そこから展開は一転した
変幻自在のドリブル、
一度見た相手の技を一瞬で
シュートの弾道は遥か高く上がりブロックすることも許されない。少しずつ相手の精神力を削っていく。ハーフコートのどこからでもシュートを撃つことのできる緑間真太郎
どんな技術を駆使しようともその圧倒的高さとパワーで捻じ伏せる。スリーポイント内全てを守り如何なる攻撃もはじき返す紫原敦
その4人を統制し、相手の策を全て看破する絶対的支配者赤司征十郎
千石が怪我をした明洸には勝利の可能性はすでに消え去っていた
紫原の無慈悲な力を止めることができず、緑間の高弾道シュートは触れる事すらできず、青峰の変幻自在の
そして明洸は負けた
はずだった
50-60
明洸はギリギリの場所で踏ん張っていた
「ハイポに紫原上がったぞ!」
「ヘルプ!しっかりディナイしろ!」
「緑間が45度に上がったぞ!」
「青峰が逆サイドに走った!」
明洸は千石の体力面の負担を減らすためにマークしている選手は勿論、ベンチからも声を出し千石に帝光の選手の場所を逐一声を出し千石に伝えていた
全ては千石の負担を少しでも減らすために
「まさかここまで粘ってくるとはね」
赤司は中々うまく攻め込めずにいた。それもすべてこの千石恭一による妨害のせいで
千石は赤司からアンクルブレイクを受けない距離でディフェンスし尚且つパスコースを限定させうまくゲームをコントロールさせないように赤司の妨害に全てを注いでいた。それを可能にしているのは千石以外の4人の力とベンチメンバーの情報伝達による賜物であった
「(流石にここまで追いすがってくるとは思っていなかったよ。それに真太郎と敦に対してのパスコースの遮断が多い。そのせいで涼太と大輝にパスが多く回っている。勿論僕が起点として攻め込むんは論外だ。彼はパスの警戒は勿論僕に対してのマークも決して温くはない。いくら僕でもノーリスクで彼を倒すのは現状不可能だ)」
赤司は自分と千石の相性の悪さに内心不愉快で仕方がない。赤司は千石を
赤司なら千石相手に後れを取ることはないだろう。しかし勝つことは難しい。元々赤司と千石では基本的なフィジカルは千石の方が高い。スピードやドリブル技術は赤司の方が高いがこの密集地帯ではどれほど通用するかはたかが知れている。つまり赤司は現在自らが攻め込むことができずにいた
赤司がそんなことを考えている時千石は
「(やべ~、ナッシュにいろいろ教えてもらってなかったら俺じゃあ相手にならんわ。それにしてもこいつとんでもない眼を持ってるな。ナッシュと同じのやつか?俺でも足止めしかできないけどナッシュほどじゃないな)」
「赤司っち!」
黒谷のマークを振り切った黄瀬が赤司にパスを求めるが赤司はパスを出さない。いや、出せなかったすでに千石がパスカットを狙うためにポジションを移動していたのだ
赤司は千石が移動したことでできたパスコースを使い青峰にパスを出す。が千石はそれを読んでいたかの如くボールを弾き外に出す。先程から何度か見られる光景だった
「くっ」
この時の赤司の内心は不愉快極まりなかった。確かに今ほど距離が空いていれば赤司はスリーを撃つことができるだろう。しかし赤司がスリーを撃とうと考えた時千石がすでに少し距離を知事めているのだ。この距離ならばブロックはできないにしろ掠らせることぐらいはできることを赤司は察知していた。そしてパスにも敏感なほどに先読みをする
今の千石の頭の中では凄まじく高度な脳内計算をしていた
「(今ベンチから聞こえた情報では黄瀬が45度に上がって青峰が同時に逆サイドに駆け上がっている。もし俺が黄瀬のパスに反応したら赤司は青峰にパスターゲットを変更するだろう)」
