ドラゴンボール×GetBackers-奪還屋-〜孫悟空が裏新宿入り〜   作:来春

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悟空がたどり着いたセカイ、そこは自分達が経験した様々な事が非現実のモノとして広く認識されている世界だった。
さらに元いた世界に帰ることが出来ないとまで言われる始末。何時ものように楽観的では無いがどうにかなるだろうと悟空が思っていたその時、このセカイの歴史が大きく狂い出す一歩に繋がるとは誰も思っていなかった。


第2話 超越者赤屍蔵人VS紅の化身孫悟空 前編

 赤屍が見せた画面に映っているのは紛れもなく悟空そのものだった。他にも悟飯、悟天、ベジータにトランクス、ピッコロなど自分の見知った人物達が所狭しと並んでいる画像を見つけた。

 

「……本当だ。みんなオラのよく知ってるヤツらばっかりだ」

 

「この漫画が悟空さんの元いた世界に大きく関わっている事は分かりました。では何故この世界に来てしまったのか……心当たりはありませんか?」

 

 感情を押し殺した声で悟空に問いかける赤屍。

 

「赤屍……おめえさっきまでと違って声が硬えぞ……まぁ良いけどさ。ん〜夏実や波児には話したよな? 神龍に乗って眠ってたら〜ってヤツだ。」

 

 同時に首を縦に振る2人。

 

「そんであんまりにも神龍があったけぇもんだからさ、もっと強えヤツと戦けぇてぇな〜って思いながら眠っちまって、起きたらこの世界に来ちまってたわけだ」

 

「その話を聞く限りじゃ、まるで悟空の願いを叶えたヤツがいるみたいじゃねぇか」

「……思い出した!悟空お前その神龍って何でも願いを叶えてくれる龍に乗って来たってことでいいんだよな」

 

 いきなり何かに納得したような顔になり悟空の両肩に手を置く波児。

 

「あぁ、確かにその通りだぞ波児。そんで神龍が言うには元の世界で神龍とオラは完全に同化しちまって、この世界に入った途端神龍の存在自体が保てなくなって消えそうになっちまったらしい」

「だかから仕方なくオラの肉体に変わるしかなかったとか言ってたぞ。因みに神龍はオラの身体の中にいて今も会話の手助けをしてくれてんだ」

 

 自身の頭を小突きながら語る悟空。

 

「成る程…と言う事は悟空の無意識にもっと強いヤツと戦いたいって願いを神龍が叶えて俺達の所に来たってことか」

 

「もう頭がパンクしちゃいそうです…私」

 

 額に手を置いて目を回す夏実。

 

「でも凄いですいね〜。私達にとっては漫画の世界の人が来ちゃうなんて驚きですよ‼︎ あのさ悟空くん、良かったら後でいっしょに写真撮らない? あと握手もして欲しいな」

 

 合わせた両手を額にもっていきお願いのポーズをとる。

 

「飯食わせて貰ったしそんくらい幾らでも良いぞ」

 

「なぁ悟空、後で俺とも写真撮ってくれないか?それから手形も取らせて欲しいんだ、あと握手も」

 

「マスター、いつの間に出したんですか?そんな鉄板」

 

 手形を取る厚さ8cmの鉄板をいつの間にか取り出していたしていた、用意周到である。

 

「夏実ちゃんはブームじゃない時に生まれたから分からないだろうけど、ドラゴンボールっていや当時世代や性別も問わず人気だったんだ」

「ヤンチャしてた頃はよくコンビニの雑誌コーナーで読んでたなぁ……すっごく続きが気になってしょうがなかったんだぜ!? ……でもなんで悟空を見ても思い出せなかったんだ?」

 

 すると今迄沈黙を保っていた赤屍が口を開く。

 

「波児さん、多分それはその神龍という方が悟空さんの迷惑にならないよう認識をそらす力場を周りに張っていたからですよ」

「……それより悟空さん。確かここに来る前にもっと強いモノと戦いたいと仰っていませんでしたか? 貴方のご期待に添えるかどうか分かりませんが、一つ決闘などしては貰えないでしょうか?」

