蒼天を焦がすほどに紅い、叛逆の旗を掲げよ   作:NoRAheart

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|o二話o
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|o   ヾ
|―u' 二話 <コトッ

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| ミ  ピャッ!
|    二話


ワタシが私になる前に

遠い異国の大地、とある村。

辺り一面茶色のキャンパス、その上で。

みんなが描いた、キャンパスいっぱいに描いた、緑を。

私がぶちまけてしまった紅いペンキが、全て、すべてを台無しにしてしまう。

 

その日は、雲一つない快晴でした。

太陽は天高く、地を余すところなく照りつけんと輝いていますが。

心なしか今日は、いつもにまして輝いている様に見えます。

死ぬにはいい日(It’s a good day to die)、よく言ったもの。

 

風が吹き、照りつける太陽は、心地よい葉の匂いを際立たせます。

しかしその中に混じる、硝煙と生々しい鉄の臭いは鼻腔を嫌に刺激し、見る者にその光景の非日常をより訴えるのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空を見上げた人は、一体何を思うのでしょう?

どんな事を思うのでしょうか?

地に倒れ、空を仰ぐ私は。

そんなことを、ぼんやりと考えます。

 

 

「――、――い!!」

 

 

ええ、きっと。

見える空は、人の数だけそれぞれで。

空が蒼いな――と、ただ思う人もいれば。

空が蒼く見えるのは、光の三原色が混ざり合ってできた太陽光の内の青の波長が大気中の分子の性質によって、レイリー散乱する為なのだ――と、考える人もいるのでしょう。

 

私は………どうなのでしょう?

昔の私なら、ただ前者に挙げたようなことを思うだけ。

ただ何も思う事もない、つまらない人間だったのでしょうが……

 

 

「―――い!!せんせい!!」

 

 

誰かが、私を呼んでいるようです。

視線だけを動かして、その誰かを探します。

 

その方は、私の傍にいました。

だけど、私にはその方の姿を輪郭でしか捉える事が出来なくて。

私には、その方が誰なのか、よく分かりませんでした。

その方は、横たわる私を起こそうと、必死に私の身を揺すっています。

しかし残念ながら、私にはもはや起き上がる力はありません。

 

――私は、銃で撃たれたのです

 

青年海外協力隊の一員として派遣されていた村が、不幸にも武装集団、巷を騒がせていた過激宗教団体に襲われ。

なんとか村を守ろうと、奮闘したのですが。

物事、映画漫画の主人公みたいには上手く行かないもので。

残念ながら、最後の最後で撃たれてしまったのです。

 

私の躰は、何か所もの穴が開き。

その穴から噴き出し、漏れ出る真っ赤なそれはきっと、私の命そのもの。

止めなければ、いずれ私という器から、それがすべて零れ漏れ出てしまうのは言うまでもありませんが。

今この場においてその術は、残念ながらありません。

ですから、私はもう……

 

 

「………ごほっ」

 

 

それでも何とか、誰かの声に答えようにも、吐血。

吐き出す力は弱弱しく。

いくらかの液は喉元に戻って、私を苦しめます。

呼吸ができない苦しみは、まるで水に溺れているかのようで。

私はろくに、返事も。

また、呼吸さえも儘なりません。

 

それでも、そんな私でも。

傍にいる誰かは、呼びかける事を諦めた様子はありません。

だけど私は、応えられない、答えられない。

もどかしい。

 

 

「だめ、だめです!!せんせい、死んじゃだめです!!」

 

 

死に際で。

徐々にフィルターのかかっていく視界では、既にモノを輪郭でしか捉えられない私でしたが。

嗚呼、今やっと、微かに届いたその声で。

私はその人物が誰なのかを、ようやく。

ようやく、思い出したのです。

彼女は、私がこの村で勉強を教えていた子どもの一人で。

スワヒリ語で『平和』という意味を名に持つ、とても教えがいのある、優しい子でした。

将来の夢は、この国の大統領になってこの国から貧困をなくし、人々を豊かにすることなのだそうです。

それはとても素敵な夢で、素晴らしい夢で。

聡明で、才能にあふれた彼女なら、きっと大統領になることも夢ではないでしょう。

そんな彼女を守れたことを、私はとても誇らしく思います。

 

 

「皆どいてくれ!!医者を連れてきたぞ!!」

「頼む、彼を……先生を助けてくれ!!」

「お願いですせんせい。死なないでください………」

 

 

心なしか、視界いっぱいに広がる空は、だんだんと。

だんだんと、私に近づき迫って来ているように思えてなりません。

……いえ。

これは、私の方が空に近づいているのでしょうか?

