旋風と雪風   作:あすは我が身

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決闘と親友

踊り疲れた大和とシャルロットは会場の隅でワインを飲んでいた。

「私とも踊ってよ~」

 

いきなりセラが大和に飛びつき会場の中央に引っ張る。

 

「踊るって言ったって…」

手のひらサイズのセラとどう踊ればよいのか分からず立ち止まってしまう。

 

「こんなの二人でくるくる回ればいいのよ♪」

言って大和の周りをふわふわと回りだす。

 

「そっか、楽しんだもの勝ちだな」

笑顔で大和の周りを漂うセラに手を伸ばし、一緒になって踊った。

 

そろそろ「休もうか」とセラに声をかけたとき、会場内に突風が巻き起こる。

 

「魔法?」

意識せずシャルロットの姿を探すと先ほどと同じ場所でワインを飲んでいるのを見つけた。

(刺客じゃないか。じゃ~悪戯かもしくは狙いが他に?)

 

会場を観察すると、一人の少女が服を切り裂かれしゃがみ込んでいた。

先ほどの突風によりドレスを切り裂かれたのだろう。

怪我を負っていないようなので、悪戯だと判断する。

(悪戯にしては酷いな、大勢の前で女性の服を切り裂くなんて)

陰湿な悪戯を目の当たりにして、大和は不快な感情に顔を顰める。

 

突然のことでまだ誰も少女を助けに行けないでいる。

 

「大丈夫か?」

着ていたコートを脱ぎ少女に掛ける。

 

「ありがとう。ミスター

私はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。

キュルケでいいわ」

 

「俺はヤマト・クサナギ・ド・フォルテ。

ヤマトと呼んでくれ」

やたらと長い名前で自己紹介され一瞬困ったが顔には出さず自己紹介を返す。

 

「ところで、キュルケ。

この低俗な悪戯の犯人に心当たりはあるかい?」

 

「あるって言えばあるのかな…

振った男か私に男をとられた女か…

多すぎていまいち絞り込めないわ」

 

言いにくそうに話し出した割には言い終わったときには妖艶な微笑を湛えていた。

 

コートは今度会ったときに返せば良いと伝え、シャルロットの場所まで戻った。

 

「「…」」

 

シャルロットとセラの無言に迎えられ、居心地の悪さを感じる。

 

「どうしたの二人とも?」

居た堪れなさに話しかけるが、冷たい目で見られた。

 

「ヤマトが優しいのは知ってたけどさ、誰にでも優しいのは…

何か良くわかんないけど腹が立つ」

 

「…」

 

理不尽な言われようにシャルロットに視線を向けるが同意と取れる無言。

(俺が悪いのか?取りあえず風を放った犯人を怨んどくか…)

 

 

舞踏会も終わり3日後の夕方。

シャルロットから決闘の立会人になってほしいと頼まれた。

 

「なんでまた決闘なんかすることになったの?」

 

「…向こうから言ってきた」

 

「いや、だからその理由は?」

 

「私がドレスを破いたからって」

 

「ん?シャルロットはそんなことしないだろ?」

 

「ん…」

 

大和が否定するとほんのり顔を赤く染めたシャルロットが肯定する。

 

「否定すれば…って、勢いに押されて面倒くさくなってそのままなし崩し?」

何となくその情景が思い浮かび溜息をつく。

 

「俺が言ってやろうか?」

 

「いい、納得しないだろうし…折角だから」

何が折角なのか良く分からなかったがシャルロットの真剣な表情を見ると何も言えなくなってしまった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「私から仕掛けた決闘だから立会人は誰でもいいって言ったけど、

普通は大して仲良くない人に頼まない?」

 

「…ン」

 

「俺では不満か?

心配しなくても決闘自体にはどちらにも肩入れしないよ」

何故か赤くなってるシャルロットを見て照れるポイントがいまいち解らないと思う大和だった。

 

「では、怪我だけはしないように! はじめ!」

 

「…」

 

「…ヤマト? 決闘なのに怪我するなってどうかと思うわよ?」

 

「殺し合いの決闘なのか? それなら全力で止めるが」

 

「いやそうじゃないけど」

 

「じゃぁー怪我しないように、はじめ!」

 

「……」

 

「……もう良いわ」

 

半ば呆れて戦闘態勢に入る二人。

 

先手を取ったのはキュルケ、60サントの火球をシャルロットへ向けて打ち出す。

 

シャルロットはエアーハンマーで火球の軌道を外し、アイスニードルを放つ。

 

辛うじて避けたキュルケは次の詠唱を始めるが、既にシャルロットから追撃が迫っていた。

 