 

 口を開くたびに刃で切り裂かれるような殺気を悟空にだけ向けて喋る赤屍から異質なプレッシャーを感じる悟空だった。

 

「あぁ良いぜ。ただあんまり迷惑にならねえトコでやりてえな。それなら引き受けても良いぞ?」

 

 先ほどまでとはまるで別人のように決して折れない巨木を思わせる雰囲気で応じる悟空に対し、日本刀の様に妖しい殺気を放って見つめる赤屍。

 

「では富士の青木ヶ原樹海などどうでしょう?あそこなら迷惑を掛けないと言う点でこれ程の好条件は無いと思いますが」

 

「それって危なくないですか? だって2度と戻れないとか言うじゃないですか……」

 

 不安そうに口を挟む夏実に心配いらないというように悟空が語りかけてきた。

 

「心配ねぇって! いざとなりゃ飛んで帰れるし、今のオラはそう簡単に死には死ねぇから大丈夫だって」

 

 少々物騒な事を言いながら大丈夫とアピールする。

 

「私も別に迷ったりなどしないので平気ですよ」

 

「で、いつ始めんだ? 場所さえ教えてくれれば舞空術ですぐに飛んで行けっからさ」

 

「そうですね、10日後には別の依頼がありますから明日の満月の深夜0:00でいいでしょうか?」

 

「満月はオラ達にとって一番力が増す時なんだが、それでもいいってんなら受けてもいいぞ」

 

 珍しく強気な発言をする悟空。サイヤ人の本能がそうさせるのか、尻尾の毛が興奮で逆立っていた。

 

「それはそれは面白くなりそうです。私は風情を考えただけなのですが、世界を救った英雄さんと本気で戦えるなんて本当に運が良い。実に楽しみだ……」

 

 捉え方によっては煽っているようにもとられる赤屍の台詞だが、純粋に戦う事を楽しみにしている賞賛を込めたモノだと悟空は見抜いた。

 

「ならお互い本気でやり合おうぜ、赤屍‼︎」

 

「こちらこそ望むところですよ、悟空さん♪」

 

 固く固く握手を交わす悟空と赤屍だった。帰り際に赤屍は今回の死合の報酬として悟空の食べた飯代を払ってあげたとか。

 

 決闘場所の下見や何故か道着のポケットに入っていた7粒の内の1粒の仙豆を食べて気力と食欲を回復、瞬間移動が使えることに驚きつつ準備万端の悟空を見送ろうと波児と夏実が店の前に立っていた。

 

「もう23:00か…昼に下見に行った通りに行けばものの数分でつくから大丈夫だと思うが…はっきり言って悟空、赤屍と戦って勝てそうか?」

 

「…はっきり言うと分かんねえってのが一番の感想だな。身のこなしもそうだが席を立ってカウンターまで接近した時のスピードはオラの想像を遙かに超えてた」

「今のオラの目にはコマ送りのようにしか見えなかったし、何よりも底が見えねえ……あんな奴は初めてだぞ」

 

 改めて赤屍蔵人と言う男の底知れなさを感じ取った波児と、より一層不安な気持ちになる夏実だった。

 

「そんな心配そうな顔すんなよ夏実……そうだな、帰ったらたらふくメシ食わせてもらうからさ、そんな心配すんなって‼︎」

 

「本当に大丈夫なんだよね…あとたらふくはやめてほしいかな」

 

 思わず苦笑いしてしまう。そんなに食べられてはお金が底を尽いてしまいそうだ。

 

「心配いらねぇさ夏実ちゃん。こう見えても悟空は何度もあっちの世界を救ってきた英雄サマなんだ、そうそう簡単にやられたりはしねぇさ。飯の方は店を手伝って貰うしかなさそうだがな‼︎」

 

「約束だからね?あと帰ってきたらマスターの言う通りお手伝いして貰うかもしれないからそのつもりでお願いね!」

 

「あぁ、参ったなこりゃ。そんじゃ行ってくる。」

 