 

私は、死ぬのでしょう。

日本から遠く離れた、この地で。

人の為に何が出来るのかを追い求めた結果が、このような残念な終わりになってしまったけれど。

しかし私はこの土地に来たことで、日本では手に入れる事の出来なかった、大切な多くの事を学ぶことができました。

ですから、私はこの地に来たことに、後悔はありません。

 

ただ、私には心残りはあります。

 

 

「わた………し……は」

 

 

この土地に来てから。

この村の人たちに出会ってから。

私はずっと、考えていました。

空はあんなにも蒼いのに。

空はどんな世界でも変わらないモノなのに。

この世は、どうしてこうも不平等に溢れ。

理不尽な貧困なんてものがあるでしょう?

それは決して、社会主義を訴える訳でもなく。

資本主義の否定をする訳でもありません。

貧富があるのは、きっとこの世の当然の理なのでしょう。

ですが、私は――

 

 

「みとめ………な、い」

 

 

迫る、天へと。

私は最後の力を振り絞って、手を伸ばします。

天に。

そしてその向こう側にいるかもしれない、神様に。

果てのない、無謀な挑戦でも挑むかのように。

 

 

「世界、を………」

 

 

出来れば。

私はその理に、挑みたかった。

この村の人たちだけでなく、もっと多くの人たちの事を考えたかった。

それはもはや、遅すぎた思いではありますが。

ですが、もしも。

もしも私に、もう一度だけチャンスがあるのなら。

 

――理不尽な貧困なんてモノのない、幸せを掴むことの叶う世界を創ってみたかった

 

……なんて。

身の程を知らない、大それた夢を。

薄れゆく意識の中で、抱きながら。

疲れた躰を休めるように、ゆっくりと目を閉じます。

 

私という人間は、そうして。

短い一生を終えたのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……終えた筈でした。

 

 

「解せぬ」

 

 

今私に起こっているこの不可解な事態。

それは目の前の彼の吐いた、その一言に尽きました。

 

 

「久々に天上に上ってきたモノがいたかと思えば、狂った魂ではないか」

 

 

あの時、その一生を終えた筈の私が、どういう訳か目覚め。

目の前にはテンプレ漫画小説などで、いかにも出てきそうな仙人とか神様みたいな、優しい雰囲気を持ったおじいさんが立っていました。

自分でも何を言っているのか、己の精神状態を疑いたくなるものですが。

おじいさんが、なめるように私の躰を頭からつま先まで観察し、残念そうに吐いた言葉が、それですから。

彼が見た目に反してかなり失礼な方であることだけは、よく分かりました。

 

さて。

辺りを見渡しても何もないまっさらなこの空間で、死んだはずの私が、変なおじいさんと二人っきりという現象。

考えられるものは――

 

1、これが私の夢である可能性。奇跡的に命が助かり、未だ目覚めぬ私が見るメルヘン。

2、今までこそが胡蝶の夢である可能性。おじいさんと私、二人だけの空間に耐え切れなかった私が作りだした妄想空想。

3、私の五感の幾らかが狂ってしまっている可能性。おじいさんは医者で、私の視覚聴覚が狂っている為、彼と世界を正しく認識できていないオチ、火の鳥。

 

 

「狂った魂とはいえせっかく天上に昇ったというのに、未だ生に執着するとは………理解に苦しむ。まったく、人間というモノは度し難い、くだらない事を考えるものじゃ。因みに、その三択はいずれも不正解。貴様らはもっと、ありのままに物事を見れんのか?」

 

 

おじいさんの、とんでもない指摘。

因みに考察は、私の口からは、一言も漏らしてはいません。

つまり、私の心中が読まれたということです。

どんな原理かは分かりませんが。

しかし私が考えている全てが全部筒抜けということは、プライバシー侵害も甚だしい、不愉快極まりない事です。

 

