※深夜のテンションでおかしくなってます。ご注意ください。
五五口径アサルトライフル『ヴェント』。
六一口径アサルトカノン『ガルム』。
二つの銃口が火を吹きながら銃弾が次々とラウラ目掛けて放たれていく。
しかし、流石というべきか、やはりというべきか。ラウラはそれらの攻撃を意図も簡単に回避していった。別段、聖の狙いが悪いというわけではない。むしろ、狙いは的確だ。だが、的確故に軍人として教育されてきたラウラにはその軌道が読まれてしまうわけだ。
「まぁ、そう簡単に当たってはくれないわよ、ね!」
聖は戦法を変えず、間合いを取りながら狙いを定め、乱射していく。幸いなことにどうやらラウラの方には聖と同じような遠距離武器はあの大きなレールカノンのみ。大きな機体に似合った威力と共に、それに反するかのような連射性能。しかし、その連射性も聖の銃に比べれば遅い。威力はあるものの、よけれないものではないため、聖の方も未だラウラの攻撃は受けていない。
(なるほど。確かにそこそこの実力はあるようだ)
ラウラは戦いの最中、聖を分析していた。以前、彼女がしたという模擬戦。その戦闘データ、そして日頃の彼女の成績から考えても、この実力は想定以上だ。専用機持ちならいざ知らず、ただのIS乗り、それもまともに動かして三ヶ月程度しか経っていない者の動きではない。
銃を撃つタイミング、射程距離の把握、そして状況判断能力。どれを取っても優秀だと言わざるを得ない。恐らく銃撃が彼女のスタイルなのだろう。そして、聖自身もそれを理解しているからこその対応能力だ。
「ならば、これはどうだ?」
瞬間、鋭利な刃が付いたワイヤーが聖目掛けて飛び出していく。その数は六。レールカノンしか遠距離の攻撃手段として考えてなかったであろう彼女にとっては大きな不意打ちのはず。その証拠に射出された瞬間、聖は目を大きく見開いていた。
しかし、それも一瞬のこと。殺気を放ちながら駆けながら襲いかかるワイヤーを、しかして聖はまるでダンスを踊るかのように縦横無尽と空中を舞う。
いくら追いかけても追いかけても追いつけない。苛立ちが募る中、レールカノンを放つものの、それすらギリギリのところで躱される。
そしてついに、というべきか。
ワイヤーの一本が聖の銃弾によって破壊された。
「なっ!?」
これには流石のラウラも驚愕する。
けれども、聖にとっては別段特殊なことではなかった。
何故なら。
「生憎ね。こっちは以前にもっと厄介な代物と戦ったのよ!!」
それはつまり、セシリアのブルーティアーズ。あのピット攻撃は今でも聖は苦い思い出である一方で、だからこその対応ができているのだと思う。
刃付きのワイヤーはラウラのIS本体と繋がっている。そこからどういう風に攻撃してくるかは大体予想ができるのだ。
そしてこの結果の大きなところはあのラウラが驚いたということ。
驚きとはつまるところ隙ができるというこであり、その隙を世良聖が見逃すはずはない。
両手の二丁を瞬時に収め、グレネードランチャーを出現させる。
「もらった!!」
そのまま放たれたグレネードはラウラめがけて一直線に射出。
距離、タイミング、どちらもこれ以上なく合っている一発。流石のラウラもこれを回避することは不可能。
……の、はずだったが。
「―――無駄だ」
言った瞬間、ラウラの右手が突き出された。
と同時にグレネードが空中で動きを止めた。
「――――っ!?」
グレネードはまるで見えない何かに捕まっているかのようにピクリとも動かない。よく見るとラウラの前方にまるでバリアのようなものが展開されていた。だが、バリアならばそもそも壁となってグレネードがその場で爆発するはずだ。にも関わらず、グレネードは静止しているのみ。
まるで動くことを忘れたかのように。
「このシュヴァルツェア・レーゲンの停止結界の前では、そのような攻撃は意味をなさん」
停止結界。その言葉で聖は理解した。
恐らくラウラが使っているのは
一方で納得できる部分もある。A.I.Cがあるからこそ、彼女はグレネードを避けようともしなかったわけだ。
「そう、だったら―――――」
言いながら、ボタンを押した瞬間、リヴァイブの翼部分に割れ目が生じる。そこから見えたのは十六門のミサイル口。
聖が仕様しているのは貸出用の訓練機。故に特殊な武器などはなく、技も存在しない。
ならば、だ。
それを付け加えればいい。
とは言っても、そう易々と特殊な武器などがあるはずもないので、必要のない部分を削除し、武器の容量を多くしした上で、通常の武器を色々とつぎ込んだのだ。