 右手中指と人差し指を眉間に当てると空気を裂くような音と共に悟空は姿を消した。

 

ー富士の青木ヶ原樹海上空ー

 

 瞬間移動で着いた先に広がっていたのは、鬱蒼と茂る葉の擦れ合う不気味な音がまるで波を思わせる、正に樹の海が広がっていた。

 悟空が下見に行った時に施しておいた気の印を頼りに樹海に向かって下降、空中で膝を抱えながら着地。勿論地面には亀裂一つ入っていない見事な着地だった。

 すると木々の間からパチパチと拍手をする音が聞こえてきた。

 

「見事ですね。オリンピックの金メダリストも裸足で逃げ出すような華麗な着地だ…」

 

「おめえの方こそ凄えじゃねぇか。オラ全然気付かなかったぞ。…いつからいたんだ?」

 

「私も今来たようなものですよ。しかし今日は満月だと言うのに雲が多い……邪魔だと思いませんか?」

 

 赤屍の右腕辺りから空気を裂くような音が聞こえた。すると突然積み木が崩れていくかのように、赤屍を中心とした半径20mの範囲の木々が綺麗サッパリ消えてなくなり、満月を覆っていた雲も箒で掃いたかのように消えていった。

 

「ははは、まさか風景を変えちまうなんてな」

 

「惑星を打拳一つで破壊できる貴方達なら造作もないでしょう?」

 

「まぁな。でも達人ってのは力のコントロールも上手くてよ、星を破壊する力を拳の一点に集中して無駄な力を分散しないようにもできんだぜ」

 

「クス……星すら破壊する達人の一撃、味わってみたいものです」

 

 お喋りは終い、ここからは自ら培ってきた力と技で語り合おう……

 

 自然と悟空はベジータと初めて戦った時のいつでも飛び出せるような構えをとり、赤屍は自然体のまま右手の指の間に三本のメスを体内から取り出す。

 いつでも投擲し斬り刻めるようにしている他、角度を調整して取り出していることを探らせない。

 確実に相手の先手を潰せる赤屍に対し悟空は地を右足で蹴り、20mの距離を瞬きよりも短い時間でつめていく。

 その間に赤屍は三本のメスを眉間、系動脈、心臓の三箇所に容赦なく投擲し出方を窺い、更に一本メスを取り出してそのまま悟空に向かって凶刃を振り下ろす。

 対して悟空は気合砲で作ったレールでメスの軌道を変えて明後日の方向に飛ばし、スピードを落とすことなく突進。

 気で覆った左手刀と赤屍の斬撃が鍔迫り合いの形になり、ぶつかり合った衝撃で二人の周りの地面が陥没し粉塵が舞い上がった。

 

「信じられねぇ、ホントはもっと被害を抑えられると思ったけどなぁ。力を出した途端にとんでもねぇ気が身体の底から湧き出ちまって調子が狂っちまったぞ」

 

「ですが見事としか言いようがありませんでしたよ? 実際あの威力でこの程度の被害しか出なかったのは奇跡に近いと思いますが」

 

「そいつは嬉しいけどよ、さっきおめえにやったのは下手すっとチビの魔人ブウでも掠っただけで消滅するはずの威力だったんだぜ。 ……何で生きてんだ?」

 

「さて何故でしょう?あえて言うなら私、自分の死をイメージできないので死ねないんです」

 

「……オラのとこにもおめえほどぶっ飛んだヤツはいなかったぞ」

 

 あまりにも無茶苦茶な理由に呆れてしまったが背後から向かってくる気配に気づく。

 尻尾に気を纏わせて鞭のようにしならせながら戻ってきたメスをバラバラに破壊、同時に10mの間隔を開けて距離を置く二人。

 

(あいつとんでもねぇヤツだ…気を纏ってた筈なのに左手に紙で薄く切ったような痕があっぞ…)

 

(素晴らしい、これがあのドラゴンボールの主人公孫悟空の実力か。戻ってきたメスも目で確認せずに尻尾でバラバラにしてしまうか)

