旋風と雪風   作:あすは我が身

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舞踏会とパーティー

入学式当日

式も終わり緊張から解放された生徒達はそれぞれ午後の時間を過ごしていた。

 

大和はセラと一緒に広場の陰で休んでいた。

シャルロットが近寄り、無言で横に座るとそのまま読書を始める。

 

「…」

 

「タバサ? 挨拶くらいないの?」

 

「こんにちは」

 

セラが声をかけるとシャルロットは顔を向けて挨拶をする。

しかし、すぐに本に目を落とし読書を再開する。

 

「こんにちはタバサ。良い天気だね~」

 

「うん」

 

「何の本を読んでるの?」

 

「これ」

読んでいた本を大和に見せる。

表紙には『イーヴァルディの勇者』と書かれていた。

 

「今度俺にも貸してくれるかな?」

 

「いい」

そう言って読んでいた本を渡してくる。

 

「いや今度でいいよ」

 

「いい、何度も読んでる」

 

「そっか、じゃぁ遠慮無く借りるね。ありがとう」

 

御礼を言って本を受け取る。

なぜかシャルロットは顔を赤らめて俯いた。

 

違う本を取り出したシャルロットと一緒に読書を始める。

セラはいつの間にか大和の肩で眠っていた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ウルの月ティワズの週ダエグ曜日。

昼食も終わり、何時ものように木陰でシャルロットと読書をしていた。

 

「…ん?」

一匹の梟が直ぐ近くに舞い降りた。

シャルロットが近寄り足に巻かれていた手紙を取り目を通す。

 

「命令書?」

 

「そう、今から行ってくる」

 

「俺もついて行って良いかな?」

 

「私もいく~♪」

 

「でも…」

 

「この前も言ったけど、力になりたいんだ」

 

「…わかった」

 

オールド・オスマンに話を通し3人でガリアとの国境へ向かう。

シャルロットと大和の事情を学院長であるオールド・オスマンには話しており、直ぐに許可が下りた。

 

「馬を準備しなくても本当によかったの?」

 

「あぁ、明日の舞踏会までには帰って来たいしね。

シャルロット1人なら俺が抱えて飛べば何とかなるから」

 

「…っ」

 

シャルロットは顔を赤くし俯いてしまった。

 

学院から十分に距離を取ってから、シャルロットを抱え上げる。

お姫様抱っこをされたシャルロットは先ほど以上に顔を赤くし、大和の顔を見ないように視線を外す。

 

「ごめん、嫌だったかな。背負うほうが良いかな?」

 

「いい」

 

視線を合わさないまま答えるシャルロットに笑顔を向け風を纏って飛び上がる。

 

「んーーー」

 

「ん? 恐い? 少し速度落とそうか?」

 

「いい」

 

「そう? じゃーもう少し飛ばそっか」

 

「うん」

 

真っ直ぐ視線を向ける大和の横顔をシャルロットは微笑を浮かべ盗み視ていた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「なんだって?」

 

「オーク鬼の討伐」

 

城から出てきたシャルロットは淡々と命令内容を語った。

リュティスとトリスタニアのちょうど中間あたりに位置する森でオーク鬼の被害が出ていると言う事だった。数は20匹程で殲滅が今回の任務だった。

 

「取り敢えず宿を取って、明日の朝一番で向かうってことでいいかな?」

 

「いい」

 

「やったー! ごはん、ごっはん♪」

 

 

翌日の早朝、深い森の前に来ていた。

そんなに大きな森ではないが、豊富な山菜と狩りに適した小型の野生動物を目的に人が入っていくことが多い森だった。

 

「あぁー報告より多いな。

35匹かな? 1匹桁違いに魔力の強いのが居るのは気のせいかな?」

 

「群れのリーダーかも、トール・ロード」

 

「ふむ。まぁーどうにでもなるかな」

 

群れを指認出来る場所へ移動し作戦を練る。

 

「私にやらせて」

 

「シャルロットならやれるだろうけど、俺は手伝いたいんだけど」

 

「私は今より強くなりたい。だから…」

 

「じゃぁさ、連携の練習をしよっか。

シャルロットが後衛で足止めと錯乱。

俺が前衛ってことでどう?

今後シャルロットの横に居続けるつもりだからさ、

二人で強くならなきゃね。

個人戦で強くなりたいなら俺が稽古つけるから」

 

「ん、わかった」

 

「私は?」

 

「ごめんごめん、3人で強くなろう。

セラはシャルロットの守りをよろしく」

 

「うん! シャルロットには怪我一つさせない♪」

 

「じゃぁーいっちょやりますか」

 

シャルロットのアイスニードルでトール鬼を足止めし、大和が刀で止めを刺す。

多方向からトール鬼が襲ってくると、エアーハンマーで数匹まとめて吹き飛ばす。

風の衝撃波を逃れたものは大和の刀により切り裂かれる。

30分ほどの戦闘で残り5匹まで数を減らしていた。

 

「セラ!」

少し離れた場所から巨大な精霊の反応が上がると、生きていたトール鬼全てを飲み込みながらシャルロットとセラに向かって土が競りあがる。

セラが精霊の加護でバリアを張るが敵の攻撃が終わった頃にはバリアも消え去り、土礫により二人とも吹き飛ばされた。

 

「シャルロット! セラ!」

 

「大丈夫、かすり傷」

 

「あぁー服が汚れちゃったじゃない!」

 

それぞれの反応に安堵し、精霊が膨れ上がった場所に注意を向ける。

 

そこには他よりも一回り大きなトール鬼が立っていた。

 

「トール・ロードか。先住魔法を使うのか?

