旋風と雪風   作:あすは我が身

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夏休みとピクニック

テスト結果がでましたよ………っと

A~Eまでの5段階評価

大和 : 筆記試験B、実技試験C

シャルロット : 筆記試験A、実技試験A

ルイズ : 筆記試験A(トップの成績だった…)、実技試験:D

キュルケ : 筆記試験C、実技試験A

 

 

夏休み1日目。

殆どの生徒は実家へ帰郷してしまい学院には僅かな人数しか残っていなかった。

 

残り組:大和、シャルロット、キュルケ、ルイズ、ギーシュ、モンモランシー

他、名も知らない生徒数名

 

ルイズ、キュルケ、ギーシュは夏休み全部ではないが数日後には実家へ帰郷するとのことだ。

 

モンモランシーは友人数名とポーションを作って売る(バイト)らしい。

 

大和とシャルロットは時間が取れればフォルテ領へと出かける予定である。

 

何はともあれ夏休み初日の午前中、特にすることもなく大和とシャルロットとセラは何時ものように広場の木陰で読書に勤しんでいた。

 

「ヤマト~タバサ~! やっぱり此処に居た」

キュルケが小走りで向かってくる。

 

「どうしたの?」

 

「今暇よね?」

 

「暇と言えば暇だけど…なに?」

 

「暇じゃない」

 

「暇じゃないってタバサは本を読んでるだけじゃない!」

 

「だから暇じゃない。本を読んでる」

 

「………じゃぁヤマトだけでも一緒に出かけない?」

キュルケは悪戯な笑みを湛えてシャルロットを見つめる。

 

「出かけるって何処へさ?」

 

「モンモランシーが裏の森へ薬草を採りに出かけるからピクニックがてら一緒に行かないかって言って来たのよ」

 

「ふ~ん面白そうではあるね。タバサも行かないか?」

 

「行く」

 

「ふふっ」意味ありげにキュルケは微笑んだ。

 

準備の為に寮の自室へとそれぞれ帰って行った。

 

大和は昼食を弁当にしてもらう為、厨房へと向かう。

キュルケに昼食はどうするのか聞いた処、何も手配していないとのことだったので大和が頼みに行くことになったのだ。

 

「ヤマト様こんな所へ如何されたのですか?」

学院のメイド、シエスタが大和を見かけ声をかけてきた。

 

元が貴族や平民と言った格差とは関係のない世界から来た大和なだけに、シエスタ達平民への対応も柔らかいものであった。

その為、学院の平民からの受けがとても良いのだった。

 

「あぁシエスタか。丁度良い、ピクニックへ出かける事になってね、10人分位昼食を弁当にしてもらえないか頼みに来たんだ」

モンモランシーが友人も誘っているとのことで少し多めに頼んだのだ。

(シャルロットもいることだし…)

 

「わかりました。マルトーさんに伝えておきますね」

 

「シエスタも一緒にと言いたいんだけど、裏の森には亜人もいるらしいから危ないね」

 

「そうでね。足手まといになるのも悪いんで次の機会にでもお願いします」

 

「うん次は一緒に行こうね。マルトーさんによろしく」

マルトーというのは厨房の料理長で学院の平民の親分的な存在である。

 

シエスタと別れ寮の前まで来るとルイズに会った。

 

「おはよう、ルイズもピクニックに行くのか?」

 

「え? 私は聞いてないわよ?」

良く考えればキュルケが参加する時点でルイズを呼んでない可能性が高い事を思い付いても良かったのだ。しかし、何時までも友人が少ないままでは寂しい。(シャルロットにも言えることだが)ピクニックへ誘って皆との間にできた壁を取り払う切っ掛けになればと考えた。

 

「モンモランシーが薬草を採りに裏の森へ行きたいらしくてね、どうせなら皆で弁当をもってピクニックに行こうって事になったんだ。良かったらルイズも一緒にどうかな?」

 

「偶~然、暇だから行ってあげても良くってよ」

なぜか(ない)胸を張って勝ち誇った言い方だった。

 

「ふっ…じゃぁ30分後に此処で落ち合おう」

言い方が子供っぽく微笑ましくてつい笑ってしまった。

 

「ふぅん分かったわ」

 

 

準備を終え、セラとルイズを伴って皆と合流する。

 

「何でルイズが居るのよ」

 

「何でキュルケがいるのよ」

 

「………ルイズは俺が呼んだんだ。多い方が楽しいだろ?」

 

「…まぁ良いわ、猫の手ってことでコレ持って貰うから」

 

「何で私が!」

 

「それぞれ仕事の分担よ。ヤマトもコレ持ってね」

 

「はいはい」

 

「分かったわよ」

 

其々弁当の入ったバスケットや飲み物の入った水筒を持ち森へと向かう。

 

学院の裏に広がる森は学院長の許可がなければ立ち入る事が出来ない。

その為、少し奥まで行くと様々な薬草が手付かずで残っているそうだ。

但し、人が立ち入らないと言う事は野生の猛獣や亜人が生息している可能性も高いのだった。

「危険ではないか?」とモンモランシーに問うと、「だから貴方達に付いて来て貰ったのよ。よろしくね♪」と計画的に連れてこられたことが判明した。

 