(並みの使い手ならそもそもバラバラにも出来ず串刺しなのですがね、それに斬りあったメスの刃が抉れているときましたか……)

 

「すみません悟空さん。私はあなたの事を見くびっていたようです」

 

「オラの方こそすまねぇ…おめえが地球人だと思って甘くみてた。こっから先は遊び抜きでやろうぜ」

 悟空は白く可視化できる程膨大なオーラを放出。試合用の力から戦闘用の力に切り替えたことを証明し、気を解放する。

 

 赤屍は悟空が気を解放したと同時に空間が歪む速さで両手に3本づつ計6本のメスを取り出し肉迫。

 悟空がいた場所を空間と次元丸ごと凶暴な猛獣の爪が如く引き裂いたが、赤屍が切り裂くよりも速く上空に飛んで右脚を上げて踵落としの姿勢をつくり、そのまま全身を斧のようにして赤屍のいる地面に急降下。

 しかし赤屍の頭部に踵が触れるが手応えがない。残像の頭部に触れただけだった。

 赤屍は悟空の踵が頭部に接触するほんの100万分の1ミリまで引きつけて残像を残し、悟空から見て右にステップ、右手にある3本のメスを束ねてその持ち手の部分で悟空の右頬を殴り抜く。

 踵が地面につくよりも速く悟空の右頬に想像を絶する衝撃が加わり、樹海に一筋の線を作りながら吹き飛んでいく。

 

 吹き飛ばされた悟空は更に膨大な気を解放して脱出、白い爆炎をあげながら赤屍に向かって突進するが、爆炎ごと悟空が赤屍の視界から消える。

 突進しながら赤屍の背後に瞬間移動し、爆炎のような気を纏って突進の威力も合わせたドロップキックを赤屍の背中にお見舞いし上空に蹴り飛ばす。

 地面から流星が発射されたかのように赤屍が飛んでいくと追い討ちを掛けるべく悟空が射線上に光速で移動しボディブローを叩き込む。

 空気を裂く音と共に背後に移動、肘打ちから尻尾で上体を絡めとり、強引に正面を向けさせられた赤屍の顎にサマーソルトを喰らわせ、計5発の連続パンチを胸板に叩き込む。

 空中で止まった体に回し蹴りからの蹴り上げで吹き飛ばし射線上に瞬間移動で接近、ハンマーナックルの姿勢をとり撃ち下ろした拳が当たる寸前、前触れもなく赤屍の姿が消えた。

 

 流星となって蹴り上げられ悟空の見事なコンビネーションを受けて口から血を流しながら赤屍は感激した。

 突進すると見せかけての瞬間移動、全く無駄のない気の爆発を利用しての純粋な肉体から繰り出されたドロップキック。

 戦いを楽しみたいという純粋な想いが籠った一撃一撃が赤屍の心に言い知れぬ興奮と高揚感を与えてくれた。

 もっと、もっと私を楽しませてくれ……自身の底を引きずり出して欲しい……この戦いの中で自分の底が見れそうな予感が赤屍にはあった。

 だから赤屍は敬意を込めて悟空のハンマーナックルが当たる寸前、本 気 で 動 い た。

 

 赤屍のように【超越者】と呼ばれる存在にとって時間も次元も空間の隔たりも意味を成さない。

 故に【超越者】の前では光速で動けようが、無限大の速さだろうが、等しく止まっているよなものなのだ。

 結果悟空が放ったハンマーナックルすら本気で動いた赤屍には止まっているのも同然。

 悟空の腹部に胴回し蹴りを放ち、背中にはメスに自身の血を混ぜ合わせて作り出した赤の剣《ブラッディ・ソード》で十字に斬り裂く。

 ダメ押しに踵落としを十字の交点に命中させ、遠ざかっていく悟空の背に視線を向けながら赤屍は地面に降り立った。

 

 気づいた時にはうつ伏せの状態で地面に撃突。その衝撃で1000mもの土の柱ができあがった。

 地に這い蹲り状況を確認していると腹部には鈍痛が、背中は十字に斬られたような鋭い痛みを感じた。

 

(何でだ…⁉︎ オラが見失った? いや違う……さっきまで赤屍はオラの攻撃で身動きがとれなかった。あいつの身のこなしから考えてあの攻撃から脱出してオラの五感で捉えられないスピードで脱出なんてできねぇはずだ)

(それにもう地面にいやがる、気配も感じなかったぞ……)

 

(……いいかよく聞け悟空)

 

 何故か痛みに堪える声音の神龍。

 

(ど、どうしたんだよ神龍。そんな弱々しい声で……具合でも悪いんか?)

