妖精の集落にて………
お髭の素敵な長老から得た情報
1.此処はガリアとゲルマニアの国境近くの森である
国境といっても人間の手が入っていない森のため、あやふやであるとのこと
2.ハルケギニアという世界にはガリア、ゲルマニア、アルビオン、トリスティン、
ロマリアという国がある
3.妖精は人間との接点がないので、シャルルやシャルロットをしらない
4.人間は四系統魔法を使う(精霊魔術は使えない)*魔法を使うときは杖を
媒介にしないとならない
5.精霊魔法を使えるのは幻獣・エルフなどで杖などの媒介は不要
人間は精霊魔術のことを先住魔法と呼んでいる
そのため、精霊魔術を使える大和は何者? みたいな反応
大まかに聞いた内容では以上のことくらいしか分からなかった。
そして現在、精霊の匂い?が強い大和を珍しそうに囲む妖精達…
(珍獣扱い? 和むから良いけどさ)
精霊の匂いが強く、セラを助けたという理由ですっかり信用されていた。
ちなみに、セラは勝手に村を離れたことで説教を受けている。ゴシュウショウサマ
結構なお転婆娘なのだそうだ。
(情報を掴むためにもガリアってとこに行かなきゃならないか…
ただ、この世界における人間の生活やら常識みたいなものを得ないと色々やばそうだな)
(食料の確保もしとかないと…朝、ウサギそっくりな動物を捕まえて食べたっきりだし)
妖精達はもてなすと言ってくれたが、まず量が心配で丁重にお断りした。
考え事をしてると半泣きのセラがフラフラと寄ってきた。
「うぅぅぅ」
「随分絞られたみたいだな。」
「ちょっと村から離れたくらいで、あんなに怒ることないのに~~~」
「いや、離れた上に襲われたんだから心配するでしょ」
「うぅぅぅ」
半泣き状態のまま大和の右肩に座るセラ。
「セラ? 聞きたいんだけど、ここから一番近い村か町ってどこら辺?」
いきなりガリアへ行くよりも村か町に行って情報収集をした方が無難と考えて質問した。
「えぇぇ? ヤマトってばもう行っちゃうの?」
少し寂しそうに問いかけてくるセラを見て保護欲に駆られる。
「この世界での常識を知っておきたいし後依頼を受けちゃったし」
シャルルに命を救われたのは間違いなく受けた恩は返す主義だ。
(ん? 人間の気配が1・2………10?)
「なぁ、ココって人間が来たのは俺が初めてだよね?」
「うん、こんな処まで普通は人間なんて近付かないよ。たまに上空を竜騎士が通り過ぎるだけ」
「1キロほど向こうから十人くらいの団体が近付いてる。メイジが2人まじってる」
「え? 本当なの?」
「うん。間違いないよ」
「大変! 長老様に知らせなきゃ!」
あっという間に飛び去り長老に知らせにいったセラを眺めながら、団体が近付きつつある集落の端に向かう。
風を纏い、気配を消す。
序に光を屈曲させて姿も消す。(要は光学迷彩である)
精霊を感じることができない人間には感知することは難しい。
妖精やら、エルフやらは精霊の匂い? を感じ取って意味をなさないだろうが。
「ヤマト~居るよね? 姿が見えないけど…」
長老に知らせ、精霊の匂いを辿って近付いてくるセラ。
「あぁー姿は隠したけどいるよ」
「私たちと同じようなことができるんだね♪」
(妖精の仲間くらいに思われてるな…)
「で、どう対処するか聞いた?」
「うん、私たちは守りの魔法しか使えないから姿を消して隠れるって」
「じゃぁー見てるだけでいいのかな?」
「ただ、この場所を知られたら引っ越ししなきゃだめみたい…」
俯き寂しそうな表情に如何にかできないか思案する。
「あの人間たちはなぜ妖精の村にくるんだ?」
「たぶん風石を奪いに来たんだと長老様が言ってた。他の集落も襲われたことがあるって言ってた」
風石とは、風の力が宿った石で、風の力が強い場所で長い年月をかけて出来るものらしい。
人間には貴重な石で結構な値段で取引されるのだ。
