ナイブズは目的地へと向かう電車の中、静かに瞑目していた。
昨日起きたこと、告げられたこと。今朝問い質したことと教えられたこと、そしてこれから会いに行く相手の事について、思案に耽る。
この星に来て、初めて出会う同胞。どうしてこの星に来たのか、何故あの店と店主を訪ねて来たのか、何という名前なのか、どういう生い立ちなのか。興味は尽きない、訊きたいことはそれこそ無尽蔵に湧き上がって来る。
逸る心を落ち着けようと、ナイブズは自分一人だけの電車内で、座席に座って腕を組んだまま微動だにしない。体を動かさなければ心が不必要に揺れることも無いというわけではないのだが、そうでもしなければ落ち着けない、居ても立っても居られないのだ。
彼女の気配は、今はほんの僅かだが感覚できる。店主曰く「自分の入れ知恵の仕業」だということだが、一体彼女に何を教えたというのだろうか。気になるが、感じる気配は微弱ではあるが弱々しいというわけでも無い。今は彼女の身を案じることまではせずともいいだろう。何を教わったのかも、彼女自身に尋ねればいい。
ナイブズは外の景色に目もくれず、これから会う彼女について考えることに没頭していた。さりとて周囲の変化に気付かないということでもなく、電車が途中の駅で停まり、人が乗り込んで来るのを感じた。
「お隣、よろしいでしょうか」
電車に乗った男は、そのまま真っ直ぐナイブズの前に来た。車内にはナイブズの他には誰もおらず空席ばかりだというのに、どうして態々ナイブズの隣を選んだのだ。
答えるより先に、瞼を開けて目前に佇む男を睨むように見る。ノーマンズランドでもアクアでも極めて珍しい和装に身を包んだ青年だ。
ふと、この青年をどこかで見た覚えがあることに気付いた。
「……花見の時にいたか?」
「はい。まさか、あなたが
言いながら、澱みなく自然な動きで青年はナイブズの前に平伏した。いや、日本の礼儀作法で最大の敬意を表す時や謝罪の際に深い自責の念を表す時に用いられる土下座というものか。
かつてナイブズの膝下に集い、ナイブズの力に威光を見出し平伏した者達とは、見た目は似ていても感じる印象は全く違う。
「座りたければ座れ」
男の土下座を見ながら声を掛ける。それに応えて、男は恭しい態度を崩さないまま立ち上がった。
「ありがとうございます。それから、できれば目的地に着くまで話し相手を務めさせて頂けますか? ナイブズさん」
「取り敢えず、不必要に意識した敬語はやめておけ。耳障りだ」
「そうですか? それじゃあ、お言葉に甘えて」
ナイブズの唐突な指摘にも動じず、男は態度を一変させてそのままナイブズの隣に腰を下ろした。しかし、この方が違和感は無い。この星に来た当初のナイブズと同じか、それ以上に風来坊という言葉が似合うような身形なのだから、この印象も当然だろう。
それでも完全に砕けた調子ではなく、最低限の礼節は弁えているような態度だった。店主やお節介焼きの猫人形と話す時にも感じたが、この星でナイブズを『賓客』と呼ぶ者が少なからず存在するのは、一体どういうことなのだろうか。
「申し遅れました。俺の名前は天道丈です。目的地に着くまで、宜しくお願いします」
「一応、名乗っておこう。ナイブズだ」
互いに名乗り合ってからは、丈が話してナイブズが聞くと言う形で時間が過ぎて行った。
ナイブズが聞き流して思案に没頭しようと思わない程度には、丈の火星全土を巡る旅の話は面白く興味の惹かれるものだった。火星に来たその日から、ネオ・ヴェネツィアから殆ど外に出ていないナイブズにとって、別の街々の生きた情報が得られるのは貴重なことだった。