 

(……今はそんなことはどうでもいい‼︎ お前は赤屍に何をされたか分かるか?)

 

(分かんねえ。赤屍のヤツが消えたと思ったら背中とハラに痛みが走って、ハラは蹴りを入れられて、背中のは変なナイフから剣に変えて斬られたっちゅうトコか)

 

(恐らく、あの剣はただ肉体だけにダメージを与えるものではない。私とお前の魂両方にダメージを与える事ができるようだ)

 

(な⁉︎ 本当か神龍‼︎ 魂にまでって、だから痛がってたのか。もしかして斬られ続けれりゃ存在ごと消えちまうんじゃねえのか)

 

(そうだ、このままあの剣で斬られ続ければ幾ら生死を超越しているといっても魂ごと消滅されかねん。それだけはなんとしても避けなくてはならんぞ……)

 

(避けろって簡単に言うけどよ、赤屍のあれは超スピードとかそんな次元を超えてるように思えっぞ?)

(それにさっきも言ったけど消えたと同時に腹と背中に……ん? 同時に? アレだけのことを同時にって、もしかして赤屍は時間を止めて動いたのか?)

 

 悟空はナメック星に到着してクリリンの記憶を読んだ時にいたグルドという宇宙人の能力にそっくりだと気づく。

 

(分からん、だが時間という概念から外れていることだけは確かだ)

 

「悟空さん、一応私も本気を出したので……なっていただけませんか? あの黄金に輝く超サイヤ人というモノに」

 

 突如、背後から先ほどと同じく時を止めたように接近する赤屍。そしてそのまま横一文字に一閃。

 

「おわ⁉︎ あ、あっぶねぇ。あとちょっと気で防御するのが遅かったら斬られるトコだったぞ」

 

「戦いの中で余所見などしている暇はありませんよ?」

 

「言われなくても分かってるさ。ただおめえの超スピードをどうにかしねぇとその剣で魂ごと斬られちまうのはゴメンだからさ、ちょっと対策を考えてんだ」

 

「……ではこの世界での戦いについて少しアドバイスしてあげましょう。ここでは貴方の世界とは違い気の大小で決まるものではありません。」

「この世を動かす万物の法則とは人の意思そのもの、要は強くどこまでも強く望めば力が手に入る。摂理とはそういうものなのです。」

 

「うーん……難しい事は分かんねぇけど要は負けたくねぇ、って思えばドンドン強くなれっるって事なのか?」

 

「えぇ、その認識で間違っていませんよ。ですがそろそろ超サイヤ人になって貰えませんか?まだそのままの状態で戦い続けるというのなら……殺 し ま す よ?」

 

 心臓を鷲掴みされたような感覚、背中に氷柱を突っ込まれるとはこの事なのか……殺意という暴風が悟空の道着ごと身体を切り裂こうとしているかのようだった。

 咄嗟に腕をクロスさせてガードしようとするも時間を止めた様な動きでいつの間にか背中を袈裟懸けに斬られ血飛沫が舞い、地面と空中からメスの雨が襲い掛かる。

 

(クソ、負けたくねぇけどそんな簡単にできるもんなのか?)

