旋風と雪風   作:あすは我が身

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日常と初デート

特訓5日目

ついにルイズが『念力』を使えるようになった。

レビテーションやフライは風系統が微妙に混じるらしく無理だった(シャルロットに聞いた)

しかし、ルイズの魔力が桁違いなこともあり、念力で宙に浮かせることが出来るのがすごい。

レビテーションのように風を混ぜて浮かせるのとは違い、純粋に魔力だけで浮かせるってのが普通ではありえないということだ。(これもシャルロットに聞いた)

 

ルイズに魔法の手ほどきをしたのはシャルロットだ。

当たり前だが大和には系統魔法どころかコモンマジックすら使えないのだから…

(そろそろ協力者を増やさないと、魔法を使えない状況で学院に居続けることが厳しくなるな。

学院長くらいには相談しとくか…)

 

「(ルイズの魔法についてどう思う?)」

 

「(魔力が桁違いに強い)」

 

「(それも踏まえて、系統魔法が全て爆発ってことは虚無ってことは考えられない?)」

 

「(伝説の虚無だったらすごいこと、でも虚無だったら危険)」

 

「(伝説ってくらいだし、学院長くらいには相談しといた方がいいかな?)」

 

「(わからない、任せる)」

 

「それと、俺のこともそろそろ学院長に話して協力をお願いしてみようかと思う。

このまま学院に居続けるとなると精霊術と魔法の違いに気づいて面倒なことになりかねない)」

 

「(そう、それも任せる)」

 

「なにコソコソ話してるのよ! 私の魔法ちゃんと見てるの?」

シャルロットと大和が内緒話をしていることに気づいたルイズが文句を言うが、初めて魔法を成功させたことの達成感から満面の笑みを湛えていた。

 

「ちゃんと見てたよ、おめでとうルイズ」

 

「見てた、でもコモンマジックだけ」

 

「…たぶん新しい系統魔法なのよ! そう! それしか考えられないわ!」

 

「まぁーコモンマジックが使えるようになったんだし、そのうち系統魔法もどうにかなるさ。

それより、魔力のコントロールを磨かなきゃな」

 

「…ヤマト、タバサ、本当にありがとう。

他の皆は馬鹿にするだけで助けてはくれなかった。

二人が助けてくれなかったらコモンマジックどころか、杖を捨ててたかもしれない」

 

真剣な眼差しで御礼を言ったルイズは大粒の涙を流した。

 

(魔法が使えないことへの劣等感と貴族としてのプライドで限界だったんだろうな、こんなに素直で優しい娘なのにな…)

 

「魔法が成功したのはルイズの頑張りがあったからだよ。

俺たちはきっかけを与えただけ、この訓練だって元々タバサと一緒にやってたことだから。

気にしなくて良い。

ルイズはもっと自分に自信を持っていいと思うよ」

 

「…(コクリ)」

 

ルイズは止まらない涙を振り払い、華やかな笑顔を見せてくれた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

まず、幻獣とかの例外を除けばドットの魔法が当たっただけでも普通の人間は死ぬ。

それを踏まえると、10の耐久力しかない相手に1000くらいの攻撃を与えるような魔法は魔力の無駄になる。

スピードと手数が重要になるんだ。

ただし、相手が高位のメイジだったり耐久力の高いモンスターだった場合は火力で押さなければ傷一つ付けられない場合もある。

これも誘導、錯乱を下位の魔法で行い、上位の魔法は確実に当てることが重要だ。

 

系統魔法の弱点は1つの魔法を使用中は別の魔法を使えないことにある。

1対1での戦闘では守りに入ってしまうと一方的に攻められることも多くある。

シールドを張った場合、解除するタイミング1つで攻撃を食らってしまうからだ。

 

今シャルロットは接近戦をしながら詠唱を行う事を練習中だ。

激しく動きながらの詠唱はかなりの集中力を要する。

 