丈の話を聞く限り、アクアにはネオ・ヴェネツィアのような場所が多いらしい。何度か仔細を問い質したが、その都度「百聞は一見に如かず」と、自分の目で確かめろと返された。しかし全部がそうだったわけではなく、時にはナイブズが無理矢理割り込んで止めに入るほどあれこれと話すこともあった。
そうしている内に、目的地の城ヶ崎村駅に着いた。丈によれば、この辺りは地球の日本の伊豆半島という地域の面影がある場所だと言う。
電車から降りて、ナイブズは懐から切符を取り出す。まるで宝物のように丁寧に、大切に。
白紙の切符を受け取った車掌は、何も言わずに恭しく一礼をする。
――佳い旅を――
声には聞こえない言葉が、会釈と共に直接頭の中に響く。
この星に来たあの時以来のやり取りを、あの時を再現するかのように執り行う。
違いがあるとすれば、今回一緒に降りるのが猫ではなく人間だということぐらいだ。
「よいものをお持ちですね」
「弟と同胞から貰った、
丈からの賛辞に、一切の迷い無く即答する。
何も記されていない白紙の切符。ナイブズを未知の星へ、新たな可能性へと導いてくれた、大切な道標。
ナイブズは返された切符を、再び懐へと仕舞った。
▽
「それでは、また」
電車から降りると丈は短く挨拶をして、返事も待たずにナイブズが目指す方角とは別の方向へと歩いて行った。ただの別れの挨拶ではなく再会を予期したような言葉が少々気にかかったが、すぐに忘れた。
この先に、彼女がいる。
周囲の風景に目もくれず、一心に続く道を足早に進む。本当なら最短距離を突き進みたいところだが、なんとかそうしない自制心は残っていた。
やがて一軒の家が目に映り、そこが目的地だと確信すると、不意に横合いから声を掛けられた。
「あら、お久し振りね。風来坊のナイブズさん」
何故か、あれほど急いていた足がピタリと止まった。単に聞き覚えのある声だったというだけではなく、声の主自身が持っている不可思議な魅力によるものだろうか。
「天地秋乃か。あの日以来だな」
ナイブズが生まれて初めて体験した雨の日に出会った老婆の姿が、そこにはあった。晴れた日に傘を差しているが、日傘として使っているのだろう。
普通ならこんな時に話しかけられても一瞥だけで済ませてしまうだろうに、何故か彼女と話をしようと立ち止まっていた。
「今日は、こんな所へどうしたの?」
「俺にとって、遠縁の娘に当たる少女がこの辺りに来ていると聞いた。それで、様子を見に来た」
適当にはぐらかすこともできたのに、すらすらと正直に目的を教えてしまう。
隠す必要の無いことではあるが、明らかにする必要のないことでもある。だのに自然と答えてしまうのは、秋乃の笑顔と声を含めた言葉遣いによるものだろうか。
「それじゃあ、きっとあの子のことね」
思いもよらぬ言葉に、一瞬、思考が止まる。
一瞬後、頭脳はフル回転を始めた。
「心当たりがあるのか?」
「ええ。さぁ、立ち話もなんですし、いらっしゃいな」
逸る気持ちがそのまま出ているナイブズの態度にも、秋乃は柔和で穏やかな態度を崩さず、ゆったりとした所作でナイブズを促した。
ナイブズは小さく息を吐いて心を落ち着かせ、秋乃と歩調を合わせて足を踏み出した。
どうやら目的地と定めた一軒家は秋乃の家だったらしく、秋乃が彼女の存在に心当たりがあったのも合点が行った。ということは、彼女が会いに行った“グランドマザー”なる存在は秋乃のことなのだろうか。
思い返せば、秋乃はあの日にカフェ・フロリアンの店長からも『グランマ』と呼ばれていた。しかし、店主はナイブズが“グランドマザー”に会うことにも大きな意味があると言っていた。あの店主がナイブズと秋乃が既知の間柄であることを知らないとは考えにくく、秋乃と再会したことに彼女と会うこと以上の意味があるとは思えなかった。