キュルケの目の前まで迫った氷の塊を当たる寸前で大和の風が受け止める。

 

(流石トライアングルと言うところか。魔法のランクは双方同じ程度だが、使い分けと詠唱速度、手の抜き方でシャルロットが数段上だな。近接も混ぜて攻撃すれば大人と子供ほども実力差がある。

まぁ実戦経験の差がそのまま出た結果だが)

 

「キュルケ、負けを認めても良いんじゃないか?」

 

「そうね…私の負け」

 

「ところで、舞踏会の時の犯人がなぜタバサなんだ?」

 

「実力を隠してた風のトライアングルってのが一点

あの場に杖を持ってきていたってのがもう一点

私の社交性に嫉妬した無口で根暗な人間がタバサって訳」

 

「おいおい、タバサは口数が少ないだけで無口って程じゃないぞ?

それに杖なら他にも持ってたやつが居たし。

何よりあんな陰険なことをタバサは絶対にしない」

 

「…ン」頬を染めるタバサ。

 

口数が少なく、他者との接触を必要以上に持たないシャルロットは周囲から見ればかなり浮いた存在なのは間違いないだろう。

だが、たったそれだけで疑われるようなことはあり得ない。

(誰かが裏で糸を引いてる?)

 

「誰かにタバサが怪しいみたいなこと言われなかった?」

 

「…ヤマトってばタバサと付き合ってるの?」

 

「なんでそうなる。そういう関係ではないぞ」

 

なぜかむくれるシャルロット。

大和とシャルロットの顔を見比べてニヤケ顔のキュルケ。

 

「ただ、大切な人ってとこかな」

 

「…ッ」

 

赤くなったりむくれたりと忙しいシャルロット…

 

「で、どうなんだ? 何か言ってきた奴はいなかったの?」

 

「んあぁ、ロレーヌが『タバサは実力を隠してるし、風のメイジだから怪しい』って言ってた」

 

「確定かな」

一瞬のうちに30メイルほど離れた木陰へ移動した大和は隠れていた4人に剣を向ける。

 

「どういうことか説明してもらおうか? ミスタ・ロレーヌ」

 

「ヒィ」

 

すっかり委縮したロレーヌは涙目で真相を語った。

 

キュルケに彼氏を奪われた女子生徒達が、彼女へ復讐するために舞踏会での悪戯を思いつき、風のメイジの手伝いとしてロレーヌを誘った。

此処までが女生徒の計画であり、シャルロットと決闘で破れ彼女に恨みを抱いていたロレーヌがシャルロットに犯人を擦り付け、キュルケとの同士討ちを狙ったとのことだった。

 

ちなみに、ロレーヌとシャルロットが2週間ほど前に決闘を行っていた。

理由は「俺より目立つ風のメイジが気に入らない」というロレーヌのプライドが原因だった。

もちろんシャルロットの圧勝で決着がついた。

 

「女の子達の言い分は解ったが、ロレーヌの言い分は単なる逆恨みじゃないか」

 

「ちょっと! 私のドレスが破られたのは逆恨みじゃないっていうの?」

 

「いや逆恨みには違いないが、彼氏を取られた彼女達に少し同情したからさ、

ただ、誰がしたのか分からないように仕返しをするってのは気分悪いけどね。

面と向かって宣戦布告ってのがカッコイイと思ってるからさ」

 

大和に責められた女生徒達は項垂れてキュルケに謝った。

キュルケも気がそれたのかすんなりと許したのだった。

 

「で、ミスタ・ロレーヌ?

逆恨みの上キュルケのドレスを破り、下手をすれば二人とも大怪我するところだったんだが、納得のいく言い分はあるかな?

ないよね?じゃぁーキュルケ、後は任せた」

 

「迷惑を被ったのは貴方とタバサも一緒でしょ?」

 

「キュルケが『半端な御仕置き』をするとは思えないから俺達まで関わるとロレーヌが死んじゃうかもよ?」

 

「そうね、じゃぁーお言葉に甘えて貴方達の分まで…

そうそう、タバサ御免なさい。

勝手な言いがかりで巻き込んでしまって、どんな罰でも甘んじて受けるから」

 

「…いい。ヤマトが言いたいこと言ってくれた」

 

「そう、ありがとうタバサ」

 

(雨降って地固まるってのはこう言うことなのかな?

俺以外に話相手が出来ればもっとシャルロットも笑ってくれるかな?)