大和の攻撃を杖で弾きシャルロットの蹴りが腹部を襲う。

右へ避けた瞬間に背後からエアーハンマーが襲いかかる。

回避が間に合わないと悟ると体を回転させ刀に風を纏わせてエアーハンマーを切り裂く。

同時に回転の威力をそのままシャルロットへと叩きつける。

杖で受けたシャルロットは2メイル程吹き飛び尻もちをついた。

 

「今のは危なかった…大概のメイジならあれで終わってたよ」

 

「…ヤマトは防いだ…」

 

「いや、結構危なかったよ? ってか防がなきゃ怪我してたよ?」

 

「………」

 

「ん~俺の場合接近戦が基本で魔法は補助的な役割だからね。

魔法が主力で接近戦は補助的なこっちのメイジとは戦い方自体が違うんだよ」

 

「なぜ?」

 

「系統魔法でさ、同じ力量のメイジが戦った場合どの系統の火力が一番高いと思う?」

 

「………火?」

 

「そう、エネルギー、質量などで火>水=土>風が基本だと思う。

ただし、こっちの魔法は掛け合わせができるから少し変わってくると思うけど、純粋な火力では火が一番だと思う。

これを踏まえると、風しか使えない俺は他の術者と戦った場合に正面から魔法勝負なんてしたらまず勝てない。

向こうの世界では俺より強い術者が沢山いたから特にね。

でも、速度、手数という面では風が飛びぬけて勝ってる。

遠距離では勝てないなら近接を磨いて魔法勝負をしなければ良いんだ。

それに、大きな魔法を行使するとそれだけ精神力がもたなくなるからね、持久戦でも魔法の使い過ぎは致命的なんだよ」

 

手合わせの合間にお互いの考え方や戦闘のしかたを話し合う。

1日2時間の特訓は二人に濃密な時間となっていた………つい最近までは………

 

「な~に二人でコソコソ話してるのよ!

私も混ぜなさいよ! ファイナル・エレガント・スーパー・エクスプロージョンも結構的に当たるようになったんだから!」

 

「………そのネーミングセンスだけは理解できないのだが」

 

「同意」

 

「なによ? カッコイイからって嫉妬しないでよ?」

 

「いや、戦闘中にその長ったらしい名前を言うのはどうかと思うぞ?」

 

「うっ」

 

「一言で済ませた方が良いんじゃないか?」

 

「………そうね、なんか考えとく………」

 

意気消沈気味のルイズは今日も元気です。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

虚無の曜日、日曜日的な日に当たるお休みです。

 

「ヤマト~遊びに行こう~ヤマトってば~」

 

「遊びにって何処にさ?」

 

「何処でも良いよ♪」

 

朝早くからセラに起こされ王都へ買いものに出かける事になった。

 

寮を出た処で薔薇を銜えた少年と会った。

 

「やぁ~ヤマトじゃないか~虚無の曜日に使い魔とお出かけかい?

僕なんてどの娘とデートしようか迷ってると言うのに、まぁ~もてるって辛いよね」

 

「………おはようギーシュ。

もてるのは良い事だが………お大事に…」

 

「なんだい? どういう意味……」

 

「ギーシュ! 誰と誰を選ばなきゃならないのかしら?

ちょっと詳しく聞かせて貰おうかしら?」

 

「いや、違うんだよ! 僕にはモンモランシーだけだよ!」

 

ギーシュを引きずって広場へと消えていくモンモランシーを見ながら大和は手を合わせた。

 

「ギーシュって馬鹿よね?」

 

「まったく、懲りないよな………」

 

「同感」

 

「うぉ! タバサか吃驚した」

 

ギーシュを見送っているとすぐ横からシャルロットに声をかけられた。

 

「どこ行くの?」

 

「あぁ、王都へ買い物でも行こうかと思ってね」

 

「…」なぜか照れるシャルロット。

 

「タバサも行くか?」

 