そんなささやかな疑問は、次第に消えて行った。
秋乃の家の門の前に、1人の少女が立っていた。
褐色の肌、金色の髪、紺碧の瞳、それらが個々に特徴的で、それでいて一つに調和した顔立ちも目を引く。しかし、重要なのは顔貌や身形ではなく、その存在。
この気配を、同胞の存在を、間違えるはずがない。
少女の姿を認めるや、先を歩いていた秋乃を追い抜かし、少女の前に立つ。
「君は……」
声を掛けようとして、それ以上声が出なかった。
頭に、胸に、心に、言葉では表し切れない無数の感情が湧き出て来て、何と言ったらいいのか分からず、何も言えずに立ち尽くしてしまう。
この状態を感無量と表すのだとは、この時のナイブズには思い至らなかった。
「あなたは、ミリオンズ・ナイブズ? どうして、こんな所に……」
ナイブズが言葉を発するよりも速く、少女が口を開いた。ナイブズが名を知らぬ少女が、ナイブズの名を知っていることは驚くに値しない。ナイブズは過去に、それだけのことをしでかしたのだ。
少女に名を呼ばれて、ナイブズの心は水を打ったように静まり返り、口は伝えるべき言葉を紡ぎ出す。
「君に会いに来た。君は、どうやら俺のことを知っているようだな」
「ええ。名前だけでなく、あなたが遠い砂の星でしたことも」
「……そうか」
警戒心も露わに告げられて、ナイブズは寂しげに、小さな声で頷いた。
この時のナイブズは、彼を知る人間の殆ど全員が驚くほどに感情を露わにしていた。
誰も自分を知らないまっさらな場所で初めて出会った、自分の過去を知る存在。しかも、ナイブズにとっては何よりも大切な同胞だ。
そんな相手だからこそ、ナイブズは自分の感情を声に、顔に、態度に、素直に表していた。
「あなたは、どうして私に会いに来たんですか?」
警戒心を隠さぬ少女からの問いに、ナイブズはすぐに答えられなかった。
同胞の少女の存在を知って、居ても立ってもいられなくなって、街中を探し回り、今こうして会いに来た。それだけのことだ、それだけのことだったはずなのだ。
しかし、答えられない。それは違うと、ナイブズ自身の無意識が囁いた。ただの衝動じゃない、この衝動には明白な理由や意味があるのだと。
ナイブズが、彼女に、今目の前にいる少女に、どうしても会いたかった理由。
「それは……」
自分自身の心を整理し、確かめながら、少しずつ口を動かす。
「ナイブズさん、アイーダちゃん、スイカが切れたわよ。お茶もあるわ」
すると、少女の後ろから秋乃の声が聞こえて、思わずそちらに視線を向ける。
言葉の内容ではなく、たったの一言、ナイブズの他に呼ばれた1つの名前に反応したのだ。が、傍から見ると、スイカとお茶に敏感に反応した食いしん坊のように見えなくも無かった。実際少女にそう思われてしまったのだが、ナイブズには知る由も無い。
ナイブズが少女と会話している間に秋乃は家の中に入っており、縁側から声を掛けていた。盆の上には、見たことも無い赤い果肉の大きな果実が切り分けられて2切れ乗っている。
「あっ、ナイブズさん。こんにちはー」
「ホントだ。どうしてグランマの家にナイブズさんまで?」
「でっかい偶然です」
その後ろから、ぞろぞろと見知った顔が現れる。灯里、藍華、アリスの3人組だ。
秋乃が当然のこととしてグランマと呼ばれていることを確認しながら、ナイブズは藍華からの問いに答える。
「秋乃とは以前、会った縁がある」
「アキノ?」
ナイブズの返事を聞いて、灯里が妙な所で首を傾げた。少女に会いに来たことも続けて告げようとして、ナイブズは口を閉じた。
