艦隊これくしょん~Before Rebellion~ 作:キサブロー
よろしくお願いいたします。
二月三日 日本近海 護衛艦ブリッジ
「なんだ、何が起きたというのだ! 機関室・・・うわ」
艦内に響く轟音。
「何者かの攻撃です」
「何? どこの勢力だ、国籍は? 甲板から何か見えないか」
「・・なんだと、それは冗談ではないのだろうな」
「どうした?」
「艦長、敵を発見したそうです」
「どこだ」
「左舷だそうです。しかし、敵は・・・」
「いいから回線を回せ・・・何かあったのか」
同甲板
「艦長、サメです!体長二、三メートルのサメのようなものが、
装甲を食い破っています」
『撃ち殺せるか』
「無茶ですよ! この距離じゃ、狙おうにも狙えません」
直後、船体左後部で大きな爆発音がした。
次の瞬間、船体が左に大きく傾く。
「沈むのか? この艦が? 何もできずに」
「艦長!退艦命令を!」
「・・・総員退艦! 艦を放棄する」
救命ボートに逃れた護衛艦のクルーたちは、自分らの艦が沈みゆくのを、ただ茫然と見るしかなかった。
以上が、この護衛艦の艦長の口から語られたことである。
このことは当初、誰にも信じられることはなかったが、この事件以降、太平洋、大西洋、インド洋などで同様の事件が続出したため、国連は、この敵を[アンノウン]と呼称することとした。
国連は、翌月からアンノウン殲滅作戦を展開するも、アンノウンのサイズは護衛艦などと比べるとコメ粒ほど小さく、また彼らはその身体の大きさにありながら護衛艦と同等の火力を持っていたため、
攻めあぐねているうちに一年と三か月近くが経過した。
この間、アンノウンはサメ型だけでなく、手足がはえた半魚人型、また、ラジコン大の戦闘機を繰り出す空母系半魚人型が出現し、勢力を拡大していく。人類は、補給線を維持するのに手いっぱいだった。
六月某日 横浜鎮守府
特殊訓練生第三班第一小隊所属の織田信広は、寮の自室から外を眺めていた。窓の外には、ちょうど今年から開校した女学校の校庭が見える。
「よう、織田」
声をかけたのは伊佐美壮。織田の同期である。
「十五時から演習で、三班は十三時集合だってよ、おい、聞いてるか?」
「ああ、しっかし、こんなところによくもまあ学校なんて建てるもんだな、危なくないか」
「いいんじゃないか?俺たちにとっては、目の保養にもなるぜ」
「確かにな」
織田は壁の時計を見る。時間は十一時をまわったぐらいだ。
「さてと、伊佐美、早めに飯食って、準備しようぜ」
同日 ヒトフタサンマル 港
「遅いですよ、織田、伊佐美」
そう声をかけたのは、和泉雅人である。長い黒髪を後ろで束ねている。
「お前は早すぎなんだよ、和泉」
伊佐美が返す。
「何時からいた」
「四十五分前」
そうこうしているうちに、班員六名がそろう。班長の田中が教官の太田一郎に報告に行く。
「揃ったな・・よし、三班、全員輸送船に乗り込め! これから演習場に向かう」
鎮守府海域 移動中
教官の太田一郎は、いつも誰かを大声で怒鳴ったり、うろうろしていたり、とにかく落ち着きがない。彼は移動中のこの待ち時間がとにかく嫌いだった。彼はたまらず口を開いた。
「暇つぶしもかねて、ここに至るまでの経緯、またお前たちの任務について再度説明する。よく聞いておくように」
(ったく、狭い艦内ででけえ声出しやがって、やかましいわ)
「織田、何か言ったか」
「いえ、何も」
「では、気を取り直して、まず、アンノウンのことについてだが、現在のところ、確認されている種類は、大きくいって二種類。
サメ型と、半魚人型だ。半魚人型は、砲撃型、空母型の二種に分けられる。」
「ヒト型はないのですか」
伊佐美が尋ねる。
「現在は確認されていない。だが、サメ型の後に半魚人型が現れたのだから、これを進化ととらえるなら、その可能性は、十分にありうると考えてよいだろう。」
「それと、お前たちのまたがっているそのホバーだが」
一同、ホバーに目を落とす。それはバイクの前輪と後輪がそれぞれホバーに置き換わった物に見える。機体後部には左右に出っ張った部分があり、その上部には、バズーカ砲、小型ミサイルランチャーなどが積み込める。また下部には三連装マイクロ魚雷を積み込める。また、機体後部には、対空機銃、レーダー、超小型爆雷を搭載できるスペースも確保してある。
「そのバイクの正式名称はPrototype military for personal watercraft-1。通称アメンボだ。それでアンノウンと戦ってもらう。」
「太田教官、目的地に到達しました。」
輸送艦の操縦士が告げる。
「よし、出撃だ! 総員、戦闘準備! 俺はここでお前たちの戦いぶりを見届けてやる。演習用に火薬の量は減らしてあるが、甘く見るなよ」
ヒトゴマルマル 演習直前
「これから隊を二つに分ける」
教官の声がヘルメットに内蔵された無線機を通して聞こえる。
だからうるさいんだて、おみゃあの声は
織田は無線機のボリュームを下げる。ほかの五人も、同じことをしている。吹き出しそうになるが、何とかこらえる。
「まず一班! 中田、田川、花草!
