旋風と雪風   作:あすは我が身

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真実と願い

「居ますね、屋敷の東側に一人」

 

「ヤマトは此処から相手の存在を確認できるのか?」

屋敷まで200メイル、バッソには確認できないが風で探索していた大和には気配を巧妙に隠すメイジの存在が確認できていた。

 

「えぇ、気配を消すのがうまいので、ココまで来てやっと分った感じですが」

 

「色々と謎が多いなヤマトは…」

出合ってから2日。

名前で呼んでもらえる程には信用を得ていた。

 

「予定通り放置でいいですか?」

 

「あぁ、始末すると返って怪しまれる」

 

小声で言葉を交わし屋敷へと向かう。

 

屋敷に近づくと初老の男性が門の前で迎えてくれた。

 

「いらっしゃいませ、バッソ様。

御付の騎士様は御初かと存じます。

私、当屋敷の執事を勤めさせて頂いております。

ベルスランと申します」

 

「東薔薇騎士団所属、カルロ・ヘリオノールと申します」

先の戦闘で命を落とした騎士の名前を伝える。

バッソがベルスランに目配せをする。

 

「御付の方はお一人ですか?」

 

「此方へ来る途中で山賊に襲われ、私たち2人しか生き残れなかったのだ」

 

「左様でございますか、それは大変でございました」

数秒目を閉じ黙祷を捧げる。

 

「ささ、シャルロット様がお待ちです。お入り下さい」

 

 

 

"コンコン"

「お嬢様、バッソ様がお見えです」

軽くノックし声をかけるが中からの反応は無い。

10秒ほどの時間を開け扉を開ける。

 

書斎のような部屋に大量の本が積みあがっていた。

 

「失礼します。シャルロット様、バッソ様がお見えです」

 

「…」

 

「此方へおかけになってお待ち下さい」

そういうとベルスランは部屋から出ていった。

 

「シャルロット様、お元気そうで安心いたしました」

 

「なに?」

 

窓側の椅子に腰掛け、本を読んでいたシャルロットは本から目を離すことなく一言だけ言葉を発した。

シャルロットは身長140サントほどの可愛い少女で、少し釣り上がった大きな蒼い瞳で大きな眼鏡を掛けている。髪も蒼くショートカット、利発そうな顔で感情を消している為大人びた表情だ。

 

「騎士団より仕事を仰せつかって参りました」

苦い表情で用件を伝え手紙をシャルロットへと渡す。

 

「そう」

またも一言だけ発し受け取った手紙に素早く目を通す。

 

ベルスランがティーセットをもって部屋へと入ると徐にバッソが詠唱する。

 

周囲に妙な力が働く。

「音を消しました。ココからは内緒の話ということで」

ベルスランと大和が頷く。シャルロットは相変わらず本に目を落としており何の反応もなかった。

 

「まず、ヤマトの話を聞きたい」

バッソの言葉にシャルロット以外の視線が集まる。

 

「では、シャルロット様これを受け取ってください」

シャルルから預かったブローチをシャルロットの前に差し出す。

 

「「「!!!」」」

今まで無反応だったシャルロットだけではく、バッソ、ベルスランも目を見開きブローチを凝視する。

 

奪い取るように手にしたブローチをシャルロットは涙を流しながら抱きかかえた。

 

「失礼ですが、ヘリオノール様は之をどちらで手に入れられたのですか?」

 

「あ、すみません先ほどは偽名を使わせていただきました。

私はヤマト・クサナギと言います。騎士団の人間ではありません」

一拍置いて、

「このブローチはシャルル様本人よりシャルロット様へお渡しするようにと依頼を受けたものです。依頼を受けた際に依頼料の換わりにとこの指輪を頂きました」

 

「!!!」

「シャルル様本人から? 何時!どこで!」

ベルスランが叫ぶように問い、泣いていたシャルロットと共にバッソまでもが食い入るように大和を見つめる。

 

「まず、聞いていただきたい事があります」

落ち着かせようと数秒の時間を開ける。

 

「私はこの世界の人間ではありません。シャルル様の魔法によってこの世界へと召還されました。残念ながらシャルル様は毒を受けていた為、直ぐにお亡くなりになられましたが、亡くなる前に私に依頼をしたのです」

 

シャルルの死亡を伝えるとシャルロットは泣き崩れ、ベルスランとバッソは沈痛な表情でうな垂れた。

 

「とても信じられるような話ではないが、ココに来るまでに不思議な力を使っていたのは異世界の魔法なのか?」

沈黙を破りバッソが問いかけてくる。

 

「えぇ、私は風術師。風の精霊を使役することが出来ます。此方で言う先住魔法と同じです」

 

「先住魔法を使えると!?」

 

「えぇ此方の世界では珍しい物のようですが…

私の居た世界では極一部ではありますが、精霊術を使う人間が存在しました。」

 