千石はベンチからの情報と足音を頼りに頭の中で帝光の選手がどこに移動するか、どこに行きたいのかを予測。そしてパスコースを限定しそこに誘導していた。今の千石の頭の中ではいくつもの予測が同時に行われていた。そして黄瀬にパスが重点的に回るように仕向けていた
キセキの世代は確か化け物だ。しかし、その化け物の中で一番マシだと言えるのは
黄瀬涼太
そう考えた千石。確かに彼もキセキの世代と言われるほど強い。しかし、他の4人に比べると何ら恐怖は感じない。この先はどうなるかは知らないが現時点で黄瀬は一番がオフェンス力、ディフェンス力、判断力に欠如がある。ならミスする可能性のある黄瀬にパスを回した方がいい、という千石の考えだ
しかし、それでも黒谷が黄瀬を止められるかと聞かれるとその答えはNOだ。それでも黒谷は他のメンバーと協力して失点を最小限にとどめている
「赤司、どうしたのだよ?」
緑間は様子のおかしい赤司に気が付き声をかける
「真太郎か。スローインを頼む」
赤司はそれだけを告げ去っていく
「なんなのだよ……」
緑間は不自然な赤司に疑問を感じながら赤司にパスを出し、そのままリターンのパスをもらおうとするが
「くっ!」
赤司は緑間にパスを出そうとするが千石のパスコースの妨害を受けパスを出し損ねる
「なっ!」
緑間は驚いていた。まさかあの赤司がパスを出すのにてこずっていることに。そして今まで黄瀬と青峰にパスが偏る異変に気が付く
緑間の驚きをよそに赤司と千石はお互い高度な脳内シミュレーションを行っていた
「(僕がここから敦にパスを出す、だが奴はそこからパスカットに間に合う。だからこそ僕は敦へのパスをフェイクにしパスフェイクで跳んでいる間に大輝にパスを出し大輝に決めさせる)」
「(予測しろ!ここから赤司なら俺の頭上から紫原だけがぎりぎり届く高さでパスを出すはずだ。だがそれは囮にするかもしれない。赤司は慎重なやつだ。わざわざ自分より身長の高い相手に頭上を越えてのパスは出すとは考えにくい。ならこれはフェイクになる可能性が高い。ならほかのマークマン、青峰か黄瀬にパスを出すはずだ。そこをカットする!)」
両者のシミュレーションが終わりプレイが再開する。赤司はバックステップを行い千石のギリギリの距離を崩す。千石はまさかバックステップをされるとは予想しておらず慌てて詰め寄る……が後手だ。赤司はそこから紫原にオーバーパスを出そうとする
「クソ!(甘く見てた!確かにバックステップを使われたら赤司がシュートできる距離ではなくなるが紫原へのパスが可能になる。この距離ならパスは無事に通るだろう。だがここから前方に跳べばまだボールに届くかもしれない!)」
千石は赤司がパスを出すと考え跳ぶが赤司はパスを出していない
「しまった!」
千石が気づいたがすでに遅かった
赤司は千石が跳び限定されていたパスコースを取り戻し青峰にパスを出す。青峰はそのパスを受け取ると同時に荻原を抜く。荻原も負けまいと後ろから追随するが青峰の方が速い。青峰は片山のディフェンスをものともせずそのままダンクを叩き込む
50-62
「切り替えろ。まだどうにかなる時間だ」
既に持田はある程度の失点は仕方ないと考えオフェンスに切り替える
持田がボールを運び千石が補助ををする。持田は荻原にパスを出しそこからカットインするが赤司にボディチェックをされそのまま切れる。そこから千石がさらにカットインをする。マークマンの黄瀬は防ぐことができずそのまま千石にパスが渡る
千石はパスを受け取った瞬間ワンステップでティアドロップを狙う。紫原がブロックに跳ぶが千石は器用に避け紫原のわきから片山にパスを出し片山がゴールしたシュートを決める