無論、それをやったのは知り合いのオタク仲間であり、頼れる友。
そして、これもその一つ。
『山嵐』。聖が簪に頼んで装備してもらった実験段階武装である。
「これならどう!!」
一斉射出。計十六発のミサイルがラウラ目掛けて一直線に向かっていく。
ラウラが使うA.I.Cは相手の動きを停止される能力。それは凄まじいが、しかし見る限りではかなりの集中力を使う代物のはずだ。その証拠にラウラは聖の銃弾を回避していた。停止させられるのなら、そもそも回避する必要はないはず。
結論。彼女は数の多い攻撃には停止結界は使えない。
故にこの攻撃は命中す―――――
「無駄だといったはずだ」
言葉と同時に起こったのは先程と同じ現象。
ラウラは迫り来る脅威を全く意に返さず、一歩を動かないまま両手を上げることのみで解決させた。
彼女の周りに展開しているA.I.Cのバリアが聖のミサイルをひとつ残らず静止させている。
「うそ、でしょ……」
「数が多ければ止められないと思ったか? 生憎だったな。この程度のミサイルと数なら、避けるまでもない」
ラウラの言葉に聖は苦虫を噛む表情を浮かべた。折角、簪が装備してくれた中でも最大の火力を誇っていたというのに。
「……やってくれるじゃない」
「そちらもな。まさかブレードを全て打ち落とすとは思わなかった」
それは紛うことなき事実だった。
ラウラは戦う直前まで世良聖を全く脅威とは思っていなかった。いや、彼女にとってみればこの学園の誰も彼も自分の実力よりも劣る。そして、それは当然だと想っている。何せ自分は軍人。しかも一年前には千冬から直々にISの指導を受け、今や隊長の座にいるのだから。
故についこの前、ISに乗り始めた素人同然の輩を脅威とみなすわけがない。いや、そもそも敵とすら認識するもの面倒だ、と考える程に。
だが、実際戦うとどうだ。データ以上の力を見せられ、挙句武器も一つ落とされている。
これはもう、否定できない。
「……認めよう。世良聖。確かに貴様には他の連中とは比べ物にならない実力がある。教官がお前に私の面倒を見るように言ったのも遺憾だが、納得はできる。
だが、その上で言おう―――貴様は私には勝てん」
「……、」
「そもそもにして貴様と私では実戦の数が圧倒的に違う。いや、それ以前にISの性能差が歴然だ。ただの訓練機で専用機に勝とうなどと、思い上がりも甚だしい。それは先程の攻撃で理解しただろう。貴様がどれだけ奮闘したところで、結果は変わらん。貴様は地を這い、私が天を舞う。これは絶対であり、覆すことなど不可能。だが、ここまで戦ったお前に敬意を表し、提案をしてやる。
――――――降伏しろ。そうすれば貴様が無様な姿を晒すことはなくなる」
「……、」
「私の目的は織斑一夏の排除。そして教官に認めてもらい、その上で教官をドイツに連れ戻すことだ。本来ならこんな茶番に付き合っている時間などない。一刻も早く目的を遂行するためにも、さっさと負けを認めろ」
高慢を形にしたような言葉。相変わらずな上から目線。
しかし、ラウラが言っていることに間違っていない部分も確かにあった。彼女と聖では実戦経験が違う。そこは流石千冬に直接指導してもらったから、という点が大きいだろう。実際、銃撃戦においても正直なところラウラの方が一枚上手だ。
さらにいえば、ISの性能差。ただでさえ基本的な出力や能力で差があるというのに、A.I.Cなどという厄介極まりない代物まである始末。
それらのことから考えても聖の勝算は限りなく低く、ゼロに近い状況だ。これ以上やったところで無様な姿を晒すだけなのかもしれない。それならば、いっそのことここで負けを認めた方が傷つかず、会場の全員に自分のみっともない姿を見られずに済むかもしれない。
以上のことから考えて、聖が出す答えは無論―――。
「言いたいことはそれだけ? なら、はっきり言わせてもらうわ……お断りよ」
はっきりと、これ以上ないくらい大きく言い放った。
「貴様……」
鋭い眼光でこちらを睨みつけてくるラウラ。
しかし、聖はそんな彼女を見て不敵に笑ってみせた。
ああ、そうだとも。そんな威嚇に何の恐怖も感じない。
「さっきから言いたい放題言ってるけど、ようはあれでしょ? わたしに負けるのが怖いんでしょう?」
「何をふざけたことを……」
「ええそうね。わたしが勝つ確率はかなり低いわ。けど、絶対じゃないとも想っている。もしそうなったら、それはマズイわよね。何せ、大好きな織斑先生に無様な姿を晒すことになるんだから」
「妄想も大概にしろ。貴様が私に勝つなど―――」
