旋風と雪風   作:あすは我が身

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勉強と初仕事

村長の家に案内され、村長の居る部屋に通さた。正面に村長と村長の息子で先ほどココまで案内してくれたサムが座る。

「ゲルマニアからアルデンの森を抜けてこられたそうで、かなりの腕だと察します。

お急ぎの用事がないのでしたら、ひとつ頼まれごとをしていただけませんでしょうか?」

 

馬鹿丁寧な対応に吃驚したものの、戦闘の腕を買われての仕事だと感じた。

メイジというのはそうそう居ないのだと思われた。

 

「畏まらないで頂きたい。魔法といってもたいしたことは出来ません。急ぎの用もありませんし、旅が長いので多少の争いごとには慣れていますが…内容をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

シャルルからの依頼は情報収集が先であり、この村で情報収集と先立つ物の案件が解決するのなら仕事を請けても良いと考えたのだ。

 

「実は…最近コボルド鬼が現れるようになったのです。村に近づくことはありませんが、仕事のため森に入りますから、襲われることもあるのです。死者は出ていませんが、怪我人が数名でております。領主様へ討伐の依頼を出しておりますが、最近王都が騒がしくなってるとかで何時討伐に来ていただけるか分からない状態なのです」

 

「コボルド鬼ですか、どのくらいの数が目撃されてるのしょう?」

 

「一度に目撃された数は5匹程度ですが、それで全部かは分かっていません。引き受けていただけるようでしたら、宿と食事、後1日につき10スゥ、コルボルド鬼1匹に対して30スゥを支払います。小さな村ですので、これが限界です。お願いできませんでしょうか?」

 

価値基準が良く分からないが、申し訳なさそうにしている時点で基準よりは安くなっていると思われた。

「はい、急ぎの用もありませんしお引き受けします」

 

「おぉ! ありがとうございます。予算の都合もありますので、長くてニューイの月までで、もしコボルド鬼を5匹倒していただければ契約終了ということでお願いします」

ニューイって…なに?とも思ったが取り合えずは頷いておく。

 

話も終わり村長宅の客間へと通された。

特別やることもなく村周辺の探索ということで村長宅を出る。

 

村の北へ30メートルほど離れ森に入る。

「この辺でいいかな?」

 

「何をするの?」

セラが右肩から飛び立ち正面にまわる。

 

「風の精霊に頼んで周囲を探索するの」

風の精霊と意識を同調し、半径2キロまでの探索を行う。

(探索にはコボルド鬼は居ないな。どこかに棲家があるのかな?)

 

「コボルド鬼は?」

 

「半径2キロ以内には居ないね」

 

「2キロ?」

 

(あれ?単位が違うのか…通貨単位も違ったし面倒くさいな)

「ん~さっきセラと合流して町までゆっくり来たでしょ? あれとの3分の1くらいの距離だね。キロっていうのは俺の元居た世界の単位なんだ」

普通に歩けば時速4~6キロで、さっきは話しながらゆっくり歩いたから多分時速4キロ。

計算上はさっき1時間半ほど歩いたので、おおよそその程度と考えた。

ちなみに、自動巻きの腕時計をしているがこの世界で時間が通用するか分からず目安程度に考えていた。

 

「ん~さっきの距離の3分の1ってことは…2リーグくらいだね」

(なるほど、キロ=リーグで考えていいかもしれないな)

 

「じゃぁさ、リーグ以外の単位もあったら教えて?」

 

「100サントが1メイルで1000メイルが1リーグだよ」

(おぉ! センチ、メートル、キロの単位がそのまま使えるとは! 他の単位もきいとこ)

 

こうして夕暮れまでセラの知っている情報を聞き出した。

1、通貨単位 エキュー、スゥ、ドニエ、左から金貨、銀貨、

  銅貨で1エキュー=100スゥ、1スゥ=100ドニエとのこと。

2、暦は12月あり、4週で1月、1週が8日。今はフェオの月第3週らしい

  (ってことは、約3月ほど滞在か。もしくはコルボルト鬼5匹ね)

3、面積と重量の単位は分からない

 

日も暮れて村長宅へと帰ってきた。

応接間へ入り見回りの情報と、森で仕事をしていた村人の情報を交換する。

今日はコボルドを見かけることはなかったとのこと。

 

食事をとり湯浴み後客間で時間をつぶす。

先ほど食事の時に暇つぶしになにか本はないか?ときいたが、高価なためないとのことだった。

(字の勉強でもしたかったが……)

さすがに妖精であるセラは字の読み書きはできなかった。

 

 

 

村に滞在して2週間が過ぎた。その間に結構な収穫があった。

 

まず気が付いたことが、口の動きと聞こえる発音が違うということ。

これは、召還された際に何らかの魔法を浴びて、念話のように相手の言葉を理解できるようになったと考えられた。

自分の身体に掛かった魔法を解読しようと精霊術を駆使した結果、微量の魔力を頭の中心に感じることが出来、解除することもできるがその途端にハルケゲニア語を理解できなくなる為諦める。

ただし、魔力を抑えることは出来た為、口の動きと発音を合わせることが出来た。

セラに同じ単語を時間差で言ってもらうことで、生活における単語は理解できるようになった。

理解できた段階で、こんどは村で唯一読み書きが出来る人に会い、時間が空いたときに発音と文字を50音のようにして書き込んでももらった。(20スゥあげた)

要は、ローマ字の要領である。片言ではあるがなんとか読むことが出来るようになった。

分からない単語は言葉で発し、セラに聞くことで徐々に難しい単語も覚えていった。(発音が片言で苦労した)

 

