旋風と雪風   作:あすは我が身

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召喚と依頼

深い森で一人の男が怪我を負い、追手から身を隠していた。

「クッ!」

左足に刺さった矢を抜き、血止めをするが、止めどなく流れ続ける血に紫色の液体が混じっていた。

(まず間違いなく毒だろうな…)

 

更に矢が複数飛んで来るが、短い詠唱で風を放ち矢を叩き落とした。続けて詠唱し、火の玉を放つ。避けることもできずに矢を放った相手が倒れこんだ。

 

周囲には男以外、誰も居なかった。

連れてきた護衛も半数が倒れ、残り半数は離ればなれとなっていた。

 

狙われた理由は………分っていた。

権力闘争に敗れた時点で覚悟していたが、こうまで行動が早いとは思わなかった。

妻と娘だけでも他国へ逃がすはずだったが、間に合わなかった。

 

男の名は、シャルル・ド・オルレアン。ガリア王国、国王の実弟であった。

兄との権力争いに負けたシャルルを狩りに誘ったのは実兄であり、この暗殺を企てたのも実兄であった。

 

血は流れ続け、矢を受けた場所は赤くはれ上がっていた。

このままでは30分ともたないだろうと、覚悟を決める。

 

「シャルロット………」

12歳になったばかりの愛しい娘の名前を呟く。

これから、我が子を襲う不幸を思い自分の不甲斐無さに唇を噛む。

 

せめて…

「我が名はシャルル・ド・オルレアン

 五つの力を司るペンタゴン。

 我の運命に従いし使い魔を召喚せよ」

目の前に鏡が現れ、すぐに光が辺りを照らす。

 

先ほどの戦闘で使い魔も果てていた。

その為人生2度目の召喚を行ったのだ。

運が良ければこの傷を治せる使い魔か……、伝言を頼める程度の使い魔が召喚できるかもしれないと考えていた。

 

光が消えた時には目の前に黒髪の少年が膝をついていた。

(なぜ少年!? 人間が召喚されるなど聞いたこともない!)

混乱したまま少年を凝視していると少年が口を開いた。

 

「あなたの転移陣でしたか、危ないところをありがとうございました。ところで、どちら様でしょうか? お会いしたことはないと思うのですが、それとここはどの辺りか教えていただきたいのですが?」

 

(転移陣? 助けた? 分らないことばかりだが、不思議な少年だな)

「すまないが多分君と会ったことはないと思う。それと、さっきの門は転移陣などではなく召喚の門だ。私は、魔法で使い魔の召還をしたのだが、君が召還されたのだ」

 

(日本語で通じた! それもかなり流暢な日本語で返された! ほんとに何者?召喚って西洋魔術か? 法術に生き物を召喚するものがあったか?だが…あれは前もって契約が必要だったような?)

どう見ても、西洋人である男が流暢な日本語を話した事に驚く。

「転移ではなく召喚…人間を召喚できるとはすごいですね。私の知る魔術では聞いたことがありません。私は草薙大和といいます。失礼ですがお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

 

「あぁすまない、私はシャルル・ド………クッ」

 

「どうされました!? ん、その傷! 毒ですか?」

 

「そのようだ、多分後10分ともたない」

傷を中心に黒く変色した場所が広がっている。

 

「そんな! 近くに集落は? 薬………魔術では?」

 

「いや、時間的に間に合わない。それにこの毒は治療できないだろう。

多分エルフの毒薬だ…ハァハァ」

まず間違いなくエルフが調合した毒だと確信している。

兄に誘われて来た狩猟大会なのだ、エルフが一枚かんでても驚きはしない。

 

「それより、使い魔として呼んでおきながらルーンを授けることが

出来ない。勝手ながら、ココから離れた方がよい。追っ手が何時来るか分らないからな」

 

「…死ぬことは確定なのですね。私も死確定の状態で助けていただきました。何か出来ることをお返ししたいのですが」

大和は、エルフという言葉に疑問を浮かべる。それも含めて情報の把握と、結果的に命を救ってくれたシャルルに恩を返しておきたいと考えていた。

 

(一方的に呼び出されて、私に恩を感じるか……なんとも可笑しな少年だ)

「では1つ頼みたい。これをガリアのシャルロットという娘に渡してもらいたい。それと…これは君に上げよう。報酬と思ってくれ」

 

「わかりました。後ガリアとは何処の国でしょうか? あとこの場所は?」

 

「なん…? ガリアがわからない? 君は…!」

 

シャルルが言い終わる前に、大和は立ち上がり周囲を見渡す。

(全部で8人、姿を現してもらおうか!)

背中に掛け合わせるように差した刀を両手に抜き放ち一気に風の刃を5つほど放つ。

8人の姿が見えるように邪魔な木を切り倒す。

その背後から剣士が6名、術師と思われる2名驚きの表情で現れた。

 

「あれは敵で間違いないですか?」

殺気を放つ相手が『敵』である事は予想できたが、確認のためにシャルルに問う。

 

「あぁ、すぐに逃げなさい!」

シャルルが言い終わる前に大和は目の前から掻き消えた。

 

敵であるという確認が取れると、大和はすぐに行動に出た。

風を纏って手前にいた剣士2人の間合いに入り、切り伏せる。

返り血を浴びる前に次の二人に切りかかり、右の刀で左腰から斜め上へ切り上げ遠心力を利用して一回転、左の刀で4人目の足を切り裂く。

最後に正面に戻り、右の刀で喉を突いた。

 

最後に残った剣士は流石に反応し、長剣で袈裟切りに振り下ろしてくるが、左の剣で右へ受け流し、右の剣で左脇から切り裂いた。

剣士が倒れると同時に、術師二人から魔術が飛んだ。

 

不可視の刃が迫り、同じく風の刃で相殺。遅れてくる火の玉を右に避け、火の玉を撃ったメイジに風の刃を放つ。

続けて風の刃をもう一人のメイジにも風を放ち、全ての敵を沈黙させた。

 

敵の使った魔法が西洋魔術であった為、詠唱を必要としない大和の方がスピードという面で有利だった。

(ふぅ西洋魔術だな、大した使い手じゃなくて助かった)

全てを切り伏せシャルルを振り返ったところで、うめき声が聞こえた。

 

シャルルは、大和の動きと見たこともない魔法に驚いていた。

(すごい! どこかの貴族か? だが魔法とは違う。どちらかというと先住魔法のように感じたが)

魔力の動きが感じられなかったのだ。

「うぅぅ…」

(もう時間がないな。シャルロット………)

 

うめき声を最後にシャルルは息を引き取った。




召還✖ 召喚○ 誤字にて書き直しました。

ご指摘いただきありがとうございます。
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