「それで、妖精を友人といったのか…」

 

「ある意味では私とヤマトは仲間なの♪」

バッソの言葉にセラが反応する。

 

「お父様を襲った相手は? ジョゼフなのでしょ!?」

泣き崩れていたシャルロットは厳しい目を大和へと向け胸にしがみ付く。

 

「襲った相手はわかりません。召還されて直ぐのことで…相手を殺してしまいましたので。シャルル様は私の手で埋葬しました」

大和の言葉を聞いて、大和の胸に顔を埋め泣き続ける。

 

「ヤマトの話は分った。いや正直信じられないが妖精を友人と言い、不思議な魔法を使うことだけでも信じなければならないと思う」

バッソの言葉にベルスランも頷く。

 

「ヤマト、之からどうするのだ?」

 

「…特に決めてはいません。元の世界に帰りたいとも考えていませんし、この世界でやりたい事を探そうかと思います」

 

「…ヤマト、私たちに協力して貰えないだろうか?」

 

「協力と言うと?」

 

「私の肩書きはガリア東薔薇騎士団の花壇騎士であるのだが、今でもシャルル様に忠誠を誓っている。シャルル様亡き後はシャルロット様への忠誠を誓ったのだ。表面上はジュセフに忠誠を誓っているように見せているが、何時かはジョセフ王権を倒すことを目的に仲間を増やしてるのだ」

一度紅茶を口にし再度口を開く。

 

「ヤマトにはシャルロット様と婦人を他国へ連れ出してもらいたい。但し、ご婦人の病気が治ってから出ないとシャルロット様はガリアから動かないと言い張っているのだ。だから、まずはシャルロット様と婦人を匿える場所を探して欲しい」

 

「………」

シャルロットの存在を胸で感じ、大和は過去を思い出していた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

大和は古くから風術師として東京に存在する『草薙家』の長男として生まれた。

風術師としての力量は平凡で跡取りとして教育を受けていたが両親、親族からの期待は8歳になる頃には落胆へと変わっていた。

跡取りとしてしか見てもらえず、両親からの愛情を感じたことはなかった。

そんな中、二つ下の妹『遥』だけが大和にとっての家族だった。

風術師として大和以上の才能を見せ両親からの期待も高かった。

そんな遥は大和にとても懐いており、見かければ後を付いてまわることがよくあったのだ。

そして、大和が14歳になって直ぐ、土門家が草薙家を襲うという事件が起こった。

土門家は土術師の名門で草薙家とは仕事を通してぶつかる事も多く、事あるごとに衝突していたのだ。

正面から遣り合えば草薙家がまけることなどありえなかった。

だが、草薙家のなかに裏切った一派が存在し、草薙家は1200年の歴史を途絶えることとなった。

この事件の時、仕事で家を離れていた者が数名存在した。その中に大和も含まれたのだ。

しかし、妹の遥は両親と共に殺されてしまった。

その事実を知った大和は普段の温和な性格をかなぐり捨て、土門家への復讐を開始する。

単純に威力という面では劣るものの、暗殺という手法で土門家の当主、重臣を3ヶ月という期間で亡き者とした。実質的に家を支える重鎮が居なくなった事で、土門家の歴史も幕を閉じたのだった。

目的を失った大和は抜け殻のように行き続け今に至る。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

(遥と同じくらいか…口数が少ないのは心を閉ざしているからだろうな。

感情が壊れていないことはこの泣き顔で確信できる…タスケタイ)

妹と被ったというのも少なからずあった。だが助けたいと思う気持ちは本当だった。

 

「分りました。微力ながらお手伝いさせていただきます」

決心した大和は真っ直ぐにバッソの瞳を見つめる。

 

「恩に着る。匿う場所はヤマトに任せる。それと之は足しにしてくれ」

懐から袋を取り出すと大和へ差し出す。

 

受け取った大和は中身を確認する。300エキューが入っていた。

今後、どのように匿う場所を探せばいいのか分らず、手持ちも少なかったため、遠慮なく頂くこととした。

 

「コレをお返しします」

シャルルから受け取った指輪をシャルロットへと差し出す。

 

「…お父様が貴方にお渡ししたものだから、受け取れない」

瞳を潤ませながらはっきりとした断りを述べる。

 

「大事な物だと分ります。私が持っていても価値はありませんが、

シャルロット様には思い出のある大切なものでしょう?」

 

「…何時かその指輪に相応しくなれた時に返してもらう。

その時までヤマトに持っていて貰いたい」

 

言葉の意味が良く分らなかったが、シャルロットの覚悟が伝わり預かることを了承する。

「分りました。その時まで大切にお預かりしておきます」

 

泣き止んだばかりのシャルロットが少しだけ笑ったような気がした。

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