 

 心の中で愚痴っている間にも悟空の身体に次々とメスが食い込んでいく。

 

(大丈夫だ悟空、赤屍の言ってることは紛れもない事実だ。それと気になっていたのだが何故気を察知しようとせず五感だけで捉えようとしているのだ)

 

(分からねえのか神龍、赤屍の気が戦ってるときだけ探れねぇんだ)

 

 そう、赤屍の気が捉えられないのだ。普通にしている時は一般人のそれと変わらない。だが戦闘となると全く捉えられず今まで五感を研ぎ澄ませて戦っていた。

 

(分かった、しかし赤屍の気を捉えなければいけないのは確かだ。捉えながらお前の気を最大限まで放出して意志の力を爆発させるしか無い)

(強い意志が不可能を可能にする、フリーザと戦った時もそうだったはずだ。……お前は孫悟空だ。孫悟空にできない事なんかない、そうじゃないのか?)

 

 最後の神龍の言葉、それは悟空が自身の世界から消える前にどうしても忘れないと誓った仲間の一人が諦めかけた自分にくれた言葉だった。

 これを聞いて孫悟空の心の中に一切の迷いや疑念、躊躇いが消え去る。自分にはできない事なんて何にもない、ただ信じるのだ。

 今まで世話になった神龍の言葉を、そしてこの言葉をくれた仲間を、何より戦いにおいて一番大切な己自身に負けないために……悟空はそっと目を瞑った。

 

 急に目を閉じて瞑想するかのように佇む悟空を興味深く観察する赤屍。

 

(さてキッカケはあげましたよ悟空さん。後はそれを生かすも殺すもあなた次第……)

 

 同時に赤屍は自身の体内にある大量のメスを瞬時に展開する。

 

「待っているだけというのも飽きてきましたので、そろそろ此方から仕掛けましょうか。赤い暴風《ブラッディ・ハリケーン》」

 先ほどのメスの雨とは比べ物にならない大量のメスが悟空に向けて殺到、それでも避ける素振りすら見せずに佇む悟空を静かに見つめる赤屍。

 後数ミリで悟空の隅から隅までを串刺しにする筈だったメスが黄金の輝きと共に消滅した。

 

 悟空は赤屍の気を必死になって捉えようとしたが、やはり掴むことができない。もっともっと範囲を広げなければ……限界を超えて気を放出させていく。

 その速さは既に宇宙の拡大スピードを容易に上回っていた。

 赤屍が赤い暴風を悟空に向けて放った時、まるで海が落ちてきたような強い圧力を上から感じた。

 この感覚を逃してはならない、そう悟った悟空は急速に拡大させていた気を収束、収斂させていく。

 捉える範囲も広げるのではなく、逆に一点に絞って無限に続きそうな圧力の発生源を捉えようという強い思いを、収斂した気を起爆剤代わりにして膨張させていく。

 メスが悟空の身体に触れる寸前、駄目押しに超サイヤ人に変身するとその余波でメスは消滅。

 何もかも止まった世界の中で黄金の軌跡となって赤屍の目の前に接近。

 上体を捻った重い正拳突きと赤屍の右手に握った剣による捻りながらの突きがぶつかり合い球形の衝撃波が発生、止まった世界が動き出す。

 

「これは驚きました……この剣の突きをまともに受けて立っていられて、尚且つ瞬時にこの時間すら止まった世界に到達するとは……貴方には驚かされることばかりです」

 

「オラはおめえに感謝してぇぐれぇだ。こんな世界があったなんてオラ1人だったら思いつきもしなかった。それにようやく気を捉えて驚いたぞ!」

「おめえの気はまるで宇宙みてえに広がり続けて、そんなのが滅茶苦茶たくさんある一個の塊みてえに動いてんだもんな。これじゃ幾らやったって気なんか捉えられるわけねぇ、赤屍の胃袋の中をグルグル回ってるようなもんだからな」

 

 宇宙すらも客観的に捉えることができたからこそ赤屍の気の一旦を掴めたが、あまりの膨大さに悟空は呆れるしかなかった。

 

「クス、それは驚きました。まさか私のエナジーがそのようになっているとは」

「ですがようやく悟空さんは超サイヤ人になり私は剣を出しただけ…さぁ見せて下さい。貴方の際限無く強さを求める意志の力とこの赤屍蔵人の底を…」

 