52-62
すぐさま明洸は点差を戻すがそれでも点差が縮むことはなく、帝光が決めれば明洸もギリギリのところでシュートを決める。こうして点差が変わることなくそのまま2Qが終わった
58-68
「なかなか面白いじゃねーか!」
青峰はかなり満足そうにスコアボードを見た。今現在自分は8割の力を使って戦っている。ゾーンこそ入っていないが、それでもここまで踏みとどまった明洸に称賛を送れるほどだ
「確かに、奴は俺との勝負に負けたのだよ。それで心がおられていても何らおかしくはくわない。だが奴はそれでも俺達に挑んできているのだよ」
緑間も千石に対し高い評価をしていた
「それにしても何で俺と青峰っちにパスが多く回してくれるんっスか?俺は嬉しいからいいっスけど」
「黄瀬ちん馬鹿じゃないの~。あんだけ見ててわかんなかったの~」
紫原が黄瀬を見て呆れて溜息を吐いている
「ちょ、何でそんな馬鹿を見るような眼で見るんすか!」
「貴様は何もわかってないのだよ黄瀬」
「どういう事っスかそれ?」
黄瀬は本当に分らないようで呆れている緑間に聞く
「簡単にいうと黄瀬と俺にパスが行くようにあいつが仕向けてんだよ」
緑間の代わりに青峰が答えを告げる
「それってどういう事っスか!?」
「つまり赤司は奴のディフェンスによってパスコースを大幅に削られているのだよ。よくもあの状態でパスをさばけたものだ」
「確かに彼は凄まじい。それに僕と同等と言ってもいいほど考え込まれた緻密なプレイをしてくる。流石の僕と言えども彼相手にノーリスクで勝つ手段なんて今は持ち合わせていないよ」
つまり赤司はリスクを冒していいのなら千石に勝つことはできると言っているのだ
「だからってなんで俺と青峰っちにパスが回るんっスか?」
「馬鹿め、ここまで聞いてまだわからないか。要は俺と紫原にパスを渡すぐらいなら貴様にパスを回した方がまだマシだと考えている。奴は頭の回転が速いのだよ」
「でも俺に回ってきたパスは決まってるじゃないっスか!」
それでもまだ納得しない黄瀬に赤司が言い渡す
「はっきり言おう黄瀬。お前に敦程簡単にシュートを決めることができるか?」
「い、いや。無理っスけど…」
「お前に真太郎ほどの得点力はあるか?」
「それもないっスけど……」
「要は一番得点力の低いお前に撃たせ、あわよくばリバウンドを取ろうという算段だろう。つまり、現状お前が一番相手チームになめられている」
赤司の言葉に何も反論できない黄瀬。確かにそうなのだ。黄瀬には緑間程得点力もなければ、紫原ほど簡単に得点を決めることもできない。そして青峰程爆発的な得点力もない。現状キセキの世代で一番下っ端なのだ
「……そんなこと……わかってるっス…」
「ならお前ももっと仕事をしろ。今はお前か大輝にパスを回せないというのが現状だ。お前は真太郎や敦がいないから勝てないとでもいうつもりか?」
「そんなことはないっス!」
「ならいい。僕を失望させるなよ」
そう言い赤司は控室に戻って行った
「ハア…ハア…ハア……」
「アイシング急げ!マッサージもしろ!とにかく千石の疲労を少しでもとるんだ!」
明洸も控室に戻っていたがその中は慌ただしいものになっていた
「ほら恭一レモンで食え」
荻原は寝転んでマッサージを受けている千石に輪切りレモンを差し出す。千石は顔を上げレモンにかぶりつく。まさに動物のようだ
2Q目の途中から千石は頭をフル活用しとにかく緑間と紫原にパスが極力回らないようにしていた。そしてただ動くよりも頭を使い考えながら運動する方が疲れることは当然だ。千石は控室に戻っている最中に倒れ、ベンチメンバーに背負われここまで来た
