蒼天を焦がすほどに紅い、叛逆の旗を掲げよ   作:NoRAheart

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>なんか見覚えのある文章………ヴィルヘルミナさんの方ですか?

逆に聴きたい……
なんで文章で分かるんや(;´・ω・)





そしてワタシは私となった

「か……はっ………!?」

 

 

私は溺れていた。

目の前は、暗く。

故も、分からず。

ただ、突然に。

 

それは水に溺れているためかと疑うも。

溺れ方は、どうにも違う。

吸うべき空気がないというよりも、重圧。

訳の分からない圧が。

身体を押さえつけられているという事実が、息吸う事を遮っているのでした。

 

暴れる。

 

重圧から、解放されるため。

吸うべき酸素を、求めるため。

何より、本能的に直感する。

迫る死から、逃れるため。

だから私は暴れ、暴れ続け。

もがく中で、何かを掴む私は。

ただ必死に、振りぬいて――

 

 

「がっ!?」

 

 

悲鳴。

そして私は、身体に感じていた重圧から、解放される。

空気を、酸素を求め、必死に吸います。

吸う事と、むせる事の繰り返しの中で、徐々に私の視界は暗から光を手に入れ。

そして。

 

 

「……ここは、何処?」

 

 

疑問が、私の思考を埋めるのです。

這いつくばるのは、地で。

周りに広がるのは、森。

傍で苦しむのは、男。

訳が分からない、と。

 

私は、神を自称するおじいさんに蹴落とされた筈でした。

それがどうして、このような結果になるか?

と、思えば、ふと私の手のひらに、何か収まっているのに気付きます。

己が手に、視線を落とせば、朱。

 

 

「ひっ!?」

 

 

投げ捨てるのは、朱に染まった、石。

いらないから、投げ捨てる。

どうしてこんなものを、私が持っていたか?

どうして私の手は、血に染まるか?

その理由など、探すには簡単すぎて。

解など、自明であったのです。

目の前にうずくまる、男。

頭からは、血を流す。

私が、彼を殴った故に。

彼の朱は、流れるか。

 

 

「大丈夫、です………か?」

 

 

月並みの言葉を吐きながらも、大男に近づくも。

私は、不意に思い出すのです。

記憶。

ワタシのモノではないらしい。

誰かの記憶の、断片を。

 

 

「あ………あぁ…………」

 

 

私の呼吸が乱れるのはもはや、足りなかった酸素を求めているだけの事ではありません。

嗚呼、何たることか。

私は、殺されかけていたのです。

この男に。

目の前の、この男に。

 

 

「――ハサ、イ」

「ッ!?」

 

 

呼ばれる。

頭を抱えながらも、のっそりと起き上がる男は、見上げる程大きく。

その巨体は、まるで大熊を連想させられる。

 

後ずさる。

それは、私が彼に近づいた距離よりも。

後ずさるのは、私が男に恐怖するからでした。

だから私は――

 

 

「あ………ああああああああ!!」

 

 

逃げ出すのでした。

みっともなく。

悲鳴を上げて。

 

 

「待たないか、ハサイ!!」

 

 

男は、背を向け逃げる私を呼んでいます。

待て、待てと、叫んでいます。

周りは森で、他に人なんていないのです。

私を呼んでいることは、間違いありませんでした。

だけど『ハサイ』なんて、名など知らないし。

無論、私の名でもない。

しかしどうしてか?

私というモノを表す名に、『ハサイ』と言う名ほど、しっくりくる物は無いと思ってしまうのです。

いったいその固有名は、何ぞや?

何故その固有名で、私を呼ぶや?

その問い掛けに、答える者も。

それを知る術も、今の私は知らない。

 

 

「待てハサイ!! おとなしく俺に殺されるのだ!!」

 

 

殺すと言明されて、待つ馬鹿はいません。

だから迫る殺意から、私はまだ逃げるのです。

 

あてなく、ひたすら走る森の中。

その森の中の薄暗さは、果たして私の敵か味方か?