頭が良さそうには見えないが」

 

大和の声が聞こえたのか怒りの形相で新たに精霊を集めるトール・ロード。

 

「あまいよ、召還速度では俺のほうが早い」

 

トール・ロードが攻撃するよりも早く大和の風が襲う。

 

"ピシッ!"

 

「え?」

 

大和の放った風はトール・ロードの手前で見えない壁に遮られる。

呆けた声を出した大和に土の槍が数十個襲い掛かる。

 

「ッ!」

土の槍の大半は風をぶつけて砕くが、3つほどの槍は砕けることなく大和に襲い掛かった。

精霊の召還に間に合わず、迎撃するだけの数が集まらなかったのだ。

 

3つの槍のうち2つまでは避けることの出来る軌道だったが、残る1つは2つを避ける事で逃げ場を失い確実に当たると覚悟した。

 

目の前にまで迫った槍が突風により軌道がずれ大和にかすり傷を負わせる。

シャルロットがエアーハンマーで軌道を変えたのだった。

 

「サンキュ~シャルロット」

 

「…ん」

 

「しかし…なんだ? あのバリアは?」

精霊魔法であることは間違いないが、風と土の反応があるのだ。

大和の常識では2つの精霊を同時に使役し、尚且つ融合させる術式は存在しない。

 

(先住魔法ってのは、精霊術とは微妙に違うようだな。)

 

「シャルロット! 俺があいつのバリアに穴を開ける!

その穴に魔法を打ち込んで!」

 

髪を逆立てた大和の周囲に見えないはずの空気が青く輝く。

同じように精霊を纏ったトール・ロードに向けて風の刃を無数に解き放つ。

 

全方位から風の刃がトール・ロードを襲った。

無数の風の刃は竜巻となって荒れ狂う。

 

風の刃一つ一つがトール・ロードの纏った精霊を削り取る。

徐々に薄くなる精霊にダメ押しとばかりに風を一塊打ち込む。

 

すると、トール・ロード正面の守りが砕けちり、

直径30サント程の穴が開く。

 

「ラグーズ・ウォータル・イス・イーサ・ウィンデ」

流麗な詠唱がシャルロットの口から発せられ、

氷の槍が真っ直ぐにトール・ロードの胸に穴を穿つ。

 

「ギャァァァァァァァ!」

断末魔と血飛沫を上げながらトール・ロードは絶命する。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「3人での初仕事が無事に終わってよかった…お疲れ!シャルロット、セラ」

任務完了の報告を終え、シャルロットを抱えて学院へと飛ぶ。

 

「お疲れ様」

 

「おつかれ~♪」

 

「一人で任務をこなすより、仲間とこなす任務のほうが良いでしょ?

なにより、一緒に喜び合えるから」

 

「…ありがとう」

 

「ん? なにが?」

 

「ヤマト一人で終わらせれたのに、

私に合わせて戦ってくれた。

私の経験の為に…」

 

「そんなこと無いよ。

先住魔法があんなに桁違いな代物だとは思ってなかったからね、

シャルロットとセラが居なかったら正直やばかったよ」

 

「それでもヤマトなら如何にかしたとおもう」

 

「ん~買いかぶりだと思うよ。

3人だったから勝てたんだよ」

 

「でも、ありがとう」

 

はにかむように笑ったシャルロットを見た大和の顔は、何故か赤く目も泳いでいた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

フリッグの舞踏会の主役は召喚の儀式を終えた2年生である。

 

新入生歓迎という触れ込みがあるのは形だけのような雰囲気であった。

 

しかし、その中でルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール と

 

キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーは

 

有力貴族の令嬢であり、何より飛びぬけた美少女であった為

 

1年生の中で周囲の目を引いていた。

 

そんな中、周囲には目もくれず食事に勤しむ2人(3人?)がいた。

 

大和とシャルロット&セラである。

 

「タバサこれも美味しいよ」

 

「ん」

 

(ってか、その体のどこにそれだけの量が入るのだろう…)

人並み以上に食べる大和ではあったが、同じかそれ以上に食べるシャルロットだった。

 

食事に満足した3人はベランダへ移動し風に当たる。

 

 

 

「タバサは踊らないの?」

 

「…いい」

 

「んじゃ、俺と…

私と踊っていただけませんか?お嬢様」

 

「………はい」

 

数秒の間を置き、顔を真っ赤にしたシャルロットは小さな声でしかしはっきりと返事をした。

 

たどたどしいステップで周囲から失笑が起こる。

しかし、まったく周囲を気にすることなく顔を赤くした二人は踊り続ける。

 

 

「なんか、見てるこっちが恥ずかしくなるわ」

一人取り残されたセラはそんなことを呟いた。

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