「ぎもぢぃ~~」
千石は全身マッサージを受け体力の回復に努めている
「どうだ千石、まだ持つか?」
「う~ん、正直解らん」
「頼りにしてるからな」
「それガス欠寸前のやつに言う事か?」
持田の容赦ない言葉に疑問を感じる千石
「言ったよな?後で泣き言言っても知らねえぞ…って」
「それとこれとは別じゃないの?」
「んなわけあるか!お前の我儘にここまで付き合わされたんだ。最後まで立ってろ」
「わーぉ、鬼畜なキャプテンだね~」
「そんな俺をキャプテンに推薦したのは誰だよ?」
「黒谷」
「俺かよ!?」
「お前だろうが!このあんぽんたんが!」
この会話に明洸のメンバーは和む。試合の休憩時間中はずっとこういう風に話しているのが明洸の定番だ
「だがどうする?千石は見てのとおりこんな様子だ。下手をすれば3Qでガス欠だ」
ここで片山が試合に関して話しはじめる
「とりあえず、試合のペースを落とそう。それなら少しは回復するだろう?」
「んにゃ~、このままのペースでいいよシゲ~」
「ならいいか」
「いいのかよ!」
荻原の話を千石の適当な返事で終わらせ黒谷がツッコむ
「だ~いじょ~ぶさ~。まだ持つから~」
「少なくとも控室にたどり着く前にへばって倒れた上にマッサージされてる人間が言う事ではないと思うぞ」
黒谷は千石の姿を見て呆れる
「まあ~、3Q目の作戦なんだけど~、黒谷が青峰のマークで~」
「ちょっと待て!?」
「シゲが~全体のヘルプ」
「ちょっと待て!?」
荻原と黒谷が理解できないと言った表情で話しを止めようとするがそれで止まるような千石ではない
「片山が紫原で~、モッチーが緑間ね~」
「「わかった」」
「シゲは全体のヘルプとパスカットを重点的にお願い。黄瀬はノーマークでいいや。外からのシュートはないし」
千石の中で警戒しているのは赤司、緑間、紫原、青峰、黄瀬の順である。赤司は攻撃の起点であり一瞬で相手の隙を取り、こちらの流れを断ってくることからかなりの警戒をしている。緑間はスリーポイントを確実に入れてくることを警戒している。紫原は圧倒的な力、明洸に今の彼を止めるすべはない。青峰も現在止めることはできないが妨害することぐらいはできる。効果があるかはわからないが……それに比べて黄瀬は全体的に甘いところがある。突け入るスキは他よりは多い
これが千石の印象であった。千石はとにかく赤司をどうにかしないと勝つことができないことはわかっていた。だが今の千石では赤司のプレイを制限させるだけで精一杯だ
「後半はシゲの活躍次第で変わってくる。多少強引でもいいからカットを狙って。それで少しは赤司も警戒するだろうし。だからみんなは自分の相手に集中しておいてくれ。黄瀬は俺がどうにかするから」
「今更だけど大丈夫かイッチー?1人で2人を抑えるなんて」
「無理だな」
即答する
「じゃあどうすんのさ」
「その時は………出たとこ勝負だ!」
「要は考えてないってことだ」
片山は溜息を吐きながら頭に手を置く
「ま、とにかく勝ち負け以前に今この勝負をとことん楽しもうや」
「そうだな!やっぱバスケは楽しくやんないとな!」
千石の意見に荻原も同意する
「じゃあ、楽しむついでに帝光を倒すか!」
持田も笑いながらその意見に賛成する
「いつも通りの俺らのバスケをしようぜ!」
黒谷も興奮気味に同意する
「お前らと居ると気疲れが絶えないな」
まるで引率の先生の様に見守る片山
「とにかく!勝とうぜ!」
『おう!!』
そしてハーフタイムを終えた
千石恭一の脳内シミュレーション勝率?%