「有り得ない? だったら言わせてもらうわよ……織斑先生があんたと一緒にドイツに帰ることの方が絶対に有り得ないわよ」
その言葉にラウラは目を大きく開いた。
拳を握る彼女から明らかな怒りが感じられる。
だが、それでも聖は口を閉じない。
「織斑一夏を排除する? それで教官に認めてもらう? 馬鹿じゃないの? 何で織斑一夏を排除することが認めてもらうことにつながるのよ。二連覇を逃したから? はっ、何よそれ。そんなこと、あの人が気にしてるとでも思ってるわけ? だとしたら元教え子として失格よ、あんた」
「何を……」
「織斑先生は言ってたわ。自分は教師失格だって。他人が何を考えているのかは分かるけど、何を想っているのか理解できない。だから自分は三流なんだって。でもこうも言ったわ。この世界を作った一人として、その責任を取るためにここにいるって」
それがどういう意味なのか、どういう気持ちなのか、聖にも分からない。何せ聖は千冬ではないのだから。
けれど、それでも。
自分達の教師……織斑千冬が前を目指して歩もうとしているのは理解できていた。
「織斑先生は教師として、ここで頑張ろうとしている。努力をしている。不器用でちょっと怖いところもあるけど、それでもあの人は私の、私達の先生なのよ。それを、昔ちょっと教えてもらったからって勝手に人の人生決めようとしてんじゃないわよ!! あんたにそんな権限はないのよ!! あの人の邪魔をしようとしてるのはどっちだ!!」
織斑千冬は言った。自分は未熟者なのだと。
そうなのかもしれない。千冬とて人間であり、まだ二十そこそこの新米教師と同じくらいだ。それを世間が世界最強のIS乗りだの『ブリュンヒルデ』だのと言って期待を押し付けているのだ。今のラウラのように。
別段、期待するな、とは言わない。だが、盲信するのは千冬にとって重石になるだけなのだ。
しかし、それを目の前の少女は分かっていない。
それが聖にはどうしようもなく腹が立って仕方がなかった。
「き、さま……言わせておけば……!!」
「この際だからはっきり言っとくわよ。織斑千冬は、あんたの所有物じゃないのよ。覚えておきなさい!!」
それがきっかけだったのだろう。
ラウラが聖目掛けて突っ込んでいく。その両手にはプラズマを収縮させ形づけられた刀―――プラズマ手刀が殺気を纏っていた。
聖の武器は銃がメイン。中距離、遠距離ならともかく近距離の戦闘には弱いと判断したのだろう。実際、銃を持っていたとしても接近戦は聖が不得意とする状況だ。
故に対応するのは、近づかれる前に攻撃をすること。
聖は手に持っていたグレネードランチャーを再びラウラ目掛けて放った。
「無駄だと何度言わせればわかる!!」
接近しながら再びA.I.Cでグレネードを止めたラウラ。
だが。
「―――やっぱり止めるわよね、そこは」
聖がそんなことを口走った瞬間。
ラウラの視界を覆い隠す程の凄まじい閃光が、グレネードから発される。
「これ、は……!?」
閃光によって相手の行動を封じるそれこそがグレネードに仕込まれていた代物だった。
A.I.Cは慣性を止めるものだが、発光を止める能力ではない。
本来、昼間ならばその威力を半減させてしまうところだが、ラウラは閃光を間近で喰らってしまっている。それでも、効果は数秒程度だろうが、それで構わない。
一瞬の動きさえ止められれば、十分だ。
何故なら。
それは、一瞬で距離を詰める技なのだから。
次の瞬間、超高速状態で聖はラウラに接近した。
「なっ……『
「当然よ!! 公式戦では、今始めて使ったんだから!!」
言いながら、聖は放つ。
しかし、それは銃弾でも刃でも、ましてや衝撃砲などでない。
己の、小さな、けれども確固たる意思が詰まった拳をラウラの機体に叩き込んだ。
「がっ……!?」
これには流石のラウラも予想外だっただろう。何せ拳の攻撃などすれば自分のシールドエネルギーを消費する代物。そんな非効率的な攻撃など誰もするはずない。
そう、思い込んでいたのだから。
そして、思い込みというのは戦闘において致命的な欠点となる。
聖の一擊によって数メートル程吹っ飛んだラウラだったが、直ぐに体勢を立て直し、聖へと視線を向けた。
憤怒の表情を浮かべながら。
「よ、くも……よくもよくもよくもよくも……!!」
「怒ってるところ悪いけど、一つ質問よ……ミサイルの自爆スイッチって知ってる?」
その言葉にラウラは眉をひそめた。
無論、知っている。ミサイルを発射した際、もしも軌道から外れたり、他の場所へと向かった際に途中で爆発させるために自爆するように設定されてあるのだ。
だが、それが一体どうしたというのだ?