前の世界では職業柄学校へは通えず、家で家庭教師に生きていくうえで必要なことのみを学んでいた。

これには戦闘も含まれる。

知識の面ではインターネットで雑学を叩き込み、仕事で武器の扱いや戦闘術を学んでいたのだ。

ただし、14歳になったばかりのころに、ある事情から家を失い、自分ひとりで生きてきた。まぁ15歳でこっちに召還されたから1年程度ではあるが。

 

ウルの月ヘイムダルの週ラーグの曜日。

コボルド鬼の気配を村の東で感知し、セラをつれて向かう。

数は5匹。目撃情報と同じ数であった。

但し、そう遠くない場所で村人3名の気配も感じ取っていた。

「これで、依頼も終了だね♪」

 

「いや、今から戦闘になるんだからまだ終わってないよ」

 

「ヤマトは強いからすぐ終わるよ~♪」

 

なんとも信用されたものだが、大和自身も負ける気はしなかった。

 

視認できる位置に付き様子を伺う。

コルボルト鬼は戦闘体制のまま村人がいる方向へ向かっている。

そろそろ村人も視認できる場所まで来ていた。

 

「魔術は最低限で剣でやるか」

精霊術と魔法の区別が村人に出来るとも思わないが、[念には念を入れる]とうのが大和のスタンスである。

「セラはその辺に隠れてて」

 

「は~い。いってらっしゃ~い♪」

なんとも緊張感に欠けるやり取りで…

 

一番先頭のコボルド鬼に向かって風の刃を飛ばし、最後尾の2匹に飛び掛る。

「ゴルォォ」

 

先頭の1匹は上半身と下半身がズレそのまま倒れこむ。

最後尾の2匹の間に滑り込み、左右の刀で一閃(二閃?)同時に頚動脈を切られ豪快に血を噴出しながら倒れこむ。

中央にいた2匹は左右に飛び去り、粗末な短剣を構えるが、大きく左に回りこんでいた大和を2匹は見失っていた。

(たしか、コボルド鬼討伐の証拠に首が必要だっけ? 持って帰るのやだな…)

 

考え事は後回しにして、背中を向けている1匹に背後から首を落とし、倒れこむ前に風の力で飛び越え、正面から最後の1匹を蹴り倒し、倒れたところに心臓をさして戦闘は終わった。

(ん~首1つ持って帰って、あとは4匹分の牙もって帰るかな? 死体を村人に確認してもらえば大丈夫かも)

 

「おつかれ~やっぱりヤマトは強いね~♪」

上機嫌で大和にまとわり着くセラ。和む………

 

「不意打ちが得意だからね」

 

などと話をしていると、戦闘が始まってから気が付いていた村人三人が恐る恐る近づいてきた。

「大和さん! 大丈夫ですか?」

 

「えぇなんともないですよ。それよりコボルド鬼の首を持って帰らなきゃならないのですが、死体の確認を三人にしてもらって、首1つと牙を4匹分持って帰ることで証拠になりませんかね?」

 

「5匹全部退治してくださったのですか! スゴイ! …多分首1つと牙で大丈夫だと思いますが、荷車を持ってきてますので首5つを持って帰られた方が良いかと思います」

口々に「すごい」だの「信じられない」だのと小声で行っていた他の二人も同意してくれた。

 

申し出をありがたく受け荷車で首を5つ運び五人で村へと帰った。

(セラを匹で呼ぶのは躊躇われたので…)

 

村長にお礼を言われ、1エキュー50スゥを貰い、残金2エキュー90スゥとなった。その日は宴となり、宴の場で、他にコルボルト鬼がいないか調べたいので3日ほど滞在させてもらえるように頼む。

もちろん報酬は不要だと告げた。

村長は低頭し是非お願いしたいことと、せめて食事と宿は提供したいとの申し出を受けた。

 

翌日から移動しながらの捜索を開始した。

村人に気づかれないように上空から風で捜索すること2日目、東に5リーグ離れた場所に複数の気配を確認した。単位を覚えたのでハルケギニア風に………

その日は日も落ちた為、村へ帰り翌日改めて向かうことにした。

 

「色々調べましたがこの周辺にコボルド鬼は確認できませんでした。もう大丈夫だとは思いますが一応領主様に掛け合って、捜索させたほうがよろしいかと思います」

 

「何から何までありがとうございました。

そのように領主様へは伝えておきます」

 

 

 

翌日

「何もない村ですが、近くにいらした時は是非立ち寄ってください」

 

「では、失礼します」

丁重に挨拶をし、村人に送られ徒歩で東に向かう。

 

「何でコボルド鬼がいっぱい居ることを伝えなかったの?」

理解できないという表情でセラが問いかけてくる。

 

「退治してもこれ以上あの村では報酬が難しいでしょ?かといって、

無償で退治したら変に有名になっちゃいそうだし」

セラとしては大和がコボルド鬼を退治するのは確定で話を振っており、

大和も退治することは前提で話が出来ている。

なんとも人の良い話である。

 

十分に村から離れ、風を纏って飛び立つ。

数分で洞窟へとたどり着いた。

 

「ん~30匹くらいいるな…。ちまちまやってたら時間かかるしメンドイ」

 

「風で一気にやっちゃえば?」

 

「ん~~~あ! いいこと考えついた」

洞窟の入り口から3メイル上に岩の出っ張りを見つけ、ご機嫌な口調で言い放った。

 

少し精神を集中し、何時もより威力のある風の刃を解き放つ。

風の刃は岩の下から一気に斜め上へと吸い込まれ、地響きとともに入り口を岩が覆った。

 

「後は、洞窟内の酸素を無くしてっと………………………はい終了」

 

風で探索した結果、10分後には洞窟内の生命反応が全てなくなった。

 

「なんか、豪快に終わらせちゃったわね…」

唖然としながらも半笑い状態のセラ

 

 

 

 

まぁーミッション・コンプリートってことで…いいよね?

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