いつも通りの異常な修行がはじまる。
それは修行というにはあまりにも命懸けだ。
ぎりぎり避けられるスピードで、即死レベルの攻撃がとんでくる。
肉体的にもかなりきついが、精神的にもかなりやられる。
「逃げてばかりじゃいけないねぇ。」
逃げるだけで精一杯だ。攻撃なんて・・・やっぱむり。
けど、ここで諦める訳にはいかない。それが剣士というものだ。
正面・・・下・・・右・・・後ろ!!
まだダメだ。
上・・・左右・・・下・・・後ろ!!!!
刀を逆手に持ち替え、一気に突き出す。
「うおおおおおおお。」
空気を切り裂く音がする。いまの一撃は我ながらよかったと思う。
けど、手ごたえはやっぱりなかった。
「おっと。今のは危なかった。けどわたしには届かないねぇ。」
ぎりぎりでかわされた。持ち替えて体制を立て直す・・・
でもそんな時間はなかった。
真正面から腹めがけて拳が飛んでくる。まずいな・・・いそいで攻撃に備える。
「うっ!」
間一髪のところで急所をはずさせることには成功した。けど痛いね。
その拳は左の肩へあたりそのまま吹っ飛んだ。
体をひねって地面へと足をつける。摩擦のせいで足の裏が焼けそう。
大木に背中がぶつかることによってやっと止まる。
「なんとか体制は立て直したようだねぇ。基礎的なものはほぼ完成といったとこか。」
「ありがとうございます。」
「けど、お世辞にもまだ強いとはいえないな。」
「は、はぁ。」
「そこでだ! おまえにひとつ教えてやろう。」
「何を教えてもらえるのですか?」
「妖力・・・いやおまえの場合は霊力か。その霊力の運用法だ。
まぁまずは、見本でもみていてくれ。」
そういうと、大岩に向かって構える。
地面が揺れ始め妖力を高めていく。それは目に見えるほどで
体全身に紫のオーラを帯びている。
「ハッ!」
掛け声と共に大岩にはさっきまでなかった穴があく。
その穴からは向こう側の景色がみえるほどだ。
あまりの威力のすごさに正直、失禁してしまうところだった。
「大事なのはイメージだ。きっとおまえにならできるだろう。」
「俺にできますかね?」
「できるできないじゃない。やるんだよ。」
「そーですよね。」
ものは試しだ。猿真似だが、やってみるだけやってみよう。
全身に意識を集中させる。
そして心の中にある負けた時の屈辱、そして自分の決意を思いおこす。
体中がすこしずつ熱を帯びていくのがわかる。
少しずつ、白いオーラが身を纏いはじめる。それは次第に強い光となる。
「いいぞ。その調子だ。」
更に集中力を高める。
脈が少し速くなり、少し頭痛もする。そして体が震えはじめる。
やがて、刀からはキーーーンという悲鳴の音がきこえる。
脈が更に速くなる。さっきよりも頭痛がひどくなる。
体の震えも止まらなくなる。全身には赤いオーラを纏う。
途端に恐怖に襲われた。それは本物の死の恐怖だ。
いままでも死にかける練習はしてきたが、それ以上の恐怖だった。
パッァアアアアアアアアアアン
一気に霊気が開放されて元の状態にもどった。
あまりの恐怖に心が耐えられなくなったのだ。
「初めてで、そこまでできればいい。赤いオーラまではやらなくていい。
まだ早いようだ。まずはその白いオーラの状態をコントロールできるよう
にしてみろ。その先はそれからだ。」
「わかりました・・・」
「それにその刀ではもたないようだな。刀のほうはわたしに任せてほしい。
知り合いに腕のたつ鍛冶職人がいるんだ。そいつに頼んでみる。
少し遠くになるからな。しばらくは戻ってこれないだろうから、しばらく
いつもの修行は休みにする。だが鍛錬はおこたるなよ。その力をわたしが
戻るまでには完成させておくように。」
「は・・・・はい!」
うん。休みだ。うれしい・・・うれしいぞおおおおおおおおお。
「使いこなせていなかったら・・・・わかっているな?」
にこりと怪しげに笑ってみせる。
勇義さん。すごく怖いです。そんなことを思いながら勇義さんを見送る。