「何が言いたい……」
「別に。ただ……自分の足元はよく確認しておくことね」
言われた瞬間、カツン、とラウラの脚に何かがぶつかった。
そして、思い出したかのように見てみるとそこには先程彼女が停止させたミサイルが。それも一発ではなく、十六発全て。
ミサイルと先程の聖の言葉。
それらから結論されること、それは―――。
「き、さま――――!?」
「私の友達の力、よく味わいなさい」
同時。
十六発のミサイル爆発がラウラの体を襲った。
*
ラウラ・ボーデヴィッヒ。
彼女がこの名前を与えられたのは戦うために通常の、人としての名前が必要と判断されたからだ。
本来、最初に付けられた名。それは『遺伝子強化試験体C-0037』。
人工的な合成によって。『ある人間』の遺伝子を操作から生まれた、軍人であり、兵器。
そのため、ありとあらゆる戦闘技術、知識、操縦を覚えこまされた。そして、ラウラ・ボーデヴィッヒという存在は最高の軍人という名の兵器として着々と育てられていった。
だが、ISの登場がその道を瓦解させていった。
『ヴォーダン・オージェ』。IS適合性能を向上するための処置。擬似ハイパーセンサーとも呼ぶべきそれは、脳への視覚伝達の爆発的な向上、それと超高速先頭状況での動体反射の強化を目的とされ、肉眼へのナノマシン移植処置のことであり、ラウラはそれを受け入れた。
だが―――結果はあまりにも残酷なものだった。
IS適合は向上どころか悪化し、左目は金色に変色、制御もままならない状態になった。
この事故……いや、手術による失敗によってラウラは出来損ないの烙印を押された。いくら軍人として優秀であっても、彼女が求められたのはIS操縦者としての性能。
故に彼女が闇の底の底、そのまた底に落ちていくには時間がかからなかった。
そんな彼女が初めて目にした光。
それが織斑千冬だった。
「私の名は織斑千冬。今日から貴様らの教官となった者だ」
その日のことをラウラはよく覚えている。
雲が一つもない、快晴である一方で、彼女の中は曇天そのものだった。
「貴様がラウラ・ボーデヴィッヒか」
「……はい」
「ここ最近の成績は芳しくないそうだな。だが、なに心配するな。一ヶ月で部隊内最強の地位へと戻れるだろうさ。なにせ、私が教えるのだからな」
その言葉を信じていたかと言われれば、答えは否だ。自分のことは自分がよくわかっている。どれだけ努力してももはや自分は手遅れなのだ、と。
けれど、ラウラは千冬の訓練をこなしていく内に徐々にではあるが、実力が向上していることに気がついていた。以前は遅かった反応速度も誰よりも早くなり、操作も誰よりも巧くなった。
結果、IS専門へと変わった部隊の中で、彼女は最強の座に君臨した。
けれど、正直なところ、彼女にとってそれは最早どうでもいよかった。
それよりもずっと、もっと、強烈に、深く―――織斑千冬という存在に憧れていたのだ。
―――ああ、こうなりたい。この人のように強くなりたい。
それからというもの、ラウラは千冬の傍にいることが多くなった。ISのことを話すことが多かったが、彼女にとってみれば千冬の傍にいること、それだけで十分だった。
そしてある日、ラウラは千冬に訪ねた。
『どうしてそこまで強いのですか? どうしたら強くなれますか?』
私の問いに答えた教官の顔は、どこか嬉しそうで、優しげだった。そんな表情は、今までに見たことがなかった。
『私には弟がいる』
『弟……ですか』
『ああ。あいつを見ていると、分かるときがある。強さとはどういうものなのか、とな。そしてこうも思った。何があっても、こいつを守りたい、と』
『……よく、分かりません』
『ああ。だろうな。私も、それを意識したのはある人の言葉がきっかけだ』
『ある人?』
『私が中学生の時だ。修学旅行先でちょっと面倒事に巻き込まれてな。そこで出会った大人にこう言われた。「君にとって、弟とはどういう存在か、きちんと考えてみるといい」とな。そして、私は自覚した。あいつは、私にとってかけがえのない存在だと』
『……すみません、教官。私には、やはり……」
『分かっている。今はそれでいいさ』
そうして、千冬はラウラの頭を撫でた。
けれど、彼女は心の中で。
(違う……こんなのは、違う……)
こんなのは貴方ではない。優しく、暖かく、そして可憐な姿など、織斑千冬ではない。
織斑千冬という人間は、誰よりも強く、誰よりも凛々しく、そして誰よりも孤高でなければならない。何故なら、それが自分が求めた理想の彼女なのだから。
故に、だから、そのために。
ラウラは織斑一夏を許さない。
必ず排除すると決めたのだ。
だというのに。
だというのに。
だというのに……!!
