旋風と雪風   作:あすは我が身

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情報収集と噂話

「やっと大きな町に着いたな~」

眼下にはガリア国アルデラ領の町アルデラがあった。

徐々に高度を下げ、町から3リーグほど離れた森に下りる。

 

「あそこに用事があるの?」

相変わらず右肩で寛ぐセラが大和の髪をもてあそびながら問いかける。

 

「用事っていうか、情報収集と観光~」

エギンハイムを発ってからいくつかの村を巡り、情報を集めていたが、小さな村では大した情報は得られていなかった。

他の村でも、コボルド鬼退治や山賊退治などの仕事を請け負い、持ち金12エキュー80スゥまで増えていた。

村を巡っているうちに召還されてからすでに半年が経過している。

 

「にしても、この格好は…落ち着かないな」

 

「似合ってるよ♪ それに大して前の格好と変わらないじゃない」

 

「いや、色合いとか見た目は大して変わらないけど生地がね…」

現在、大和の着ている服は、立ち寄った村で仕入れたハルケギニアでは一般的な平民の服であった。

黒いズボン(裾が広くてスースーする)に薄い茶色のシャツ。さらに、皮製の粗末な胸当てを着けていた。

生地は荒く、ゴワゴワしているため着心地はあまりよくない。

行商は組合のパスが必要らしく、傭兵ということにするためだ。

前着ていたジーパンに黒いシャツ、黒いコートは背中のリュックに入れている。

 

「この町でシャルロットって人のことが分かればいいんだけど…シャルルの身なりが良かったし、魔法を使えたようだから貴族様確定だろうな…」

貴族という言葉に睥睨しながら今後の展望に精神が沈む。

立ち寄った村での話しでは、表面上「貴族様のおかげで」とか「貴族様はすばらしい方々で」などと話していたが、酒場で話し込むといい噂なんて1つもなかった。

 

貴族は魔法が使える。

平民は魔法を使えない。

一部魔法を使える平民もいるが、貴族との交わりによるもので要は妾だったり、犯罪まがいで出来た子供ということ。

貴族と平民の格差は天と地。

町で肩がぶつかっただけでも殺されることがある。

もちろん殺した貴族を罪に問うことはない。

 

話をまとめると、中世ヨーロッパあたりと同じような感覚。

唯一の違いは魔法が表舞台に上がっている事と、モンスターなどが存在することか?

 

「おい! 止まれ!」

門番に槍を突きつけられ問いかけられる。

 

「何のようでココに来た? 素性を明かせ!」

高圧的な態度で一方的に話しかけられた。

 

「仕事を求めて旅をしているものです。傭兵として各村に立ち寄りコボルド鬼や山賊の退治をしてきましたので、兵士さまにご報告と村の代表から手紙を託ってまいりました」

色々な村を巡ったうち、2つの村で「アルデラに行く」と伝えたところ、手紙を託ったのだ。

手紙を兵士へ渡し、しばらく待つように言われる。

 

「その妖精はお前の使い魔か?

見たところ杖は持っていないようだが…剣と契約でもしているのか?」

他の村でも不思議がられ問われたことがあった。

話の内容で『杖』という形に拘らずとも、

魔法の媒介には使えるということが分かっていた。

 

「はい少しだけ魔法の素養がありましたが、

身を立てるほどではありませんので剣を使っております」

 

「ん~妖精を使い魔にしている時点でかなりの使い手だとおもったが、

実力だけで選ばれるわけではないようだな」

勝手に納得しなにやら思案顔で無言になった。

 

暫くして…手紙を持って行った兵士が戻ってきた。

「討伐の件はご苦労だった。

これといって不信なことはないので町への立ち寄りを許可する」

 

「ありがとうございます」

深く頭を下げ町の中へと入っていく。

 

「わぁ~人がいっぱい!」

町に入ってすぐに露天の並ぶ通りに出る。

溢れかえるほどの人に興味津々といった表情のセラが肩の上からキョロキョロと辺りを見回している。

 

「まずは宿屋をさがさなきゃ」

セラの為に果物を数個買った際、店主に安い宿屋を紹介してもらった。

大通りからそれ、少し路地を進むと紹介された宿屋へと到着する。

その宿屋は『流れる希望亭』という名前だった。

(希望が流れちゃまずくね? なんてネーミングセンスだよ…)

 

宿を取り荷物を置いて町をぶらつく。

「ねぇねぇ、あれはな~に?」

「あれは?」

「これおいしいね♪」

はしゃぎまくりのセラに苦笑しつつ周囲の噂話に耳を傾ける。

 

「オルレアン様がお亡くなりになってからたったの半年で、奥様まで病気になられたそうよ…」

「それに、ココ半年の間に王都で………」

「最近貴族様のお屋敷に盗みが入ったらしいわ………フーケ………」

 