理解しがたい一面白色空間で目覚め。

他者の尊厳も配慮せず、原理の分からない読心術を使う、おじいさん。

私が死んでいるということも含め、改めて、私は考えてみますが。

ああ確かに、おじいさんの言う通り、ありのままに物事を見れば、自ずと答えは導き出せます。

答えは単純明快。

おじいさんは超常的存在――悪魔の類で。

そんなおじいさんを相手する私は、つまり地獄に堕ちたのです。

 

 

「待て、創造神に向かって悪魔とは何事か」

 

 

神?創造神?

それは面白い冗句です。

おじいさんがこの場で己を神だと自称するなど、冗談この上ない事だとは思わなかったのでしょうか?

もし本当に神ならば、私のような者に構っている暇もなく。

更に言えば、創造神を語るなら、世の不条理を放置することなし。

私も、世の不条理を嘆くことなく死ぬことはなく、また正当防衛だったとはいえ、人を殺さずに済んだのです。

極論を言えば、私は怠けていた創造神に殺されたといっても過言ではありません。

もしも創造神であるならば、私に第一声に告げるべきは、決して罵倒ではなく、表面上でも謝罪であり。

それでも己を創造神だと騙るなら、私はこの世を創造した地位にいる神の、その責任能力を疑わざるを得ません。

 

 

「私一人での世の管理も大変なのだ、オーバーワークなのだ。貴様らは神を過労死させる気か」

 

 

自分で世を創造しておいて、よく言うものです。

その泣き言は、おじいさんのプランが欠陥だらけ、本人の計画性に重度の問題あり、の証明ではないですか。

その計画性の無さが、世を中途半端なモノにして、貴方だけでなく、私たちをも苦しめているというのに。

 

 

「黙れ!!だいたい、元はと言えば貴様らから理を欲したというのに、折角私が貴様らを導いてやったというのに、最近の貴様らは恩も信仰心も忘れおって!!これでは私の力が弱まるばかりではないか!!」

 

 

最近の科学の発展をご存じない?

他国ならいざ知らず、日本の様な先進国、満ち足りた世界で、さらには生活を豊かにする魔法の如き科学が栄え、危険も切迫も窮地もない。

そんな世界で人生の大半を過ごしていたというのに、どうして今更存在不確かで救いの手を差し伸べてもくれない神に縋る必要性などありましょう?

それに『導いた』なんて、いつの話でしょうか?

己に身に覚えのない恩寵に恩を感じて信仰しろなんて言われても、その人の正気を疑って、困惑するに決まっているじゃあありませんか?

 

……あれ?

逆に言えば貧困に喘ぐ国では、縋る何かがむしろ必要なのではないのでしょうか?

そう考えると、信仰心というリターンが必要なおじいさんにはそれは都合の良い状況で。

なるほど、あえて不平等に世を創ることで信仰心を得る魂胆ですか。

盲点でしたが、外道ですね。

 

 

「そんな事する訳なかろうが!!全く、なんでこんな奴が、天上に昇って来たんじゃ………」

 

 

今度は、私自身の否定ですか。

最初の方でも『狂った魂』なんて言われていますし、本当に失礼な方です。

とは言っても、自分自身が人間として立派であるかと問われれば、明らかにノーでしょう。

それはあの村で過ごしてきた中で、重々思い知らされたことです。

 

それよりも、建設的なこれからの話をしましょう。

私はこれからどうなるのでしょうか?

 

 

「……天上に昇った貴様には、二つの道がある。一つは、天界に昇る道。もう一つは、輪廻に魂を戻し、再び転生する道じゃ」

「普通は、違うのですか?」

「普通は、後者じゃ。その魂が善行によって満たされるまで、例外なく人は輪廻の輪から外れる事はない」

 

 

意外にすんなりと答えてくれました。

説明責任は、最低限の仕事というものでしょう。

おじいさんが、公私の分別の出来る方で助かりました。

例え嫌いな相手であろうと、最低限の仕事というのは、果たされなければならない事であるのは理解できます。

 

