真夜中の町。
一軒の大きなお屋敷の屋根の上。
遠くに追いかけっこしている影が見える。
そう、フーケと領主の雇った3人のメイジである。
メイジがファイヤーアローを放てば、フーケが土の壁で防ぐ。
フーケが土の壁を高く作り上げ道をふさげば、ファイヤーボール2つとエアーハンマーが飛び壁を粉砕する。
「あぁ~こりゃフーケも捕まるな~」
大捕り物を見学しながら、のんびりと口ずさむ。
「そんなにのんびりしてていいの?」
今回の『フーケ捕縛クエスト』に参加した大和は全くやる気も見せず見学に徹していた。
捕縛した者には1000エキューが支払われるとあって結構な人数が集まっていた。
「ん~そろそろ行動を起こさないとだめかも?」
言葉にした内容と態度がかみ合わない。
「もぅ! 急がなきゃ他の人に先越されちゃうよ」
一人焦るセラを余所にのんびりと立ち上がると風を纏って屋根から離れる。
立地的にはあの川がいいかな?
光学迷彩を纏い姿を消すと川の上空で停止する。
丁度、川がある場所目指してフーケが走ってきた。
《一瞬でいい、後ろに壁を作って追手を足止めしろ。そのまま真っ直ぐ向かい、川を飛び越えろ》風に言葉を乗せて遠くのフーケへと言葉を伝える。
「だれだい!? どこから…」
《時間がない、逃げ切りたかったら言う通りにしろ》
相手の言葉を風伝いに聴き、遮るように命令する。
フーケが背後に土壁を作り一気に跳躍。
フライを利用して向こう岸へとたどり着く。
土壁を破壊し跳躍する2人のメイジ達は川の中央にたどり着く前に。その場にとどまったメイジが詠唱を終える前に、水飛沫が視界を覆った。
大和が空気を圧縮し川の中央に叩き込み、盛大に水を巻き上げたのだった。
水しぶきの中今度は体中に電気を浴び、二人のメイジが川の中へと落ち、留まったメイジはその場で昏倒する。
風を複数操りぶつけ合うことで、摩擦により静電気を作り上げた結果だった。
水飛沫のせいで、遠くから迫っている追手には何がおきたのか分かっていない。
フーケは水飛沫が上がった時点で逃げることをやめ、一部始終を見ていた。
ただし、この現症を起こした人物は何処にも見当たらなかった。
(ふぅ、終わったな)
呆然とするフーケの傍へ降り立ち、光学迷彩を消す。
「なっ!」
身構えることも忘れ、動揺の色を濃く現したフーケの表情はあどけなくかわいいと感じる。
「取り敢えず隠れようか。他の追ってが迫ってるから…」
何でもないように声をかけ、フーケの手をとり暗い街へと消えて行った。
「なんで助けたのさ?あんたも私を捕まえようとしてる奴に雇われたくちだろ?」
追手が迫っていたこともあり、大人しく大和の泊まっている宿まで付いてきたフーケは部屋へ入るなり口を開いた。
「雇われはしたけど、フーケの情報が欲しかっただけで、捕まえる気は最初からなかったよ」
「えぇぇぇぇぇ!折角捕まえたのに! お金もらえるのに! なんで~~~!」
「いや、捕まえるって言うのは情報を貰う為で、礼金欲しさではないぞ…最初から。一度も報酬云々は話してないと思うが? それに、こないだ情報が欲しいってセラにも言ったよね?」
「ぶぅ」
不貞腐れたセラを宥めつつ、フーケに視線を向ける。
「情報ってのはなんだい? 助けてもらったし答えれる範囲でなら教えるよ。ただし、知らなかったり話すわけには行かないことで、あんたが得をすることは無い場合でも逃がしてくれるんだろうね?」
「そのことは約束する。フーケが盗賊だろうがなんだろうが、弱いものいじめをしてるわけではないことは分かってるから」
「…あんた、変な奴だね~。まぁいいさ。で? 何を聞きたいんだい?」
「まず、オルレアン公シャルルの娘シャルロットの居場所が分かれば教えて欲しい。」