重要そうな話はあまり聞こえてこなかったが、

オレルアンって偉い人が死んで奥さんまで病気になったとのこと。

(なんとも貴族らしいことで陰謀だらけだな)

 

(そろそろ戻って酒場で情報収集しますかね)

宿の1階は酒場兼食堂だったが問題があった場合そのまま2階で寝るのが難しくなると考え、路地裏を適当にうろつき酒場を探していた。

 

「待て!」

路地の角から全身を真っ黒なローブで包み込んだ人影が飛び出し、

その後ろから衛兵らしき甲胄をまとった騎士が3人現れる。

大和にぶつかる直前ローブ姿の人物は空高く舞い上がり屋根伝いに消えて行った。

 

「くっそ! また、フーケに逃げられた!」

振り切られた3人の騎士は悔しそうにフーケを罵る。

 

「すみません、先ほどの人物は盗人かなにかですか?」

 

「なんだ? フーケをしらんのか? 悪名高い盗賊だ。もし見かけたら知らせろ!」

 

上司にでも報告に行くのか、早足で元来た路地に消えていく。

 

「フーケ? 噂話に出てた盗賊か?」

昼間、耳にした話を思い出しつつそんな話があったことを思い出す。

 

「盗賊だって! 捕まえたらお礼くれるかもよ?」

 

「ん~あまり目立ちたくない…」

 

セラが面白そうに話を振ってきたが、大和がやる気なし! という態度でいると「面白そうなのに」だとか「お金があれば美味しいものいっぱい食べられるのに」だとか言っている。

 

軽くスルーして一軒の酒場へと足を向けた。

 

酒場へと入りカウンター席へと座る。

酒場には4つの丸テーブルに椅子が5つづつ、カウンターに5席あり25人ほど座れるようになっていた。大和を含め13席が埋まっている。

 

カウンターに座った大和は簡単な食事とエール、それとセラ用に果物の盛り合わせを注文する。

30分ほど食事に専念し、エールを追加注文し店主に話かける。

「さっきフーケとか言う盗賊を見かけたんだけど、追いかけてた騎士は振り切られて苦虫をつぶしたように悔しがってた。そんなに腕のいい盗賊なのかな?」

 

「なんだ、おまえ『土くれのフーケ』をしらないのか? 貴族ばかりを狙うメイジの女盗賊さ」

心底驚いた表情でなにやら自慢げに店主は語りだした。

 

「あまり評判の良くない貴族ばかりを狙って盗みを繰り返してるが誰も捕まえることが出来ないのさ。まぁー平民からするとスカッとさせてくれるヒーローだな」

 

(なるほど、馬鹿な貴族ばかりを狙ってるため、平民からすると『ざまーみろ』てきなことか)

「最近王都がきな臭いって聞いたがそれもフーケのせいなのかな?」

 

「いや………おまえよそ者か?」

 

「あぁ、小さな村を巡ってたからこっちについたのは今日の昼でさ、噂話程度にしか知らないんだ」

そういって金貨を1枚手渡す。

 

「ん。まぁーそういうことなら知らなくても当たり前かもな」

軽く口角を上げただけの笑いで金貨を懐にしまう。

 

1、半年前に王弟のオルレアン公シャルルが狩に出かけ亡くなる。

2、つい先日その婦人が病気に倒れる。

3、ココ半年で王弟派の貴族が複数名事故・変死・追放・行方不明などが続いている。

 

大きくはこの3つの情報が得られた。

 

「あと、シャルロットという人をしらないか?」

ついでとばかりに聞いてみた。

 

「シャルロット様は亡くなったオルレアン公シャルル様の一人娘だ」

そんなことも知らないのかと言わんばかりに即答された。

 

「なるほど、今シャルロット様が何処にいるか知らないか?」

 

「さぁ~な、そんなことを聞いてどうするんだ?」

 

「いや、気になっただけさ」

 

もう話すことは無いぞと小声で話し店主は仕事へと戻っていった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

アルデラへと来て1週間が過ぎた。

その間、情報収集に走り回っていたがシャルロットに関する情報は大して得られなかった。

噂話のなかでは、フーケが派手に盗みを繰り返しており町民の娯楽話が増えていることが分かった。

 

「フーケと接触できないかなぁ?」

知らないうちに言葉に出ていたが大和は気づいていなかったが、

 

「なんで? やっと捕まえる気になった?」

目の前をふわふわと浮かんでいたセラが振り向き声をかけきたことで、

思わず呟いていたことに驚き他の人に聞かれなかったかと周囲を警戒した。

「いや情報が欲しいからさ、盗賊なら情報に強いんじゃないかなと」

 

昼食をとるため宿屋へと戻り1階で昼食をとる。

「なんか、フーケ捕縛の為に結構な数の兵士が集められたって…」

 

何の気なしに聞いていた噂話に大和は考えをめぐらし、『ニヤッ』と不適に笑った。

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