だ!」
青峰は速度を落とすことなく荻原に迫り赤司からのロングパスをダイレクトで荻原の股に叩きつけ股通しを成功させる
「なっ!」
荻原の股を通り激しく叩きつけられたボールはそのままリングの近くに向かってバウンドする
「おらよ!」
青峰は自分で叩きつけたボールを掴み一人アリウープをする
バキャ!
青峰のアリウープは勢いよくリングに叩きつけられリングが揺れる
28-27
試合開始から1分もたたないうちに6点差が無くなる。その要因として挙げられることがまずキセキの世代の実力の見誤りである。1Qでは明洸は千石を筆頭に互角の戦いを演じた。そのことが明洸に安心を与えたのだ。自分たちでも戦えるという安心を。そこが油断に繋がった
そして最大の要因が緑間との勝負を千石が避けたという事である。緑間があの場面で望んだ勝負はあくまでスリーでの勝負であってドライブで中に切れ込むような勝負ではない。スリーを撃つことをやめたことで千石は緑間から逃げたとも捉えられてもおかしくはない。そこからブロックからの逆速攻である。明洸のダメージは大きい
「ドンマイ!一本返そう」
持田が声を出し周りを引っ張るが明洸にどこか動揺が残る
「やっちまったな~」
千石はこのような展開になったことは自分の責任だという事がよくわかっていた。そしてこの流れを変えるには自分が緑間に勝つしかないという事もわかっている
「おし!力を出し惜しみしてる暇はねーな!」
千石はボールを運びながら緑間の勝負に挑む事を決める
「さっきのプレイは何だ?ふざけているのか貴様は」
緑間は先程の千石のプレイでスリーをを撃たなかったことに少なくない怒りを抱いていた
「悪い悪い、今からが本番な」
千石は右ドライブを仕掛ける。緑間は抜かれることなく千石に立ちふさがる。千石はフロントチェンジをする。緑間は左ドライブに備えるが千石は左に行くことはなくフロントチェンジと同時に右側に跳ぶ。そこからジャンプストップをしスリーを撃つ
31-27
「姑息な技を」
「どうとでもいいやがれ!」
そこからはスリーの応酬である。緑間が決め千石がやり返す。お互いがスリーを決め続ける。スリーの応酬が始まり3分が経過した時その均衡が破れた
ガシャン
「!」
千石のスリーが外れたのである
「戻れ!」
持田はすぐさま戻りディフェンスに備える。黒谷、荻原もすぐに戻り帝光の攻撃に備える。ここで連続得点された時、帝光に逆転を許すことになる。それだけではなく完全に流れが帝光に持っていかれることになる。明洸はなんとしても守りたいところだが
「悪いがこの勝負は俺の勝ちなのだよ」
赤司からのパスを緑間が受け取る。そしてシュート態勢に入る。その距離は千石が撃った距離と同じハーフラインだ
緑間の手から放たれたシュートは高くきれいなループを描きリングに吸い込まれる
46-48
観客は緑間のシュートに大きな歓声を上げる
「あいつ今ハーフラインから撃ったぞ!?」
「流石キセキの世代ナンバーワンシューター緑間真太郎!?」
「明洸の8番とのシューター勝負は緑間の勝ちだ!」
会場のムードが帝光一色に変わっていく。そんな中で一人そんな状況を気にするほど余裕がない選手がいた
「っっっ~~~~~!」
とうとう千石の手首が悲鳴を上げたのだ。先程の千石のシュートは手首の痛みによって精細さを欠いていた。ここまで千石はドライブからのスリーとフェイントからのハーフラインからのスリーを使ってきた。そしてドライブからのスリーも緑間にブロックされないようフェイダウェイで撃ちここまでしのいできたのだ。そしてここにきて手首が悲鳴を上げた
明洸はすぐさまタイムアウトを申請
千石もベンチに戻っていく
「どうした千石」
ベンチに戻り千石に最初に声をかけたのは持田だ
「どうしたって何が?」
「とぼけるな。お前がそう簡単にスリーを外すわけがないだろうが。何かあったのか?」
持田の鋭い推測に千石も白旗をあげる
「ま~、ちょっと手首をやらかしてな」
「そうか……交代だな」
持田は静かに交代を告げるが
「何言ってんだよモッチー。この程度で交代なんかするわけないでしょ。俺は出るよ」
千石はそう言い手首をテーピングで軽く固める
「何言ってんだよイッチ―!怪我してんなら休めよ!」
流石の黒谷も怪我人を試合に出すのはまずいと考え交代するように説得する
「馬鹿言うな。お前らが何を言おうと俺は試合に出る。このままやられっぱなしでいられるか!」
「馬鹿はどっちだよ!怪我を悪化させたらどうするつもりだ!」
荻原も千石を説得するが千石は固くない交代を拒否する
「千石」
そこで今まで黙っていた片山が口を開く
「出ろ」
スタメンの3人が交代をしろと言っているのに対し片山は出ろと告げる
「何言ってんだ片山!もしそれで千石が怪我を悪化させたらどうするつもりだ!」
持田は片山に詰め寄るが片山は冷静に言い返す
「千石が今までしてきたことを思い出せ。自由奔放、我儘ばかり、それでいてバスケにだけは誰よりも真摯に向き合っている。そんな奴がここで交代させられて大人しくしていると思うか?」
「た、確かにそうかもしんないけど」
黒谷もこんなことを言われると思っておらず反論ができない
「俺達は今まで千石の無茶なことについてきたはずだ。なら俺達はこいつについて行くべきだ」
「片山……」
荻原も片山の言葉に思い当たることが多くあり思わず持田を見る
「たくっ!俺がキャプテンだったことに感謝しろよ!後で泣き言言っても知らねえからな!」
「誰が泣き言をいうか!鬼キャプテン」
「それだけ話せるなら十分だ。ここからは最初の予定通り全体で攻める!全員気を引き締めてけよ!」
『おう!!』
明洸は円陣を組み
「絶対勝つぞ!」
『おう!!』
気合を入れなおす。そこには怪我人を気にする者はいなかった
千石恭一の脳内シミュレーション勝率5%