 

 

 

そしてロレーヌはボロボロの状態で学院の屋根から吊るされたのだった。(一晩も…)

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

Out side

 

夕方、授業も終わり寮へと戻る途中でキュルケに声を掛けられた。

 

「あなた、風のトライアングルなんだってね。

私に何の恨みがあるのかは知らないけど恥をかかされて黙ってるほどシュルプストーの名前は安くないの。1時間後にヴェストリの広場で決闘よ!立会人の選定は貴方に譲ってあげる」

 

「ちがう、私じゃない」

 

「何が違うの?実力を隠してたくせに。

それに友達もいない貴方が人目を引く私を羨んだとかそういう理由じゃないの?」

 

「…わかった」

 

「そう、じゃぁ1時間後に。逃げないでよ? フフッ」

 

自分じゃないと伝えたかった。

でも一方的に突きつけられた悪意に神経を逆なでされた。

さらに、キュルケを見ていると先日の舞踏会で大和が自分のコートを脱ぎキュルケに掛けてあげるシーンが思い出されて何故だか無性に腹が立った。

 

シャルロットは自分の中に渦巻く気持ちが何なのか分からず苛立っていたのだ。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「私が吹っ掛けた決闘だから立会人は誰でもいいって言ったけど、

普通は大して仲良くない人に頼まない?」

 

「…ン」

キュルケの物言いに『大和と仲が良い』というニュアンスがある事に気付き顔が熱くなった。

 

 

「では、怪我だけはしないように! はじめ!」

 

「…」

 

「…やまと? 決闘なのに怪我するなってどうかと思うわよ?」

 

「殺し合いの決闘なのか?それなら全力で止めるが」

 

「いや、そうじゃないけど」

 

「じゃぁー怪我しないように、はじめ!」

 

「……」

 

「……もう良いわ」

 

大和らしいと思った。

多分どちらかが危険になると怪我をしないように止めてしまうだろう。

全力で行っても大丈夫だと確信する。

 

キュルケは火のトライアングルというだけあって、大した火力だった。

ただ、シャルロットからすると穴だらけだった。

 

攻撃は避けられない事を前提に、

もしくは避けられた後の行動を念頭に入れて行うべきである。

 

しかし、キュルケの攻撃には次がないのだ。

 

自分の攻撃が『当たるはず』という驕り。

 

命を賭けた戦いで一番してはならない事である。

 

僅か3回の詠唱で決着がついた。

最後の止めは思った通りに大和に止められた。

 

 

「キュルケ、負けを認めても良いんじゃないか?」

 

「そうね…私の負け」

 

「ところで、舞踏会の時の犯人がなぜタバサなんだ?」

 

「実力を隠してた風のトライアングルってのが一点

あの場に杖を持ってきていたってのがもう一点

私の社交性に嫉妬した無口で根暗な人間がタバサって訳」

 

「おいおい、タバサは口数が少ないだけで無口って程じゃないぞ?

それに杖なら他にも持ってたやつが居たし。

何よりあんな陰険なことをタバサは絶対にしない」

 

「…ン」

大和が自分を信頼してくれていることに嬉しくなった。

 

 

「誰かにタバサが怪しいみたいなこと言われなかった?」

 

「…ヤマトってばタバサと付き合ってるの?」

 

「なんでそうなる。そういう関係ではないぞ」

 

キュルケの言葉に一瞬の停滞もなく否定の言葉を言い放った大和を見つめ、訳も分からず悲しくなった。

自分も大和のことを仲間としか見ていない。

信頼出来ると言ってくれただけで十分なはずなのに、

大和の「ただ、大切な人ってとこかな」という言葉で

「…ッ」思いっきり照れた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

疑いも晴れ、キュルケに御仕置きを任せるということで話がまとまった。

 

「そうね、じゃぁーお言葉に甘えて貴方達の分まで・・・

そうそう、タバサ御免なさい。

勝手な言いがかりで巻き込んでしまって、どんな罰でも甘んじて受けるから」

 

「…いい。ヤマトが言いたいこと言ってくれた」

 

「そう、ありがとうタバサ」

 

悪い事をしたら謝る。

プライドの高い貴族にはそんな当たり前のことが出来ない輩が多い。

 

しかし、キュルケという少女は潔く謝ったのだ。

 

謝られることに慣れていないシャルロットはどう返してよいのか解らなかった。

 

ただ、キュルケは見かけと違って素直な、優しい少女なのだと感じた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

翌日の朝、食堂で大和の隣で朝食を摂っていると、

「おはようタバサ、ヤマト」

キュルケが挨拶をしてタバサの隣に腰かけた。

 

「(タバサとヤマトのこと応援してあげる、貴方達結構お似合いよ)」

小声で囁かれた言葉でいつも以上に顔を赤くして俯くシャルロットだった。

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