まさか自分が記憶違いをしていたのかと考えると、その思考が纏まるよりも速く藍華からのツッコミが飛んで来た。
「グランマのお名前よ! あんた、ほんとに何も知らないのねー……」
「灯里先輩。会社の創業者であり大先輩でもある人の名前を知らないのは、流石にマズイと思いますよ」
藍華だけでなく、アリスも呆れ顔で灯里の無知を追及する。さりげなく少女の隣に立ち、その顔を横目に覗くと、少女も驚きに目を瞠っていた。
薄々感じていたが、どうやら秋乃はナイブズが思っている以上の有名人だったようだ。少なくとも、水先案内業の人間ならば知っていて当然というレベルの。
「そ、そうかな? じゃあ、今ちゃんと覚えないとっ。グランマ、お名前を教えて下さいっ!」
素直に自分の非を認めて、灯里は即座に秋乃に頭を下げて頼み込んだ。その様子が可笑しかったのか、ナイブズ以外のこの場にいる全員がそれぞれに笑みを浮かべた。
秋乃はお盆を置くと、ナイブズと少女を手招きする。折角だから一緒に、ということだろう。少女が歩き出したのを見計らって、ナイブズも歩調を合わせて秋乃の下へと向かう。
2人が来たのを見て、秋乃は紙と鉛筆を取り出して自分の名前を記した。
「私の名前は、天地秋乃。漢字で書くと、こうなるわね」
ナイブズも字で見るのは初めてとなる“あめつちあきの”という名前を再確認する。
「ほへー」
「天地と書いて“あめつち”ですか。珍しい苗字ですね」
「とても素敵なお名前です」
灯里と藍華とアリスは三者三様の反応を見せる。少女は何も言わず、神妙な顔で字を見詰めて何度か頷いている。どうも、ナイブズの存在が忘れ去られているようだ。
すると、アリスの言葉を聞いて、秋乃はにっこりと笑った。今まで見せた中で最も柔和で、嬉しそうな笑顔だった。
「ありがとう。グランマと呼ばれるようになってから、名前で呼ばれることも殆ど無くなってしまって。みんなに愛称で呼ばれるのもいいけど、やっぱり名前で呼ばれるのは嬉しいわ」
あまりにも嬉しそうに言うものだから、言葉の内容にあるような悲壮感とかは全く感じられない。恐らく本人も、グランマと呼ばれる事自体に不満は無いのだろう。
「正直、私は畏れ多すぎて名前でお呼びするのが憚れると申しますか……」
「名前があるなら、名前で呼ぶべきだろう」
謙遜したような藍華の言葉を、最後まで終わるのを待たずにナイブズが否定した。
人間が当たり前のように持っている名前が、通常、プラントには無い。
プラントは深層意識で思考を共有しているゲシュタルト生命のような性質があり、プラント間に於いて自他の区別というものは必要がない以前に存在しない。よって、固有の名称という概念はプラント内では生まれえず、精々人間が管理する為に付与する管理番号があるぐらいだ。
例外として固有の名前と自我を持つプラントも存在しているが、敢えて例には挙げまい。
自分は名前を持って名前で呼ばれているのに、同胞達は名前を持たずに番号や記号で呼ばれている。ある時にそんな場面に直面したナイブズの胸中には、筆舌に尽くせぬような不快感を覚えた。
その時以来、ナイブズは名前というものは単なる区別の為の記号以上の価値があるものだと考えていた。
そうでなければ、名前を得た時のあの男の喜びようにも説明がつかない。
「それでは、これから改めてよろしくお願いします、秋乃さん」
「こちらこそ、よろしくね。灯里ちゃん」
ナイブズの言葉を切っ掛けにしてか、灯里が朗らかに挨拶しながら秋乃の名を呼び、名を呼ばれた秋乃は嬉しそうに頷いて灯里の名を呼び返した。
それから、縁側に座るように促されて、ナイブズは少女と一緒にスイカというものを生まれて初めて食べた。かなり水分の多い果物だがそれでいて水っぽくも薄味でも無く、独特の甘みがある珍味だった。
