旋風と雪風   作:あすは我が身

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第2章~学院編~
再会と心の傷


"ガタッゴゴッガッ"

「痔になるぞ! 街道整備するか、サスペンション効かせないと長距離の馬車移動は地獄だな」

 

「さすぺんしょん? なにそれ?」

 

「あぁ、バネをって、バネがわからないよな…

難しいな…要は揺れを抑える装置だよ」

 

学院へ向かう道中、大和の肩で寛ぐセラは良いが畦道のような街道でサスペンションのような気の利いたもの物もない馬車では大和もダウンしていた。

 

「あ! 馬車の中で浮かんでたらいいんじゃないか?」

空気を纏った大和は馬車の中で在りながらフワフワと宙に浮いてみた。

 

「痔の心配はないけど…精霊の無駄使いのようで気が引けるな」

暫く宙に浮いていた大和だが力の無駄使いにアホらしくなってしまい椅子に座りなおした。

 

「ヤマト様、学院が見えてきました。後10分程で到着できます」

 

「わかった、ありがとう」

 

「ねね、入学式って明日だっけ? 今日は何をするの?」

御者からの声で降りる準備をしているとセラが話しかけてくる。

 

「部屋に荷物を運びこんで、後は特別な予定はないよ。」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「やっと着いたか。ココがトリステイン魔法学院ね」

馬車を降り風で探索を行う。

(流石に力のあるメイジが数名いるな。ん?なんだこれは!)

 

直ぐ近くに桁違いの魔力を感じ、そちらを凝視する。

「え?」

 

「なに、どうしたの?」

 

気の抜けた声を上げる大和をセラは不審げに見つめる。

 

「いや、なんでもない」

学院内に感じる魔力とは桁違いに濃い魔力を発していたのはピンク色の髪の美少女だったのだ。

(訳がわからないが、要注意人物その1っと。

お? あの禿げてる人は教師かな?結構強いな。

ん? 今度はこっちの方か…ら…ってこの感じはシャルロット?

でも前より強くなってるな。)

 

蒼いショートの髪に140サントほどの身長。

少し釣り上った蒼い瞳に赤い縁取りのメガネ。

(見た目は全く変わってないな…ってか、成長してない?)

 

「えーっとタバサ?」

バッソからの手紙に『タバサ』と呼ぶように書かれていた事を思い出す。

 

「…だれ?」

 

「……」

 

「………」

 

(本気で覚えてないな…ちょっと泣きそう)

『泣きそう』ではなく薄っすらと涙を湛えた瞳で真っ直ぐに見返す。

 

「大和です。お忘れですか? シャルロット様」

最後の一言は小声で話す。

 

「そう」

 

「…」

(前会った時より心を閉ざしてる。重傷だな)

 

「これから3年間よろしくお願いします。ミス・タバサ」

 

「ん」

 

興味無さそうに宛がわれた女子寮へと入っていく。

 

(結局会話は成立せず。話してくれた言葉は5文字。

ココは抱き合って感動の再会じゃないの?

まぁ、それほどの『傷』ってことだろうな)

 

自分の荷物を運び込み、ある程度整理しているとセラが話しかけてくる。

「ねぇ。シャルロットってなんであんなに暗いのかな?」

 

「俺にも経験があるけど、余裕がないんだよ。

必ず成し遂げなければならないと思い込んだことを達成する為に不要なことは全て棄てる。

そうしないと叶えられないと思い込むんだ。

シャルロットの場合、父親の仇討と母親の病気を治すという目標を掲げてる。

この二つは今のところ相反することだから余計に空回りしてるんだと思う」

 

「なんで相反することなの?」

 

父親の仇討をすると、母親の病気を治す手掛かりが無くなっちゃうんだよ。

だから順番として母親の病気が治らなきゃ仇討は出来ない」

 