 すると両者は消えて現れるを繰り返した。

 既に時間という枠には当てはめていい存在ではない両者がこのセカイの時間に縛られるのは互いの攻撃がぶつかり合った時だけ。

 1秒にも満たない間に数億もの悟空と赤屍の残像だけでしか闘いの苛烈さを知る術はない。

 

 悟空は今までの豊富な戦闘経験と師匠達から教えて貰った心眼及び気を読むことで赤屍の攻撃を予測してさばき、いなし、時折カウンターを混ぜていくが、決定的なダメージらしきものを与えているとは言えない状況だった。

 先ずこの何もかも止まった世界で戦うのに苦労したのが大きかった。ほんの少しでもコントロールを誤るとどこまで身体が飛んでいくか分からないため、体感10秒位は殆ど最小限の動きで避けるので精一杯だった。

 冷静になった頭でどのように攻めていこうか考えた矢先、赤屍は信じ難い行動に出る。

 

 なんと悟空が赤屍の懐まで接近した時点で自分の左腕ごと剣で悟空斬ろうとしてきたのだ。

 誤って自分の腕ごときった? そんな間抜けなことをするはずがない。ただあの腕は厄介だと直感が囁いている。

 細胞すら残さず気で完全に消滅させなければいけないだろう。

 バラバラに砕いた筈のメスが地面から生えて襲ってきたことを考えると、下手に残せば腕ごと再生して2人目の赤屍と戦うに羽目になりそうだ。

 

 振り下ろされた剣の軌道に沿って身体を移動、地に足がついたところで左手の親指とそれ以外の指で刀身を挟み、右掌を背後にある赤屍の左腕に向け消滅の気を放つ。

 すると背後で左腕が消滅したことを確認するよりも早く、左手で掴んでいる剣を計り知れない膂力で自分の方へ引っ張り、顎を狙ったアッパーを放とうとするが既に赤屍の姿はなかった。

 

 脳内に電撃が走る、この剣は何で出来ている? こんな長い剣をあの身体の中に隠し持つのはどう考えても不可能、ではどうやって? 答えは容易に考えつく。

 どんな仕組みか分からないが赤屍は体内に大量のメスを収納している。これは予想だが体内にある物なら何でも意のままに操れるとしたら消滅させた左腕も、そしてこの掴んでいる剣も、本質的には同じモノなのでは?

 その思考に至り急いで掴んでいた剣を離そうとするも剣が血液となって纏わりつき、身体の動きを阻害し血液が変質した鎖に全身を雁字搦めにされてしまった。

 

「んギギギ‼︎ なんて鎖だ、オラのパワーでもビクともしねぇ……」

 

「悟空さんのパワーを想定して作った特注の鎖です。無理に動こうとすると鎖が身体に食い込んでズタズタになってしまいますよ? 」

「それに気づいていると思いますが私は自らの血肉が混入していれば全てを意のままに操れる。鎖を血液に変えて内部に侵入して操作、なんてこともできるのですよ?」

 

 悟空の後方10mの場所にいる赤屍が語りかけてくる。

 

「……この速さにようやく慣れたばっかだしさ?もうちっとあとにしようと思ったんだけどこれじゃどうしようもねえよなぁ」

 

「何が言いたいのですか?この後に及んで負け惜しみ、には聞こえませんが」

 

「そういや赤屍、おめえはオラについてどれくらい知ってんだ?オラ達の世界を漫画ちゅうので読んだことがあったりすんのか?」

 

「えぇ、昨日すぐに全巻買って読ませていただきました。一応今回戦う強大な相手を前に事前準備もせず挑むほど私は愚かではありませんよ?」

 

「じゃあオラがあと何回変身できるか知ってっか?」

 

「確か今の変身が超サイヤ人1とすると2、3までと予想してあと2回の変身を残していると予想していまが」

 

「へっへ〜ん‼︎ 残念でした! あと3回残してあるんだなぁ〜これが」

 

(ん? 妙ですね、3回も? 確かに尻尾があるので大猿に変身できるとすれば3回ですが、今更あんな大きな的になるとは考え難い……)

 

 原作漫画とアニメの無印とZ、劇場版17作品を昨日のうちに時が止まった速さで全て熟読視聴した赤屍に、隙はなかった筈だった。

 しかし思い返せば孫悟空が神龍の背に乗ってドラゴンボールの世界から消える最終回なんてどの作品群にもなかったし、こんな子供の姿である事自体ありえないのだ。

 

(もしかしたら……ここにいるのは私たちが知らないドラゴンボール世界の悟空さんということですか。ますます最後の変身形態が楽しみだ……!?)