(ってことは、山賊か? 依頼をうけた傭兵って事もあり得るのか)
「追い払っても、次々と来そうだね。まぁーなんとかしてみますか」
とりあえず追い払うことを決め身構える。
(殺してしまえば場所の特定はできないだろうけど、相手が分からない以上やめといた方が無難か)
「セラは隠れてて!」
言うが早いか大和は近付いて来る気配に向かって飛んだ。
(俺の姿は見せない方が今後のためかな? )
精霊魔術を使える人間が存在しない世界で、大和の存在は異様なのだ。
幸いこの世界は前の世界と違って精霊の密度というか、存在が大きい為結果的に大和の術の威力が上がっていた。
風を纏い飛ぶように進むと相手の姿が見えた。
先頭には屈強な戦士が四名、姿は確認できないが、風の索敵で左右に30メートルほど離れてメイジ1と戦士2のトリオが確認できる。
(逃げてもらうのに足を怪我されたらまずいな)
姿を現さないまま風の刃を放つ。
相手を視認できずとも気配のみでその場の精霊に干渉し十人全員の手、背中を中心に深くはない傷を負わせる。
しかし、向かって右にいた戦士は数秒の停滞後、メイジを支え中央の戦士の下へ移動してきた。
遅れて左の三人も中央へと集まる。
周囲を警戒しつつ、右から来たメイジが怪我を負った仲間たちに魔法を掛けていく。
すると傷も浅かったが全ての怪我が一瞬のうちに消えていく。
(へぇー系統魔法って便利だな! 水の精霊術師みたいなことできるんだ。ってことはあのメイジは水の系統魔法を使えるってことかな?ただ、自分の怪我を治さないところを見ると、系統魔法では自分の怪我は治せないのか)
自分以外の怪我を治療し終えると、数分の会話の後、もと来た道を戻り始めた。
(戦略的撤退ってとこか? 人数増やして対策練ってまた来るだろうな)
精霊との同調を全開にして捜査範囲を広げ、相手が範囲外に出たところで大和は村へと帰って行った。
姿を現し、風を纏って村へ辿りつくとセラが胸に飛び込んできた。
「おかえり♪ あいつらは倒したの?」
「いや、帰ってもらった。それと、長老と話がしたいんだけど案内頼めるかな?」
逃がしたことで、また何時現れるとも分からないことに不安顔のセラは、取りあえず大和を長老の下へと促した。
「長老、こちらに近づいて来た人間は追っ払いましたが、態勢を立て直してまた来ることが予想されます。それで、風石を見せて頂けないでしょうか? うまくいけば此処に寄りつけなくできるかもしれない」
大和の言葉に思案顔の長老は
「追い払ったことに対し、感謝します。それと、風石をお見せするのは問題ないのじゃが、如何されるおつもりで?」
「この村を覆うように結界を張ろうかと思います。ただ、永続的に結界を維持するには何らかの力が必要ですので、風石を利用できないかと考えてます」
大和の言葉に「おぉ!」と驚いた声と共に、出来るなら是非にと長老は返す。
案内された貯蔵庫には沢山の風石が積み上げられていた。
1つ1つの石から結構な風の力を感じる。
(これならいけるか)
「この村の中心ってこの辺ですよね?」
「あぁ、この辺で間違いない」
「では、この辺に細工をしますので、少々おまちを」
貯蔵庫の近くにあった木に風で複雑な魔方陣を描くと、中心に直径15センチほどの穴を穿つ。
その中に風石を一つ入れ、風の力を加える。
すると、風の精霊が周囲に集まり、一気に飛散し村全体を覆った。
「これでこの村を周囲から目視できなくなりました。後、村からの出入りは体全体を風の精霊で纏わなければ出来ませんので、襲われることもないと思います。それと、風石の力が弱まれば結界の効果も弱くなりますから、定期的に風石を換えて下さい。多分3年~5年で交換が必要です」
「おぉ! なんともありがたい! これで、村を棄てる必要がなくなりました!」
顔を輝かせてお礼を言われ、是非にと3つほど風石を頂いた。
そのまま一番近い町の場所を聞き、妖精の村を後にした。