「いく」

 

「(折角のデートが…)」

 

嬉しそうなシャルロットと何故か不機嫌なセラと一緒に馬で王都へと向かった。

 

「これたべるぅぅぅ♪」

「あれって何?」

「おいしぃぃぃ♪」

 

相変わらず露店でテンションのダダ上がりなセラに振り回されて人混みの中を進んでいく。

 

「…あっ」

 

「ほら、はぐれるよ」

 

大和は人の波に呑まれそうなシャルロットの手を掴み引き寄せた。

 

「…ん」

 

真っ赤な顔で俯くシャルロットの手を引いて近くにあったカフェテラスへと移動する。

テーブルに座る際、少し拗ねたような目で大和の顔を覗き込むシャルロット。

 

「流石に王都は人が多いね」

 

「まだ食べ足りないよ?」

 

「どんだけ食べるんだよ。取りあえずココで休憩~」

 

タイミング良くウエイトレスが注文を聞きに来る。

 

「紅茶と…シャルロットは何にする?」

 

「………え? なに?」

 

「いや、何を頼むかなと」

顔を赤くし何やら呆けていたシャルロットは急いでメニューに目を通した。

 

「紅茶とシフォンケーキとパイと………をお願い」

 

「………さすが」

 

「私はイチゴのケーキーーー♪」

 

ケーキを1ホール分頼んだシャルロットは再び物思いに耽る。

セラにしてもシャルロットにしても小さな体の一体どこに収まるのか不思議でならない。

 

 

30分程で完食したシャルロットと食べすぎで動けなくなったセラを肩に乗せ店を出た。

 

「シャルロットは何処か寄りたい店とかある?」

 

「………ない」

 

自分の手元を気にしながらも目線が服屋に流れたのを大和は見逃さなかった。

 

「じゃぁ、あそこに入ってみようか」

 

シャルロットの手を引いて服屋の中へと入っていく。

 

王都の服屋の中でも中規模の店内には平民向けのものからある程度値段の張る貴族向けの物まで飾られていた。

量産できるほどの機械化が発達していない為一点ものが多く、生地を展示している事の方が多かった。

 

「何か気に入ったものはあった?」

 

興味無さげに店内を徘徊するシャルロット。

しかし何時もと違う目の輝きを大和は気が付いていた。

(やっぱり女の子なんだよな…日頃は本以外に興味を示さないから新鮮な感じがする)

 

「…」

 

一着の服の前でシャルロットが止まり熱心に見つめる。

 

襟元の白い、水色のワンピースだった。

30エキューという値札が見える。

(シャルロットの蒼い髪に合いそうな色だな)

 

「すみません! この服ってサイズ合わせ出来ますか?」

 

「…っ、え?」

 

「シャルロットに似合いそうだからプレゼントするよ」

 

「いい、いらない」

 

「俺がシャルロットに着て貰いたいんだ。

今度出かけるときはそれを着てくるってのはどう?」

 

「…うん」

 

サイズを合わせて出来上がるまでの数時間をウィンドウショッピングで潰す。

 

 

学院へ帰るまで終始顔の赤いシャルロットと未だにダウンしているセラ…

ただ、何時もより優しげな瞳のシャルロットを見て「ドキッ!」と胸を高鳴らせたのは内緒だ。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

Tabasa Side

 

目が覚めて広場へと散歩へ出かけた。

虚無の曜日、天気も良く数名のカップルが王都へと出かけているのを何となく眺めていた。

 

嬉しそうに男子生徒の後を歩く女子生徒を自分に重ね、先を歩く男子生徒の姿を大和に置き換えて妄想する。それだけで顔が熱くなる。

 

学院に来てからの自分が、それまで戦い続けて来た自分を壊していくような感覚を"焦り"と"不安"…少しの"期待"をもって感じていた。

 

なぜか大和の顔を見たくなったシャルロットは男子寮へと足を向けた。

 