二班! 織田、和泉、伊佐美!」
六人は、それぞれの組に分かれる。
「よし、これより、演習を開始する!
演習・・!」
と、言いかけた瞬間、一組の方向に水柱が立つ。
「二班! まだ開始の合図はしていないぞ」
『いえ、私たちは発砲していません。』
和泉の声。
「何? ではなんだ?
織田、状況を確認しろ。我々は一組の救助に向かう」
二班の三人の目の先に見えのは、それは人の形をした何かであった。
「人間か?」
「水上に立っているぞ」
「アンノウンか? いや違う・・いや、アンノウンだ! 教官、アンノウンです! ヒト型のアンノウンが、目の前に!」
織田が声を荒げる。
『ヒト型だと?・・退却しろ! 敵の実力が分からん。早く退け!』
「教官、一班はどうなりましたか」
和泉が尋ねる。
『救助はした。全員無事だが、今すぐに手当てをしないとまずい』
「伊佐美、何を!」
「和泉、伊佐美がどうした!」
「うわあああああああああ!」
「伊佐美、落ち着け!」
伊佐美は完全にパニックに陥っていた。アンノウンに向け、砲を乱射する。
「和泉続け! 伊佐美を援護する」
「了解した」
『何? 貴様ら、勝手は許さんぞ! 退却しろ!』
太田教官の制止を無視し、織田と和泉は伊佐美の援護に入る。アンノウンは、伊佐美にむけ、左右の砲の照準を絞っている。織田は右、和泉は左に分散し、伊佐美にタイミングを合わせ、三方向から砲を撃つ。アンノウンの周囲に無数の水柱が立つ。集中砲火に耐え兼ね、撤退するアンノウン。しかし、碌にダメージを与えられていない様子だった。
(火薬の量が減っているとはいえ、あれだけの数を撃ち込んだんだぞ、やけどくらいあってもいいじゃないか)
織田は何とも言えない気持ちで撤退する敵を眺めていた。
敵が撤退し、冷静さを取り戻した伊佐美は、周囲を見回す。
「織田、何があった?」
「敵を撃退したのさ、覚えていないのか?」
「一班がやられて、それから・・・」
「やれやれ、覚えていないのですか?」
「いや、全然」
「フッ・・」
『早く帰投しろ、命令違反だぞ』
教官が怒鳴る。
「やべえやべえ、早く帰ろうぜ、織田、和泉」
鎮守府に帰投し、一班の連中を搬送した後、三人を待っていたのは教官の鉄拳制裁だった。
「いいか、今回は運が良かったかもしれないが、いつも今回のようにいくと思うな。この件は特別に不問とする。次はないからな。肝に銘じておけ」
翌日 食堂前
織田、和泉、伊佐美の三人は、食堂前の自販機の前でたむろしていた。
「なんで俺がお前らにおごらなきゃならないんだよ」伊佐美が言う。
「勝負に負けたのですから」
「たかがババ抜きじゃねえか」
「そういう約束だろ」
「チェ、わかったよ、何がいいんだ?」
伊佐美が自販機に五百円玉を入れようとしたとき、
「邪魔よ!」
突然後ろから声がする。伊佐美が後ろを振り向く。誰もいない。視線を落としていくと、私立小学校のような制服を着たツインテールの女の子がこちらをにらんでいた。
「君、どこの子?軍の関係者以外は・・・」
「はぁ?私は軍人よ!何言ってるの?ジュースを買いたいだけなのよ、早くどきなさい!」
伊佐美の言葉を遮る。伊佐美たち三人には、目の前の子が何を言っているのかさっぱりわからなかった。
(なんだ、この子は)
(さあな)
(軍の関係者ということは確かなようですが)
「何コソコソとしゃべってんのよ!邪魔だって言ってるでしょ!」
「なんだと、聞いてりゃいい気になりやがって!大人をなめるな!」
伊佐美が手を振りかざす。
「おい!伊佐美、やめろ!」
織田の止めるのも聞かず、ビンタをくらわせようとする伊佐美。
しかし、女の子はそれを軽くいなし、伊佐美の足を払う。
「・・・・ッ」地面に倒れこむ伊佐美。
「たいしたことないのね」
「お前・・・」
「白だな」
「どこ見てるのよ、この変態!死ねばいいわ!」
思い切り伊佐美の顔を踏みつける。
そうこうしているうちに、後ろから、
「満潮―!」
そう言って走ってくる女の子がいた。服装はこの女の子と同じだが、髪は長髪のストレートである。
「朝潮?」
「こんなところにいた
神通さん、見つかりました」
「ほんと?」
もう一人、こちらに走ってくる人物がいた。
彼女は、前の二人とは違い橙色のセーラー服に身を包んでいた。容姿も、ずっと大人びた感じだ。
「はぁ、はぁ、もう、すぐいなくなっちゃんだから」
息を切らしながら言う。
「ご迷惑をおかけしました。失礼します。行きましょう、朝潮ちゃん、満潮ちゃん。」そう言って礼をすると、三人は走り帰っていった。
三人は、この成り行きを、ただ茫然と眺めるしかなかった。
いかがでしたでしょうか。
できればご感想をいただければよろしいかと思います。
この作品を書いたのは、別の視点から艦これを書いてみたいという欲求からでした。実際書いてみると結構楽しいものです。
投稿ペースは遅めでしょうが、どうぞ温かい目で見守ってください。