ラウラは織斑一夏に対峙する前に敗北させられそうになっている。
こんなはずではなかった。
たかが学生。たかが訓練機。たかが素人。
相手はどうみても格下。戦術的なことから考えてもラウラが負けることなど有り得なかった。
だというのに、彼女は今、危機に陥っている。
自らが倒そうとしている男の前で。そして、自らが尊敬している教官の前で。
……嫌だ。
……嫌だ。嫌だ。嫌だ。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。
負けたくない。敗けたくない。マケタクナイ!!
こんなところで、こんな場所で、こんな場面で。
自分は負けるわけにはいかないのだ!!
(力が、欲しい)
瞬間、ドクンッ、と何かがラウラの奥底で蠢いた。
『―――願うか?』
何かがラウラの中で囁く。
『―――欲するか?』
それは甘やかな、けれども危険な言葉。
『―――汝、自らの変革を望むか?』
けれど、別にそんなことはどうでもいい。
『―――より強き力を欲するか?』
この状況を打破できるのならば。
力があるのなら、それを得られるのなら、絶対的な勝利を得られるのなら。
私という存在を、引換にしてでも。
「よこせ―――比類なき力を……唯一無二の絶対を……私によこせ!!」
瞬間、彼女の中で感情のない声が響き渡る。
Damage level……D.
これはきっと間違いなのだろう。
Mind Condition……Uplift.
これはきっと選択を誤っているのだろう。
Certification……Clear.
けれども、それがどうした。
《Valkyrie Trace System》......boot.
例えこれが間違いであっても、誤りであっても私は――――――
『ふむ、これは少々、厄介なことになってるな』
System/error.
error.error.error.
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error.error.error.error.error.error.error.error.error.error.error.error.
error.error.error.error.error.error.error.error.error.error.error.error.
error.error.error.error.error.error.error.error.error.error.error.error.
error.error.error.error.error.error.error.error.error.error.error.error.
『喧しい』
瞬間、女の声と共に警報が一気に鳴り止む。
『これでよし……さて、早速で悪いが、少々体を貸してもらうとしよう。何、心配するな。お前の願いは聞き届けた。なるべくそれに添う形にはするさ』
意味不明。理解不能。
何が何だか分からない。
先程のこともそうだが、唐突に現れたこの女は一体……?
「き、さまは……一体……何者だ……」
『ふむ……そうだな。初対面の相手に名乗らないのも礼儀をかくというものだ。では、名乗らせてもらおう』
そうして、女はこんな状況かだというのに全く動じず自己紹介をし始めた。
『私の名はクリームヒルト・レーベンシュタイン。
知った者からはヘルヘイムと呼ばれている者だ』
さぁ、少年少女よ、再び覚悟せよ。
『死神』が送る、試練の時間だ。
今回は色々と言いたいことがあるでしょう。
聖の戦い方とか、最後に出てきた人とか……。
それも含めて感想で訊きます。なのであとがきは少なめで。
かかってこいや!!(訳:すみません。内容的にはこういうのがやりたかったんで、色々意見があると思いますので、それは感想にお願いします。
でもメスゴリラ出したことは後悔してません!!