「ギーシュって馬鹿よね?」

 

「まったく、懲りないよな………」

 

男子寮の前まで来るとモンモランシーに引きずられて行くギーシュを見送る大和を見つける。

「同感」直ぐ傍まで近付き話に割って入る。

 

「うぉ! タバサか吃驚した」

 

 

セラを一緒に何処かへ出かけるような素振りだった為、尋ねると王都へ買い物へ出かけるということだった。先ほどのカップルの光景を思い出し少し顔が熱くなる。

 

「タバサも一緒に行くか?」

 

「いく」

 

妄想が広まる前に大和から誘われ即答してしまった。

 

妙にテンションの高いセラを追いかけるように人混みを掻き分けて通りを進む。

シャルロットは人混みが苦手だった。

背の低さもあり人の壁で前が見えないのだ。

 

人の流れに呑みこまれそうになった時、暖かい手がシャルロットの手を握る。

強い力で大和に引き寄せられた。

 

「…あっ」

 

「ほら、はぐれるよ」

 

「…ん」

 

耐えられないほどの羞恥と舞い上がりそうな高揚感で顔が熱くなる。

 

数分歩いた処でお洒落なカフェテラスへと誘われる。

席に着く際、離された手に少し寂しさを感じた。

 

「……………」

 

「………え? なに?」

大和に声をかけられたが先ほどの状況を繰り返し思い出していたシャルロットは聞き逃してしまった。

 

「いや、何を頼むかなと」

どうやら注文を取りに来たので何にするか聞いて来たようだった。

 

「紅茶とシフォンケーキとパイと………をお願い」

 

「………さすが」

 

「私はイチゴのケーキーーー♪」

 

30分程でケーキを完食したがあまり味を覚えていない。

感情を外にあまり出さないシャルロットであるが、見る人が見れば『夢うつつな乙女』な表情であった。

((鈍感な大和は気が付いていない様だったが…))大和の肩でダウンしていたセラはそんな現状を完璧に理解して溜息をついた。

 

「シャルロットは何処か寄りたい店とかある?」

 

「………ない」

また手をつなげないかな?と考えていたシャルロットは服屋を見つけたが自分の幼児体型を気にしている為オシャレすることに抵抗があった。

 

「じゃぁ、あそこに入ってみようか」

再び手を繋がれたシャルロットは抵抗する間もなく服屋へと連れて行かれた。

 

王都の服屋の中でも中規模の店内には平民向けのものからある程度値段の張る貴族向けの物まで飾られていた。

自分のような体型に合いそうな服は子供服以外にはないように感じた。

 

「何か気に入ったものはあった?」

 

すでに店内を2周して気になる服を見つけた。

(お母様が良く着ておられた服にそっくり)

それはシャルロットの母が好んで着ていた水色のワンピースだった。

生地やデザインは値段からしても安物であったが、色合いなどは良く似ていた。

 

「…」

 

「すみません! この服ってサイズ合わせ出来ますか?」

 

「…っ、え?」

 

「シャルロットに似合いそうだからプレゼントするよ」

 

「いい、いらない」

 

「俺がシャルロットに着て貰いたいんだ。

今度出かけるときはそれを着てくるってのはどう?」

 

「…うん」

長いこと見ていたため欲しそうに見えたのか大和がプレゼントしてくれると言った。

欲しい、欲しくないで言えば欲しかった。

しかし、自分に似合うとは思えなかったのだ。

 

でも大和は似合いそうだと言ってくれた。

それに大和からのプレゼントである。

いつも以上に顔が熱くなってしまった。

 

サイズを合わせて出来上がるまでの数時間をウィンドウショッピングで潰す。

 

サイズ合わせの終わった服を大和からプレゼントされ大事に胸に抱いて学院へと帰った。

 

 

自分の部屋のベットで今日1日の出来事を思い返し、ニヤニヤ笑いながら悶えるシャルロットだった。

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