「…お姫様の居場所なんか知ってどうしようってのさ?」
「質問をしてるのは俺なんだけど? 別に危害を加えようとかじゃないから知ってるのなら教えて欲しい」
「…本当かどうかは知らないけど、オルレアン家の屋敷に母親と共に幽閉されてるって聞いた」
「オルレアンの屋敷の場所は?」
「トリステインとの国境近くってとこまでしか知らない」
「わかった。ありがとう」
「なんだい? それだけかい?」
「あぁ。他にも聞いて良いのなら後ひとつ。何で盗賊なんてやってる? あんたほどの腕なら真っ当で稼げる仕事もあるだろうに?余計なお世話ってのは分かってるが、今日みたいに何時かは捕まるぞ」
「…わかってるさ、それくらい。大きく稼がなきゃならない理由と、貴族が嫌いっていう理由で貴族専門の盗賊をしてるってとこさ」
「大金が必要な理由を聞いても?」
「…見逃してくれる御礼と、あんたが面白いから特別教えてやるよ。ただし…誰にも言うな」
「あぁ、誓って」
「孤児を沢山抱えてるのさ、外に出て働けるのが私一人ってのが理由」
少し寂しそうに、ただ何かを思い出すような優しい眼ではっきりと言った。
「余計なことを聞いた…すまない」
「いいさ。勝手にしゃべっただけだ」
「見かけどおり優しいな、フーケ」
「なんっ…」
顔を赤くしたフーケは言葉をなくした。
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out side
「ちっ私としたことが罠にはまるなんてね…」
何時ものようにお宝を手に入れ、屋敷から出た瞬間にメイジ3人に襲われた。
襲われるタイミングや、周囲を囲まれた状態を見れば罠であることは明白だった。
昨晩、酒場で聞いた情報からして罠だったのだろう。
包囲を突破することはできた。
しかし、メイジ3人を撒くことはできず、追いかけっこの最中である。
背後からの攻撃に土壁で対処し、足止めとばかりに飛び越えられないような高い壁を作る。
しかし、メイジ3人による魔法で破壊される。
(こりゃ~やばいね…)
半ば覚悟しながらも、最後まで生きることを諦めるつもりはなかった。
(ティファ達のためにも如何にか生き伸びないと…)
前方に川が見えてくる。
(一か八か飛び込んで姿を眩ませるか?)
だが、それでも逃げ切れる可能性は殆どゼロに近いと分かっている。
《一瞬でいい、後ろに壁を作って追手を足止めしろ。そのまま真っ直ぐ向かい、川を飛び越えろ》
「だれだい!? どこから…」
《時間がない、逃げ切りたかったら言う通りにしろ》
何処から聞こえたのか?いったい誰が? 疑問は多く、とてもではないが信用なんてできない。
しかし、このままでは確実に捕まる。
覚悟を決め背後に土壁を作り上げる。
助走をつけて川へとダイブし、フライを唱え向こう岸へとたどり着く。
物陰へと入った瞬間、大きな音に振り返る。
目の前は大きな水柱と水飛沫により視界を遮られ、追手の姿は確認できなかった。
一瞬後、水飛沫のなかに無数の光が発生したのが確認できた。
水飛沫が消え戻った視界に昏倒するメイジ3人の姿が映った。
(水飛沫で視界を遮り小さな雷を作り出すことで3人ものメイジを一瞬で倒す。そんな芸当を出来る奴が…)
理解は出来ても実行は無理。それほどにこの現象を起こした者は高い技量をもっていると言えた。
「なっ!」
いつの間にか直ぐ脇に若い少年といえる年齢の男が立っていた。
(何時現れた? 全く気配を感じなかった)
「取り敢えず隠れようか。他の追手が迫ってるから」
言うが早いか、手を取られて暗い道を走りだした。
手をひかれるままに、少年の後を付いていく。
(10代半ば? 20までは届いていない。それに肩に乗ってるのは妖精? いったい何者なんだ?)