 

 空気が変わったと思った。悟空の方を見ると身体に隙間無く巻きついた鎖が跡形も無く消え、黄金のオーラに青白い稲妻を纏った姿へと変わっていた。

 あまりの変化の希薄さに拍子抜けしたが、潜在能力は完全に超サイヤ人とは比べものにならなかった。

 

「ふぅ〜、やっと解放されたぞ〜。」コリをほぐすようにグルグル肩を回す悟空。

 

「クス…超サイヤ人の壁を完全に越えている…こんな変身をあと2回も残しているとは…楽しみですよ…本当に…」

 

「だろ?さっきの鎖はもう効かねぇと思うし、その剣もてぇした獲物に見えなくなってきたからなぁ…次で壊せるとおもうぞ?」

 

言うが早いか、まるで地面を滑るかのように赤屍に向かって接近する。

 

 だが易々と懐に入らせるつもりは赤屍にはない。予め鎖で雁字搦めにしている時に90の盾を自身と悟空の間にバラ撒いていた。

 更に赤屍の半径5mの範囲には彼の動きを妨げることなく、絶えず複雑な軌道を描いて浮遊する盾が10。

 そして盾の一つが宇宙すら消滅させてしまう攻撃を防ぐことができる防御力を誇る代物、そう易々と破壊などできないがどうやって対処するのか観察していると、悟空が盾に接触した瞬間信じられない事が起こる。

 赤屍が見たのはなんと悟空が盾をすり抜けた、ただそれだけで圧倒的な防御を誇る盾が消滅した。

 1つ2つと次々に消滅していく。そのうち幾つ壊せるか試したくなった赤屍は悟空の進路上に隙間なく盾を並べるが足止めにもならずに消えていく。

 赤屍の射程5mに着く頃には90あった盾と自身の周りに配置していた10の盾も合わせて配置していたためすべて消滅した。

 ついでとばかりに剣を横に一閃するも切った感触がなく悟空は赤屍を通り越し後方10mの場所に立っていた。

 そして右手には捩じ切られた剣の刃、勿論それは赤屍が握っている剣の刀身に他ならなかった。

 

 悟空が右掌をグッと握りしめると黄金の光が景色を吞み込む、手中の刀身がこの世から消え去った。

 

「な、言ったろ?その剣も大したことねぇってな」

 

 まるで自分の仕掛けに成功した悪戯小僧のような満面の笑みでピースをする悟空と常識外れな孫悟空の行動に期待と驚きで心が一杯の赤屍。

 2人の歴史を動かす戦いはようやく折り返し地点に立ったばかりだった。

 




「オッス!オラ悟空!!赤屍のヤツの実力はとんでもねぇな…超サイヤ人2になってもまだ底が見えやしねぇ…いったいどうなってやがんだ?でもあいつの自慢の剣を引きちぎっちまったし少しは堪えて…」

「まさか私の剣すら捻じ切るとは…戦いはこうでなくては面白くありませんからね…益々楽しくなってきました♪」

「あらら、全然堪えてねぇや」

「まだ誰も見たことのない赤屍蔵人の力、貴方に見せてさしあげましょう」

「な、なんだこの禍々しい気は……なんだあれ?物凄く嫌な感じがビンビン伝わってくっぞ…オラの身体…保ってくれよ!!」

「次回ドラゴンボール×GetBackers-奪還屋-〜孫悟空が裏新宿入り 第3話 超越者赤屍蔵人VS紅の化身孫悟空 後編 見てくれよな!!」
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