それにしても、故意ではないとはいえ。

人を殺しておいて、善行ですか。

満たされる基準がよく分かりませんが、おじいさんの口ぶりだと、どうやら善行は転生ごとに持ち越しで貯金できるみたいですし。

きっと私の知らない前回分の人生で、善行の貯金がほとんど溜まっていたのでしょう。

 

 

「――が」

 

 

と。

そこで終わりかと思っていた説明が、意外な事に続きます。

 

 

「今回は特別に、もう一つの道を用意してやろう」

 

 

……ちょっと、嫌な予感がします。

良い事を思いついたみたいな顔をして、『特別』と語ったあたりに。

これは大学時代に友人に麻雀の代打ちを頼まれたかと思えば、いつの間にか893の相手にしていた時並みの、嫌な予感です。

 

 

「貴様、最後に思っただろう――理不尽な貧困なんてモノのない、幸せを掴むことの叶う世界を創ってみたかった――と」

 

 

ええ、確かに思いました。

思いましたが、おじいさん。

なんで貴方はそんなにニヤニヤしているのですか?

本当に、ガチで、嫌な予感しかしません。

おじいさんが私を見る目は、まさに、新しいおもちゃを与えられた子どものそれです。

 

 

「閉じた淫猥な世界の中で、絶望しかない運命を歩まされ、繰り返させられる者達がいたら、貴様は真っ先に救いたいと思うじゃろう?」

 

 

確かに、そんな人がいたならば、私の力が叶うなら、助けたいとは思いますが。

それを肯定することは、おじいさんに私の性格を利用されているみたいで、不愉快です。

 

 

「何が、言いたいのですか」

「貴様は、あれじゃろう?危険も切迫も窮地もない科学なんてもののある満ち足りた世界で生きてきたから信仰心が生まれず、そんな態度を取るのじゃろう?」

「は?」

「と言う事は、貴様自身が言っていたように、逆にそういう状況に貴様を落とせば、貴様にも信仰心が生まれると言う事じゃな?」

 

 

暴論である。

そもそもそんな道を、私が進んで選ぶとでも言うと思っているのだろうか?

 

 

「貴様は、絶対に選ぶ」

 

 

何故、断言?

 

 

「ほれ、あっちじゃ。貴様の救いを求めている声が、聴こえんか?」

 

 

おじいさんは指さすのは、私の後方。

振り返る。

 

押される。

 

 

「――――え?」

 

 

人間、後ろから不意に押されると、面白いように重心は崩れるものらしい。

私は、倒れる。

倒れた先には、何故か、穴。

仄暗い穴の先には、何もない。

何も、見えない。

そんな穴に、私は堕ちる。

文句罵倒を言う暇もない。

 

 

「喜べ。貴様の挑戦、願いをわざわざ『特別』に叶えてやるのだ。安心しろ。貴様の権利は、その絶望する少女の為に使われるのだ」

 

 

おじいさんの声。

堕ちた穴から、既に遠くではあるが。

嫌なほどはっきりと、声は聴こえる。

 

 

「私に苦言を吐いた貴様が、信仰心もなく、運命づけられ繰り返される世界に抗えるかどうか、試してやろう」

 

 

無意識にも。

届かないと知りながら。

それでも堕ちた穴に向かって伸ばす手は、きっと救いを求めているからじゃない。

それはあの時と同じ。

理不尽なおじいさんへの―――天への挑戦。

 

 

「悔い改めよ、私を信じよ、救いを求めよ。さらば救わん」

 

 

おじいさんは、そう言って。

堕ちた穴は、閉じられて。

私はまっすぐ、堕ちるだけ。

 

「誰が信じるものか!!誰が救いなど求めるものか!!」と、叫ぼうと。

真っ暗闇の中では意味がない。

何もできない事は、どうしようもない事ではあるけれど。

私は、その瞬間が堪らなく悔しかった。

 

そうして私は、ただ堕ちて。

まだ堕ちて、ずっと堕ちて――

 

 

 

 

 

そして、()()()

 




おじいさんの意味深発言より解説


>閉じた淫猥な世界

エロゲーの世界


>絶望しかない運命を歩まされ、繰り返させられる者達

黄巾党は序盤、基本ぼこぼこにされますので





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