世間一般の常識人を謳う者は『仇討なんて意味がない』と言う。

だが、『仇討』を決めた者は頭ではなく心が止まらないのだ。

大和自身が『仇討』の経験者であるからその事は理解できる。

しかし、今のシャルロットを見て『仇討』を諦めさせたいと思った。

この2年間殆ど笑うことがなかったのではないかと思う。

だから、これから沢山笑ってほしい。笑顔を見せてほしい。

切実にそう願った。

 

 

その日の晩。

 

「早速お見えですか」

学院内に昼間は感じることのなかった反応を捉える。

気配を殺し女子寮へと向かっていることが分かった。

 

更に捜索範囲を広げると森の中に二人の反応を感じることが出来た。

 

「何が来たの?」

 

「刺客と思われる反応が3つ。

うち一つが女子寮に向かってる。

後の二つは森の中で待ち伏せかな?」

 

窓から飛び出し、女子寮に近づく刺客に風を放つ。

風が相手を切り裂く前に大きく飛びずさった。

 

「こんな時間に何の用でしょうか?」

 

大和に見つかったことで、気配を消すことを止め殺気を放ってくる。

 

「お答えできませんか?」

 

返事の変わりにナイフが飛ぶが大和に届く前に風で弾き飛ばす。

 

不利を悟った刺客は仲間の下へと逃げ込むように飛びずさった。

 

「ヤマト~なんで逃がしたの?」

 

「逃がしたわけじゃないよ。

ココで争ったら面倒くさいことになるからね。

他の二人と一緒に外で始末つけたほうが楽だから。

それと、セラは一応シャルロットに付いてて」

 

刺客の後を追って森へ向かう。

気配も姿も消さず近づく。

 

火の玉2つと風の塊が襲ってくるが、一気に加速して刺客の背後へと回りこむ。

 

「遊んではあげない。

諦めるまで何度でも消してあげるよ」

 

集めた風を一気に開放し、新たに放たれた魔法を消し去る。

圧倒的な風の精霊により勢いは衰えることなく刺客を襲った。

全身から血を噴出しながら3人の刺客は絶命する。

 

「やぁ。散歩かな?」

 

「…」

 

背後からシャルロットが近づいてくる。

戦闘が始まった頃から此方を伺っているのは確認していた。

 

「不審者が多いみたいだから、気をつけないと」

 

「…なぜ?」

 

「なぜって?」

 

「私を狙ってきた刺客をなぜ?」

 

「う~ん。我が儘かな」

 

「?」

 

「シャルロットを狙ってきた刺客を倒したかったから倒した。

これって我が儘だからってことでいいんじゃないかな?」

 

「そう…でも余計なことはしないで」

 

「だから、我が儘なんだって。

『するな』と言われても止める気はないから我が儘」

 

「…」

 

「一つ質問。

なぜ一人で背負い込む?」

 

「…一人でできるから」

 

「一人より二人。

仲間が居れば目的を達成する可能性が上がると思うけど?」

 

「足手まとい」

 

「…違うだろ?

他の人を巻き込みたくないだけだろ。

自分が行おうとしてることが危険だから」

 

「…私の何が分かるの?」

 

「同じだから」

 

「?」

 

「俺も家族を殺されて復讐したんだ。

誰も信用せず、一人で生きてきた。

前の世界では生きる意味をなくしていたんだ。

でもシャルルに呼ばれ、シャルロットやセラと出会って、

俺にも出来ることがあるんだと感じた。

だから、シャルロットを手伝わせて欲しい。

一人で何でも背負い込むな。

俺だけは何があってもシャルロットの味方だ。

俺を頼って欲しい」

 

「…っ」

 

徐々に表情を崩し、ついに泣き出したシャルロットは大和の胸に縋り付き声を上げて泣き出した。

 

「一人はきついよ。

何より寂しいよ。

よく今までがんばったね」

 

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

何時までも泣き止むことのないシャルロットと頭を撫でる大和を静かに双月が照らしていた。

 

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