 

「ん?」

 

「ヤマト?」

大和が声を上げた事に隣を歩いていたシャルロットが気付く。

 

「うん、2リーグ先に反応があってね…ちょっと多いな…」

 

「どのくらい?」

 

「全部で30位かなぁ…多分コボルド鬼だね」

 

「そう…やる?」

 

「皆と逸れるのも良くないし…モンモランシー! 何処まで行くの?」

 

「もう少し先、後2リーグ位かしら」

 

「あぁ~丁度か…」

 

「何が丁度なのよ?」とルイズ

 

「丁度2リーグ位先にコボルド鬼らしきものがいるんだ」

 

「「「「「「え!?」」」」」シャルロット以外の反応だ。

 

「そんな遠くの事が分かるのかい? ヤマトは」

 

「あぁ、セラが分かるらしいんだ」

 

「便利だね使い魔って…」

 

「え? あ、ぁうん私は凄いのよ!」

 

調子を合わせて得意げになるセラだった。

 

「コボルド鬼の一匹や二匹、僕のワルキューレに掛かれば余裕だよ。

僕に任せて皆は僕の雄姿を見学でもしていたまえ」

 

「…まぁ俺とタバサも居るしどうにかなると思うけど、

出来るなら他の場所へ行く事をお勧めするよ」

 

「僕一人で余裕だと言ったろ? このまま進もう」

 

「………何とかなるならこのまま進みたいわ。

人の手が入っていない所の方が薬草もいっぱいあるから」

 

「…じゃぁ皆離れないようにして進もう」

 

ギーシュを華麗にスルーして先へと進む。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「じゃぁギーシュ、頑張ってくれ」

「がんば」

「頑張れ~」

「此処で見守ってるわ」

「早くね」

「骨は拾ってあげるわよ」

「「がんばってね…」」

 

上から大和、シャルロット、セラ、キュルケ、モンモランシー、ルイズ、友人2名…

 

「いや…多くないかい?」

 

「そうか?ギーシュなら余裕だろ?…

………まぁ~あまり苛めてもな…」

意気消沈し涙目になったギーシュを不憫に思いながら大和が指示を出す。

 

「俺が真ん中に突っ込むから右に逃げたのをタバサ、左に逃げたのをキュルケが倒してくれ。

ルイズは、あの手前の木よりこっちに来た奴を倒してくれ。

ギーシュはワルキューレを展開して此処を死守。

モンモランシー達は怪我をしたときに治療を頼む」

 

「僕は守りだけかい?」

 

「ギーシュがお姫様達を守る最後の砦だ。

言うなれば近衛隊だから一番重要だぞ」

 

乗せやすいギーシュは大和の言葉で満足げになった。

 

「ルイズ、何時もの練習を思い出せ。やれば出来るから…気楽にいきなよ」

緊張の為か表情の優れないルイズも大和が声をかけたことで多少緊張がほぐれたのか笑みを見せてくれた。

 

「タバサ、キュルケ、左右の端っこに脅し程度の魔法を頼む」

コボルド鬼は50メイル程の範囲に集まっていた。

その両端にタバサとキュルケの魔法がさく裂したことで中央に集まってくる。

 

密集した中央に大和が刀を2本引き抜き突っ込む。

 

左右の刀に風を纏わせ独楽のように回転しながらコボルド鬼を切り伏せていく。

敵が密集している時に大和が好んで使う戦法だ。

派手に精霊術を行使出来ない状況ではこの戦い方が一番効率が良いとの判断だった。

 

時折風の刃を左端へと飛ばしキュルケの包囲網から逃れる敵を倒す。

シャルロットの方は問題なく殲滅していた。

 

大和は15匹切り伏せ、タバサとキュルケの魔法で7匹が倒されていた。

残り8匹。

(そろそろルイズにも自信を持って貰うか)

 

コボルド鬼を一匹後ろへと逸らし、密集している三匹へと切りかかる。

 

「ルイズ! そいつを頼む! 的の大きな腹を狙え!」

 

「っ! エクセレント・ボム!」 "ドーーーン!" 「グェ!」

 

ルイズの掛け声と爆発音、コボルド鬼の断末魔がほぼ同時に聞こえて来た。

ルイズの魔法を受けたコボルド鬼は腹部に大穴を空けて倒れこんだ。

(エクセレント・ボムって…)

 

「やったぁぁぁ!」

 

飛びあがって喜ぶルイズを大和、シャルロット、セラ以外の面子が呆けて見つめている。

 

「よし! 全部倒したみたいだよ」

 

「…何で返り血1つ付いてないのよ…あんたは」

接近して刀を振るっていたにも関わらず全身に薄い空気の膜を纏っていた大和は返り血どころか汚れ一つ付いていなかった。

 

「汚れないように気を付けたからね」

 

「…何なのよその余裕は…」

 

「「ヤマトだから」」

キュルケの問いかけにシャルロットとセラの声が綺麗に揃った。

 