多く生える木々と、薄暗さは、私の姿を眩ませる味方なのでしょう。

しかし薄暗さは、数多の木々は私を冥界に誘わんと。

私を知らず知らずの内に飲み込まんとしている敵にも見えたのです。

そんな事、ありえない筈なのに。

 

道なき道を進み、枝木を掻き分け走る私は。

枝木には引っかかれ、木の根に転んでと。

進むことは、思うようには行かない。

しかしそれは、障害物走をしているだけの話ではなく。

まるで、もとの身体ではないように。

呼吸も、体力も、背も、歩幅も。

一つたりとも、ワタシのモノとは少しも噛み合いはしないためでもあった。

 

此処まで来れば、もう嫌でも分かってしまう。

あのおじいさんに堕とされた、ワタシは……

 

 

「ぐぇ!?」

 

 

ヒュッと、空気を切り裂く音を聴き。

背に突如、衝撃。

受けた私の内からは、ミシリと嫌な音が響き。

外には、蛙でも踏みつぶしたような、変な声があがる。

 

転倒した私は、見て知る。

私の背に衝撃を与えたのは、礫………と、呼ぶにはいささか大きすぎる石であると。

 

 

「これ以上手間を掛けさせるな。時間がないんだハサイ」

 

 

声が迫る。

男が迫る。

逃げなきゃ。

逃げねば殺される、と。

足掻き、もがき、這いつくばってでもなお進まんとするも。

 

 

「あ、がっ!?」

 

 

とうとう男に追いつかれてしまった私は、男に馬乗りされることを許してしまい、絞首され。

尋常ではない力で、締め上げられる。

息が、できない。

逃れる為に、足掻かんとするも。

今度は逃さんとばかりに腕は男の脚に抑えられ、身体は臀部に押さえつけられ身動きは取れず。

 

結局。

私がここにいる訳も分からず、意味も分からず。

私はこんな所で、殺されるのか?

そんなのはあんまりだ!! 冗談じゃない!!

そう思うも。

 

 

「すまない………すまない、ハサイ」

 

 

見上げる男の、目には涙。

伝う頬から落ちる涙と、頭から滴る血は、私の頬を濡らす。

 

 

「弱い俺を許してくれ、守れない俺を許してくれ」

 

 

男の独白。

私の首など、簡単に折ってしまいそうな屈強な身体を持つのなら一思いに折ってしまえばいいだろうに。

それでも力が迷子になったように、強弱を繰り返すのは躊躇いがあるからでしょうか。

やられている方は、生殺し。

 

幾らかして、やっとそのことに気付く男。

覚悟を決め、今度こそ迷うことなく力を込めて私の首を締めに掛かる。

 

 

「此処で死ぬことが、波才、お前の幸せの為なんだ」

 

 

呼吸叶わず、抵抗叶わず。

ぼぅ、と遠くなってゆく意識の中で。

波才――それが私の固有名かと。

思うて、また思い出す。

 

 

「お………と、う……さ…………」

 

 

少しの記憶であったとしても。

このタイミングで思い出した事は、あまりにも、残酷。

私の首を絞める、彼は。

私の。

この波才の父であったのだ。

 

意識が落ちる前に、思う。

男は何を思い、我が子を手に掛けるか?

少なくとも、くだらない故ではないのだろう。

でなければ、見上げる事しか叶わない私の眼前に映る男の顔が。

こんなにも悲痛に歪み、嘆くことがあるのか?

 

意識を手放す寸前に、私が男に抱く思いは「憐憫」。

光を手に入れた私は、そうして光をまた失う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が再び意識が戻ったのは、奇跡か。

眼を覚ます私の顔は、きっと驚の色に染まっているに違いなかった。

 

 

「生きてる」

 

 

見上げる天からは、水が落ちてきている。

雨が、降っているのだ。

 

 

「重い」

 

 

身体に掛かる圧。

仄かな温かみをもっている、私にのしかかるものは何かと見るも、それは。

 

 

「………お父さん」

 

 

漏れた呟きが、答え。

男は、私にのしかかったまま、ピクリとも動くことはない。

 