「なんで助けたのさ? あんたも私を捕まえようとしてる奴に雇われたくちだろ?」
少年に促されるままに一軒の宿屋へと転がり込んだ。
追手から逃げ切れたことで緊張も和らぎ、疑問を口にした。
「雇われはしたけどフーケの情報が欲しかっただけで、捕まえる気は最初からなかったよ」
「えぇぇぇぇぇ! 折角捕まえたのに! お金もらえるのに! なんで~~~!」
「いや、捕まえるって言うのは情報を貰う為で、礼金欲しさではないぞ…最初から。一度も報酬云々は話してないと思うが? それに、こないだ情報が欲しいってセラにも言ったよね?」
「ぶぅ」
緊張感の欠片もない会話に脱力し、お金目当てではなく情報ということに興味がわいた。
「情報ってのはなんだい? 助けてもらったし、答えれる範囲でなら教えるよ。ただし知らなかったり、話すわけには行かないことで、あんたが得をすることは無い場合でも逃がしてくれるんだろうね?」
「そのことは約束する。フーケが盗賊だろうがなんだろうが、弱いものいじめをしてるわけではないことは分かってるから」
「…あんた、変な奴だね~。まぁいいさ。で? 何を聞きたいんだい?」
盗賊家業をやってて弱い者いじめじゃないから良いなどと言われたのは初めてだった。
結論、馬鹿なやつ。ただし、人の良いってのが付きそうだ。
「まず、オルレアン公シャルルの娘シャルロットの居場所が分かれば教えて欲しい」
「…お姫様の居場所なんか知ってどうしようってのさ?」
(暗殺者? 完璧に気配を消した技量と魔力。考えられなくはない)
「質問をしてるのは俺なんだけど? 別に危害を加えようとかじゃないから知ってるのなら教えて欲しい。」
「…本当かどうかは知らないけど、オルレアン家の屋敷に母親と共に幽閉されてるって聞いた」
(これだけ腕の良い暗殺者がシャルロットの居場所を掴んでいないわけはないか・・・)
「オルレアンの屋敷の場所は?」
「トリステインとの国境近くってとこまでしか知らない」
「わかった。ありがとう」
「なんだい? それだけかい?」
(たったそれだけの為に、私に恩を売るようにまわりくどい方法で助けたと?)
「あぁ。他にも聞いて良いのなら後ひとつ。何で盗賊なんてやってる? あんたほどの腕なら真っ当で稼げる仕事もあるだろうに? 余計なお世話ってのは分かってるが今日みたいに何時かは捕まるぞ」
「…わかってるさ、それくらい。大きく稼がなきゃならない理由と、貴族が嫌いっていう理由で貴族専門の盗賊をしてるってとこさ」
「大金が必要な理由を聞いても?」
「…見逃してくれる御礼とあんたが面白いから特別教えてやるよ。ただし誰にも言うな。」
(こいつの目は興味本位というより、心配してくれていると感じる)
「あぁ、誓って」
「孤児を沢山抱えてるのさ、外に出て働けるのが私一人ってのが理由」
そう、貴族が勝手に起こした戦争で、済むところも家族も失った子供たち。
何としてでも助けたい。
「余計なことを聞いた…すまない」
「いいさ。勝手にしゃべっただけだ」
「見かけどおり優しいな、フーケ」
「なんっ…」
餓鬼のくせに!!!
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yamato side
夜が明けきる前にフーケは宿を後にした。
オルレアンの屋敷の場所がトリステインとの国境と言われたが、大和には土地勘が全くなく、地図を手に入れることを考えた。
1日をつぶして手に入れた地図は大まかなことしか書かれておらず、今いる場所から西ということしか分からなかった。
更にもう一日つぶし、旅に必要な物を揃え、明日の旅に備えて宿へと戻っていた。
「色々買い込んだなぁ~。セラの着替えとおやつ(ドライフルーツ)が一番高かったけど…」
旅用品として、寝袋が欲しかったが、そんなものは存在しなかった。厚めの毛布で我慢した。
他にも、調理用の鍋・干し肉などの保存食、着替え、アルコール度の強いお酒(怪我したときの消毒用)、包帯、各種薬などを買い込んでいた。
中でも、セラ用の着替え3つが高すぎた。
「1着2エキューって…俺の服なんて5分の1だぞ」
今回の買い物と宿代で残金が3エキュー30スゥまで減っていた。
「女の子の服はそれくらいするのよ♪」
「…布の使用量は少ないのにな、加工代だろうね…」
翌朝早くに宿を引き払い、オルレアンの屋敷へ向けて旅立った。