▽
昼食を終えて一服してから、灯里達はネオ・ヴェネツィアへの帰り仕度を整えた。
どうやら予定よりも遅い帰りであるらしく、晃からの叱責を想像して藍華の表情はやや硬い。一方、灯里は秋乃と楽しげに別れの挨拶を交わし、アリスはまた会うことを約束して、とても満足げだった。
3人を見送ると、秋乃はナイブズと少女を手招きして、再び家へと迎え入れた。
今度は居間で茶を飲み、誰が何を言うでもなく、静かに時が過ぎて行く。
小一時間ほど経った頃に、秋乃が少女に話し掛けた。
「アイーダちゃんも、そろそろ行く?」
「はい。秋乃さん、本当にありがとうございました」
「いいのよ。私も、灯里ちゃんも、藍華ちゃんも、アリスちゃんも、楽しかったから」
少女は恭しく頭を下げて礼を述べ、秋乃は嫌味の無い笑みでにこやかに受け取った。
話を聞くに、少女はこれから出かけるらしい。自分も付いて行ってよいものかと考えた所へ、少女が声を掛けて来た。
「ナイブズさんも、一緒に来ますか?」
「それはいいわ。あの人も、きっと喜んでくれるわ」
「あの人?」
少女からの誘いに応じるよりも先に、秋乃が気になることを言った。
どうやら秋乃は少女の行く先――これから会いに行く相手のことを知っているようだ。それはいい、なんらおかしなことは無い。引っ掛かったのは、ナイブズが会いに行けばその相手が喜ぶということを、秋乃が半ば確信している様子なことだ。
少女も秋乃の言を否定せず、静かに首肯した。
「
「
鸚鵡のように、少女が口にしたのと殆ど同じ言葉を繰り返す。少女の言葉の意味するところが、まったく理解できなかった。
関係無いとは分かっていながらも、灯里達にグランマ――つまりグランドマザーと呼ばれていた秋乃を、つい見遣る。すると、秋乃は微笑みながら静かに口を動かした。
「私は、
秋乃から改めて告げられたグランドマザーの意味を、よく考える。
火星にとってのグランドマザーであり、ナイブズ達にとってのグランドマザーでもある。
「
店主の言葉が、不意に脳裏をよぎる。
瞬間、ナイブズの脳裏に火星開拓史という単語が閃き、一つの驚くべき仮説が導き出された。
あまりにも荒唐無稽な、しかしそれ以外には考えられない。
「まさか、君が会いに来たグランドマザーというのは――」
ナイブズが最後まで言い切る前に、少女が立ち上がった。
「行きましょう。行けば分かります。あなたとも、お婆様と一緒にお話したいんです。そうでなければ……上手く、話せないと思いますから」
まじまじと、少女の顔を見上げる。今まで気付かなかったが、不安と混乱がありありと浮かんでいた。それだけ、少女にとってナイブズは心の平穏を掻き乱す存在なのだろう。
さもありなんと、自らの過去を顧みて少女の心を慮って受け止める。
平和に生きようとする者達にとって、ナイブズは存在そのものが脅威に見えるだろうし、恐怖を感じるのもごく当然だ。
けど、それでも。今は、歩み寄ることをやめたくない。
「分かった。……その前に、君の名前を教えてくれるか?」
立つよりも座っている方が互いの目線が近いこともあり、ナイブズは座ったまま少女にそのようにお願いをした。それを聞いた少女は、怪訝というよりも、不思議そうな顔して聞き返した。
「秋乃さんが呼んだのを、聞いていましたよね?」
「君から教えてもらいたい」
即答。
ただの我が儘であることを自覚しているからこそ、強引なぐらい力強く求める。
少女は不思議そうな顔をしたまま、ナイブズの願いに応えた。
「私の名前は、アイーダです」
「俺も改めて名乗ろう。俺は、ミリオンズ・ナイブズだ」