男の下より、這い出る。

外は雨風のせいか、冷たく。

私のなけなしの体温も、容赦なく奪わんとします。

保つべき体温が奪われるのは、今私が着るこの服が、ボロボロであることもまた関係するのですが。

 

 

「あ、あの………」

 

 

我ながら情けない声で、男に呼びかけるも。

返事は、なし。

びくびくと怯えながら、近寄って、揺すってみても。

動きは、なし。

恐る恐る男の首に触れ、脈をはかるも。

脈は、なし。

男は。

死んだのだ。

 

原因で思いつくのは、寸前、頭を殴ったことくらい。

殴った程度でそんな簡単に人が死ぬとは考えづらいが、当たり所が悪かったのか?

ともかく私が、彼を殺した事は、確定なのでしょう。

……嬉しくは、ない。

私の中で「助かった」と感じる、安堵よりも。

私の中でより先行するのは、後悔。

 

 

「――――ッ!?」

 

 

吐瀉。

……しようとしても、そもそも吐き出すものが胃の中に無く、中途半端に終わってより気持ち悪さを抱えてしまう。

 

人を殺した。

確かに私が殺人に手を染めたのは、はじめてではなかった。

しかしあの時は、村の人達を守るためでしたし、何よりも必死で。

その後も荒唐無稽な出来事に巻き込まれて、罪悪感を覚える暇なんてなかったのです。

が、今はどうでしょう。

再び私はこの手を血に染めた。

それは誰の為でもない。

己がため。

自分が助かる為に、他者を。

よりにもよって親を、殺したのです。

 

 

「ぅ……」

 

 

事実に耐えられなくて、折れる膝。

手を地につき、過ちを嘆く私の視線の先には、水たまり。

そこに映るは、ワタシではない、今の私。

 

映る私は何もかもを諦めた、光のない目で。

眼元には、酷い隈をつくり。

栄養失調であることがよく分かる、痩せこけた頬で。

灰をそのまま被ったと言えるほど灰色の、手入れの届いていない長い髪を持つ、齢10、11くらいの、憔悴しきった少女の姿。

それが、今の私。

おじいさんがワタシを蹴落とし、憑依させた。

波才となった、今の私なのでした。

 

元の。

波才であった少女はどうなったか?

『貴様の権利は、その絶望する少女の為に使われる』

そう語ったおじいさんが、言った己の言葉を違えなければ、もともとの私の権利であった天国へ昇る権利が与えられている筈です。

彼女が、本当に天国へ上っているのかを、私が知るすべはありませんが。

救済されていることを、ただただ祈るばかりです。

 

 

「………行かなきゃ」

 

 

吐き気も大分収まってきたところで、私は立ち上がります。

絶望も、罪悪も、未だ私の中にありますが。

しかしいつまでも此処にいたところで、何も始まりません。

何よりも。

こんな所でうじうじして、野垂れ死んだり。

罪悪感に負けて、自殺したとなっては、おじいさんに負けた気がしてなりませんでした。

 

 

 

 

 

フラフラと進む、私。

身体に、力が上手く入りません。

どうも、記憶の中の波才はここ何日、何も食べていないみたいで。

故に、おぼつかない足取りなのは、仕方のない事でした。

ですが休んではいられません。

雨風の凌げる所に出ねば、このまま雨風にうたれる中にいた方がどんどん体力を消費してしまいます。

 

しかし、私はどれほど歩いたでしょう?

10キロ? それとも、20キロほど?

……いや。

本当は、たった100メートルほども歩いていないのかもしれません。

それは疲労と、朦朧としてきた思考では、判断できないことでしたが。

それでも、私にとっては十分な進歩。

冷たい雨風が、私の体力を奪おうと。

私は進むことを諦めず。

一歩でも進めれば、進歩。

前に進むこと、生きる事を諦めないという、私の意思でした。

 

やがて、私は道に出ます。

獣道ではありません。

ちゃんとした、人が通るべく整えられた道です。

そこに道があるならば、その道を進んだのなら。

やがて、人に巡り合えるかもしれません。

 

 

「ぁ………」

 

 

そして私は、人を見ます。

数にして、十人程。

籠を担ぐ彼らは皆、屈強で。

手には、思い思いの武器が握られています。

 

すわ賊か?