あきれ顔のキュルケが「ごちそうさま」と言ったのを最後に二人は顔を赤くして大人しくなる。

 

「ルイズ上手くいったね、おめでとう」

 

「当然よ! これくらい楽勝だわ!」

 

「うん、ルイズなら練習次第でもっと上手く魔法を使えるようになるよ。

但し一人で無茶なことは絶対にしない事。わかった?」

 

「分かったわよ…」

調子に乗りやすいルイズにくぎを刺しておく事を忘れない

 

「僕は結局何もしてないんだけど…」

全く出番のなかったギーシュは小さくなっていた。

 

「いや、ギーシュが皆を守ってくれてると思ったから安心して戦えたんだ。

そうじゃなかったら後ろが気になって戦うどころじゃなかったよ」

 

「そ、そうか!まぁ僕がレディー達を守っていたのだから安心できたってのは納得できる。

僕のワルキューレは無敵「はいはい、それよりヤマトって強いのねぇクルクル回ってあっという間に倒しちゃったし」…」

長くなりそうなギーシュの言葉を綺麗にぶった切りモンモランシーが大和に話しかける。

 

「本当あんなに強いとは思わなかったわ」とルイズ

 

「僕程じゃないけどね」とギーシュ(皆でスルー)

 

「そう言えばヤマトって二つ名はあるの?」

 

「いや、特にないよ」

 

「じゃぁ『風車』とかどう?」

自信ありげにルイズが提案する。

 

「あんまり恰好よくないわね…」とキュルケが反応し、

 

「…旋風」とシャルロットが提案する。

 

「恰好いいじゃない! 風車なんかよりよっぽど良いわよ」

 

「ヤマトはどっちが良いの? 風車よね!」

 

「旋風」

 

ルイズとシャルロットが言い寄る。

 

「…旋風で…」

 

勝ち誇るシャルロットと納得いかないとダダをこねるルイズ。

会話に入っていない5人は三人のやり取りを生温かい目で見守っていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

綺麗な小川を見つけ昼食を摂ることとなった。

 

マルトーの作った弁当は満足のいくものであっという間に平らげたのだった。

 

「皆で一緒に動かないとダメかな?」

 

「この周囲に亜人とかの反応は無いってセラが言ってるから、

あまり遠くへ行かなければ大丈夫だと思うよ」

モンモランシーの問いかけにセラを引き合いに出して答える。

 

「よかった! 手分けして探した方がいっぱい集められるから助かるわ」

 

薬草採取の為、思い思いに動き出す。

 

その場に残ったのは大和とシャルロットだけであった。

大和の居る場所から離れすぎないように周囲を散策する為だった。

何かあったときに大声を上げることで大和とタバサが向かうと言う事になった。

 

キュルケはモンモランシーと行動し、それにギーシュが付いて行った。

ルイズとセラは友人二人に付いて行った。

 

小川のせせらぎと木の葉が擦れあう音。

 

穏やかな時間が過ぎて行った。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

Tabasa Side

 

何時以来だろう…

 

大勢の人と賑やかに過ごすのは…

 

お父様が亡くなり、お母様の心が壊れた日…

 

あの日から一人でいる事が当たり前になり、特に苦痛も感じなくなった。

 

時々襲ってくる寂しさは本が癒してくれた。

 

…大和と出会い学院で再会してからは一人でいる事の方が少なくなった。

 

最初のころは途惑いがあった。

 

でも、今では大和と一緒に居る事が心地よく、当然だと感じている。

 

目的を達成する為には強くなる事が絶対だ。

 

強くなることは一人になる事だと思っていた。

 

でも…一人で強くなるより仲間と強くなる事の方が大切だと教えて貰った。

 

一人で抱え込むなと言ってくれた。

 

こんな私を助けてくれると言ってくれた。

 

今日のように大勢で騒いでいると昔を思い出す。

 

楽しかったあの頃を思い出すと涙が出そうになる。

 

けど、辛い涙ではない。

 

今が幸せだと感じるから。

 

昔と同じくらい幸せだと………

 

「ヤマト…ありがとう」

考え事をしていると、つい口から言葉が零れた。

 

「ん? なにが?」

 

「日の当る場所へ連れ出してくれて」

 

「………シャルロットはさ、何でも自分一人で抱え込む癖が直ってないね。

前も言ったけど俺を頼ってほしい。たぶんキュルケ達もそう思ってるよ。

シャルロットの為に連れまわしてるんじゃないよ。

俺がシャルロットと一緒に居たいだけなんだ。

だから、シャルロットが楽しければそれでいいんだ」

 

「ん、私もヤマトと一緒にいると楽しい…」

 

「うん、それでいいと思うよ」

 

大和は優しい。

 

私だけに優しい訳ではないけど…

 

私には特に優しい(と思う…思いたい)

 

家族以外で離れたくないと思えたのは大和一人だ。

 

今では誰より大切な人………

 

起き上って私を優しく見つめる大和の傍で少しだけ胸を借りて泣いた…

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