 

彼らが持つ武器に統一性がなさに賊かと疑う私でしたが、彼らの格好は賊にしては身ぎれいで、握る武器も賊が持つにしては上等です。

ならば自警団か、どこぞの豪族の私兵でしょうか?

 

 

「おいあんた、大丈夫か?」

 

 

男の一人が私に気付き、慌てて数名が駆け寄ってそう声を掛けてくれます。

賊、ではないようです。

そうほっとして、私はその場にへたり込み。

助かったのかもしれないと、安堵します。

 

 

「十歳くらいの灰色の髪を持つ女子………君は波才か?」

 

 

私を見、男の一人は聴きます。

何故私の名を知るか?

疑問はあれど、私は素直に首を縦に振って肯定します。

 

 

「間違いない。だいぶ窶れてはいるが、彼女だろう」

「しかし左髭丈八―――波純は何処にいるのか? これは奴の罠かもしれん」

 

 

波純―――波才の記憶が正しければ、それは彼女の父の名である。

彼が、いったい何をしたというのか?

男たちは、明らかに父を恐れ、警戒しているのは目に見えて明らかであった。

 

 

「私が……」

「ん?」

「私が、お父さんを………殺しました」

 

 

彼らを安心させるためにも。

そして私の罪を知ってもらうためにも。

私は、告白する。

男たちはそれを聴き、驚き、目を見開くも。

やがて「それはよかった」と、皆が喜ぶ。

 

 

「よかった? 何故?」

「何故? それは左髭丈八が死んだからさ!!」

 

 

人が死んで、普通喜ぶものなのだろうか?

それとも、死を喜ばれるほど、父は極悪人であったのか?

 

 

「私は、裁かれるのですか?」

「裁かれる? まさか!!」

 

 

人を殺しておいて、裁かれないとはどういうことか?

男たちの反応のおかしさに、ハテナを浮かべざるを得ない中。

彼らの持っていた、今は地に下していた籠が暴れだす。

生き物でも、入っているのか?

 

 

「………ちっ、起きたか」

 

 

いらただしげに、一人の男がそう吐き捨て、籠を倒して中身を出す。

中身は――

 

「ん“―――ッ!!ん”―――ッ!!」

「………は?」

 

 

猿轡を噛まされた、蒼髪の少女。

目には涙を浮かべ。

私を見ては、助けを求める。

 

 

「ほーら。おねむの時間ですよ、お嬢さん?」

「ん“―――ッ!?」

 

 

その少女に、男は怪しい香を嗅がせ。

少女は首を振って嫌がり、香から逃れようとするも、やがて眠りに落ちる。

そして眠った少女を、また籠の中に入れ直す。

 

 

「は、ははは………」

 

 

どうして見た目で判断したか?

少し前の、私を殴りたい。

彼らは、人さらいであった。

 

そして私に、さらって来たであろう少女を見られたのだ。

私も無事で済むはずが、ない。

 

 

「安心しな、波才ちゃん」

 

 

何が、安心しろか。

 

 

「あんたは張牛角様ご指名の商品だ、悪いようにはされねぇよ」

 

 

こんなの、あんまりである。

 

 

「あはっ」

 

 

人間。

どうしようもない時には、笑いが込み上げてくるもので。

 

 

「あはははは」

 

 

私の口からは壊れたように、笑い声があがる。

その笑い声は、いつまでも止まることを知らず。

私にも、止め方は知らない。

 

 

「……気がふれたか」

「どうする?」

 

 

どうしてこうなったのでしょう?

それは考えるに及ばず。

 

 

「……黙らせろ」

 

 

全ては、あのおじいさんのせいである。

間違いない、と。

そう私は断言し。

と、同時に迫る男の拳が、私の意識を刈り取って。

今日何度目かわからぬ暗転を、私は再び経験するはめとなった。

 




他の恋姫二次を書かれている大御所様にはやはり、私は知識量の点においては劣っていることは、間違いないでしょう。
だからといって「勝てない」、「諦める」とは、言いたくはありませんが……



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